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無限桃花の愉快な冒険15

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ここは海沿いの創発の館(仮)。
「というわけでまぁ退院してもいいンじゃないかなぁ」
「あまりにも適当な判断ですね……」
「いやー、実際のところどこまでいけば完治かってわかりにくいからさ」
医務室にて二人の桃花が会話をしている。
片方はサムライポニーテール少女、無限桃花。長い間入院していたが今日を持って退院という運びになった。
もう片方はドクターポニーテール少女、医者桃花。眼鏡白衣の彼女は対象物の状態時間を戻すという能力を保持しており、
これを使って自らの刀で気に食わないものを破壊しては状態時間を戻すというのを繰り返してストレスを解消している。
最も彼女の刀は世に言う刀というよりもトンカチに近く、医者桃花自身は『ミョルニル』と呼んでたりする。
「私の能力じゃあ心は治せないからね。ちゃんと傷になってないとどこ治せばいいかわからないし」
「そういうのは医者自身のスキルが試されるだろう」
「私は精神科医じゃないんだよ。外科医なのー。専門はー」
「そういえばずっとこの姿なのによく医師免許なんて取れたな」
医者桃花は鼻を鳴らして、口を尖らせる。
「これでも生まれたのはかなり昔だからね。ちゃんとしたルートで入れたよ」
後ろを肩越しに指す。先には額縁がかかっているのが見える。その中にはちゃんとした医師免許的な何かが入っているのだが
桃花の視力では見ることが出来ない。
「まぁ苦労したことは認めるよ。だけどまぁ丁度能力に合う仕事に就けて……」
医者桃花が言葉を切る。桃花は不審に思い、口を開こうとするがすぐにその原因がわかる。
誰かが走ってくる足音。誰だかはわかる。医者桃花が腰のトンカチを手に取る。
医者桃花が飛びかかる。同時にドアが開く。しかしそこにいたのは予想外の人間だった。
「げぇ、ハルトシュラー!」
そこにいたのは見慣れた黒髪ポニーテールではなく銀髪のロング。魔王ハルトシュラー。
いや。桃花はすぐに思い直す。ハルトシュラーが来るはずがない。それに腰に下げているものは正しく。
医者桃花も瞬時に気付いたのだろう。でも、一瞬の迷いが隙を生んだ。
魔王の刀は抜かれ、一瞬の煌きを残し再び鞘に戻る。
医者桃花の左脇から右肩に一本の線が入り、赤に染まる。
「はっはー! そう何度もやられるか!」
しりもちをついた医者桃花を見下ろして、魔王、いや、おしゃべり桃花は言う。
先ほどまでの銀は黒く染まり、後ろで一つに結ばれ、体型も見る見るうちに大きくなる。
「私の能力はとっても地味だけどねぇ。こういうときは使えるんだよねぇ。
 ふっふーん。思い知ったか! たとえ何度治されようが痛いものは痛いんだよ!
 たまにはその痛みうおっ!」
深手を負っているはずの医者桃花が飛び跳ねるように起きるとその勢いのままトンカチを振るった。
左脇腹への攻撃をなんとか刀で防ぐ。が、おしゃべり桃花の本来の刀に対し、医者桃花のそれはあまりにも近接に特化しすぎていた。
少ない面積。その一点に注がれた力は想像を遙かに超える力を生み、そして。
「あっ」
おしゃべりの刀を折った。
医者桃花の口が裂けているかのように笑う。
「貧弱貧弱ゥ!」
刀を砕いたトンカチをそのまま振り切り、おしゃべりの右肘から先が飛ぶ。
「我がミョルニルは!」
返す刀、いや、トンカチで左肩が消し飛ぶ。
最早防御すら出来ない。だが、医者桃花は攻撃をやめない。
トンカチを右手に持ちかえると、一歩大きく踏み出した。
「砕けない!」
振りかざされた一撃はおしゃべり桃花の心臓に直撃した。

今日も良く晴れている。昨日は雨だったが雲は既に流れていってしまったようだ。
だが、予報によると明日も雨が降るらしい。三寒四温とはいつくるのだろうか。
風と沈黙が流れる。桃花もさすがに言葉が浮かばない。
医者桃花もおしゃべり桃花も何も言わず洗濯物を干している。
桃花はやれやれと肩を竦める。
どうやら暗雲は思ったよりか早くきたようだ。
どっとはらい。



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