アットウィキロゴ

創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

第三話「そして空は朱(あけ)に染まりて」

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

第三話「そして空は朱(あけ)に染まりて」

『はい。こちら品質第一値段第二のヴァレンタイン食品。ご注文は?』
『鋼鉄セットをお願いしたい』
『〈おや?当店で一番おススメできないメニューとなっていますがよろしいので?〉』
『〈たまには鉄臭い食事だって摂りたくなるのだよ、ダンサー〉』
『……はい!ベーコンのようにジュースィに!レタスのようにサッパリと!トマトのようにやわらかく!BLT社にようこそクライアント様』
『挨拶はいい。ロビン・リッケルハイムを殺せ』
『合点承知の助』
『それで前金なんだが……』
『いやいやそんなものは結構毛だらけ猫灰だらけ。信用、あるでしょ?』
『では任せよう』
『毎度ありー』
「……それはそうと、レディーのクライアントなんて珍しいな」
スティーヴンのその呟きは、誰にも聞かれなかった。

自社のハンガーに行ったスティーヴンは「わかば」を吸う中年男性に話しかけた。
「おっす、おやっさん。俺の機体の整備終わった?」
「貴様が無茶してなかったら一時間早かったがな。また依頼か?」
「無茶でナンボ。じゃあルカと二人でちょちょいとターゲットを丸焼き肉にしてくるぜ」
「まったく。貴様のバトルジャンキーも構わんが、少しはコイツのことも考えてやれ。名称は戦闘機でも空飛ぶシロモンじゃねえんだ」
「新型の機関砲は?」
「もう搭載してある。少しは依頼料を水増しせんと、コイツの整備代だけで赤字だぞ?副業の弁当屋じゃ到底維持できん」
「いよおぉし、一丁働きますかねー?」
「節度を守って働けこのワーカーホリック」
呆れた中年男性と対照的に実に明るい表情のスティーヴン。
「ひゃっはー!ターゲットは焼却だぁ!トラックまわせー」

第三話「そして空は朱に染まりて」

ロビンの言っていた「目的」のもうひとつが食糧を貰うことなのはいい。
悪魔を殺すものを創っているのに、と多少奇怪に思ったけど、森の長のヴァッツさんが
「ロビンもまたここの一員だからな」
と仰っていたので、僕がどうこういうことでもないだろう。
ロビンが男女差なくモテモテなのも、まあ、いい。
生意気なのを置いておけば、イカす顔立ちだし、裏表がないし、荒んだ眼の割に感情表現も豊かだ。男だから知ったこっちゃないけど。
問題は今の僕の状況。なんで僕独りだけ汗流して働いてるんですか。
「働ける人手が金髪だけだから」
色々とツッコミ所のある台詞である。
……飯にありつけるならいいか。
「それはそうと金髪」
「はい?」
こづかいでもでるの?
「お前はなんでそこまで、その、バストが好きなんだ?」
阿呆か。
「逆に問おう。おっぱいをなぜ愛さない?」
おっぱいに貴賤はなく、またおっぱいを愛する者たちに格差もない。
おっぱいを愛さずして男足りえず。男はおっぱいへの愛を知り、おっぱいを追い求めて初めて、やっと一人の「男」になるのだ。
おっぱいを愛することは自然の摂理なのだ!
「はぁ……。そうか。すまなかった。俺は少し勘違いしていた。謝罪する」
「いやいやそんな謝らなくても」
そんなかしこまって言われるようなことをしただろうか?
「あ」
「どうした金髪」
「いや、うん。ちょっとね」
そういえば同じことを「二年前」に訊かれた事がある。
あのときも何故女性を愛さない男がいるのか、と問い返したはずだ。
けど、あの時のあの人はもういない。
悲劇に巻き込まれてしまった。思いだしたくもないありきたりな悲劇に。
思いだすまいと誓ったのに。また、あの時と同じ胸のざわめき。

何事もなく今日も終わりますように。


「んにゅ……」
眩しい。刺さるようではなく、あたたかい日の光。
アタシの一番好きな光。朝の光の方が好きだけど午後の光もまた素晴らしい。
「おはようニーナ」
「……はぇ?アイリス?……おはよう?」
今は昼を過ぎているのに。
「疲れてたみたいで、ニーナったらグッスリ寝てたよ」
「そっか。ごめんねアイリス。心配かけちゃった?」
「ううん、だいじょうぶ」
うん。アタシの武器もある。みんないる。森も無事。
だからきっと。なにがあっても大丈夫。


「社長。依頼は一人か?」
「言いたいことは分かるが、ターゲットが強いんだよ。ルカ」
「悪魔か?」
「悪魔じゃあない。だから焼夷弾は持ち出すなよ?」
「用途特化弾は持ってきていない」
「ま、俺の機体とルカの馬だけで片付くだろ」
「しゃちょー!つきやしたぜー!」
「おう。じゃ、いっちょ暴れますかね」


その二つの反応は同時だった。
「術式機構の動作を感知。陸戦戦闘機と思われます」
「……てき?」
片や機械、片や記憶の年数が優に四桁に及ぶような魔術師。
知覚の手段は異なれども、その物騒な言葉により空気が一瞬にして張りつめる。
「マジで?」
森から数キロ離れた荒野にトラックが二台。その後ろに全高が二メートルを超える八本足の巨大な鉄塊。
八本足の多脚型陸戦戦闘機。右手には機関砲。左手には魔力発生装置を付けた盾。
ベーシックな姿だが、機関砲の輪郭が曲線で形成されている、標準のSMGタイプではない、新型のPDW型である。
そしてもう一機。機械仕掛けの白馬のナイト。腰に携えるは剣ではなく五十口径の小銃型大砲。現代に蘇るドラグーンである。
特徴的なのは搭乗者と馬ユニットが融合しているように見える点だ。
どちらも敵意をむき出しにしており、友好的とは言い難い。
『え~こちらBLT社所有戦闘機サーベルタイガー。ご依頼により宣戦布告申し上げます』
わずかに残っていた疑惑は確信に変わる。
一瞬にして張り詰める森の空気。
『よし、聞こえたみたいだ。あ、ロビン・リッケルハイムを殺したら帰りますんで』
降伏勧告のつもりだったのだろう。だが。
『断る!仲間は売らない!』
団結した答え。
『殊勝で結構。ロックンロオオオオオオオオオオル!!!』

そして、真っ直ぐ僕らの方へ向かって来た弾丸は、
「天地神明に依りて我ここに誓う!壁よ!」
大きな光の壁に阻まれた。何度か魔術を目にしてきたが、その中でも群を抜いて強力なm術。
声から察するにウサギ様とアイリスの魔術らしい。
僕には大砲を防ぐことはできないので助かる。
早いうちに対処しなければ。


壁に阻まれたのを確認したスティーヴは、相棒に確認をとった。
『ちょいとルカ。今の術式テンプレ、聞き覚えないんだけど』
『随分古いタイプの式だ、ステュ。実戦運用は聞いたことがない』
『へぇ?』
『陽動は任せる』
『あいよ』
ルカならば問題はない。せいぜい二十分で片がつくだろう。


壁に阻まれては消えていくデカブツの銃弾。何事もなく阻み続ける銀色の壁。
「働ケ馬鹿!あいりす様ノ術ハ永遠ジャナイ!」
強要される本日二回目の変身。
逃げ出したい。あの姿になると絶対に誰かの生死が関わる。
死にたくない。生身であの機関砲に撃たれれば死ぬ。
戦いたくない。僕が戦えば敵は死ぬ。
「ちくしょう!貧乳だっておっぱいだっ!」
「一人で行くな金髪!待て!俺がメカと神経接続して囮になる!」
「ろびん!君ハめかト接続スルナ!」
「しかし、そうしなければ戦えませんっ!」
「ソノアイダ君ノ体ハ的ダ!」
やばい。目の前にドラグーンが来ている。防がなければ。
誰にも死んでほしくない――。


『……遅い』
銃声。鮮血。崩れ落ちる黒髪の少年。
「ろ、ロビイィィィィン!!」
なんでだなんでだなんでだなんでなんだ。
そんな早く死ぬだなんて聞いてない。
待ってくれよふざけんなよどうなってんだよ。
『ありゃー。ルカ君空気読めない?』
『馬鹿言え。悪魔になんて関わるものか』
『はーぁ。どんまい俺。引き上げるぞお前らー!』



「……くそっ」
誰が悪いのか。
依頼がどうとか言っていたから、その依頼主か。
人間なのか悪魔なのかどっちつかずのまま生きようとしたロビンか。
あの時ロビンを止めたウサギ様か。
こんなどうにもならない悲劇をまたもや生で体験する道を選んでしまった僕自身か。
「くそっ」
どうして死んだ。
銃で撃たれたからか。
僕が守らなかったからか。
ロビンもまた突き進もうとしたからか。
「くそおおおおおおおおっ!!」
いっそ誰か恨んでくれればいいのに。こんな重苦しくやるせない世界になってしまわないように、誰か僕に激情をぶつけてくれればいいのに。


こんなにも綺麗な赤い夕暮れが、血だまりに見えて吐き気をもよおす。


つづく。

 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー