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満月の時。狼侵入

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満月の時。狼侵入


転送の暗闇から抜けると同時に感じたのは熱だった。
通路を見れば壁は燃えており、兵士たちが槍などを利用して近くの木を倒している。
だが火のせいでうまく木を切れないようだ。
獲物を長い剣へ変え、兵士たちが倒そうとしている木を切る、
「姉御!」
ソーニャに気づいた兵士が敬礼をする。だがそれに返している場合でもない。
「とりあえず木は私が切る! 狼の監視を頼む!」
指示を出しながら剣を振るう。決して簡単に切れるものではない。距離が少しあるため力は余計に必要だし
何よりも熱い。防衛のためとはいえ、目の前で燃え盛っているのはかなり邪魔になる。
この状況じゃ監視もまともに出来やしないのではなかろうか。
「来るぞ!」
同時に少し離れた場所に火の壁を抜けて狼が飛んできた。すかさず兵士が剣で切り捨てる。
一匹や二匹ならいい。だがこの決して広くない通路に何匹も来てしまえば混戦になるし
町に飛び降りられてしまえばその足を追跡するのも難しい。
大きな音を立てながら木が倒れていく。それに巻き込まれるように周辺の木が倒れ、視界が広がる。
これだけ切ればこの塔周りは狼どももそう簡単には侵入出来ないはずだ。
「狼どもはまだいるのか?」
「はっ! 目視出来る限りでもまだこの塔に攻撃を繰り返す狼が多数います!
 連絡によれば状況は変わらず正面、四時、七時以外は出現していないようです!」
七時のほうもロゼッタが木を切っているはずだしほかのところから侵入したほうが確率が高いはずだ。
この三箇所に兵力を割いて他に回す余裕がないのかそれともこの三箇所自体が囮か……。
しかし正面から上位が二匹来ている以上はあそこを囮や陽動に使うというのも考えづらい。
ということは正面が本命で他の二箇所が囮か?
「他の二箇所の戦況はどうなっているんだ」
「七時はこちらと同じく木の切り倒しが終わったものの狼は攻撃してきているようです。
 正面は狼が仲間を踏み台に侵入してくるのを阻止しているとのことでまだ上位は動いていないようです」
「動いていない? まだ来ていないだけなのか来る気がないのか……」
再び狼の遠吠えが空に響く。それに呼応するかのように何個もの遠吠えが続く。
兵士たちが緊張した面持ちで森を警戒する。
監視していた兵士に狼が飛んできた。それを兵士が盾で受け止める。
さらに狼が何匹も飛んでくる。いや、この飛び方は狼が木に登って飛んでるんじゃない。
誰かが、投げている。
ビゼンが言っていた。なぜ木を生やしているのかを。
かつてこの森に生息した狼を遥かに超える脅威。
「報告! 二本足の狼が一匹、狼を投げています!」
狼かよ。緊張が一気に解ける。
とは言え上位の狼だ。油断している場合でもない。
飛んでくる狼を空中で迎撃する。投げているのは一匹だ。
さほど間隔が早いわけでもない。
死体とは言え狼を町の中へ入れないように切り落とす。通路に落ちたのは壁の外へと蹴り落とす。
正面門の方角から地鳴りが聞えた。あっちの戦闘は苛烈のようだ。
「姉御!」
その言葉が聞えるよりも早く獲物を盾に変える。
目の端で捕らえた遠くの木が勝手に倒れる光景。
風を切る音共に飛んできたそれに弾き飛ばされて、壁の内側へと体が飛ぶ。
この町に来てから空を飛ぶのは二度目だ。だが今度は自力で戻っている場合ではない。
視界が空を向いたとき。雑魚よりも遥かに大きな狼がそこで笑っていた。
盾を構えたと同時に地面と水平に飛んでいた体が直角方向へと変わる。
体中が軋む衝撃。肺の空気が追い出され、視界が歪む。
怯んでいる場合ではない。素早く転がり、体勢を立て直す。
雪があったおかげで多少は衝撃が和らぎ、すぐに動けた。
直後。ソーニャがいた場所に狼が落ちてくる。
素早く動くための細身の体。しかし力がないというわけではなく腕はまるで筋肉の塊かのように盛り上がっている。
引き裂くだめの爪。獲物を追跡する鼻。僅かな音も逃さぬ耳。闇夜も見通す目。
あらゆる点で人よりも戦闘に特化した生物だ。
そしてその生物は既に町への侵入を果たしてしまった。



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