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白狐と青年 第18話「親子再会」

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匿名ユーザー

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親子再会



            ●


 和泉に戻ると出迎えには門谷義史隊長その人が出てきた。
 彼は匠や彰彦の服についた血痕を見て気遣わしげに声をかけてきた。
「異形でも出たか? 血が付いてるぞ」
「何匹かでましたけど見当たる限りは全部倒しました。和泉まで異形がやって来ることはとりあえず無いんじゃないかと思います」
 答えた匠に「そういうのは俺達の仕事なんだがな」と門谷はため息交じりに呟いて、
「すまんな」
「いや、まあそこまでつらい相手でもなかったから」
「それにしたってあれにゃ驚いたけどな」
 彰彦が苦笑気味に言う。
 確かに……まさかあそこまで頭がまわるとは思わなかったな。
 森の異形達の行動を振り返る。あの作戦は、その指示を下したのはどこの誰で目的は一体何なのだろうか。
そう考え込んでいると門谷が書類を手に摘まんでヒラヒラと振りながら言ってきた。
「何にせよ報告書を書くからいろいろ話してもらうぞ?」
「はいはい」
 めんどうだなー。
 そう匠が思っていると、呼応したかのように後ろの方で我関せずと畑の方を眺めていたキッコが口を開いた。
「構わんが、それをここでやる必要があるのかの?」
「ん? どういうこった?」
 門谷にうむ、と頷いてキッコは傲然と告げた。
「我は腹が減った」
 ああ、そういやさっき異形食おうとしてたな。
 思い出していると門谷がこめかみを揉みほぐし始めた。
「あのな……お前は異形で、いくらここが異形に甘いと言ってもいきなり押しかけて事情聴取何ぞ始めたら向こうさんにかかる迷惑がだな――いや」
「いや?」
 クズハが首を傾げる。門谷は何度か一人で頷きを繰り返し、
「ああ、いや、うん、問題無い。迷惑をかけてもまったく良心が痛まない店に一つ心当たりがあった」



            ●


 匠達が連れてこられたのは和泉の少し端の方、子供達が最近食べに行っている事が多いという甘味処、〝鬼が島〟だった。
 そういえば初めて来るな……。
 そう思いながら見る〝鬼が島〟は道場の子供達に聞いた通り、名前の割には普通の構えの店だった。
外でも食べ物が食べることが出来るように長椅子が出ており、入り口には暖簾がかかっている。
子供達によるとこの店の店長が桃太郎と言う名で、あやかっているのかどのメニューにも吉備団子が付いて来るのが特徴らしい。
 で、
「よう桃太郎、カレーセット――吉備団子抜きで」
「カレー追加でもう一つ」
「なんか腹にたまるもんくれ!」
「じゃあ私は……吉備団子を」
「肉はないのかの? 肉」
「そこの四人! ここ一応甘味処だからな! それも吉備団子メイン! 分かってる?!」
 門谷隊長を先頭にそれぞれ注文したら呆れた調子で店の人らしい着流しの男から文句が返って来た。
 そう言われても良平が大絶賛してたのがここのカレーだからなぁ。
 正直吉備団子とカレーは一緒に食べるもんじゃないだろうと匠は思いながらなにやら店側と言い合っている門谷に常連なんだろうかと思いつつ、
「店長が普段迷惑をかけるからそんな注文を受けるんですよ」
 店の奥の方から背の高い従業員らしき男が現れた。
 え? と着流しの店長、桃太郎が男を振り返り、
「迷惑かけたこと……? あったっけ?」
 この店長も間違いなくいい性格してるな。
 そう匠が思っていると門谷が手を挙げて背の高い男を見た。
「真達羅、Bセット一つ、吉備団子無しでコイツに」
 ちなみにBセットはぶぶ漬けに吉備団子が付属したものだ。
京都の風習ではぶぶ漬けは「てめえコレ食ってさっさと帰れ」というのをオブラートに包んだ感じの意味をもつらしい。
 カレーが出るCセット、ぶぶ漬けのBセット。それに餡蜜のAセット。
いずれもこの甘味処の裏メニューらしいがよく広まっている所を見る限り裏である意味があるのかは謎だ。


「おいおいそんなツンデレ反応されたって俺は落とせな」
「はいはい、じゃあ用意してきましょうねー」
「あ、おいこら真達羅! 貴様そこのおにゃの子がかわいいからってフグッ――」
 何か鈍い、打撃音のような音が聞こえて、同時に匠は子供達から聞いた事前情報をもう一つ思い出した。
 食い物はともかく店員はおかしいと口々に言ってたっけな……。
 程なく運ばれてきた食事を食べながら門谷が対面に座る形になった他四人へと森で戦った異形達の事を聴取する。
妙な統率性について話が及んだ時、「最近多いな、またあの狐か?」とぼやいたがキッコは気にしていないようだ。
 彼女は事情聴取ガン無視しして出されたカレーを口に運ぶと、
「おお、思ったより美味いのう」
 カレーの味がお気に召したようで食が進んでいる。
「吉備団子の代わりに福神漬とかあると尚よしだな」
「彰彦、お前福神漬派か? 俺はラッキョウ派なんだが」
「……お前ら少しは俺の書類業務に協力する姿勢を見せたらどうだ?」
 門谷が不満げに言うがキッコも彰彦もとり合う気がないらしい。仕方なく匠が事情聴取に戻って門谷の相手をしているとクズハが給仕をしに来た真達羅を窺い見た。
「……あの?」
「あ、はい。何か?」
「いえ……ずっと私と、それにキッコさんを気にしてらしたようなので」
 その言葉に真達羅はああ、と呟き何事か応答をしようとして、
「ああ、コイツはロリコンだからな」
 裏から飛んできた桃太郎の言葉に真達羅へと匠は目を向けた。一方言葉を止められた真達羅は厨房へと振り向き、
「ちょっと黙っててください店長。あ、ちょっとそこの方、あまり怖い顔をしないでください」
 なんやかやと言い合っている店長と従業員を横目にクズハは向かいの席に座って書類になにやら書きこんでいる門谷を見た。
「隊長さん、この方達は」
「ああ、大丈夫だ。何かあればすぐに檻ん中にぶち込む準備はできてる」
「いえ、そうではなくて……」
 チラチラと厨房の方を見ては口ごもるクズハの皿の上にある団子に目を向けながらキッコが言った。
「あれは異形ではないのかと、そうクズハは言いたいのだろうて」
「異形?」
「あの店員の兄ちゃんたちがか?」
 へぇ、と彰彦が感嘆する。匠も人間のように見える彼等に浅い驚きを抱きながら門谷へと訊ねるような視線を向けた。


 もしこの事を門谷隊長が知らなかったらそれはそれで問題だけど……。
 視線の先の門谷は書類に向かって「あーもうこれでいいや」と独り言を呟いて顔を上げ、
「奴らが異形なのは番兵側も承知済みだ」
「そうなのか?」
 厨房の方を見ると真達羅が会釈を返してきた。肯定ということだろう。
 道場の子供達か門谷さんからクズハの事を聞いていて気になってたって所か?
 随分人そのものに見えることから本人達からの申し出があったのだろうと匠が思っていると、
「まあ臭いが人のそれと違うしの。匠、お前も≪魔素≫を注意深く探ってみるといい、人のそれと多少違いが見てとれるはずだの」
 キッコが空になった自分の皿にスプーンを放りこんだ。「それはそうと」と厨房を見やり、
「そこの、あまり森で暴れるな? 眷ぞ――知り合いにまで種を播くのなら」
 茶を啜って自然な動きでクズハの団子を手にとり、
「最近我も雑食でな、果実もその根ごと喰らうぞ?」
 笑みで言った。
 真達羅の奥の方から桃太郎の声が返って来る。
「ああ、分かってる」
「ほうかほうか」
「なんだ?」
 桃太郎の返答に上機嫌で人の団子をぱくついてるキッコに匠が疑問の顔を向けるとキッコは、
「まあ、大したことではないの」
 小気味よく笑って匠の皿の団子にも手を伸ばしてきた。
 はぐらかされた……か?
 方々に迷惑をかけてないだろうなと団子を奪い返しながら不安に思う。と、「邪魔するぞ」という男の声が店内に響いた。
「あ」
 その声は聞き覚えのある声だ。そしてその声の正体に気付いた彰彦が「げ」と心底嫌そうな声を上げて席の奥の方へと身を伏せて隠れる。
 入り口から入ってきた男は今井信昭、道場師範にして今井彰彦の父親だった。

 彼は店に足を踏み入れると匠と門谷の姿を確認して大きく手を振って、
「おう匠、門屋さんもここに居たか。彰彦らしき人間を見たって子供らが言ってたがお前達見なか――」
 歩み寄ってきたところで動きがピタリと止まった。身を伏せている彰彦の姿を認識したらしい。
 匠は信昭の目が厳しくなり、こめかみ辺りに青スジが浮かぶ。
 うわぁ……。
 そんな感想を心中に抱きながら匠はクズハの手を引いて粛々として席から離れた。彰彦が察して何らかの反応を示そうと口を開き書けた刹那、
「彰彦てめえ……っ」
 拳骨が彰彦にぶち当たった。
「ロクな連絡も無しにこの数年なにしてやがったぁ!」
 肉を打つ音と共に彰彦の肺から空気が押し出されるような悲鳴が聞こえる。
 続いて信昭の逆の手が、こちらも拳の形で振り下ろされた。
 それをギリギリのところで避けた彰彦はテーブルの下を転がって門谷の横に立ち、
「っ痛~、てっめえ連絡はしてただろうがクソ親父!」
 起き上って抗議をしようとしたその顎を先程外れた方の拳が捉えた。
 信昭は足が地を離れて空に打ち出される彰彦に向かって走り込み、
「一方的な知らせを連絡たあ言わねえんだよドラ息子がぁ!」
 華麗な飛び蹴りが腹に決まって彰彦が床に激突した。そこから信昭は寝技に移行して息子を締めあげていく。
「匠さん、あの、止めなくていいんでしょうか?」
 クズハが袖を引いて訊ねてくる。
 匠は他の人間を置いてきぼりにして展開されているその光景を見て、
「う~ん……」
 ギブとかタップとか聞こえてくる気がするけど……まあ、
「自業自得だろ」
 吉備団子を食いながら答えた。横ではキッコがいつの間にか彰彦の分の吉備団子を食いながら楽しそうに「ホレ彰彦、抜けだしてみせい」とのたまっていた。
 しばらく彰彦は父親との感動の再開を拳で存分に味わっていた。




            ●


 ひと通り彰彦を折檻し終えた信昭はいろいろ文句を呟きつつ店の払いを迷惑料と言い置いて多めに払って店を出て行った。
 去り際に「晩飯の時分には帰ってこい」と言っていた辺り、彰彦が帰って来て結構嬉しいんじゃないかと匠は思いながら〝鬼が島〟から退散した。
「あたたた、――くっそあの野郎」
「だ、大丈夫……ですか?」
「死ぬ……」
 関節を鳴らしながら彰彦が疲れた声を出す。
「随分と一方的に殴られてたな」
 匠が苦笑で言うと彰彦は殴られた跡の残る顔を向け、
「そりゃいくらクソ親父相手とはいえ銃突きつけるわけにもいかねえだろ。そもそもアレに銃が効くかどうか怪しいしな。年食ってもやたらと元気で困る」
「拳で立ち向かえよ」
「んー? それこそ現在の道場主様に敵うかよ」
 そう言って自嘲気味に笑う彰彦の肩を門谷が叩く。
「ははは、連絡もろくにとってないんじゃ殴られても仕方ねえな、彰彦」
「わぁーってるよ」
 嫌そうな口調で答える彰彦を笑って門谷は流した。
 門谷は報告書を上に回すなどの仕事があるとのことで兵舎の方へと戻っていった。
それを見送ってさて、と匠は来訪者二人へと問いかけた。
「それで彰彦、それにキッコも。これからどうするんだ? 研究区に戻るのか?」
 問いかけに二人は顔を見合わせ、少しの間を置いて、しかしはっきりとした答えが返された。
「いや、しばらく和泉に留まろうと思うておる」
「そうなんですか?」
 クズハにキッコが腕組みしつつ頷いた。
「んむ、ここは居心地が良いからの。――と、いうわけで道場だったかの? クズハの所に泊まらせてもらうぞ」
「え?」とクズハが匠を伺い見た。
「いきなりで大丈夫でしょうか?」
 匠もクズハも和泉では師範の道場の空き部屋や離れを使わせてもらっている身分だ。
あまり無茶な事は言い出しづらいということはある。しかし、
 どこか別な場所に泊まられて変な騒ぎを起こされても困るしな……。
 それに師範たちは悪い顔はしないだろう。その程度には人柄を把握している。だから、と頷くと、
「たぶん、言えば分かってくれるだろ」
「決まりだの」
 キッコはそう言ってクズハに部屋の様子等を訊き始めた。


 親子か姉妹のような二人を見ながら匠は彰彦に、努めてなんでもない事のように訊いてみる。
「で、お前はどうする?」
「あー、どうしたもんかな……ここの友人共もほとんどは平賀のじいさんの研究区か墓の下だしなぁ」
 そう言って先程門谷が去って行った方、兵舎の方を見て、
「兵舎にでも泊まらせてもらおうか。空き室くらいあんだろ」
「んー、正式な番兵以外があそこに寝泊まりするのはどうなんだろうな。……俺が借りてる離れならどうだ?」
「ん? 離れか?」
「居心地はいいぞ。数年住んだ俺が言うんだから間違いない」
 あまり拒絶全開なのもよくないだろう。そう思って言うと、彰彦は割と好意的な反応を示した。 
「そいつはいいな」
「じゃ、決定ってことで――と、そうだ」
 言いながら、声をひそめる。
「ん?」
 怪訝な顔を向けてきた彰彦に探るように言葉を投げた。
「お前、どこか身体壊したのか?」
 彰彦は呆れたような変な顔で「はぁ?」と応答した。そのままの顔で、
「なんのこっちゃ?」
「ああ……森での戦闘もそうだけどさ、お前なんで後衛に回ってたんだ?」
「そりゃ前衛担当の化け物が二人もいたからな。別にどっこも壊しちゃいねえよ?」
 この通りなにも壊れちゃいないと地面を飛びはね、
「それにほら、森であのムカつく異形に噛まれた傷すら今は無いぜ」
 そう言ってずいと二の腕を見せつけてきた。
 その鍛えられて引きしまった筋肉が鎧っている腕には確かに傷など残っていない。
 それを見てとって匠は頷いた。
「そうか……」
 彰彦はあーあー、と両の腕を浅く広げて掌を肩の横で上向けながら肩をすくめて、
「お前はそんなとこばっか気にすんだな。なんだ? 実は野郎もイケるとか言うんじゃないだろうな、引くぞ?」
 やれやれだぜ、と首を振ると、
「もっと見とくべき事あると思うぜ?」
 そう言って前方、クズハとキッコを見た。
 またあんなことにならないようにってか?
 匠は視線の先を追ってそう思い、
 そんなことは、
「分かってるさ」
 答えた。
「そうかねぇ」
 彰彦が笑み混じりで言うのを聞いて、
 うわなんだろコイツさっきから……殴りてえ。と匠は割と本気で思った。




            ●


 信昭と芳恵には彰彦は離れで野郎同士合宿気分を味わうと言う事で話を通した。
 敷地に入れるなとか言われない辺り、やっぱり拒絶する気は無いんだよな。
 黙認。と状況をそう評して匠は離れまで彰彦の分の寝具を、
クズハは本宅の方に借りている部屋にキッコの分の寝具をそれぞれ探していた。
「彰彦さんはなんでここに戻ってきたくないんでしょうか?」
「さて、なんでだろうな」
 分からない。ただ理由と繋がっていそうな違和感を感じた事はあった。
 ついさっき森で噛まれた腕になんの傷も無いのは治癒系の術を使っていたのだろうけど
……一定の力しか出せない小口径の銃をメインに使うっていうのはあいつのスタイルに合ってないな。
 以前の彰彦は巨人種相手にも素手でやれたはずだ。ならばどこかを壊したのかと思ったのだが、
 本人否定してるしなぁ……。
「本人が言ってくれない事にはどうにもな」
 ため息交じりに言うとクズハもぽつりと答える。
「そうですか……」
「気になるか?」
「はい……ご迷惑をおかけしましたし、もし彰彦さんがここに帰って来る事を心のどこかで望んでいらっしゃるのならなにか力になれないかな、と」
「そいつは俺も気になるな」
 部屋の入り口から声が聞こえた。そこに居たのは、
「師範」
「師範さん」
「クズハちゃん悪いな、あの馬鹿のこと思い煩わせて」
 クズハが持ったキッコの分の寝具を受け持ちながら信昭は苦笑する。
「いえ……あ、ありがとうございます」
「いいってことよ」と答えて寝具を肩にまとめて乗せて部屋の出入り口へと歩いて行く。その途中、
「なあ、匠」
「はい」
「あの馬鹿はどうしてる?」
「文句言いながら離れに落ち着いてます」
「そうか、ならいい」
 背を向けたまま発された言葉はどこか嬉しげに聞こえた。


            ●


 道場の外、門柱に背を預けながらキッコはテイクアウトした吉備団子を口に運んでいた。
「異形がいるとか、随分と森好き勝手にされてんじゃね?」
 逆の門柱に背を預けた彰彦が空を見たまま言葉を発した。
「ただ通り過ぎる者にまで手は出さんのでな、まあアレは礼儀がなっとらんが……彰彦よ、あの異形をどう思った?」
 質問には考えるような間が挟まり、
「ああまでなっちまっちゃあな……でも、ああ、同じ感じがしたな……」
「そうか」
 では、と言って串を木に投擲し、
「確定かの。味もそのような感じであった」
「また……特殊な確認の仕方をしてんのな」
 苦笑で言って、
「キッコさん。あいつら、何が目的だと思う?」
「信太の森に居るという事は、我を仕留めそこなった事に気付いて来たか……いや、それにしては和泉に来るのはおかしいか」
 考え、「憶測以上の事は分からんのう」と息を吐き、
「いずれにせよ、ようやっと尻尾を掴んだのだ……本体まで食いちぎってくれるわ」
「尻尾切り離されなきゃいいけどな」
「ふむ?」
 キッコは彰彦を見て不審げに首をかしげてみせた。
「えらく食いつくではないか?」
「あー、ま、な」
 応じて彰彦は腕を掲げて示して見せた。参った、という眉尻を下げた表情が闇の中キッコの瞳に映り、
「匠の野郎変な所ばっか鋭くてな」
「クッカカ、いつまで隠しておくつもりなのかの」
「うるせえ、俺にもいろいろと考える事があんだよ」
 答える間に匠とクズハの呼ぶ声が聞こえた。寝床の準備が出来たようだ。
「行くかの」
「あいよ」
 二人は門を潜った。
 夜はひとまず問題を覆い隠し、穏やかに更けていった。




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