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無限桃花の愉快な冒険28

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eroticman

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屋上を踏む足音がした。
「土よ! 盾となれ!」
振り向きざまに詠唱する。桃花の拳は寸前のところで壁に阻まれた。
ハルトシュラーはすぐに異変に気付く。先ほどとは違い、服が血まみれになっている。
「刀はどうした。なぜ持っていない」
「そりゃあ……」
桃花が後ろに飛ぶ。ハルトシュラーも追いかけようとしたが背中に衝撃が走って、止まる。
眼の前に血塗られた刀があった。根元は自分の体から出ている。
「私の勝ちだ。ハルトシュラー」
背後から声が聞こえた。それはまさしく眼の前の桃花と同じ声。
刀が抜かれて、勢いで後ろに倒れる。自分を見下ろす全く同じ顔が2つ。
言葉を喋ろうとするが先に血が口から出てくる。背中が濡れていく。
「見事……だが……残念だったな」
顔を血で濡らしながら無理矢理喋る。桃花が怪訝な顔をする。
「どういうこと?」
「私を殺しても……絶望はお前達の前から消えることはない……」
急速に光が失われていく。桃花たちの声が遠くなっていく。
痛みはもうない。舌は血の味を感じないし、海の匂いも消えていった。
全てが失われていく世界でただぼんやりと意識が浮いている。
一刻一刻と滅びていく身体を意識が他人事のように見ている。
やがて肉体は活動を停止した。何も感じることのない意識だけが残る。
あてどない闇と静寂が意識が抱擁している。その時、ハルトシュラーは悟った。
これが死か、と。



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