創作発表板@wiki

無限桃花の愉快な冒険19

最終更新:

eroticman

- view
だれでも歓迎! 編集
ここは普通の創発の館。
「というわけなのよ」
「はぁ……」
サムライポニーテール少女、無限桃花が頭を掻く。
相変わらず陽が差さない図書館内部。ランプに照らされた机の上の資料たち。
これらは眼の前で今まで熱弁を振るっていた眼鏡桃花が用意したものだ。
「訪問する無限桃花の減少ねぇ……。重大なことなのか?」
「重大かどうかはわからないわ。でも今までコンスタントに来ていた無限桃花が
 ここまで減少するということはなにかしらの異変が起きていると考えるのが普通じゃないかしら」
この館には日夜問わず無限桃花が訪問してきているということは桃花も知っていた。
確かに最近新入りの桃花を見ないような気がする。てっきり人数オーバーでほかにでも回されて
いるのかと思っていた。
「しかし考えすぎじゃないかな。長い目で見ればこういう期間があってもおかしくないよ」
「まぁ確かにそうね。ただ単に偶然で済ませちゃえばいい話かもしれないけど」
「そもそもさ、この館に全ての桃花が到達するわけでもないんでしょ」
前に眼鏡桃花に教わったことがある。無限桃花の中には自分がそういった存在であることすら
知らないやつらもいると。それはとても幸せなことかもしれない。
ここでふと疑問が浮かんだ。
「そもそもなんでこの館に集まるんだ?」
「それは……」
眼鏡桃花が口を開けたまま固まる。視線を少し動かした後、口を閉じた。
「……そういえばなんで私たちはこの館に集まったのかしら」
桃花はこの館など来るまで知らなかった。自分の能力に気付き始め、自ら自分の能力を使い始めた
ころにあの不設定のカフェで魔王の弟子と出会い、ここに連れてこられたのだ。
だがあの時。魔王に会うために自ら連れてかれることを望んだではないか。
「全ての桃花は引かれあうのかしら」
「そんな磁石じゃないんだから……。それにこの館を全員が全員目指しているわけじゃないんでしょ」
「そこがわからないところね。桃花が集まる以上は何かあるに違いないのにそれが全ての桃花に適用
 されているわけではない。集まる桃花と集まらない桃花の差……」
眼鏡桃花は本格的に考え始めてしまったようだ。こうなれば何を言っても聞こえないだろう。
仕方ないので机に散らばる資料を整理しながら内容を読む。
訪問者の増減数。訪問者の特徴。最近の気候。政治。戦争。とりあえず少しでも関係あるかもしれない
ものをかき集めたようだ。その中の一枚が桃花の目についた。
寄生に関するものだ。
先日襲来した、春の妖精寄生。あれはこの資料を見る限り下っ端らしい。
上位寄生種たちはほとんどが退治されている。しかも一人の無限桃花によって。
これだけの英雄が訪問していれば自分の耳にも入る。つまりこの桃花も集わない桃花。
他にも寄生について細々と書かれているが今は必要ないので置いておく。
「……仕方ないわね」
眼鏡桃花が顔を上げて、立ち上がる。
「どこ行くんだ?」
出入り口に向かって歩き始めた眼鏡桃花に並ぶ。
眼鏡桃花は前を見据えたまま答えた。
「魔王に会いにいくのよ」
どっとはらい。



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー