「――で、何なんだドルサルタワーって?」
ロンの屋敷跡を後にし、訪れたのはリョウの手配してくれた宿の一室。
静かに寝息を立てるウェルを寝かせたベッドの横、俺達は思い思いに腰掛け、リョウに向かっていた。
静かに寝息を立てるウェルを寝かせたベッドの横、俺達は思い思いに腰掛け、リョウに向かっていた。
「さすがに君でも名前ぐらいは聞いた事があると思ったんだけどねぇ。有名だし。」
「悪かったな。」
「まぁ今から覚えればいいさ。ドルサルタワーというのはペンタピアの、いやこの辺り一体――ペンタピア連合の経済の中心。金融や政治に軍事……
その他諸々の重要施設を丸ごと押し込んだ巨大建造物の事。まるで魚の背鰭(dorsal)のような外観をしている事からこんな名前が付けられているんだ。」
「へぇ……それにロンやベルが捕まってると?」
「今までの情報を元に考えると、どうもそういう事のようだね。」
「でもなんでそんなとこに……」
「悪かったな。」
「まぁ今から覚えればいいさ。ドルサルタワーというのはペンタピアの、いやこの辺り一体――ペンタピア連合の経済の中心。金融や政治に軍事……
その他諸々の重要施設を丸ごと押し込んだ巨大建造物の事。まるで魚の背鰭(dorsal)のような外観をしている事からこんな名前が付けられているんだ。」
「へぇ……それにロンやベルが捕まってると?」
「今までの情報を元に考えると、どうもそういう事のようだね。」
「でもなんでそんなとこに……」
思わず首を傾げる。
俺の家族を浚って得するようなのがそんな大層な所にいるとはどうも考えにくい。何かの間違いなんじゃないかと思いはしたが……
俺の家族を浚って得するようなのがそんな大層な所にいるとはどうも考えにくい。何かの間違いなんじゃないかと思いはしたが……
「理由はともかく、今回の件はどうも酷くきな臭くてね……ミッチー。」
<アイヨー!>
<アイヨー!>
リョウの隣にくっ付いてたミッチーのサドルのような頭部の先端が、名前を呼ばれると同時に素早く開く。
そんな機能もあったのかと開いた頭部の中を覗き込んでみると
そんな機能もあったのかと開いた頭部の中を覗き込んでみると
「なんだこりゃ?」
「ネットワークシステム。電波を使ってマスコミや政府の人間が距離や時間を跨いで情報交換を行う機械さ。機械自体も希少だし、一般にはまったく出回ってないけどね。」
「ネットワークシステム。電波を使ってマスコミや政府の人間が距離や時間を跨いで情報交換を行う機械さ。機械自体も希少だし、一般にはまったく出回ってないけどね。」
なんでそんなもんをお前は、と口から出しかけてどうせ聞いてもはぶらかされるんだろうなと飲み込みつつ、画面の向こうの内容に目を通してみる。
「どれどれ……スチームヒル周辺で最近起こった事件について羅列しているみたいだな。ここら辺はテレビのニュースとかでも見たことが……ん?」
それだけ言って覚える違和感。
更に読み進める内にそれは確固たるモノとなった。
更に読み進める内にそれは確固たるモノとなった。
「どうやら気付いたようだね。」
「だけど、まさか。」
「だがそれが事実。君達が当事者になった事件はどれ1つとして公になっていない。あの機械球との戦闘までも、全てが全て原因を擦りかえられて“事故”として片付けられているのさ。」
「だけど、まさか。」
「だがそれが事実。君達が当事者になった事件はどれ1つとして公になっていない。あの機械球との戦闘までも、全てが全て原因を擦りかえられて“事故”として片付けられているのさ。」
そう。スチームヒル郊外でのバリード襲撃事件、内側での賊が使っていた突入ポッドの暴走、そして励起獣及び「機構」のオーバードフェノメオン“ビルドグランデ”現出。
そのどれもが綺麗にすっぱりと記録より消えており、代わりに火事やら爆発事故へと置き換えられている。
そのどれもが綺麗にすっぱりと記録より消えており、代わりに火事やら爆発事故へと置き換えられている。
(……大方、情報規制か何かが掛かっているのだろう。理由はともかく、奴らの事を公にしたくない者達によってな。)
いつか聞いたアリスの言葉を思い出す。
あの時は深く考えなかったが、これってつまりはあの事件を公にしたくない者がマスコミなんかに圧力を掛けられる立場にいて、そいつはまず間違いなくイグザゼンやこの世ならざる怪異達についての知識があるという事だ。
あの時は深く考えなかったが、これってつまりはあの事件を公にしたくない者がマスコミなんかに圧力を掛けられる立場にいて、そいつはまず間違いなくイグザゼンやこの世ならざる怪異達についての知識があるという事だ。
「更に気になる事実がもう1つ。バリード襲撃も賊のポッドの件もどちらも事件後には何故かペンタピア軍が脇より入り込んで物証等を持ち去っているらしいんだ。」
「それがどういうものか分かるか?」
「うーん、その筋の情報だとバリードの件はバリードの残骸そのもの。ポッドの件もポッドだけだね。賊や武装マシンダムの引渡しなんかは要求してこなかったそうだ。」
「そうか。ビルドグランデ――機械球が出現した際もその者達は現れたのか?」
「いや、何も無かったみたいだね。」
「……ふむ。」
「それがどういうものか分かるか?」
「うーん、その筋の情報だとバリードの件はバリードの残骸そのもの。ポッドの件もポッドだけだね。賊や武装マシンダムの引渡しなんかは要求してこなかったそうだ。」
「そうか。ビルドグランデ――機械球が出現した際もその者達は現れたのか?」
「いや、何も無かったみたいだね。」
「……ふむ。」
両手を組んで目を瞑り、考え込むアリス。
ただこれで確信出来たことがある。イグザゼンやあのバケモノについてペンタピア軍は何か知っているという事。
そしてそれがどうしても隠し通したいモノだという事だ。ひょっとしたらあの黒い連中の事も知っているのかもしれない。
ただこれで確信出来たことがある。イグザゼンやあのバケモノについてペンタピア軍は何か知っているという事。
そしてそれがどうしても隠し通したいモノだという事だ。ひょっとしたらあの黒い連中の事も知っているのかもしれない。
「て、事は……ペンタピア軍とあの黒いのの両方を同時に相手にしないといけないのか……まぁ、軍に喧嘩売れるとか滅多に出来ない事だから楽しそうだけどな!」
「なんだか予想より明後日の方向に向かい出した気がするねぇ……」
「ペンタピア、か。」
「なんだか予想より明後日の方向に向かい出した気がするねぇ……」
「ペンタピア、か。」
<……オイィ?久々ノ出番ガコレダケッテドウイウ事ナノデスカネェ……?>
なんにせよ――目指すものは、近い。
eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.10
遂に目前まで迫ったベルとバール。
ただここで勇んで返り討ちにあってはどうしようもない。ならどうするか?というと。
ただここで勇んで返り討ちにあってはどうしようもない。ならどうするか?というと。
「…………」
出来る限り身体を休める事。これに尽きる。
アリスの予定ではドルサルタワー突入作戦決行は明日の深夜0時との事だから
アリスの予定ではドルサルタワー突入作戦決行は明日の深夜0時との事だから
「――ソートグランアーマーでの体力消耗はソートギガンティックと比べればそれほど酷くは無い。ただし相応の力を持っていかれている事は留意すべきだ。故に休め。」
なんてアリスも言っていた事だし、それまできっちりと睡眠と栄養を取っておくべきだろう。ただ――
「…………はぁ。」
「休め。」と言われると中々どうしてきっちりと休めないもの。
浅い眠りから抜けて目は冴えてしまっており、すぐには眠れそうも無い。
浅い眠りから抜けて目は冴えてしまっており、すぐには眠れそうも無い。
「よっ、と……」
仕方無く寝そべっていたソファーより上体を持ち上げる。
目に入った時計は深夜3時を過ぎていた。
目に入った時計は深夜3時を過ぎていた。
「…………」
そのままの姿勢で辺りを見渡す。
リョウがいる部屋へ続く扉は閉められており、中の様子を窺うことは出来ない。音も漏れてこないので寝ていると多分思うが、まぁ俺の知った事じゃない。
俺の隣にあるベッドで寝ていたウェルはやっぱりそのまま眠ったまま。明日の朝にでも起きてくれるだろう。
で、アリスはというと――
リョウがいる部屋へ続く扉は閉められており、中の様子を窺うことは出来ない。音も漏れてこないので寝ていると多分思うが、まぁ俺の知った事じゃない。
俺の隣にあるベッドで寝ていたウェルはやっぱりそのまま眠ったまま。明日の朝にでも起きてくれるだろう。
で、アリスはというと――
「確か壁にもたれて……?」
いつでも動ける為にか壁に背を預けたまま仮眠をとっていたはずなんだが、何故か姿が見えない。まぁあいつがふらっと不意にいなくなる事はよくある事。
今に始まった事じゃないが、毎度毎度追いかけているのも節介焼きな俺の性。やっぱり今回も気になって
今に始まった事じゃないが、毎度毎度追いかけているのも節介焼きな俺の性。やっぱり今回も気になって
「まったく、何処行ったんだか……」
追いかけていく事と相成った。
今回は……というか今回もわりと早く見つける事ができた。
場所は宿を出た所にある通りを渡った向かい側。湖畔の砂浜に佇むか細い影。
場所は宿を出た所にある通りを渡った向かい側。湖畔の砂浜に佇むか細い影。
「アリス。」
近寄り、白い街灯に照らされた後姿に声を掛ける。
「ディー、か。」
対して、振り向く事無くぽつりと呟くアリス。
俺がどうかしたのかと聞く前に次の言葉を発したのもアリスだった。
俺がどうかしたのかと聞く前に次の言葉を発したのもアリスだった。
「お前にも……聞こえるのか?」
何が?
その問いは問いとなる前に回答を出された。
その問いは問いとなる前に回答を出された。
「――――!?」
聞こえるのだ。
羽音?いや、違う。だがそれに限りなく近い何か。遠く、遠く、遥か彼方より薄らと、ただし強かに響く音。
羽音?いや、違う。だがそれに限りなく近い何か。遠く、遠く、遥か彼方より薄らと、ただし強かに響く音。
「これは、何だ……!?」
「嫌な予感がする。急ぐぞ。」
「嫌な予感がする。急ぐぞ。」
アリスのすぐ脇まで駆け寄り同時にその手を取り、腹の底から声を放った。
「分かった!イグザゼン、ソートアーマー!!」
宣言と同時に2人を中心に猛烈に吹き荒れる旋風。巻き上がる細やかな砂の障壁。
小規模な砂嵐の真っ只中より白銀の機人は蒼い軌跡を描きつつ、瞬く間に天へと舞い上がっていった。
小規模な砂嵐の真っ只中より白銀の機人は蒼い軌跡を描きつつ、瞬く間に天へと舞い上がっていった。
「もう行っちゃったのか。」
その地より天へと昇る流星を部屋の窓より見とめていた物腰穏やかな眼鏡の青年。
手には奇怪な一輪車のサドルに取り付けられた端末を手に
手には奇怪な一輪車のサドルに取り付けられた端末を手に
「頑張れよ。ディー、アリス。“総て”に立ち向かえるのは君達だけなんだからね……」
少し寂しそうに、ただ独り呟いた。