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無限桃花の愉快な冒険22

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eroticman

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ここは疑惑の創発の館。
春だというのに屋上に出ると少し肌寒かった。
もう一度空を見上げるが、やはり曇り空しか見えない。
「待っていたよ」
こんな天気でもいつも通り一人で空を眺めていた大人桃花がこちらに気付く。
「何かあったんですか?」
「君達が来るということは何かあったからだろ」
そういうと持っていた望遠鏡を差し出した。眼鏡桃花がそれを受け取る。
大人桃花が海のほうを指差し、眼鏡桃花が望遠鏡でそちらを見る。
「私もさっき気づいたもんでね。いつからあるのかなんとも」
眼鏡桃花が慌てた様子で望遠鏡から目を外し、右手を前に出す。
「光よ! 矢となり影を払い、全てを貫け!」
音もなく眼鏡桃花の右手から光の矢が海に向かって放たれる。
しかし海に出てすぐ、空中に光の輪を残して消えていった。
眼鏡桃花が上げていた右手を下ろす。表情があまりにも暗い。
「他世界に渡る能力、今使える?」
大人桃花が煙を吹きながら、桃花に言う。
桃花は頷いて、目を閉じた。そういえば能力を使うのはいつ振りだろうか。
何も考えないように。自分という存在をこの世界から剥がしていく。
唐突に眼の前に壁が現れ、目を開ける。先ほどと何も変わっていない。
当然、壁など眼の前にはない。
「渡ろうとしたら壁みたいのが……」
桃花は感じたままに話す。大人桃花は再び煙草を銜える。
眼鏡桃花の眼には明らかに失望の色が混じっていた。
「魔法の障壁が張り巡らされているわ。範囲はこの館周辺ね」
「魔法の障壁? なぜそんなものを」
「館へ入れないように。と言うよりも」
眼鏡桃花がゆっくりと顔を上げて、桃花を見る。
「館から誰も出さないためにね。隔離されたのよ。この館は」
「そんな……何のために」
「理由はわからないがこれだけの魔法が使えるのはハルトシュラーとこの桃花くらいだな」
「ちょうど訊ねたいことがあって行ったらドアは壁だし、中には誰もいないし」
「さっきの轟音は君の魔法か……」
その時、間の抜けた放送を知らせる音が鳴った。
「この館の住人全員に通達。至急サロンに集まれ」
若干の空白の後にされた放送。その声の主とは一度しか会ってない。
だが絶対に聞き違えることはないだろうその声。
「ハルトシュラー……」

つづく




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