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ウパ太郎放浪記

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ウパ太郎放浪記


 ウパ太郎はキッチンに備え付けられた生簀から、一様に似た背格好の集団と、ハルトシ
ュラーと呼ばれる凛然たる立ち振る舞いの子供を観察して居た。
 超空間発生装置/モバイルはこの“軸”に存在していないものの、ウパ太郎が悪意への
観察を実行した際に発生した重力震の動揺が軸と軸の間隙を曖昧に繋ぐワームホールを形
成しており、それによってこの館に於いてモバイルは存在しないにも関わらず機能をしっ
かりと果たしウパ太郎に力を与えて居るのだった。
 重力震は軸と軸を繋ぐ荒技によって大きなうねりをうみ、ちょっとやそっとでは収まら
ない状況になっている。ウパ太郎が帰るとき、うねりによる歪みをより高次元の構造に分
散させ、画像処理で言うところの誤差拡散の要領で四次元から八次元程度の次元に別けて
埋め込み、均すことで鎮める予定だ。
 この重力震を均す作業が曲者であり、あまりに遠い軸同士を繋げると膨大な処理負荷が
モバイルの機能を遅延させ、転送の目的物であるウパ太郎が誤差に紛れて消失したり、移
動先の軸に負荷が掛り過ぎてデフォルトの宇宙になってしまう危険性がある。ゆえに、超
空間発生装置/モバイルによる移動には息継ぎが必要である。
 この軸に止どまって居るのも実は息継ぎのためであり、モバイルの酸欠状態/メモリ不
足が解消したら、すぐに発つつもりではあったのだ。
 だが。

 血糊が中空に弧を描く。
 一様に似た者達/無限桃花の一人が、血に塗れて床に突っ伏す。口角に泡立つ血の飛沫
がやけに鮮烈で、ウパ太郎は目を逸らせなかった。だが、次いで響き渡る少女の宣告に耳
朶を打たれ、その姿を観測する。

 ──まるで神格生物だ。

 ウパ太郎はハルトシュラーと呼ばれる少女に、彼に軸を移動し空間を超越する力を与え
た存在との類似を観る。
 彼女/ハルトシュラーは、彼女ら/桃花達に何をさせたいのか。
 ウパ太郎は、人間の言語を学ぶために研究所で見せてもらった、洋画のアーカイブに存
在した映画をじっと思い出していた。平行世界の自分を倒し、宇宙最強の自分になろうと
する物語。
 果たして、ハルトシュラーの望むものは、一体なんなのか。
 ウパ太郎は、静かな生簀の底に隠れた。


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