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「from 506(天体観測)」
※2-037からの続き
55 :from 506(天体観測):2010/05/17(月) 22:08:26 ID:q87WVGER
世はにわかに天体観測ブームだ。こないだの皆既日食の影響だろう。
昨日もなつきが言ってたっけ。
「宿題で、日食の仕組みを調べるのと、星座の観測をしなきゃなんないの」
一昨日から、なつきはあたしの家に泊まりに来ている。しかも学校の宿題持参で。
「ふーん。まぁ百科事典を丸写しすればいいから楽勝でしょー」
「ダメだよ! 自分で見てみたいの」
「ダメだよ! 自分で見てみたいの」
なつきは変なところで真面目だ。
「えぇ? 庭からじゃあんまり見えないよー?」
「だったら見えるところまで行こうよ。奈穂ちゃん、一緒に行こうよ」
「あたしも行くのー?」
思い浮かんだのは近くの山だった。ここからだと自転車で30分はかかる。
子供のころ行ったきりで、最近は存在すら忘れていた。
郊外の街なので、ちょっと市街地を外れれば緑はまだたくさんある。といっても、なつきの地元にはかなわないけれど。
郊外の街なので、ちょっと市街地を外れれば緑はまだたくさんある。といっても、なつきの地元にはかなわないけれど。
「なつき、自分ちのほうが星見えるじゃん。その宿題、家に帰ってからやったら?」
「ダメなの! ここでやんなきゃダメなの!」
「ダメなの! ここでやんなきゃダメなの!」
なんでダメなのかよく分からないまま、いつになく頑固ななつきに、あたしは根負けしてしまった。
そして結局、今夜二人でその山に行くはめになった。
そして結局、今夜二人でその山に行くはめになった。
山と言っても神社のある小高い丘といった感じで、10分もあれば登れるようなところだ。
すぐに頂上の神社まで着いて、適当な草むらを見つけた。
すぐに頂上の神社まで着いて、適当な草むらを見つけた。
アウトドアに慣れているなつきは、草むらに寝そべって空を見上げる。夜露が服につこうがお構いなしだ。
全身に虫よけスプレー&携帯式虫よけ音発生器装備で、対策は万全。
あたしもなつきの横に腰を下ろす。
あたしもなつきの横に腰を下ろす。
見上げると、意外にも星空が近く見えた。
正直、こんなに見えるとは思ってなかった。
正直、こんなに見えるとは思ってなかった。
夏の夜の外出は、なんだか特別な感じがする。
わけもなく楽しくなってきて、あたしは昔聞きかじった適当な星の話を思い出しながら話していた。
なつきは口数少なく聞いていた。不安に思って、
「どうしたの、お腹でも痛いの?」
と聞くと急になつきが口を開く。
と聞くと急になつきが口を開く。
「あの、あのね、こうやって、夜に、星を見たいって言ったのはね、
宿題だからっていうのもそうだけど、ホントは、本当はね、二人でこうして……」
宿題だからっていうのもそうだけど、ホントは、本当はね、二人でこうして……」
あたしにぴったりくっついて 、なつきが話し始めたその刹那、
「あ、流れ星!」
夜空に一筋の光線がさっと走って消える。
「うわーラッキーだねー!」
はしゃぎまくってるあたしの横で、なつきは呆気にとられていた。
「あ、話途中だったね。なんだっけ?」
思い出してなつきの顔を見つめると、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそっぽをむく。
「……?」
あたしは数秒ぽかんとしたが、急に合点がいった。
「あぁ、さてはあれか。流れ星に願い事がうまく言えなかったとかそういうことか。
なんだかんだ言って子供だなーまったく」
なんだかんだ言って子供だなーまったく」
にやにや笑いながら冷やかすと、
「ち、違うよ! もういいもん! 奈穂ちゃんなんて……」
なつきはまだそっぽを向いたままだ。
なつきはまだそっぽを向いたままだ。
「でも大丈夫だって。あたしが二人分お願いしといたから」
「……?」
なつきがちらっと振り向いた。
そこをとらえて、あたしはなつきを抱き寄せた。
そこをとらえて、あたしはなつきを抱き寄せた。
「『また二人でこうやって星を見られますように』って」
それは、あたしの本心だ。
なつきといつまでも一緒にいたい。
ほんとうは、なつきが言おうとしたことも分かってた。
照れ隠しに、流れ星を見たことにしてしまったのだ。
照れ隠しに、流れ星を見たことにしてしまったのだ。
流れ星の代わりに、あたしは今夜の夜空に願いをかける。
なつきを背中から包み込む。
なつきは耳まで真っ赤になって、
なつきは耳まで真っ赤になって、
「勝手に願い事決めないでよ。もう……」
なんてぶつぶつ言っている。
なんてぶつぶつ言っている。
それでも、あたしの腕からは抜け出ようとせず、ぴったり寄り添うようにして、星座をノートに記録していた。
なつきはあたしのこぐ自転車の後ろで、背中にしっかりしがみついている。
「ね、さっき本当はなんて言おうとしたの?」
「……知らない。願い事は秘密にしてないと叶わないもん」
「……知らない。願い事は秘密にしてないと叶わないもん」
なつきは嬉しそうに言う。
そうして、ますますぴったりと背中に密着する。
そうして、ますますぴったりと背中に密着する。
あたしは来年の夏のことを想像した。
美大に受かることはほぼあきらめているから、きっと美術予備校生になっていることだろう。
一年間、受験のために絵を描く生活。
一年間、受験のために絵を描く生活。
なつきは中学一年生。部活も始まる。
あたしと反対に運動が得意ななつきは、間違いなく運動部だ。夏休みは練習漬けになることだろう。
あたしと反対に運動が得意ななつきは、間違いなく運動部だ。夏休みは練習漬けになることだろう。
お互いが、今までより離れてしまうかもしれない。
二人の夏休みは、今しかないのだ。
二人の夏休みは、今しかないのだ。
「あ、流れ星!」
突然、なつきが大きな声を出した。
あたしは自転車を止めて夜空を見上げた。
ひとつ、またひとつ。夜空に光の線がシュッと走る。
――ああ、これが天気予報で言っていた「~~流星群」というやつなんだ。
あたしの横で、なつきは一生懸命夜空を見上げている。
両手を、胸の前で組んで。
両手を、胸の前で組んで。
そんななつきの横顔を見ているうち、たまらなくなって、あたしはなつきの頬にキスした。
するとなつきは、すかさずあたしの首に腕を回して、唇にキスを返してきた。
――! ……この、生意気な。ファーストキスを奪いやがって。
でも、大好きな人にファーストキスをあげることができた、あたしは幸せ者だ。
そのままいつまでも見つめあっていたかったけど、やっぱり照れてしまう。
代わりに抱きしめて頭を撫でた。
「さ、帰ろ」
なつきを後ろに乗せて、あたしは再び自転車をこぎだした。
あとから本当になった流れ星。
あの願いが、本当に叶うといいなと思う。
あの願いが、本当に叶うといいなと思う。
願い事は、秘密にしていないと叶わない。
なつきのことが、本当に大好き。
あたしのこの気持ちは、なつきには秘密にしておきたい。
夜の国道を走りながら、あたしはなんだか楽しいようなさみしいような、何とも言えない気持ちになっていた。
以上、これで三部作はおしまいです
季節的にはちょい早かったかもww (当時はリアルタイムでした 〉夏休み、流星群etc)