桃花アナザー
作者:◆wHsYL8cZCc
投稿日時:2011/01/05(水) 23:58:23
投稿日時:2011/01/05(水) 23:58:23
地を蹴り、その細い体躯は滑るように疾走した。その速度は常人のそれではなく、高度な修練の末に手に入れた神速の体術。そして、人ならざる物の力を受け継いだ為に手に入れた能力。
右手に握られた黒い剣と、武術を嗜む者の戦闘服である袴は、跳びはねた泥で汚れていた。掃っている暇は無かったのだ。
彼女は逃走の最中だ。
どうしても逃げなければならなかった。相手はこれまで出会った何者とも違う。様々な怪物を葬り、時には神にすら刃を向けた彼女ではあったが、今回の相手は化け物でも、神でも、魔物でもない。
右手に握られた黒い剣と、武術を嗜む者の戦闘服である袴は、跳びはねた泥で汚れていた。掃っている暇は無かったのだ。
彼女は逃走の最中だ。
どうしても逃げなければならなかった。相手はこれまで出会った何者とも違う。様々な怪物を葬り、時には神にすら刃を向けた彼女ではあったが、今回の相手は化け物でも、神でも、魔物でもない。
――人間。
彼女、無限桃花は、人間から逃げている。
それは圧倒的な力で桃花に迫ってきた。あらゆる武術や、陰陽術、道術に外法すら修めた桃花ですら、それは初めて遭遇する力。
桃花はそれから逃げている。
相手はその力をこう呼んだ。魔法と。
彼女、無限桃花は、人間から逃げている。
それは圧倒的な力で桃花に迫ってきた。あらゆる武術や、陰陽術、道術に外法すら修めた桃花ですら、それは初めて遭遇する力。
桃花はそれから逃げている。
相手はその力をこう呼んだ。魔法と。
――無限桃花vsフーリャン――
桃花の遥か上空。星が煌めく夜空に混じり、桃花へ向かって降りてくる幾つかの光の矢。それは速く、そして巨大。
それを察知した桃花は進行方向を変え、素早く横へとかわす。
巨大な光の矢は地面に突き刺さり、大量の土が舞い上がる。一瞬間を置いて、それは発光を強め、爆発した。
爆風は周囲の草木を吹き飛ばし、桃花もそれに巻き込まれ吹き飛ぶ。
それを察知した桃花は進行方向を変え、素早く横へとかわす。
巨大な光の矢は地面に突き刺さり、大量の土が舞い上がる。一瞬間を置いて、それは発光を強め、爆発した。
爆風は周囲の草木を吹き飛ばし、桃花もそれに巻き込まれ吹き飛ぶ。
既に何度も受けた攻撃だった。一瞬で姿を眩ませた桃花を追うのは向こうには難しいらしく、遠距離から位置を感知し、光の矢を弾道射撃で撃ち込んで来る。
その度に桃花は逃走を遮られ、相手はその隙をついて少しずつ距離を縮めてくる。
その度に桃花は逃走を遮られ、相手はその隙をついて少しずつ距離を縮めてくる。
「……んぐっ!」
何度吹き飛ばされたかは解らないでいた。
直撃こそ避けてはいたが、着弾地点でさらに爆発する光の矢は、桃花を吹き飛ばして体力を奪って行く。
じわじわと行動力は鈍り、神速の体術はキレを無くして行く。そして。
直撃こそ避けてはいたが、着弾地点でさらに爆発する光の矢は、桃花を吹き飛ばして体力を奪って行く。
じわじわと行動力は鈍り、神速の体術はキレを無くして行く。そして。
「ようやく追いついた……」
「くそ……!」
「ずいぶんてこずらせてくれたじゃない。東洋の術者は姑息な奴が多いのかしら?」
「何が目的なの……? なぜ、私を追うの!?」
「なぜ? なぜだって? 簡単な事じゃない」
「くそ……!」
「ずいぶんてこずらせてくれたじゃない。東洋の術者は姑息な奴が多いのかしら?」
「何が目的なの……? なぜ、私を追うの!?」
「なぜ? なぜだって? 簡単な事じゃない」
「何を……!?」
「学問よ」
「学問よ」
その相手は、右手を真っ直ぐ伸ばす。
ぽん、と、風船が弾けたような軽い音が響く。同時に、その音からは想像もつかぬ程の異変。
空間が歪曲した。
ぐにっと円形に、ガラス越しに向こうを覗いたように。円形の透明な、巨大な歪曲した空間。
桃花はそれが何か理解するまで一瞬とはいえ時間を要してしまった。
ぽん、と、風船が弾けたような軽い音が響く。同時に、その音からは想像もつかぬ程の異変。
空間が歪曲した。
ぐにっと円形に、ガラス越しに向こうを覗いたように。円形の透明な、巨大な歪曲した空間。
桃花はそれが何か理解するまで一瞬とはいえ時間を要してしまった。
回避しようと身体を捻り、地を蹴るが、間に合わない。透明な円形の空間に飲み込まれる。聞こえたのは爆音。
それは通常の空間に突如現れた超音速で飛翔する空気の壁だった。気圧差によって陽炎のように視界を歪ませ、破壊的な圧力は地面をえぐり出し、そして桃花を巻き込み飛んで行く。
それは通常の空間に突如現れた超音速で飛翔する空気の壁だった。気圧差によって陽炎のように視界を歪ませ、破壊的な圧力は地面をえぐり出し、そして桃花を巻き込み飛んで行く。
「ッッッッッ!!」
周囲に生えた木々を薙ぎ倒しながら、それは通り抜けて行った。巻き込まれた桃花は吹き飛ばされ、地面に打ち付けられる。仰向けに寝転がり、全身の骨が軋む感触をじっくり味わった。
それはかつて経験した事の無い類の攻撃。少なくとも、桃花の知識にはない術である。
仰向けの桃花は起き上がろうとする。逃げるという選択は既に出来なかった。追い付かれ、直接攻撃された。それは逃走が失敗したという事だ。
ならば、反撃するしかないのだ。
そして起き上がろうとした直後に、胸部に衝撃を受ける。
それはかつて経験した事の無い類の攻撃。少なくとも、桃花の知識にはない術である。
仰向けの桃花は起き上がろうとする。逃げるという選択は既に出来なかった。追い付かれ、直接攻撃された。それは逃走が失敗したという事だ。
ならば、反撃するしかないのだ。
そして起き上がろうとした直後に、胸部に衝撃を受ける。
「おっともう少し寝ててよ。せっかくだしお話しましょ?」
「何を……!」
「まずは自己紹介ね。私はフーリャン。出身は聞かないでね。アンタはえーっと……?」
「何が目的なの……!」
「何を……!」
「まずは自己紹介ね。私はフーリャン。出身は聞かないでね。アンタはえーっと……?」
「何が目的なの……!」
フーリャンは桃花の胸に脚を起き、真っ直ぐ見下ろしていた。起き上がろうにも、その力は並ではなく、がっちりと押さえ付けられ、そして。
「それが東洋の術ね。色んな物見たけどやっぱりオリエンタルな物って独特ね」
「ぐ……! 脚をどけろ!」
「あらごめんなさい。踏んずけたままじゃ失礼ね」
「ぐ……! 脚をどけろ!」
「あらごめんなさい。踏んずけたままじゃ失礼ね」
フーリャンはすっと脚を退かす。が、今度は思い切り蹴りを胸へと繰り出す。肋骨が歪み、肺の空気が押し出され、横隔膜が痙攣する。打撃による呼吸困難である。
その一撃は人間を超えたはずの桃花ですらダメージを受ける程の蹴り。フーリャンの体格は桃花と同等かそれより小さいくらいだが、見た目に反してその一撃は重かった。
異常なくらいにだ。
その一撃は人間を超えたはずの桃花ですらダメージを受ける程の蹴り。フーリャンの体格は桃花と同等かそれより小さいくらいだが、見た目に反してその一撃は重かった。
異常なくらいにだ。
一瞬の隙を突き、フーリャンは馬乗りになった。両手を押さえ付け、桃花を屈服させようと動きを封ずる。
「ほーら。これでじっくりお話出来るわ」
「どけっ!」
「嫌ならどかしてみなさい? アンタ結構強そうだしね」
「く……」
「何嫌がってるの? 別に捕って食おうってわけじゃないんだから」
「何が目的なのよ……!?」
「だから学問よ。古今東西、あらゆる知識や術を学ぶ学問」
「何の事だ!」
「にっぶいわね。私はヨーロッパから中央アジア、中国を経て日本までたどり着いた。その目的は、世界中のあらゆる呪術を学ぶ事。
その為に一番有効なのは、その土地で最高の術者とコンタクトを取る事。……暴力的な手段でもね」
「呪術を……学ぶ?」
「そうよ。私の知らない物、それを知る為。ただそれだけよ。だからアンタにどうこうしようって訳じゃない。ただ戦うのが目的」
「どけっ!」
「嫌ならどかしてみなさい? アンタ結構強そうだしね」
「く……」
「何嫌がってるの? 別に捕って食おうってわけじゃないんだから」
「何が目的なのよ……!?」
「だから学問よ。古今東西、あらゆる知識や術を学ぶ学問」
「何の事だ!」
「にっぶいわね。私はヨーロッパから中央アジア、中国を経て日本までたどり着いた。その目的は、世界中のあらゆる呪術を学ぶ事。
その為に一番有効なのは、その土地で最高の術者とコンタクトを取る事。……暴力的な手段でもね」
「呪術を……学ぶ?」
「そうよ。私の知らない物、それを知る為。ただそれだけよ。だからアンタにどうこうしようって訳じゃない。ただ戦うのが目的」
馬乗りのフーリャンは薄い唇の口角を僅かに上げ、ぐっと顔を近付けてきた。見た目の年齢は桃花とさほど違いは無い程度に見える。ほとんど自分と変わらない、ただの若い女性のようだった。
そして、フーリャンは耳元でそっと呟いた。
そして、フーリャンは耳元でそっと呟いた。
「ガッカリさせないでよ。アンタが持ってる技、全部見せなさい。じゃないと殺しちゃうから」
次の瞬間、桃花の身体は舞い上がる。
地面に押さえ付けられたままのはずが、気づけば宙に浮いていた。目の前のフーリャンも同様に、宙に浮いた。
重力を無視したような挙動。もちろん桃花がそれを行ったのではない。フーリャンだ。
地面に押さえ付けられたままのはずが、気づけば宙に浮いていた。目の前のフーリャンも同様に、宙に浮いた。
重力を無視したような挙動。もちろん桃花がそれを行ったのではない。フーリャンだ。
「ほーら吹っ飛べ!」
そう言うと、桃花の身体は本当に、さらに舞い上がる。ぶわっと背中に風を感じ、一瞬で上空へと飛ばされたのだ。
遥か下の地表では、フーリャンが待ち構えて居る。
遥か下の地表では、フーリャンが待ち構えて居る。
「くそ!」
「見せてみなさい。東洋の魔術」
「見せてみなさい。東洋の魔術」
桃花は剣を真下へと構え、黒い稲妻を纏う。殺気を漲らせ、放つ。
地獄の稲妻の雨。
狙うは眼下のフーリャンと、大地そのものである。細かな狙いを付けるより、大威力の一撃を持っての短期決戦を試みたのだ。
逃走が出来なければ、相手を殺すしかないのだ。
地獄の稲妻の雨。
狙うは眼下のフーリャンと、大地そのものである。細かな狙いを付けるより、大威力の一撃を持っての短期決戦を試みたのだ。
逃走が出来なければ、相手を殺すしかないのだ。
そして桃花の下の地面は、黒い稲妻に薙ぎ払われながら、真っ白な火花と紅蓮の炎に包まれて行く。灼熱と化した空気はただそれだけで周囲を燃え上がらせ、炎に蝕まれて行く。それをさらに、黒い稲妻が砕いて行く。
眼下は文字通り、焦熱地獄のように燃え上がる。
普通ならば耐えられるはずは無い。相手が普通ならば。
桃花は炎の中に着地し、前方を睨み付ける。炎に揺らめく空間の先に居るはずの敵を探して。本来ならば既に倒れていてもおかしくないほどの攻撃だが、桃花はそう判断はしなかった。
得体が知れない相手ほど恐ろしい事は無い。直接この目で倒した事を確認するまで、桃花は気を抜けない。
普通ならば耐えられるはずは無い。相手が普通ならば。
桃花は炎の中に着地し、前方を睨み付ける。炎に揺らめく空間の先に居るはずの敵を探して。本来ならば既に倒れていてもおかしくないほどの攻撃だが、桃花はそう判断はしなかった。
得体が知れない相手ほど恐ろしい事は無い。直接この目で倒した事を確認するまで、桃花は気を抜けない。
「……居た!」
揺らめく炎。その中に立つ人影。
間違いなく敵。
そこからの判断に躊躇は無い。即座に迫り、手に持った魔剣を持って直接斬り伏せようと襲い掛かる。もしかしたら既に死んでいるかも知れないが、そんな事は関係無い。確認するまで、敵は生きているのだ。
そして剣を突き出し、神速の突きを繰り出す。心臓目掛けて。だが――
間違いなく敵。
そこからの判断に躊躇は無い。即座に迫り、手に持った魔剣を持って直接斬り伏せようと襲い掛かる。もしかしたら既に死んでいるかも知れないが、そんな事は関係無い。確認するまで、敵は生きているのだ。
そして剣を突き出し、神速の突きを繰り出す。心臓目掛けて。だが――
「ウソでしょ……!?」
「何が? 驚く事?」
「何が? 驚く事?」
剣の切っ先は確かに、フーリャンの心臓に突き立てたはずだった。だが、それは肉に食い込まずに、ぴたりとその表皮で止まっていた。
「これは……。武術気孔!?」
「ああ、アンタ等のほうだとそう呼ぶのよね。まぁ実態は同じでもプロセスは別物だけど」
「何者なの……? あなたは……」
「ああ、アンタ等のほうだとそう呼ぶのよね。まぁ実態は同じでもプロセスは別物だけど」
「何者なの……? あなたは……」
剣を離し、桃花は距離を取る。剣を臥して構え、相手の出方を待つ。
「思ったよりド派手ね。東洋系はこじんまりしたタイプが多いって印象だったけど」
「あなたは何なの!」
「あらら。自己紹介までしたじゃない。ま、いいか。じゃ説明してあげる。
あなた達の術。……まぁ色んな流派や呼び名はあるけどさ。それを導き出すには長い修業によって、それを使う為の回路を構築しなきゃいけない。
あなただって座禅や祈祷したりしたでしょ? つまりは修業よ。アンタ達はそれを妖術や陰陽術と呼んだ。
それは一見すると東洋独特の術に見えて、実はそうじゃない。たとえ結果やプロセスは違えど、その力のソースは同じなの。名前が違うだけ」
「何の事を……」
「アンタ達は長い修業で力を発動させる感覚を養う。儀式や呪札もそう。
じゃ、私達はどうか。どういうプロセスでその力を発動させるのか。フフ……。私達はね、言葉によってそれを導き出すの。意味のある言葉を並べ、その意味から発動させたい力を無意識でイメージする。それをさらに繋ぎ合わせた物を、私達は呪文と呼ぶ。それを使う体系を、魔法って呼ぶの」
「自分が魔法使いだって言うのね」
「そう。そしてその体系から外れた魔法、つまりは外の術を学び、自分の体系へ加えるのが私の目的」
「あなたは何なの!」
「あらら。自己紹介までしたじゃない。ま、いいか。じゃ説明してあげる。
あなた達の術。……まぁ色んな流派や呼び名はあるけどさ。それを導き出すには長い修業によって、それを使う為の回路を構築しなきゃいけない。
あなただって座禅や祈祷したりしたでしょ? つまりは修業よ。アンタ達はそれを妖術や陰陽術と呼んだ。
それは一見すると東洋独特の術に見えて、実はそうじゃない。たとえ結果やプロセスは違えど、その力のソースは同じなの。名前が違うだけ」
「何の事を……」
「アンタ達は長い修業で力を発動させる感覚を養う。儀式や呪札もそう。
じゃ、私達はどうか。どういうプロセスでその力を発動させるのか。フフ……。私達はね、言葉によってそれを導き出すの。意味のある言葉を並べ、その意味から発動させたい力を無意識でイメージする。それをさらに繋ぎ合わせた物を、私達は呪文と呼ぶ。それを使う体系を、魔法って呼ぶの」
「自分が魔法使いだって言うのね」
「そう。そしてその体系から外れた魔法、つまりは外の術を学び、自分の体系へ加えるのが私の目的」
フーリャンは両の手の平を近づける。手の間に、ぱちっとした音がすると、五センチ程度の黒い球体が現れた。
「アンタさっき武術気孔って言ったわね。それは武道の修業の果てに自分の肉体を強化する技術。中国や日本では『気』という概念を用いる。
私達はそれを魔力と呼ぶ。それによって肉体の強化を行い、強靭な防御力を手に入れる」
私達はそれを魔力と呼ぶ。それによって肉体の強化を行い、強靭な防御力を手に入れる」
現れた球体はじわじわと発光していく。それは一見すると静止しているように見えたが、よく見ると回転しているのが解った。
高速で、激しく回転している。
高速で、激しく回転している。
「魔法も陰陽術も巫術も、体系が違うだけで実際は同じ物。だとすれば、それを学んだ私でもそれを手に入れる事が出来るかもしれない。
学問よ。とっても長い、膨大な量の知識があふれる、巨大な理論体系。魔法はその一派に過ぎない」
学問よ。とっても長い、膨大な量の知識があふれる、巨大な理論体系。魔法はその一派に過ぎない」
球体は激しく発光する。その輝きは炎の中に居ても解る程に激しく。
「じゃ、せっかく大技見せてくれたんだから、お返ししてあげる。この球体はね、なんて事ないただの球体。色んな物質をぎゅーっと圧縮して、小さく小さく丸めた物。ただのとんでもなく高い質量のボール」
フーリャンが言う球体は、徐々に膨らんで行く。桃花は察知する。正体は不明だし、説明されても理解出来るとは思っていなかったが、危険だとは瞬時に理解した。
身を返し、瞬時に距離を取って行く。
身を返し、瞬時に距離を取って行く。
「球体の中では核融合が起きてる。高っい重力で押さえ付けられてるからまだ球体を保っているけど、核融合で質量がエネルギーとなれば、重力はどんどん減って行く。
そうなれば、外へ飛び出そうとするエネルギーと回転の遠心力を抑えるのが難しくなってくる……」
そうなれば、外へ飛び出そうとするエネルギーと回転の遠心力を抑えるのが難しくなってくる……」
桃花は走り、炎の海からも飛び出して、それでもまだ走った。
振り返れない。とにかく巨大な一撃が来る。本能がそう警報を出している。
「やがて外へと向かうエネルギーが重力を上回った時、球体はその姿を維持出来無くなるの。
その時、内包する全てのエネルギーや物質が、外側へと飛び出す。重力でぎゅーっと押さえられた物がね」
振り返れない。とにかく巨大な一撃が来る。本能がそう警報を出している。
「やがて外へと向かうエネルギーが重力を上回った時、球体はその姿を維持出来無くなるの。
その時、内包する全てのエネルギーや物質が、外側へと飛び出す。重力でぎゅーっと押さえられた物がね」
桃花はまだ走る。まだまだ。
そしてフーリャンは、ついにその一撃を放った。
そしてフーリャンは、ついにその一撃を放った。
「爆発原理から、私はこれを、マイクロ・スーパーノヴァって呼んでるわ」
直後、桃花が放った炎すら全て吹き飛ばす程の大爆発が起きる。
逃げる桃花の背後からは、分子にまで砕かれた物質が凄まじい速度で迫り、飲み込んで行く。
逃げる桃花の背後からは、分子にまで砕かれた物質が凄まじい速度で迫り、飲み込んで行く。
そして――
※ ※ ※
「姉さん! 起きて姉さん!?」
桃花に呼び掛ける声。それは聞き覚えのある者の声だった。自分を「姉さん」と呼ぶのは、ただ一人。
「彼方……?」
「……! よかった起きた!」
「ここは……」
「どっかの森の中。ずっと起きないから心配したよもう……」
「寝てた? 私が……?」
「そうだよ! こんな爆発に巻き込まれたんだし、生きてるだけで奇跡だよもう」
「爆発? ……そうだアイツ……!」
「アイツ?」
「そうよ! なんかこう……。ハットみたいなの被ってそれっぽいフードというかそんなの着て……」
「そんな奴居なかったけど……?」
「居なかった? 誰も何も見なかったの?」
「うん。姉さん捜すだけで精一杯で」
「……消えた?」
「姉さん誰と何があったの?」
「それは……」
「誰がこんな爆発を起こしたの?」
「……いや、誰でも無い」
「は?」
「もう誰も会う事は無いと思うから」
「何言ってるのさ?」
「何でもない。……何でも」
「……! よかった起きた!」
「ここは……」
「どっかの森の中。ずっと起きないから心配したよもう……」
「寝てた? 私が……?」
「そうだよ! こんな爆発に巻き込まれたんだし、生きてるだけで奇跡だよもう」
「爆発? ……そうだアイツ……!」
「アイツ?」
「そうよ! なんかこう……。ハットみたいなの被ってそれっぽいフードというかそんなの着て……」
「そんな奴居なかったけど……?」
「居なかった? 誰も何も見なかったの?」
「うん。姉さん捜すだけで精一杯で」
「……消えた?」
「姉さん誰と何があったの?」
「それは……」
「誰がこんな爆発を起こしたの?」
「……いや、誰でも無い」
「は?」
「もう誰も会う事は無いと思うから」
「何言ってるのさ?」
「何でもない。……何でも」