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無限桃花の愉快な冒険29

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雲は既に遠くに流されている。上空は風が強いのかもしれない。
屋上に残されたのは2人の無限桃花と1つの幼い子どもの死体。
眠るように眼を瞑り死んでいるそれを、2人が見下ろしている。
「ハルトシュラーを殺しても変わらない……?」
桃花が呟く。そんなはずがない。あの魔王が死ねば何かしらの異変が起きるはずなのだ。
だけど実際には何も起きていない。世界は相変わらずなのだ。
海はいつもの調子で寄せては引いてを繰り返している。天にある太陽は雲の壁を突き抜けて、光を注いでいる。
何かの鳴き声なのか。どこからか変わった音を風が運んできてくれる。
もう1人の血まみれの服を着た桃花の形が変わっていく。
「つまりあの騎士を倒さなきゃ話は進まないってことかよ」
変身を解いたおしゃべり桃花が毒づく。
「ここまで必死に来たのに……」
「まぁそう言うな。騎士はあいつらが今頃倒したところさ」
「それは残念だったな」
2人が振り向く。そこには本物の騎士が立っていた。
鎧は最初見たときよりも汚れている。それはどれだけ戦闘が激しかったかを物語っていた。
「他のやつらは片付けた。いや、ここは散らかしたというべきだな」
騎士が剣を振るいながら、近づいてくる。付着していた血が払われて、その白さが増していく。
「後はお前達だけだ。だが、流石に私も少し疲れた。遠くから失礼させてもらう」
剣先をこちらに向ける。桃花たちは油断をしてしまった。何かしら来るであろう攻撃を
見てから避けようとしたのだ。
どこかで聞いた銃声によく似た音がした。隣に立っていたおしゃべり桃花が地に膝を着く。
「え……」
剣先がこちらを向いている。いや、既にそれは剣先ではなく銃そのものに変化していた。
血がおしゃべり桃花と地面を濡らしていく。ハルトシュラーと同じように。
死んでしまったハルトシュラーと同じようにおしゃべり桃花が。
気付いたら走り出していた。叫びながら真っ直ぐに騎士の下へと。
銃声が鳴るたびに前に構えた刀を少しずらし、玉を弾く。
騎士の手に持つ銃声が形を変え始める。だがそれが完成するよりも早く。
早く奴の身体をこの刀で。
2人がすれ違う。そして勝負はただそれだけで終った。



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