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影武器姉妹 四天王編 第二話

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影武器姉妹 四天王編 第二話

投稿日時:2011/08/27(土) 16:18:56.87


「じゃあ、行ってくるね。」
「はーい。」
空が赤く染まる頃。
学校から帰ってきたばかりの桃花は、休む間も無くスーパーへ買い物に出かけた。
一方、一緒に帰ってきた彼方は、ソファの上に寝転がり漫画を読んでくつろいでいる。
この家の家事は、基本的に桃花が行い、気まぐれに彼方が手伝うという図式だ。
それでも桃花に不満は無く、それどころか疑問を抱いたことすらなかった。
とにかく、ここまでは日常の一場面。いつもと変わらない風景であった。

三十分ほどして、玄関のチャイムが訪問者の存在を告げる。
「姉さん……なら鳴らさないよね。宅配便かな?」
彼方は漫画のカバーを読んでいたページに挟み込み、速足で玄関に向かう。
そこに誰が待ち受けているかも知らずに。

ひんやりとしたスーパーの店内。買い物かごを提げた桃花がつぶやく。
「晩ごはんどうしよかなぁ。」
毎日毎日、献立を考えるのは大変だ。
「カレーでいいかなぁ?」
人参を選びながら、桃花はもうひとしきり考え直すことにした。

彼方が開けた扉の先には、二人の女の姿があった。
「ハァーイ、無限彼方ちゃん。一日ぶりね。」
親しげに話しかけるグラマラスな金髪女。
その横で柱のようにじっと突っ立っている銀髪女。
四天王の二人、悪世巣と婆盆だ。
驚くのもそこそこに、彼方は単刀直入に聞く。
「あなたたち、寄生なの?」
悪世巣が微笑む。
「ええ、そうよ。」
「寄生してるその人の体、返しなさい。」
その発言に悪世巣は目を丸くした。
少しして、彼女は高笑いを上げた。
突然の馬鹿にしたような行動に、彼方は「なによ」と言いたげににらみつける。
「ふふっ、気付かなかったの? アタシたちは人に寄生しているわけじゃない。
 アタシたちは実体を持った寄生なのよ。」
「へっ?」
今度は彼方が目を丸くする番だった。
「普通の寄生は実体を持たない。だから力のあるものにしか見えない。
 彼らはあやふやで曖昧なものよ。寄生するとき、ひとまとまりのものにしか寄生できない。
 そうしないと“自分”を保てないもの。でもアタシたちは違う。」
彼方はふと何者かの気配を感じ背後を振り返った。
玄関の置物の人形が、宙に浮かんでいる。
それは妖しい影をまとわりつかせ、みるみるうちに狐の姿をとった。
後ろから悪世巣の余裕ぶった声が言う。
「こんなふうに、ね。」

「むむーっ……。」
桃花は真剣な眼差しをガラスケースに向けていた。
桃花がいるのはもうスーパーではない。
スーパーでの買い物ならば既に済ませ、彼女の両脇には一杯に詰め込まれたレジ袋が抱えられている。
ここはそのスーパーの隣にある小さな洋菓子屋であった。
「よしっ! じゃあこの、つぶつぶピーチのバウムクーヘン下さい!」

彼方が攻撃をかわしているうちに、いつの間にやら影狐は三匹に増えていた。
畳みかけるような波状攻撃に、彼方は反撃する隙も与えられない。
もともと彼方の武器は接近戦には向いていないのだ。
「あ……きゃっ!」
そのうち、バックステップに失敗して、彼方は背中から倒れた。
ここぞとばかりに影狐が飛び掛かり、宙から襲い来る。
彼方は慌てて狙いもつけずに弓を引き絞り、矢を放つ。
しかし矢は影狐の肩をかすっただけであった。

「ん?」
帰り道、桃花は黒くて細長い何かが空に昇って行くのを見た。
「あの方角は!」
その意味を瞬時に理解した桃花は、レジ袋の中身がどうなるかも構わずに走り出した。

「婆盆。」
「お任せを。」
影狐に押さえられた彼方を前に、ここで初めて婆盆が動いた。
彼女は目の前で手を合わせ握り合うポーズを作ると、力強く言い放った。
「破っ!」
すると、彼方にのしかかっていた影狐が爆発した。
「ひゃうっ!」
衝撃が彼方にダメージを与える。
影に寄生されていた玄関の置物が、役目を終えたとばかりに地面に転がった。
「ふふ、影はいくらでも作れるわ。どこまで耐えられるかしらね。」
嗜虐的な台詞を吐きながらも、悪世巣はふと眉を寄せた。
「……この音、まさか!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
現れた人物は、影の刀をビニール袋ごと大きく一振り。
寄生たちはそれをひらりと避ける。
彼方の目に頼もしい姉の姿が映った。
「姉さん!」

桃花はスーパーの袋をその場に置き、改めて寄生と対峙する。
「はぁっ!」
一瞬のうちに桃花の刀は婆盆の正中線を捉える。
だが、何かがおかしい。まるで自分から斬られに来たかのような……。
そう桃花が気付いた瞬間、姉妹を囲っていた全ての寄生と影が、一斉に爆ぜた。

「ふふっ、慌てん坊さんなんだから。」
“新たな”悪世巣と婆盆が無限家の屋根から飛び降りてきた。
「彼方ちゃんには言ったわよねぇ、影なんていくらでも作れるって。
 真正面から敵に会いに来るなんて馬鹿みたいじゃない。
 じゃ、そろそろとどめを刺してあげるわよ。」
悪世巣が右腕を掲げ、婆盆は爆破のポーズを決める。
姉妹は覚悟を決めた。
しかし、その手が振り下ろされることは無かった。
「かはっ! こ、これは……!」
よく見ると、寄生たちの体に貫通創ができていた。
何者かに撃ち抜かれたのだろう。
傷はそのまま拡がってゆき、あれだけ姉妹を追い詰めた彼女らは、いともあっけなく霧散した。

二人は立ち上がり辺りを見回す。
すると、向かいの屋上にスーツを着た眼鏡の男の姿が見えた。
「姉さん姉さん!」
「ん?」
「イケメン!」
「そう……かもね。」

つづく


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