「皆さんお揃いですねー? お揃ってなくてもお話を進めちゃいますけどねぇー」
本日はお日柄も宜しく絶好の昼寝日和の昼下がり、柔らかい土の上に青々とした芝草の布団に寝ッ転がっていると
金髪の幼女が空気も読まずにパンパンと手の平を叩いて甘ったるい声をあげた。
皆さんって言っても、この場にいる人間は僅か三人しかいねェ。
まず一人目、俺。
二人目は俺の隣であぐらをかいて、あくびを噛み殺しながら、幼女の言葉を待つ茶髪の少女。
名前は三日月《みかづき》芹菜《せりな》。年齢は恋に恋するお年頃。
初対面で屈託の無い笑みを浮かべながら「趣味は山で高山病を患うこと」と言われた時は正直、引いた。
そして、三人目。少し離れた所で俺達に背を向けて腕を組み、今の私は不機嫌なのだと全身で訴えている黒髪の少女。
名前は八重坂《やえざか》初音《はつね》。年齢は見ての通り、難しいお年頃。
因みに初音が機嫌を損ねているのは集合時間を律儀に守った阿呆が彼女一人だけだったからだ。
腰にポン刀を差している彼女の趣味はまんま「辻斬り」はっきり言って、ドン引いた。
正気の正常な人間が俺一人しかいないという素晴らしい面子だ。
この場にいる〝人間は〟以上の三名。
俺等の目の前で喉をハチミツで塗ったくり、メイプルシロップと練乳を混ぜくった上から砂糖をぶっかけた挙句、
サッカリンでトドメを刺した様な、聞いているだけで胸焼けしそうな、甘ったるい声で喋る金髪のゴスロリ幼女は人間じゃねェ。
推定年齢お星様と同じくらい。
幾多もの世界を司る管理者にして、この管理世界ヴァルハラでは知らぬ者は勿論、
逆らえる者など一人としていないと恐れられている化物。幻想種の長、来須《くるす》。
ガキだか、婆だかよく分からんが、アレだ。紹介している自分の正気を疑いたくなる。
「まあ、傍目から見てりゃ、何でも頭に『お』って付けてりゃ丁寧語になるって勘違いしているド阿呆なクソガキにしか見えねェんだがな」
「刹羅《せつら》君はさらりとお酷いことを言うよねー。一体何なのー? ドS型なのー?」
おっと、思わず本音が口に出てしまっていたようだ。
ついでに野郎の名前なんざどうでも良いだろと思って名乗るのをすっかり忘れていた。
まあ、折角の機会だから名乗っておく事にしよう。俺は月城《つきしろ》刹羅《せつら》。
歳は覚えたばっかのキャバクラ遊びで身を破滅させる一歩手前くらいの年頃だ。
ついでに趣味は干し椎茸の裏側のびらびらで遊ぶ事。勿論、嘘だが。
「愛だ。愛。愛があればこその意地悪って奴だ。俺ァ、ガキだからよ。好きな女の子と見詰め合うと素直にお喋り出来ない性分なんだよ」
「物っ凄く棒読みに聞こえる上にウソ臭ーい。仮にお本気だとしても、お年上好きだから刹羅君を選ぶなんて事は絶対にありえないんですけどねぇー」
「お前が一番ありえんわ」
何処を如何見ても俺の方が倍以上年上に見えるが、幻想種って奴等は基本的に不老長寿の生き物で外見年齢なんざ、まるでアテにならねェときている。
見た目がガキでも最長老たる来須にとってみれば人間なんて生き物はガキどころか喋る精子みたいな物らしい。
確かに精子に愛を囁かれても何も燃え上がらねェよな。いや、愛を囁かれても、燃え上がられても反応に困るが。
「つーか、来須より歳食ってる生き物とか幻想種とかいないだろ? 最長老なんだし」
「いないねー。何処かにいたらお紹介してくれませんかー? そろそろ、お独り身こじらせて死にそうなんですけどぉー」
芹菜の言葉に来須がヨヨヨと泣き崩れて品を作る。
いっその事「産まれ直せば?」とでもアドバイスやろうかと思ったが、数万歳でこのナリじゃ産まれ直した所で俺が死ぬまでに俺好みの女に
成長するなんて微塵にも期待も出来やしねェし、来須にアドバイスをしても俺にとってプラスになる事は決して無いので、鼻で哂っておくことにした。
「遅れた挙句、いつまで下世話な話を続けるつもりだ。
そもそも、今日は転移して来たばかりの月城に合わせて出陣前にルールの説明をするという話では無かったのか!?」
いつまで経っても話が進まないことに堪忍袋の緒が切れたのか、律儀に時間を守った挙句、二時間も待ちぼうけを食った阿呆の初音が声を荒げた。
難しい年頃なのは分かっているが、もう少し、忍耐って言葉を覚えるべきだ。
それに大体の説明は約二時間前に聞き終えたばかりなので今更、聞くような事は殆ど無かったりする。
〝転移〝
本日はお日柄も宜しく絶好の昼寝日和の昼下がり、柔らかい土の上に青々とした芝草の布団に寝ッ転がっていると
金髪の幼女が空気も読まずにパンパンと手の平を叩いて甘ったるい声をあげた。
皆さんって言っても、この場にいる人間は僅か三人しかいねェ。
まず一人目、俺。
二人目は俺の隣であぐらをかいて、あくびを噛み殺しながら、幼女の言葉を待つ茶髪の少女。
名前は三日月《みかづき》芹菜《せりな》。年齢は恋に恋するお年頃。
初対面で屈託の無い笑みを浮かべながら「趣味は山で高山病を患うこと」と言われた時は正直、引いた。
そして、三人目。少し離れた所で俺達に背を向けて腕を組み、今の私は不機嫌なのだと全身で訴えている黒髪の少女。
名前は八重坂《やえざか》初音《はつね》。年齢は見ての通り、難しいお年頃。
因みに初音が機嫌を損ねているのは集合時間を律儀に守った阿呆が彼女一人だけだったからだ。
腰にポン刀を差している彼女の趣味はまんま「辻斬り」はっきり言って、ドン引いた。
正気の正常な人間が俺一人しかいないという素晴らしい面子だ。
この場にいる〝人間は〟以上の三名。
俺等の目の前で喉をハチミツで塗ったくり、メイプルシロップと練乳を混ぜくった上から砂糖をぶっかけた挙句、
サッカリンでトドメを刺した様な、聞いているだけで胸焼けしそうな、甘ったるい声で喋る金髪のゴスロリ幼女は人間じゃねェ。
推定年齢お星様と同じくらい。
幾多もの世界を司る管理者にして、この管理世界ヴァルハラでは知らぬ者は勿論、
逆らえる者など一人としていないと恐れられている化物。幻想種の長、来須《くるす》。
ガキだか、婆だかよく分からんが、アレだ。紹介している自分の正気を疑いたくなる。
「まあ、傍目から見てりゃ、何でも頭に『お』って付けてりゃ丁寧語になるって勘違いしているド阿呆なクソガキにしか見えねェんだがな」
「刹羅《せつら》君はさらりとお酷いことを言うよねー。一体何なのー? ドS型なのー?」
おっと、思わず本音が口に出てしまっていたようだ。
ついでに野郎の名前なんざどうでも良いだろと思って名乗るのをすっかり忘れていた。
まあ、折角の機会だから名乗っておく事にしよう。俺は月城《つきしろ》刹羅《せつら》。
歳は覚えたばっかのキャバクラ遊びで身を破滅させる一歩手前くらいの年頃だ。
ついでに趣味は干し椎茸の裏側のびらびらで遊ぶ事。勿論、嘘だが。
「愛だ。愛。愛があればこその意地悪って奴だ。俺ァ、ガキだからよ。好きな女の子と見詰め合うと素直にお喋り出来ない性分なんだよ」
「物っ凄く棒読みに聞こえる上にウソ臭ーい。仮にお本気だとしても、お年上好きだから刹羅君を選ぶなんて事は絶対にありえないんですけどねぇー」
「お前が一番ありえんわ」
何処を如何見ても俺の方が倍以上年上に見えるが、幻想種って奴等は基本的に不老長寿の生き物で外見年齢なんざ、まるでアテにならねェときている。
見た目がガキでも最長老たる来須にとってみれば人間なんて生き物はガキどころか喋る精子みたいな物らしい。
確かに精子に愛を囁かれても何も燃え上がらねェよな。いや、愛を囁かれても、燃え上がられても反応に困るが。
「つーか、来須より歳食ってる生き物とか幻想種とかいないだろ? 最長老なんだし」
「いないねー。何処かにいたらお紹介してくれませんかー? そろそろ、お独り身こじらせて死にそうなんですけどぉー」
芹菜の言葉に来須がヨヨヨと泣き崩れて品を作る。
いっその事「産まれ直せば?」とでもアドバイスやろうかと思ったが、数万歳でこのナリじゃ産まれ直した所で俺が死ぬまでに俺好みの女に
成長するなんて微塵にも期待も出来やしねェし、来須にアドバイスをしても俺にとってプラスになる事は決して無いので、鼻で哂っておくことにした。
「遅れた挙句、いつまで下世話な話を続けるつもりだ。
そもそも、今日は転移して来たばかりの月城に合わせて出陣前にルールの説明をするという話では無かったのか!?」
いつまで経っても話が進まないことに堪忍袋の緒が切れたのか、律儀に時間を守った挙句、二時間も待ちぼうけを食った阿呆の初音が声を荒げた。
難しい年頃なのは分かっているが、もう少し、忍耐って言葉を覚えるべきだ。
それに大体の説明は約二時間前に聞き終えたばかりなので今更、聞くような事は殆ど無かったりする。
〝転移〝
そもそも、何が悲しくて絶好の昼寝日和にも関わらず、御歳不明歳の幼女だか婆だか、よく分からん生き物や高山病患って
トリップするのが好きなガキとか、律儀に二時間も待ちぼうけた辻斬りの阿呆と共に愉快極まる漫才をしているのかを説明しよう。
説明を聞いたら精々、鼻で哂ってくれ。なーに、遠慮する事ァ無ェ。俺だって逆の立場なら指を差して思いっきり馬鹿にしてやるに違ェねェからな。
トリップするのが好きなガキとか、律儀に二時間も待ちぼうけた辻斬りの阿呆と共に愉快極まる漫才をしているのかを説明しよう。
説明を聞いたら精々、鼻で哂ってくれ。なーに、遠慮する事ァ無ェ。俺だって逆の立場なら指を差して思いっきり馬鹿にしてやるに違ェねェからな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
今から遡ること約二週間。外で昼寝するには全く適さない豪雨の日のことだった。
地球統合軍第102陸戦機甲師団……長ったらしい上に仰々しい名前だが、要はロボットに乗ってガチャコンガチャコン動かしながら、
殺したり殺されたりして給料を貰う国家の狗だ。
其処に所属していた俺は上からの命令で小隊を率い、嫌々ながらとある密林地域の調査任務に就いていた。
「何も、こんなクソ雨の振る日にこんなことをさせなくても良いだろうがアホンダラが」
とか、そんな感じに口からクソを垂れている内に部下と逸れ、気付けば俺一人。
「何処で油売ってやがるッ!!」と説教の一つでもくれてやろうかと思いきや笑える事にネットワークから完全途絶状態。
ロクでも無ェ事に巻き込まれたら堪ったもんじゃねェ。一先ず、上から持たされた調査デバイスを回収して俺一人で帰還することに決めたわけだが、
悪い事は重なるモンで、適当にばら撒いた筈の調査用デバイスが一つも見つからねェ。
おまけにロボットに搭載されているAIが阿呆かっつーくらい同じエラーを延々と吐き出していやがった。
誰にでも分かるように俺流に意訳するとこんな感じだ。
「ご主人様、一体ここは何処なんですかー!?」
いや……そんな萌え萌えした愉快痛快なコミュニケーションAIなんざ搭載しちゃいねェが、大体はそんな感じだ。
つーか、基地から調査区域までの道筋はAIの誘導に従って来たのだから、何処ですかと俺に訪ねられても知らんよ。
奥さん見ましたか? 市民の皆様の血税で建造された高価な兵器に搭載された、これまた市民の皆様の血税で開発された高価なAIがお仕事中に迷子ですってよ!?
「これはもうクーデターを起こされて蜂の巣にされても文句言えんかも知れんね」
「ご主人様、当機には非殺傷型のカウンターテロウエポンが装備されてないので、装備改善を要求したいお年頃なるぃぃぃぃぃ!」
俺の独り言に対するAIの反応。勿論、俺なりの意訳だ。誰が見聞きしても分りやすいようにと配慮してみたわけが、
実際にAIがこんなことを口走った日にはスクラップ工場に着払いで送りつけてやらにゃならん。
地球統合軍第102陸戦機甲師団……長ったらしい上に仰々しい名前だが、要はロボットに乗ってガチャコンガチャコン動かしながら、
殺したり殺されたりして給料を貰う国家の狗だ。
其処に所属していた俺は上からの命令で小隊を率い、嫌々ながらとある密林地域の調査任務に就いていた。
「何も、こんなクソ雨の振る日にこんなことをさせなくても良いだろうがアホンダラが」
とか、そんな感じに口からクソを垂れている内に部下と逸れ、気付けば俺一人。
「何処で油売ってやがるッ!!」と説教の一つでもくれてやろうかと思いきや笑える事にネットワークから完全途絶状態。
ロクでも無ェ事に巻き込まれたら堪ったもんじゃねェ。一先ず、上から持たされた調査デバイスを回収して俺一人で帰還することに決めたわけだが、
悪い事は重なるモンで、適当にばら撒いた筈の調査用デバイスが一つも見つからねェ。
おまけにロボットに搭載されているAIが阿呆かっつーくらい同じエラーを延々と吐き出していやがった。
誰にでも分かるように俺流に意訳するとこんな感じだ。
「ご主人様、一体ここは何処なんですかー!?」
いや……そんな萌え萌えした愉快痛快なコミュニケーションAIなんざ搭載しちゃいねェが、大体はそんな感じだ。
つーか、基地から調査区域までの道筋はAIの誘導に従って来たのだから、何処ですかと俺に訪ねられても知らんよ。
奥さん見ましたか? 市民の皆様の血税で建造された高価な兵器に搭載された、これまた市民の皆様の血税で開発された高価なAIがお仕事中に迷子ですってよ!?
「これはもうクーデターを起こされて蜂の巣にされても文句言えんかも知れんね」
「ご主人様、当機には非殺傷型のカウンターテロウエポンが装備されてないので、装備改善を要求したいお年頃なるぃぃぃぃぃ!」
俺の独り言に対するAIの反応。勿論、俺なりの意訳だ。誰が見聞きしても分りやすいようにと配慮してみたわけが、
実際にAIがこんなことを口走った日にはスクラップ工場に着払いで送りつけてやらにゃならん。
それは兎も角だ。俺の言動に対し、現状の装備についての問題を切々と語り、アドバイスや提案を行うことが出来るって事ァ、
AI自体には問題は起こっていねェって事だ。
「此処は一体、何処なのよ?」
「何処なんですかー!?」
聞きたいのは俺だ。後、一々独り言に反応するなガラクタが、叩き壊すぞ。
「此処は一体、何処なのよ?」
「何処なんですかー!?」
聞きたいのは俺だ。後、一々独り言に反応するなガラクタが、叩き壊すぞ。
いや、職場の備品を壊しちゃマズイことになるから本当に壊しゃしねェが。もう良い大人ですし。良い歳して怒られたくないですし。減給とかマジ困りますし。
「AIの言語機能とコミュニケーション能力に異常は無ェか……外部とのネットワークが完全に遮断されている。
その上、今は調査区域にいる筈。だってのに……」
「経度と緯度の計測が出ー来ーなーいーっ! ってか、マジで此処どこー? さっきまでいたトコじゃ無くねーい?
Mr.エロス、こんな所に連れ込んで何企んでるのー?」
この様だ。ま、ネットワークから遮断されているって時点で大問題なわけだがねェ。
「一旦、調査区域から離脱する。AI、撤収用の信号弾」
バックパックに搭載されている二基一組のメインブースターを起動し、機体をゆっくりと上昇させながら、空に向かって信号弾を放つ。
唐突に豪雨が止んだせいか、何と無く周囲の景色が、がらりと様変わりしているような気がしなくも無いが、気のせいだ。多分。恐らく。きっと。
実は手取り足取りAI任せにして周りをよく見ていなかったので、あまり自信は無い。
撤退信号が空で弾けると密林の木々が小波のように揺れ、二つの影が勢い良く飛び出した。
そんなに慌てて飛び出て来なくても良いじゃない。僕から逸れた挙句、ネットワークから途絶されてそんなに寂しかったのかい?
可愛い所もあるなァなんて欠片も思わねェ。
「兄者ァァァァ!! 後方距離二十!! 超熱源反応ですぞォォォォォッ!!」
何度も言うが意訳だ。つーか、攻撃命令以前に攻撃許可なんぞ出しちゃいねェ。
理由も無く弾を使って怒られんのは小隊長の俺なんだからよ、勘弁してくれ。良い歳した大人なんだからよ、その辺、少しは分かれよ。つーか、マジで死ねよ。
「何をそんなにはっちゃけて……」
ド突き回してやろうと機体を反転させると俺の背後に並んで飛行しているのは俺の部下では無く……ささくれ立った棘の様な鱗を全身に纏ったトカゲだった。
いや、トカゲって言っても、手足の爪や顎に隙間無く生え揃った牙は研ぎ澄まされた刃物の様に鈍い光を放っている上に何故か腕の付け根、人間でいう肩甲骨の
辺りから翼が生えていて、極めつけは俺が乗っているロボットの全長が大体二十メートルくらいなんだがな、それよりもでけェわけで……トカゲ?
「何をそんなにはっちゃけているんだ、俺の脳」
自分の声がやたらと間抜けに聞こえた気がしたが、多分、これは気のせいじゃねェ。
「本当に此処は何処なんだろうねェ」
「ご主人様ーっ! 此処は……」
うるっせェし、何の解決にもならねェのでAIの動力を落とす。此処が何処かなんざ俺が教えて欲しい。
その上、今は調査区域にいる筈。だってのに……」
「経度と緯度の計測が出ー来ーなーいーっ! ってか、マジで此処どこー? さっきまでいたトコじゃ無くねーい?
Mr.エロス、こんな所に連れ込んで何企んでるのー?」
この様だ。ま、ネットワークから遮断されているって時点で大問題なわけだがねェ。
「一旦、調査区域から離脱する。AI、撤収用の信号弾」
バックパックに搭載されている二基一組のメインブースターを起動し、機体をゆっくりと上昇させながら、空に向かって信号弾を放つ。
唐突に豪雨が止んだせいか、何と無く周囲の景色が、がらりと様変わりしているような気がしなくも無いが、気のせいだ。多分。恐らく。きっと。
実は手取り足取りAI任せにして周りをよく見ていなかったので、あまり自信は無い。
撤退信号が空で弾けると密林の木々が小波のように揺れ、二つの影が勢い良く飛び出した。
そんなに慌てて飛び出て来なくても良いじゃない。僕から逸れた挙句、ネットワークから途絶されてそんなに寂しかったのかい?
可愛い所もあるなァなんて欠片も思わねェ。
「兄者ァァァァ!! 後方距離二十!! 超熱源反応ですぞォォォォォッ!!」
何度も言うが意訳だ。つーか、攻撃命令以前に攻撃許可なんぞ出しちゃいねェ。
理由も無く弾を使って怒られんのは小隊長の俺なんだからよ、勘弁してくれ。良い歳した大人なんだからよ、その辺、少しは分かれよ。つーか、マジで死ねよ。
「何をそんなにはっちゃけて……」
ド突き回してやろうと機体を反転させると俺の背後に並んで飛行しているのは俺の部下では無く……ささくれ立った棘の様な鱗を全身に纏ったトカゲだった。
いや、トカゲって言っても、手足の爪や顎に隙間無く生え揃った牙は研ぎ澄まされた刃物の様に鈍い光を放っている上に何故か腕の付け根、人間でいう肩甲骨の
辺りから翼が生えていて、極めつけは俺が乗っているロボットの全長が大体二十メートルくらいなんだがな、それよりもでけェわけで……トカゲ?
「何をそんなにはっちゃけているんだ、俺の脳」
自分の声がやたらと間抜けに聞こえた気がしたが、多分、これは気のせいじゃねェ。
「本当に此処は何処なんだろうねェ」
「ご主人様ーっ! 此処は……」
うるっせェし、何の解決にもならねェのでAIの動力を落とす。此処が何処かなんざ俺が教えて欲しい。
これはアレか? 怪獣映画に感化され過ぎた何処ぞのイタイお偉いさんが超大型生物兵器を本当に作っちゃったから、調査して来いとかそういう話だったってことか?
「つーか、熱源反応上昇中ってことは、やる気満々って事だよな? 阿呆の上層部め、そういう事は事前に言えよなァ。
叩き潰して良いかどうか判断に困るだろうが……」
二匹のトカゲっつーか、ドラゴンの顎が大きく開かれ、明らかに顔面の面積よりも遥かに巨大な火球が俺に向かって吐き出された。
「こいつァ、正気を疑うねェ……実は暴走中の新型兵器で中に要人が入ってまーすとか、撃破したら超スゲェ爆発するぜーとかだったらヤバいよなァ」
次々に放たれる火球を右へ左へと捌いていくが反撃はしない。責任問題とかも色々あるし、いざ色々と問われたら困るじゃん?
それに人型のロボットを使って当たり前のように戦争する世の中ですよ。目の前のドラゴンだって未知の生物ってよりも、
その手の趣向をお持ちの変態科学者が作り出した新型兵器という可能性も……考えたくないが、考えられなくもない。
叩き潰して良いかどうか判断に困るだろうが……」
二匹のトカゲっつーか、ドラゴンの顎が大きく開かれ、明らかに顔面の面積よりも遥かに巨大な火球が俺に向かって吐き出された。
「こいつァ、正気を疑うねェ……実は暴走中の新型兵器で中に要人が入ってまーすとか、撃破したら超スゲェ爆発するぜーとかだったらヤバいよなァ」
次々に放たれる火球を右へ左へと捌いていくが反撃はしない。責任問題とかも色々あるし、いざ色々と問われたら困るじゃん?
それに人型のロボットを使って当たり前のように戦争する世の中ですよ。目の前のドラゴンだって未知の生物ってよりも、
その手の趣向をお持ちの変態科学者が作り出した新型兵器という可能性も……考えたくないが、考えられなくもない。
本当に叩き潰してしまっても良いのかね、コレ。
「まー、だけどォ? 実際に攻撃を受けている真っ最中なわけで……だったら反撃して、ぶっ殺……じゃなくて、ぶっ壊してやりたくなんのが人情だよなァ」
殺る気メーターがゲージMAXに近付きつつあるが、本当に反撃しても良いのやらと悩んでいると辺り一面が真っ黒な影に覆われる。
殺る気メーターがゲージMAXに近付きつつあるが、本当に反撃しても良いのやらと悩んでいると辺り一面が真っ黒な影に覆われる。
上空から続々と降り立つドラゴンの大群。これが全部、俺好みの美女の大群なら燃え滾り過ぎて燃えカスになるところなんだが……
「全く、現実ってのは世知辛いねェ……つーか、AIに内部機構を調べさせりゃ、アレの正体なんて一目両全じゃねェか」
何で今頃気付いた俺。さっさと気付け俺。だけど、反省は後回しだ俺。気を取り直してAIの動力スイッチをオンだ俺。
「アンタ、イキナリ手順も踏まずに動力を落とすとか、どういう神経してんのよ!? 馬鹿なんじゃないの!? ホント信じらんない!!
アンタみたいな原始人の言うことなんて誰が聞いてやるもんですか!! 私が機嫌を直すまでの約五分!! 死ぬ程、反省しなさい!!」
再び、AIの動力オフ。どうやら無理矢理動力を落としたせいでシステムのエラーチェックに五分かかるらしい。大昔のパソコンかっつーの。
そのまま、ぶっ壊れてしまえ。
「ファイアリングロック解除。已むに已まれぬ事情、不幸な出来事。そして何よりも……もう面倒臭ェから撃ーつぜーい」
まあ、人生なんてのはだ。それなりにやれば、それなりの結果が付いて来て、大体、どうにかなる様に出来ているもんだ。
何で今頃気付いた俺。さっさと気付け俺。だけど、反省は後回しだ俺。気を取り直してAIの動力スイッチをオンだ俺。
「アンタ、イキナリ手順も踏まずに動力を落とすとか、どういう神経してんのよ!? 馬鹿なんじゃないの!? ホント信じらんない!!
アンタみたいな原始人の言うことなんて誰が聞いてやるもんですか!! 私が機嫌を直すまでの約五分!! 死ぬ程、反省しなさい!!」
再び、AIの動力オフ。どうやら無理矢理動力を落としたせいでシステムのエラーチェックに五分かかるらしい。大昔のパソコンかっつーの。
そのまま、ぶっ壊れてしまえ。
「ファイアリングロック解除。已むに已まれぬ事情、不幸な出来事。そして何よりも……もう面倒臭ェから撃ーつぜーい」
まあ、人生なんてのはだ。それなりにやれば、それなりの結果が付いて来て、大体、どうにかなる様に出来ているもんだ。
サイドブースターを点火、ドラゴンの群れから一気に距離を引き離し、機体の腰部にマウントされた黒くて、太くて、堅くて、早いアレ。
ガトリングレールガンを構える。
六基の銃身が回転を始めると共に銃口から蒼白のプラズマを迸らせながら無数の弾丸が吐き出され、ドラゴンの表面を容赦なく蹂躙していく。 土色の表皮が爆ぜ、フレッシュな肉片と真っ赤な鮮血がド派手に飛び散る。
「赤い血……生体兵器っつーか、構成物質ナマモノ100%って事ァねェだろうなァ!?」 いやいや、無ェだろ。無い無い。きっと無い。
無駄によく響く悲しげな叫びが所謂、断末魔の悲鳴に聞こえるが、きっと気のせいだ。ただの演出だ。
無駄によく響く悲しげな叫びが所謂、断末魔の悲鳴に聞こえるが、きっと気のせいだ。ただの演出だ。
ドラゴン達が翼を派手に動かし、喉を震わせて唸り声を上げて、「俺様大激怒!!」と全身で主張しているようにも見えるのも多分、目の錯覚だ。 AIを起動したいような、起動したくないような気分になる。 何と言うか中にコクピットブロックがあるよーとか、制御用AIが搭載されているぜーとか、撃破したら爆発するから気を付けろーみたいな
身体の何処かにメカニカルな部分があるとか、人為的な痕跡があるとかそんな感じの情報プリーズ。
「思っくそ、肉片とか血とかモツが溢れているが生物兵器の類だよな? ……な?」
「思っくそ、肉片とか血とかモツが溢れているが生物兵器の類だよな? ……な?」
俺の疑問に答えてくれる奴はいない。ネットワークから切り離されているせいで通信も出来やしない。 実はコレ、ドッキリなんですよーとかそういう超展開希望。それこそ無ェな。そんな展開、温厚な事で有名な刹羅さんだって流石にブチギレして羅刹になりますよ。 血税使って何遊んどんのじゃ、このアホンダラ。そんな無駄金があんなら俺の給料増やせや、クソッタレってな感じにな。 そうこうしている間にもガトリングレールガンの回転が停止。濁流の様に迸っていたプラズマも大人しくなった。所謂、弾切れって奴だ。正にろくでも無ェ展開だ。
「だから、時代遅れの実弾兵器を持ち歩くのは嫌なんだよ……!!」
だからと言って調査任務如きでビーム兵器を持ち歩かせてもらえる程、軍は下っ端に優しい組織でもねェがな。
だからと言って調査任務如きでビーム兵器を持ち歩かせてもらえる程、軍は下っ端に優しい組織でもねェがな。
それに時代遅れでも何でも軍の装備って奴は何かと高価だ。まあ、弾切れのガトリングレールガンを後生大事に持っていても仕方がねェので
投げ捨てるに限るがな。重いし。
落下の衝撃で壊れてしまったらゴメンナサイ。忘れてなければ多分、後で回収します。
「それ以前にコレを切り抜けて生き延びねェと、弾使ってゴメーン、武器壊してゴメーンとも言えねェしなァ」
落下の衝撃で壊れてしまったらゴメンナサイ。忘れてなければ多分、後で回収します。
「それ以前にコレを切り抜けて生き延びねェと、弾使ってゴメーン、武器壊してゴメーンとも言えねェしなァ」
機体の手首から短刀を引き抜き逆手に構える。世知辛い話だが、これしか武器が残ってねェ。
「イヤなモノを見てしまいそうだ……」
ほら、脈動する臓器とか生物兵器にあるまじきモノが付いているとか……って言っている時点で認めているようなモンだよなァ……やっぱりアレか?
「ホントによォ、いつから地球はワクワク怪獣ランドになったんだろうねェ」
メインブースター最大出力でドラゴンの懐に飛び込み、高周波震動ダガーを水平に突き刺す。
メインブースター最大出力でドラゴンの懐に飛び込み、高周波震動ダガーを水平に突き刺す。
刀身の激しい震動にドラゴンの腸《はらわた》がズタズタに引き裂かれ、切断面から鮮血が悲鳴と共に溢れ出した。 ダガーを握る五本指のマニピュレーターを固定。サイドブースターを右方向に吹かしてドラゴンの腹を横一文字に掻っ捌くと、
溢れ出す鮮血を頭から被るが泣きながら掃除するのはむさ苦しい油ギッシュな整備の人間だ。俺の知った事じゃねェ。
次の標的を見定めた瞬間、コクピット内に激しい衝撃と共に全周囲モニターにノイズが走り抜けた。
「クソッタレがァッ!!」
腹の中身をズタズタにされ、絶命寸前のドラゴンがもがき苦しんだ拍子に巨木の様な翼と、チェーンフレイルの様な尻尾が機体の背後を半ば不意討ち気味に打ち据えた。 不幸な出来事はそれだけじゃねェ。背後に痛烈な一撃を喰らった瞬間、背中に背負ったバックパックから嫌な音がした。でもって、機体が背中から密林に向かって落下開始。
「メインブースター大破だァ!?」
ヤケクソ気味に叫んでみたが何の解決にもなりゃしねェ。解決にならねェが時には叫ばねばやってらんねェって時もある。今がその時だ。
ヤケクソ気味に叫んでみたが何の解決にもなりゃしねェ。解決にならねェが時には叫ばねばやってらんねェって時もある。今がその時だ。
せめて体勢を立て直し、着地……墜落の衝撃に備えようとするが愉快痛快なことにサイドブースター、姿勢制御スラスターも仲良くご昇天召されていた。クソッタレが。
「これは本当にどうにもならんね」
人間、諦めが肝心。どうしようも無い時は素直に受け入れよう。意外とそれでなる様になる時もある。
人間、諦めが肝心。どうしようも無い時は素直に受け入れよう。意外とそれでなる様になる時もある。
背中から密林の大地に墜落し、ケツを突き上げるような激しい衝撃に必死に耐える。 つーか、普通、鳥獣退治ってのは軍じゃ無くてお役所の仕事なんじゃねーのか? 今すぐ職員総出で退治しろ。してくれ。して下さい。お願いします。いや、割とホントに切羽詰ってるんで。同じ公務員のよしみだろ? どんなに泣き言を漏らしても、誰も助けにきちゃくれねェし、ドラゴン達は翼を大きく広げ、悠々と滑降しながら密林の木々を踏み倒し、
大地に爪痕を刻んでいくわけで。
何処を見ても獰猛なドラゴンが迫る光景が視界に映り込んで来て、どうしようも無ェ。 完全包囲。これぞ正しく大ピンチって奴だ。機体のコンディションも宜しく無ェってのに、こればっかりは本当にどうしようも無く無理無理君だ。
「ギブアップは……受け付けてくれそうにもねェか。いや、本当に参ったね」
「ギブアップですかー? 受け付けますよー?」
「ギブアップですかー? 受け付けますよー?」
機体の後部シートから女の子の甘い声がした。後ろを振り向くと十歳くらいの金髪の幼女がヘッドレストから顔を出して、
人懐っこそうな無邪気な笑顔を浮かべていた。
「なァッ!?」
「なァッ!?」
それにしても人間ってのは面白い生き物で、ドラゴンなんて非現実的なモノに包囲されマジでくたばる寸前だってのに、
俺の頭からはドラゴンの脅威なんてものは血の気と共に完全に消え失せていた。
それよりも、軍の作戦行動中に軍事機密の塊とも言える機動兵器の、よりにもよって俺の機体のコクピットの中に部外者が紛れ込んでいることの方が、
ずーっとヤバイ。
同乗者が部外者ってだけでも大問題だってのに乗っているのはゴシックロリータ風のドレスに身を纏った女の子だ。幼女だ。ほら、奥さん子供ですよ。
「俺の意志で好き好んで乗せたんじゃない!! 気が付いたら俺の機体に女の子が乗り込んでいたんだ!!」
とか、何とか言ったところで、そんなの一体何処の誰が信じるって言うんだ? 少なくとも俺なら絶対に信じねェ。
とか、何とか言ったところで、そんなの一体何処の誰が信じるって言うんだ? 少なくとも俺なら絶対に信じねェ。
何処からどう見たって俺が乗せた。連れ込んだ。攫ってきた様にしか見えねェし、服装だって俺の趣味と決め付けられるに決まっているんだ。 これが明るみに出たら始末書は何枚だ? いや、軍法会議にかけられて収容所か? いやいや、幼女性愛者の烙印を押されたままクビになって野ざらしか?
このご時世にそんな烙印と共に放り出されても困る。刹羅さんはこれ以外に食い扶持を稼ぐ術がないので、とっても困る。
兎に角、世の中はロリコンに冷たい。つーか、俺、ロリコンじゃねェから。 困る。非常に困る。兎に角、困る。とても困った。ドラゴンなんて非現実的な脅威よりも明日からの糧が無くなるかも知れないという現実的な脅威の方が圧倒的に厄介だ。 勝っても地獄。負けても地獄。世の中ってのは大体、どうにかなるように出来ちゃいるが、出来ないときは本当に、トコトンまで、どうにもならない。
「もしもーし、聞いてますー? ギブアップの受付中ですよー?」
トコトンまで、どうにもならないようでどうにかなるのが世の中だったりもするがな。
トコトンまで、どうにもならないようでどうにかなるのが世の中だったりもするがな。
俺の機体に突如として潜り込んできたゴシックロリータ風のドレスを身に纏った金髪、垂れ目の幼女。これが幻想種の長、来須との出会いだった。 なんでも来須は初めて見る機動兵器の存在に興味を持ち、ドラゴンを率いて攻撃を仕掛けてみたらしい。 興味を持って攻撃を仕掛けるたァ一体、どういう了見だ? 保護者、ちょっと面貸せ。
それは兎も角、こんなガキにドラゴンを率いることが出来てたまるかと思ったが、
実際に目の前で来須がドラゴンを自由自在に操る姿を見せ付けられちゃあ信じるしかねェし、疑ってばかりじゃキリがねェし、話が進まねェ。
実際に目の前で来須がドラゴンを自由自在に操る姿を見せ付けられちゃあ信じるしかねェし、疑ってばかりじゃキリがねェし、話が進まねェ。
何よりも、俺の脳の許容限界的にさっさと受け入れて楽になりたかった。 そっから先は来須に連れられ人里へ、舗装すらされていない道路沿いに黄金色の瓦の真ん中に龍の石造が鎮座し、赤に塗られた柱に白塗りの壁。
大きさの差こそあれど同じデザインの建築物が、まるで兵隊の整列の様に整然と並び建っている。
そのクセ、往来を行き交う人々の装いは建物とは裏腹に規則性が無く。着物や袴に甚平を着ている奴がいるかと思えば
プレートメイルを身に纏っている奴とかドレスで着飾った貴婦人が一緒くたになって歩いている。
最初は軍服で人里を出歩くことに若干の抵抗があったんが俺や来須の格好を気にする様な奴はいなかった。
(まあ、何故か裸族が普通に解け込んでいるくらいだしなァ)
いや、これは気にするべきだと思うんだがな。
突っ込みの一つでも入れてやろうかと思ったが、関わるとロクな事が無さそうだったので放置して、来須の手に引かれるまま入った店の中身ってのが、
蓮の花が浮かぶ広大な池だった。
「いやいや、待て待て待て。広さとか色々おかしいだろうが!?」
外から見た建物の大きさは精々、3メートル四方の犬小屋だったにも関わらず、店の中の広さは3メートル四方どころじゃ効かねェ。
いや、これは気にするべきだと思うんだがな。
突っ込みの一つでも入れてやろうかと思ったが、関わるとロクな事が無さそうだったので放置して、来須の手に引かれるまま入った店の中身ってのが、
蓮の花が浮かぶ広大な池だった。
「いやいや、待て待て待て。広さとか色々おかしいだろうが!?」
外から見た建物の大きさは精々、3メートル四方の犬小屋だったにも関わらず、店の中の広さは3メートル四方どころじゃ効かねェ。
地球統合軍兵舎前のトラックが一周2kmなんだが、それと同じくらいの広さがある。 極めつけは天井が無く大空が広がっている。 俺の記憶と目と頭が狂って無ければ、この店の建物の天辺は悪趣味な金色の瓦に敷き詰められていて、その中心には龍の石造があった筈だ。
もう一度、外観を確認してみようと背後を振り返って……今度は絶句した。
だだっ広い空間に縦横3m程の暖簾がかかった壁が下手糞な合成画像をはめ込んだかの様に浮かんでいた。
いや、浮かんでいたじゃなくて、一体全体、何がどうなっていやがる!?
「こっちですよー」
俺の戸惑いなんぞ何処吹く風。来須は間延びした声と、のほほんとした調子で、いかだの上に俺を引っ張った。いかだって言ってもビロードの絨毯が敷かれ、
その上にはティーセットが乗った真っ白なテーブルとイスが置かれている。
だだっ広い空間に縦横3m程の暖簾がかかった壁が下手糞な合成画像をはめ込んだかの様に浮かんでいた。
いや、浮かんでいたじゃなくて、一体全体、何がどうなっていやがる!?
「こっちですよー」
俺の戸惑いなんぞ何処吹く風。来須は間延びした声と、のほほんとした調子で、いかだの上に俺を引っ張った。いかだって言ってもビロードの絨毯が敷かれ、
その上にはティーセットが乗った真っ白なテーブルとイスが置かれている。
俺と来須がイスに座るなり、いかだは独りでに揺れる事無く、ゆっくりと動き出した。 周りを見渡すと俺たちと同じような調子で茶の湯を啜りながら
談笑に興じている連中が何組もいた。何かよく分からんがコレはそういうモノらしい。
「建物内の空間を拡張して景色情報の構築。此方側の世界の代表的な建築技法によって作られた水上喫茶店ですよー。驚きましたかー?」
「建物内の空間を拡張して景色情報の構築。此方側の世界の代表的な建築技法によって作られた水上喫茶店ですよー。驚きましたかー?」
成る程。大いに驚きはしたが来須の言っている意味が全然、分からん。
「貴方のお常識とは大きくかけ離れた生物、町並み、建築物を見せてからの方が、お話もスムーズに進むかと思いましてー、
もしかして余計にお混乱させてしまいましたかー?」
「って言われてもねェ……」
もしかして余計にお混乱させてしまいましたかー?」
「って言われてもねェ……」
結論から言えば、俺は管理世界ヴァルハラと呼ばれる地球とは全く異なる異世界に迷い込んでしまったのである。以上。おしまい。
……なんだそりゃ? ありえんわ。
ありえんのだが、実際に異世界に来てしまったのだから仕方が無い。 もしかしたら、ただ単純に俺が不愉快絶頂極まるなクソみたいな夢を見ているのかも知れねェ。はたまた密林地区の調査中、迂闊にも敵の催眠兵器を喰らって
阿呆丸出しの幻覚を見せられているのかも知れねェ。ひょっとするとここが死後の世界かも知れねェ。
確実に言えることは今、俺がいる場所は地球のどこでも無ェってこった。 つーか、こんな妙な建物や立ち並んで、妙な生き物が跋扈している世界が地球上にあってたまるか。
「それで? そんな説明をして俺に何をやらせるつもりだ?」
「はいー。元の世界にお戻りたいですよねー?」
「いや、別に?」
「だったら、私のお願い……って、あれぇー?」
俺の反応が予想外だったのか来須は驚いて……驚いているんだよな? 気の抜けた声と表情を浮かべ、若干、目を見開き、テーブルの上に身を乗り出した。
「衣食住の確保さえ出来れば何処だって同じだしなァ……まあ、衣食住の保障さえしてくれれば、お嬢ちゃんの言う事を聞いてやっても良いが、どうするよ?」
「はいー。元の世界にお戻りたいですよねー?」
「いや、別に?」
「だったら、私のお願い……って、あれぇー?」
俺の反応が予想外だったのか来須は驚いて……驚いているんだよな? 気の抜けた声と表情を浮かべ、若干、目を見開き、テーブルの上に身を乗り出した。
「衣食住の確保さえ出来れば何処だって同じだしなァ……まあ、衣食住の保障さえしてくれれば、お嬢ちゃんの言う事を聞いてやっても良いが、どうするよ?」
俺の帰りを待つ人間もいない。俺がいなくなって困る人間もいない。哀しむ人間もだ。
貧乏でも無く、裕福でも無く、取り合えず飢えに苦しむこと無く食っていければ地球だろうが異世界だろうが俺にとっては似たようなもんだ。住めば都って言うしな。
寧ろ、裸族ですら受け入れられるような世界なら、地球みたく職歴がーとか、学歴がーとか、戸籍が云々ーとか無さそうだしな。
寧ろ、裸族ですら受け入れられるような世界なら、地球みたく職歴がーとか、学歴がーとか、戸籍が云々ーとか無さそうだしな。
何と無く、生きるのが楽そうに見える。
後々になって考えたことなんだが、こういう物の考え方をしているから、こんな訳の分からねェ、トチ狂った愉快な世界に引きずり込まれたのかも知れねェな。
まあ、それはさて置きだ。それなりにやっていけるんだったら何でも良いって事で、俺はヴァルハラの住人として、それなりにやっていく事を決意したというわけだ。
まあ、それはさて置きだ。それなりにやっていけるんだったら何でも良いって事で、俺はヴァルハラの住人として、それなりにやっていく事を決意したというわけだ。
で、それなりにやっていく為の役割って奴を掻い摘んで俺流に意訳を込めて説明するとだ。世界って奴は幾千幾万と異なる次元で複雑に絡み合っている上に、そよ風が吹けば周囲の世界を巻き込みながら一気に崩壊する程、危ういバランスの上で成り立っているらしい。 大雑把に言えば、ジェンガの後半戦みたいな感じだろ。多分。 そして、それを未然に防ぐのが世界の管理者たる存在、来須なわけだが、出鱈目の化身でも、万を越える異世界の数々を管理するのは面倒な事この上無く、
一人でやるのは骨が折れるんだと。
いや、管理者ならそこは面倒とか言わずに骨を折れよって感じなんだが、このよく分からん生き物は全世界を管理し易くするためのシステムを構築する為に、
この管理世界ヴァルハラを生み出したらしい。色々とありえん。
来須曰く、
「世界は破壊と創造。つまり、闘争と平和のバランスで成り立っているのでー、管理し易いように様々な世界の戦争と平和を管理世界の住人の行動で間接的に干渉出来るようにしたんですよー」
とのことだ。
とのことだ。
管理世界の人間が平和に暮らしていれば他の世界も平和になり、管理世界の人間が戦争を起こせば、別の世界でも戦争が勃発するという仕組みらしい。 何で、そんな事をせにゃならんのかと言うと生き物の中身、魂とやらは総数が決まっていて、定期的に戦争を起こして一気に死者を出して
魂を余所の世界へと循環させねェと他の世界が魂不足を起こして、新たに生命が生まれず崩壊するんだと。
更に一つ世界に魂を受け入れることの出来る容量が決まっているそうで、平和が続いて徒に産めや増やせと魂ばかりが増え続けると世界が沈没するらしい。
地球でも伝説的な某大陸のように。
別に沢山、世界がとあるなら異世界の一つや二つ、滅んでも気にしなきゃ良いだろと言いたい所なんだが、
世界って奴はジェンガの後半戦の様に非常に危ういバランスで成り立っているって言ったろ?
つまり、異世界だの平行世界が無数に近い数程あるとは言え、たった一つの世界が滅ぶだけで連鎖的に無数に近い世界がまとめて薙倒され、
滅んでしまうってわけだ。
そして、あふれ出した大量の魂が運良く難を逃れた世界へと循環されオーバーロードを起こして以下省略……
だから、困った事にならねェように意図的に戦争と平和を繰り返さにゃならんのだが、一つばかり疑問が浮かび上がる。
物事の善悪はさて置き、管理世界が持つ性質上、住人は状況に応じて来須が命じるがまま戦争を起こしたり、平和に暮らしたりを繰り返さなければならねェわけだ。 で? 何処の誰が好き好んで戦争をするのかって事だ。 そして、殺し合った後で仲睦まじく暮らせと言われて出来るモンなのかって事もだ。 そりゃあ、夕日の浮かぶ河原で殴り合った後なら親友にもなれるかも知れないけどよ。
だから、聞いてみたのさ。「この世界の住人は皆、お嬢ちゃんの操り人形なのかい?」ってな。
非常に手狭とは言え、世界を作ったほどの化物だ。何が出来てもおかしくは無ェ。素直に言うこと聞いてやるから操り人形だけは勘弁してもらいたいだろ?
尤も、俺の問いかけに対する答えは、何つーか、バカみてェなモンだった。
「ただでさえ、お独り身こじらせて死にそうなのに、意志を持たないお人形を並べたら孤独まで併発して、今度こそ本当に死んでしまうじゃないですかー。
私が死んだら、お困ったことになりますよー?」
ご尤もだ。ご尤もだが、彼氏イナイ歴カウント不能世紀の行かず後家の都合で振り回される方は堪ったモンじゃない。
「だからー、私もみんなにお納得してお協力してもらえるように誠心誠意、真心込めて一生懸命に頑張っているんですよー」
「ただでさえ、お独り身こじらせて死にそうなのに、意志を持たないお人形を並べたら孤独まで併発して、今度こそ本当に死んでしまうじゃないですかー。
私が死んだら、お困ったことになりますよー?」
ご尤もだ。ご尤もだが、彼氏イナイ歴カウント不能世紀の行かず後家の都合で振り回される方は堪ったモンじゃない。
「だからー、私もみんなにお納得してお協力してもらえるように誠心誠意、真心込めて一生懸命に頑張っているんですよー」
と、そんな感じで誠心誠意、真心を込めて一生懸命に頑張った結果、ヴァルハラの住人は病気や怪我をしても寿命以外では決して死ぬことがなくなってしまった。 全身をガン細胞に侵されようと瞬時に肉体は正常化し、ミサイルの爆心地で粉々にされようとも瞬時に再構築されるんだと。
「死なないから死んでも怖くない!」
なーんて事を飄々と言える程、この世界に馴染んでいるわけじゃないのでナンだが、この世界の住人にとって戦争なんてのは一種のスポーツみたいなモンなんだと。 すぐに治るって言っても怪我すりゃイテェし、病気すりゃ苦しいと思うんだがね。 この世界の住人は頭のネジを生まれてくる時に五~六本落としてきたのか、それとも、頭のネジを残り一本になるまで外されたのか知らねェが、
戦争を娯楽扱いしている。
「戦いと遊びを一緒にするなッ!!」とか空気を読まずに叫んでみても良いが、ヴァルハラが作られた経緯が経緯だ。
遊びと一緒にしてしまった方が良いってことなのかも知れねェな。
「戦いと遊びを一緒にするなッ!!」とか空気を読まずに叫んでみても良いが、ヴァルハラが作られた経緯が経緯だ。
遊びと一緒にしてしまった方が良いってことなのかも知れねェな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
説明&過去の振返り完了。そろそろ、話を元に戻そうか。 今この場には俺を含めて三人の人間がいる。この面子が今回の人間サイドの総戦力だ。
これから、俺達は幻想種サイドで戦争を引き起こした張本人をとっちめるってのが今回の戦争筋書きだ。
戦争の本当の元凶は目の前にいる管理者サマなのだが、娯楽らしく気分を盛り上げるための簡単な動機付けって奴らしい。 因みに幻想種ってのは鬼とか悪魔、天使や俺がヴァルハラで一番最初に戦ったドラゴンといった人間の空想によって生み出された生物や擬人化された物体の総称だ。 ソイツ等の大軍団を率いる総大将が悪さしているから少数人数の人間でとっちめてヴァルハラに平和を取り戻せってのが大雑把且つ、メジャーなルールらしい。 何が悲しくて、人間の力を遥かに超越した化物を相手に、たったの三人で挑まにゃならんのだと声を大にしてみたい……いや、別にどうでも良いが。
「例え神様であっても、所詮は人間が産み出した空想の産物でしか無いわけでー、真の創造主たる人間が幻想相手に敗北する道理は全く無いのですよー。ほらー、物語でも大抵は人間が解決してハッピーエンドで終わるじゃないですかー?」
確かに人間が神を滅多クソにブチ殺す物語が無いわけじゃねェ。
確かに人間が神を滅多クソにブチ殺す物語が無いわけじゃねェ。
例え、空想上の架空の物語であっても人間が勝利したという前例がある限り、その幻想種は人間にとって絶対的な存在と成り得ることはない……らしい。 取り合えず、管理世界での人間の扱いは幻想種達曰く「原典・原初にして餌であると共に天敵。立ち位置のはっきりしない意味不明の幻想種」という事で、
ある種のビックリ箱みたいな〝幻想種〟それが人間ってことらしい。
空想上の存在から空想上の存在扱いされるのも妙な気分なんだが、
「これだけ多くの異世界があるんですよー? 人間を架空の存在として扱っている世界もあれば、人間を破壊と創造を象徴する神として神格化し、
お信仰している世界もあるのですよー」との事で世界が変われば常識も変わるってことだ。何と無く、むず痒い話だがな。
それはさて置き、管理世界ヴァルハラにとって人間もまた誰かの空想から生まれた最強の幻想種なんだから、他の幻想種とガチでやり合って勝ち目が無いわけねェだろーが。
グダグダ抜かしてないで、さっさとぶっ殺してこいや。このアホンダラがというのが来須の主張だ。
空想上の存在から空想上の存在扱いされるのも妙な気分なんだが、
「これだけ多くの異世界があるんですよー? 人間を架空の存在として扱っている世界もあれば、人間を破壊と創造を象徴する神として神格化し、
お信仰している世界もあるのですよー」との事で世界が変われば常識も変わるってことだ。何と無く、むず痒い話だがな。
それはさて置き、管理世界ヴァルハラにとって人間もまた誰かの空想から生まれた最強の幻想種なんだから、他の幻想種とガチでやり合って勝ち目が無いわけねェだろーが。
グダグダ抜かしてないで、さっさとぶっ殺してこいや。このアホンダラがというのが来須の主張だ。
力のアドバンテージは互いに無いも同然なのは良いとして、俺以外の二人はご趣味が非常に残念な未成年ときているが、これにも理由がある。
「幻想種を滅ぼすのに年齢や性別、知識や経験、才能はお不要なのですよー。人間であるという事以上に幻想種を滅ぼす資質はありませんしー。
現に滅ぼした幻想種の数だけならば人間の右に並ぶ幻想種は存在しませんからねー」
年齢や性別、経験に不釣合いな完全無欠の主人公のような存在。それが戦争ゲームに参加する人間で、それが二人か三人いればイーブンなんだとよ。
現に滅ぼした幻想種の数だけならば人間の右に並ぶ幻想種は存在しませんからねー」
年齢や性別、経験に不釣合いな完全無欠の主人公のような存在。それが戦争ゲームに参加する人間で、それが二人か三人いればイーブンなんだとよ。
信じられない話だが、俺の身の上も含めて信じられない話だ。最早、今更って奴だな。 それに、この世界を創った来須が決めたルールだ。実際の実力や才能、経験なんてのは本当に、どうだって良いことなんだろうよ。 どうせ、俺のことも「異世界から迷い込んできた人間だなんて主人公っぽくて良いお感じですー」とか、そんな感じの適当な理由で
戦争のプレイヤーとして選んだに違いねェ。 多分、これがゲームだったら、俺の職業は主人公とか身も蓋も無いステータスなんだろうよ。
何せ製作者が来須なんだからな。
何せ製作者が来須なんだからな。
まあ、管理戦争に加担して飯食ってく以上、あまり悪態ばかり吐いてもいれ無ェがな。
「まあ、アレだろ? 今回はヴァルハラの西半分を支配するメアリー・バイロンってェ吸血鬼のお姫様がヴァルハラ全土の支配を目論んでいるから、
張っ倒して尻を引っ叩いてこいってことでで良いんだよな?」
「はいー。大体はそんな感じで。今回は刹羅君の管理戦争参加記念接待試合みたいなものなので気楽にやっちゃって下さいねー」
「初参加の人間に相手にいきなりメアリーは厳しいんじゃないのか? どう考えても接待試合なんかにならないだろ」
俺でも知っているようなメジャーな幻想種、吸血鬼が相手で安心していると高山病を患って喜ぶドマゾの芹菜が異論を口にした。
張っ倒して尻を引っ叩いてこいってことでで良いんだよな?」
「はいー。大体はそんな感じで。今回は刹羅君の管理戦争参加記念接待試合みたいなものなので気楽にやっちゃって下さいねー」
「初参加の人間に相手にいきなりメアリーは厳しいんじゃないのか? どう考えても接待試合なんかにならないだろ」
俺でも知っているようなメジャーな幻想種、吸血鬼が相手で安心していると高山病を患って喜ぶドマゾの芹菜が異論を口にした。
俺としては、ドマイナーでマニアックな幻想種よりはずっと戦い易く、御し易い相手と思ったが、あからさまに嫌そうなツラをしている辺り、
メアリーってのはとんでもねェ強敵らしい。
まあ、ヴァルハラの西側を支配しているんだ。当然と言えば当然か。
「奴が怖いのなら家の隅で頭を隠して脅えていろ。奴の首は私が取る」
芹菜とは対照的に相手がメアリーだと知った初音は、二時間待たされたことの怒りなどすっかりナリを潜め剣呑な表情で笑みを浮かべた。
腰に差したポン刀と合わせて心強い。
「新入りの刹羅の前で良い格好したい気持ちは分かるけどさ、出来もしないこと言ってたら後で恥ずかしくないかぁ?」
前言撤回。芹菜の指摘に短く呻いて顔を赤くしている初音を見る辺り、接待するのは人間側になるんじゃねェのかと思えてくる。
「けど、戦績で言えば芹菜が奇跡的に一度だけメアリーちゃんを撃破してますねー」
「その後で三回殺されたけどな」
ありえねェ。ヘラヘラとしたツラで殺されたと言える神経がありえねェ。
「貴様が調子に乗って奴の城で我が物顔で好き勝手に振舞ったのが原因だろう? 寧ろ、私には二ヶ月も貴様の暴挙に耐え忍んだ奴の忍耐力の方が奇跡に思えるよ」
「普通に戦ったんじゃ勝ち目は無いか……けどよ、この世界の戦いは競技で娯楽だ。人間側から出せる戦力は毎回、二人から三人って
ルールが定められている以上、この人数で、この面子で勝てるって事じゃねェのか? でねェと、ゲームが成り立たねェよなァ?」
俺の問いかけに、芹菜と初音が来須に視線を向けると、わざとらしい表情で顔を逸らした。
「まー、別に隠すようなことでも無いのでー、ネタをばらしておきますけどー、そんな感じで合ってますよー。大体はー」
芹菜とは対照的に相手がメアリーだと知った初音は、二時間待たされたことの怒りなどすっかりナリを潜め剣呑な表情で笑みを浮かべた。
腰に差したポン刀と合わせて心強い。
「新入りの刹羅の前で良い格好したい気持ちは分かるけどさ、出来もしないこと言ってたら後で恥ずかしくないかぁ?」
前言撤回。芹菜の指摘に短く呻いて顔を赤くしている初音を見る辺り、接待するのは人間側になるんじゃねェのかと思えてくる。
「けど、戦績で言えば芹菜が奇跡的に一度だけメアリーちゃんを撃破してますねー」
「その後で三回殺されたけどな」
ありえねェ。ヘラヘラとしたツラで殺されたと言える神経がありえねェ。
「貴様が調子に乗って奴の城で我が物顔で好き勝手に振舞ったのが原因だろう? 寧ろ、私には二ヶ月も貴様の暴挙に耐え忍んだ奴の忍耐力の方が奇跡に思えるよ」
「普通に戦ったんじゃ勝ち目は無いか……けどよ、この世界の戦いは競技で娯楽だ。人間側から出せる戦力は毎回、二人から三人って
ルールが定められている以上、この人数で、この面子で勝てるって事じゃねェのか? でねェと、ゲームが成り立たねェよなァ?」
俺の問いかけに、芹菜と初音が来須に視線を向けると、わざとらしい表情で顔を逸らした。
「まー、別に隠すようなことでも無いのでー、ネタをばらしておきますけどー、そんな感じで合ってますよー。大体はー」
そこで一旦、言葉を区切り、来須はわざとらしく咳払いをして目尻を吊り上げて口を開いた。まだ垂れてるがな。
「と言うか、人間が負けすぎるせいでメアリーちゃん、支配者辞めたーいなんて言い出してお困らされているんですよねー。
刹羅君が持ち込んだロボットにお興味を引かれている内に勝ってしまって下さいねー?」
だったたら、吸血鬼のお姫様も負けてやりゃ良いのに気が利かねェなって言うのは流石に野暮だろうか?
刹羅君が持ち込んだロボットにお興味を引かれている内に勝ってしまって下さいねー?」
だったたら、吸血鬼のお姫様も負けてやりゃ良いのに気が利かねェなって言うのは流石に野暮だろうか?
さっきまで好き勝手に喋っていた芹菜と初音が気まずそうに押し黙っているのを察するに主だった人間サイドのプレイヤーは
色々とよろしくない立場に晒されているらしい。
基本的にこの世界の連中は怪我してもすぐに治るし、死なないって性質もあってか好戦的な奴が多く、挨拶代わりに喧嘩を吹っかけられたりなんてことだって
珍しいことじゃねェが、戦争までに発展させたいと望む奴は極僅かだ。
ヴァルハラにおける戦いってのは一種のコミュニケーションで戦争は学生の運動会みたいなもんだ。 そして、遊びの競争って奴は同レベルの奴同士が揃って初めて成立するもんだ。負けが続いている人間との勝負を義務だけでやらされ、
楽しめていないってところか。
「じゃあ、アレか? メアリーってお姫様は人間の戦力に油断し、侮りってのを通り越して只管、面倒臭いってだけにしか思っていないってわけか」
「そうなんですよー。その通りなんですよー。それに支配者ってー、お聞こえは良いですけどー、やっていることは刹羅君風に言うとクラス委員とかー、
体育祭の実行委員みたいなものですしー」
「相手が弱すぎて、胸を躍らせながらイベントの準備をするのも阿呆らしいってか」
「基本的に群れたりー、何かを統べたり出来るカリスマを持つ幻想種って代用が効き難いからー、お勝手に支配者を辞められても困るんですよー!!」
「じゃあ、アレか? メアリーってお姫様は人間の戦力に油断し、侮りってのを通り越して只管、面倒臭いってだけにしか思っていないってわけか」
「そうなんですよー。その通りなんですよー。それに支配者ってー、お聞こえは良いですけどー、やっていることは刹羅君風に言うとクラス委員とかー、
体育祭の実行委員みたいなものですしー」
「相手が弱すぎて、胸を躍らせながらイベントの準備をするのも阿呆らしいってか」
「基本的に群れたりー、何かを統べたり出来るカリスマを持つ幻想種って代用が効き難いからー、お勝手に支配者を辞められても困るんですよー!!」
コイツ等の言うカリスマってのは教育や経験、才能として得られるものでは無く、幻想の原典となった存在に影響される。 だから、そいつ自身に他者を纏め上げる才覚があったとしても、そいつの原典となる存在にカリスマが無ければ他者を統べることは出来ない。
人間だから幻想種との戦いに有利ってェ特殊能力が備わるのと一緒だ。
古くは旧暦の四世紀から二十一世紀に至るまで世界各地に数多くの伝承を残し、統合暦に暦が変わった今でさえも多くの人間を恐怖に駆り立て、
また胸を躍らせた幻想種、吸血鬼。 その腕力は人間を遥かに超える怪力無双。コウモリや狼などの動物だけで無く巨大化能力と姿形は正に変幻自在。
霧や蒸気といった気体に姿を変え、どんな場所にでも入り込むことが出来る神出鬼没。 コウモリ、狼、昆虫、狐。動物を使い魔として使役するだけでは無く、
自らも催眠術を操り、果てには自然現象すらも操るというキャッチコピーが多過ぎて、却ってセールスポイントが何なのか分からない不死者の王。
だからこそ、吸血鬼という存在は様々な幻想種が入り混じる管理世界ヴァルハラの支配者の一角を担うに相応しい幻想種として君臨しているんだろうな。
「つーかよ、吸血鬼ってェ幻想種が支配者に相応しいなら、他の吸血鬼を支配階級に就ければ良いんじゃないのか?
種の能力であって個人の才覚は関係無ェんだろ?」
「それが出来れば良かったんですけどねぇー……」
種の能力であって個人の才覚は関係無ェんだろ?」
「それが出来れば良かったんですけどねぇー……」
来須が肩を竦め、溜息混じりに漏らすと芹菜が頭をぼりぼりと掻きながら口を開く。
「刹羅はこっちの人間じゃないから知らないだろうけどさ、ヴァルハラにいる吸血鬼ってメアリー一人しか残ってないんだよな」
そして、更に初音が神妙そうな顔付きで続く。
「私や芹菜も当時を知るわけでは無いのだが、まだヴァルハラに細かなルールが制定される前、一度だけ本当の意味での戦争が起こったそうだ。
ヴァルハラの西側とメアリー・バイロン一人の間でな」
「眉唾臭い話なんだけどさ、メアリー一人で西側にいた吸血鬼を含む全ての幻想種を皆殺しにしたんだと。まあ、戦争っつーか一方的な大虐殺って感じだけどなぁ」
そう言って、芹菜が視線を下げた。たった一人の吸血鬼が引き起こした惨劇に慄いているのでは無く、当時を知る奴に目線を合わせた。
「いやー、本当にあの時は本気でどうしようかと思いましたよー。マジでー」
のほほんとした笑顔で言ってのける辺り、全く困っていなさそうに見えるんだがな。
「西側が焦土化した影響で、世界の大半で一気に戦争が勃発して世紀末化した時はちゃんとしないといけないなーと本気で思ったものですよー。
ヴァルハラの住人が怪我や病気をしても死なないようになったのは、第一次メアリーちゃん大戦争が原因なんですよー」
第一次って……第二次があるんかい。相当にぶっ飛んでやがる。
そして、更に初音が神妙そうな顔付きで続く。
「私や芹菜も当時を知るわけでは無いのだが、まだヴァルハラに細かなルールが制定される前、一度だけ本当の意味での戦争が起こったそうだ。
ヴァルハラの西側とメアリー・バイロン一人の間でな」
「眉唾臭い話なんだけどさ、メアリー一人で西側にいた吸血鬼を含む全ての幻想種を皆殺しにしたんだと。まあ、戦争っつーか一方的な大虐殺って感じだけどなぁ」
そう言って、芹菜が視線を下げた。たった一人の吸血鬼が引き起こした惨劇に慄いているのでは無く、当時を知る奴に目線を合わせた。
「いやー、本当にあの時は本気でどうしようかと思いましたよー。マジでー」
のほほんとした笑顔で言ってのける辺り、全く困っていなさそうに見えるんだがな。
「西側が焦土化した影響で、世界の大半で一気に戦争が勃発して世紀末化した時はちゃんとしないといけないなーと本気で思ったものですよー。
ヴァルハラの住人が怪我や病気をしても死なないようになったのは、第一次メアリーちゃん大戦争が原因なんですよー」
第一次って……第二次があるんかい。相当にぶっ飛んでやがる。
そして、来須はビッと俺を指差し言葉を続けた。
「と言うわけでー、メアリーちゃんはヴァルハラにおいて非常に重要な幻想種なのでー、これ以上、機嫌を損ねる前にサクッと倒しちゃって下さいねー」
そして、来須はメアリーの機嫌を直した物の方へと振り返った。
そして、来須はメアリーの機嫌を直した物の方へと振り返った。
それは鉛色の鋭角な鋼鉄を全身に纏った大巨人。地球統合軍汎用人型主力機動兵器スケイプゴート。
その現行主力量産機、トーリック。俺と共に世界を渡ったロボットだ。
勿論、俺が意図して持ち込んだわけじゃ無ェが、俺と一緒にスケイプゴートまでこっちに迷い込んだせいで、ヴァルハラの戦争と喧嘩は空前のスケイプゴート、
いや……幻想空操人形ブームが到来してしまった。
流石は空想の産物たる幻想種。動力や仕組み、その他諸々の過程をすっ飛ばして、物凄いことが出来る物凄く大きな物という認識だけで、
完全再現を遥かに上回る形でスケイプゴートを幻想空繰人形として再現しやがった。
そして、この出来事は来須にとって非常に好都合な出来事だった。 圧勝続きのせいで戦争ゲームに飽き、支配者を辞めたがっていた筈のメアリーが幻想空操人形を使った戦争ゲームのラスボス役の一番手に名乗りを上げたからだ。
「新しい物好きの吸血姫様ってか。西半分を潰した化物にしては中々に可愛げがある」
そして、吸血鬼ってのは往々にして美男美女に描かれている。
そして、吸血鬼ってのは往々にして美男美女に描かれている。
少なくとも、俺が知る限り、附子醜男の吸血鬼ってのを聞いたことが無ェ。美人で可愛げのある吸血鬼のお姫様。
これは期待するしかねェだろ? 色々と。そう、色々と。
「可愛げのある内に倒しちゃって下さいねー。まだまだ手強く興味深い人間がいる。
遊び甲斐のある玩具があると分かれば、もう暫くは支配者を続けてくれるでしょうしー」
「OKOK。この世界で食っていくためだ。役割は果たすさ」
何よりも、吸血鬼のお姫様と近付きになるためにもな。
「大口を叩いた分の結果を出せれば良いがな」
「半分は同感だけど、初音だってメアリーにボロ負けしてるじゃないか。私は一度だけメアリーに勝ってるから良いけどな!」
初音の辛辣な物言いに対し、芹菜が勝ち誇るかのようにニヤ付いて肩を竦める。
「あんな物が勝った内に入るか!」
「いやいや、勝ちは勝ちだって」
顔を真っ赤にして分かり易いくらいに激昂する初音に対し、芹菜は何処吹く風だ。
あんまり冗談の通じねェ奴をからかい過ぎると後が大変だから程々になーと言いたいところだが、今は初音の事より遥かに重要な事がある。
「たった一人で管理世界の西半分を滅ぼした化物をどうやって倒したんだ?」
「聞きたいか?」
「そりゃあそうだ。お遊び同然の戦いとは言え、やる以上、負けてらんねェからな」
こんな俺でも勝負事では真っ向から全力で向かって勝つのが信条だ。卑怯過ぎない範囲であれば情報は多いに越したことはねェ。
「可愛げのある内に倒しちゃって下さいねー。まだまだ手強く興味深い人間がいる。
遊び甲斐のある玩具があると分かれば、もう暫くは支配者を続けてくれるでしょうしー」
「OKOK。この世界で食っていくためだ。役割は果たすさ」
何よりも、吸血鬼のお姫様と近付きになるためにもな。
「大口を叩いた分の結果を出せれば良いがな」
「半分は同感だけど、初音だってメアリーにボロ負けしてるじゃないか。私は一度だけメアリーに勝ってるから良いけどな!」
初音の辛辣な物言いに対し、芹菜が勝ち誇るかのようにニヤ付いて肩を竦める。
「あんな物が勝った内に入るか!」
「いやいや、勝ちは勝ちだって」
顔を真っ赤にして分かり易いくらいに激昂する初音に対し、芹菜は何処吹く風だ。
あんまり冗談の通じねェ奴をからかい過ぎると後が大変だから程々になーと言いたいところだが、今は初音の事より遥かに重要な事がある。
「たった一人で管理世界の西半分を滅ぼした化物をどうやって倒したんだ?」
「聞きたいか?」
「そりゃあそうだ。お遊び同然の戦いとは言え、やる以上、負けてらんねェからな」
こんな俺でも勝負事では真っ向から全力で向かって勝つのが信条だ。卑怯過ぎない範囲であれば情報は多いに越したことはねェ。
まあ、吸血鬼自体、弱点の塊みたいなもんだ。情報収集なんて今更なんだけどな。
「聞くだけ無駄だ。何の参考にもならん」
この聞かん坊は……メアリー嬢を張っ倒す前に言葉責めで泣かしてやろうかと言いたいところだが人間チーム最年長として、
グッと堪えて爽やかスマイルを浮かべて説得を試みる
「そんなことは無ェだろ? 確かに偶然や運の要素があったかも知れねェが、攻める糸口になる情報は多けりゃ多いほど良いからな。
まずは聞くだけ聞いてみようぜ?」
だってのに、このクソガキは鼻で嘲笑って流し目を送ってくる。後五年くらい早ェ。
「早食い勝負の勝因と幻想空操人形の勝負に因果があるとは思えんが?」
「は? 早食い?」
「刹羅君はー、ちょっと勘違いしているようなので説明しておきますけどー、ヴァルハラにおける戦争のルールの全てがー、
必ずしも命の奪い合いになるというわけでは無いんですよー」
「戦争って言っておけば中身は何でも良い。早食い競争だろうが歌だろうがな」
「あー……取り合えず、戦争って言っておけば、色んな意味で何でもアリってわけか」
成る程。初音の頑なな態度も頷ける。芹菜から得られる物は何も無ェ。
この聞かん坊は……メアリー嬢を張っ倒す前に言葉責めで泣かしてやろうかと言いたいところだが人間チーム最年長として、
グッと堪えて爽やかスマイルを浮かべて説得を試みる
「そんなことは無ェだろ? 確かに偶然や運の要素があったかも知れねェが、攻める糸口になる情報は多けりゃ多いほど良いからな。
まずは聞くだけ聞いてみようぜ?」
だってのに、このクソガキは鼻で嘲笑って流し目を送ってくる。後五年くらい早ェ。
「早食い勝負の勝因と幻想空操人形の勝負に因果があるとは思えんが?」
「は? 早食い?」
「刹羅君はー、ちょっと勘違いしているようなので説明しておきますけどー、ヴァルハラにおける戦争のルールの全てがー、
必ずしも命の奪い合いになるというわけでは無いんですよー」
「戦争って言っておけば中身は何でも良い。早食い競争だろうが歌だろうがな」
「あー……取り合えず、戦争って言っておけば、色んな意味で何でもアリってわけか」
成る程。初音の頑なな態度も頷ける。芹菜から得られる物は何も無ェ。
つーか、吸血鬼のお姫様に早食い勝負なんて妙な真似をさせてんじゃねェよ。阿呆か。
それにしても、汚れ芸人の真似事で戦争や平和を管理されていると知ったら、余所の世界の住人達はどう思うんだろうな?
つーか、地球で俺が関わった戦争がヴァルハラの早食い競争や喉自慢大会によって引き起こされたものだとしたら……何ともリアクションに困る話だ。 まあ、これからは全ての異世界の戦争と平和を管理する側だ。精々、楽しんでやろう。
「何はともあれ病気や怪我は勿論、老いも無く寿命が来るまで死ぬ心配の無い安定した職場が見つかったのは良いことだ」
いきなり異世界に辿り着いたなんて突拍子も無い出来事に巻き込まれたって分かったときは本当にどうしようかと思ったが、
よくよく考えてみると中々悪くない環境だ。
「では、おさらいも含めて今回のルールをお伝えしますー。いちー、今回の戦争目的はヴァルハラ西部を支配する幻想種メアリー・バイロンを撃破することー。
にー、終戦条件は人間サイドのプレイヤー三名が死亡するかー、幻想種サイドのプレイヤー、メアリー・バイロンが死亡することー。
死んでもすぐに復活しますけど戦線の復帰はアウトでーす」
死んだ経験がねェから何とも言えねェが、死亡から復活までのサイクルは早いらしい。確かに復活したからって一々、戦線に復帰してりゃ、
いつまで経っても戦争ゲームが終わりゃしねェし、キリがねェ。
いきなり異世界に辿り着いたなんて突拍子も無い出来事に巻き込まれたって分かったときは本当にどうしようかと思ったが、
よくよく考えてみると中々悪くない環境だ。
「では、おさらいも含めて今回のルールをお伝えしますー。いちー、今回の戦争目的はヴァルハラ西部を支配する幻想種メアリー・バイロンを撃破することー。
にー、終戦条件は人間サイドのプレイヤー三名が死亡するかー、幻想種サイドのプレイヤー、メアリー・バイロンが死亡することー。
死んでもすぐに復活しますけど戦線の復帰はアウトでーす」
死んだ経験がねェから何とも言えねェが、死亡から復活までのサイクルは早いらしい。確かに復活したからって一々、戦線に復帰してりゃ、
いつまで経っても戦争ゲームが終わりゃしねェし、キリがねェ。
それに管理戦争って名前のゲームだが、その根底にあるのは余所の世界の闘争と平和。創造と破壊の管理だ。 尤も重要なのは戦争と平和の場所、期間、規模であって、実の所、勝敗なんてのは二の次、三の次だ。 だからこそのルールと報酬だ。ルールを破った奴には、其々に応じた罰が課せられる。俺のペナルティは元の世界への送還だ。 尤も、そんなペナルティがあろうと無かろうと関係ねェが。
「OKだ。戦争って名目って言ったって所詮は遊びだ。遊びってのはルールを守った上で勝つから面白ェんだ」
来須が満足気に目を細め、流し目を送って来たが、ガキに欲情する趣味は無い。
「道中、挑まれた勝負は回避不能ですー。退却はOKですけどー、勝負を挑んできた相手を倒すまではメアリーちゃんに戦いを挑むことは出来ませんー」
「西側にどれだけの戦力があるかは知らねェが大量の刺客を送り込まれたら結構、苦労しそうだな」
「そうでも無いですよー。不利な状況に陥っても幻想種サイドは撤退不能ですしー、死亡後の戦線復帰が出来ないという条件も同じですしー、
戦力を削いで撤退を繰り返すのもアリですよー。でもー、時間をかけ過ぎるとタイムアウトで負けてしまうので注意ですー」
「それに直接戦闘になった場合、西側の戦力で警戒すべきは二人だけだ」
「まずはラスボスのメアリー・バイロンだろ。そんで中ボスの立花路桜《りっかじさくら》くらいだなぁ」
「意外と少ないな? 後は有象無象ってところか?」
「そうでも無いですよー? 西側にもメアリーちゃんの配下で無い、それなりに強い幻想種もいますしー」
「有力とは言え、あの二人に比べたら有象無象に毛が生えたようなものだ」
「まー、理想としては欠員を出すこと無く桜を撃破して、三人がかりでメアリーに挑むのが確実かなぁ」
余程、自信があるのか強気の態度を崩さず凛とした初音に対して、気の抜けたような態度の割に堅実な芹菜。面白味は無いが、確実性の高い芹菜の意見に賛成だ。
「フン、幻想空操人形を使った直接戦闘ならば私一人で事足りる」
初音の協調性の無さをどうにか出来ればの話だがな。
「一度でも勝ってから言えって。桜自体が相当なんだからさぁ」
「貴様、私を愚弄する気か?」
芹菜の嗜めるような一言に初音が牙を剥き、腰に差した刀に手をかけた。血の気が多いのは結構だが矛先を向ける相手を間違えるのは良くねェなァ。
「ほーら、喧嘩するなよ。お嬢ちゃん達。相手は西の連中だろ?」
「へいへいっと」
「フン……何でも良いが私の足を引っ張るなよ?」
何処までも芹菜は軽く、初音は反抗期が終わらないガキ丸出しと来ている。大丈夫なのか、このパーティは。
「分かった。分かった。さっさと行くぞー。ところで来須」
「はーい。なんでしょー?」
「別に負けても貰える物は貰えるって事だが、勝ったら何が貰えるんだ?」
「勝った場合ですかー? 刹羅君にはー、そうですねー。中央にお屋敷でも立てさせましょうかー?」
「異世界の宿屋ってのもオツだったが、自分の城ってのも気分が良さそうだな。OK、やる気出た」
流石は管理者。見た目がクソガキでも人をその気にさせる術を心得ている。
「ではでは、頑張って下さいねー」
来須が俺達に手を振り、青空に向けて指を向けた。
「では、管理戦争の始まり始まりー。どーん」
来須が満足気に目を細め、流し目を送って来たが、ガキに欲情する趣味は無い。
「道中、挑まれた勝負は回避不能ですー。退却はOKですけどー、勝負を挑んできた相手を倒すまではメアリーちゃんに戦いを挑むことは出来ませんー」
「西側にどれだけの戦力があるかは知らねェが大量の刺客を送り込まれたら結構、苦労しそうだな」
「そうでも無いですよー。不利な状況に陥っても幻想種サイドは撤退不能ですしー、死亡後の戦線復帰が出来ないという条件も同じですしー、
戦力を削いで撤退を繰り返すのもアリですよー。でもー、時間をかけ過ぎるとタイムアウトで負けてしまうので注意ですー」
「それに直接戦闘になった場合、西側の戦力で警戒すべきは二人だけだ」
「まずはラスボスのメアリー・バイロンだろ。そんで中ボスの立花路桜《りっかじさくら》くらいだなぁ」
「意外と少ないな? 後は有象無象ってところか?」
「そうでも無いですよー? 西側にもメアリーちゃんの配下で無い、それなりに強い幻想種もいますしー」
「有力とは言え、あの二人に比べたら有象無象に毛が生えたようなものだ」
「まー、理想としては欠員を出すこと無く桜を撃破して、三人がかりでメアリーに挑むのが確実かなぁ」
余程、自信があるのか強気の態度を崩さず凛とした初音に対して、気の抜けたような態度の割に堅実な芹菜。面白味は無いが、確実性の高い芹菜の意見に賛成だ。
「フン、幻想空操人形を使った直接戦闘ならば私一人で事足りる」
初音の協調性の無さをどうにか出来ればの話だがな。
「一度でも勝ってから言えって。桜自体が相当なんだからさぁ」
「貴様、私を愚弄する気か?」
芹菜の嗜めるような一言に初音が牙を剥き、腰に差した刀に手をかけた。血の気が多いのは結構だが矛先を向ける相手を間違えるのは良くねェなァ。
「ほーら、喧嘩するなよ。お嬢ちゃん達。相手は西の連中だろ?」
「へいへいっと」
「フン……何でも良いが私の足を引っ張るなよ?」
何処までも芹菜は軽く、初音は反抗期が終わらないガキ丸出しと来ている。大丈夫なのか、このパーティは。
「分かった。分かった。さっさと行くぞー。ところで来須」
「はーい。なんでしょー?」
「別に負けても貰える物は貰えるって事だが、勝ったら何が貰えるんだ?」
「勝った場合ですかー? 刹羅君にはー、そうですねー。中央にお屋敷でも立てさせましょうかー?」
「異世界の宿屋ってのもオツだったが、自分の城ってのも気分が良さそうだな。OK、やる気出た」
流石は管理者。見た目がクソガキでも人をその気にさせる術を心得ている。
「ではでは、頑張って下さいねー」
来須が俺達に手を振り、青空に向けて指を向けた。
「では、管理戦争の始まり始まりー。どーん」
気の抜けるかけ声と共に来須の指先から虹色の光線が放たれ、空で虹色の閃光と共に爆ぜた。燃え広がる炎と灰色の煙がヴァルハラの大空を覆い、大地に闇の帳が下りた。
「よーし、管理戦争の始まりだ!! 刹羅、遅れるなよぉ?」
芹菜の身体から白色と桃色の二条の光芒が放たれ宙で交差し、光の中から白を基調としたカラーリングに随所に桃色の放熱布を纏った魔法少女みたいな幻想空操人形が現れた。
生憎と両腕で抱える得物はファンシーなステッキでは無く、白と桃色の鋼が交差する鋭い穂先を持つファンシーな槍だ。
芹菜の身体から白色と桃色の二条の光芒が放たれ宙で交差し、光の中から白を基調としたカラーリングに随所に桃色の放熱布を纏った魔法少女みたいな幻想空操人形が現れた。
生憎と両腕で抱える得物はファンシーなステッキでは無く、白と桃色の鋼が交差する鋭い穂先を持つファンシーな槍だ。
「色々と惜しい魔法少女ロボだな」 つーか、あくまでスケイプゴートは幻想空操人形の原型となっただけだからな? ただ巨大ロボを使って戦争をするって発想が生まれる切欠になっただけであって、
決して、ご近所の平和をピンポイントで守る愉快痛快なファンシーロボでは無いってことだけは、ここではっきりと名言しておく。
元の世界に未練は無ェが、流石に長年付き合ってきた仕事道具があらぬ誤解でイロモノ扱いされるのはゴメンだ。
「これが私の幻想空操人形、デュランダルだ!!」
デュランダル……オリジナルの所有者が知ったら、俺以上に仕事道具をイロモノにされて涙を流すんじゃねェか?
「この戦争に勝ったら来須に頼んで、ローランに土下座する権利を貰え」
「はあ?」
「何をグダグダと……来い、正宗ッ!!」
デュランダル……オリジナルの所有者が知ったら、俺以上に仕事道具をイロモノにされて涙を流すんじゃねェか?
「この戦争に勝ったら来須に頼んで、ローランに土下座する権利を貰え」
「はあ?」
「何をグダグダと……来い、正宗ッ!!」
芹菜と同様に初音の身体から二条の光芒が放たれた。交差する光芒の色は黒と水色。光の中から現れた幻想空操人形は黒を基調とした細身のプロポーション。 だが、肩部から大腿部までを覆う白い刻印が刻まれた陣羽織の様な水色の装甲のお陰で貧相さを感じさせることはない。 腰部には左右に二振りずつ刀がマウントされ、いかにも初音らしい姿の人形が降り立った。
「ま、いつまでも駄弁っていても仕方がねェしな」
一応、ヴァルハラに迷い込んだときに幻想空操人形の原型スケイプゴート、トーリックがあるんだが、燃料も弾薬も無限じゃねェし、修理のアテも無ェ。 つーか、ヴァルハラに迷い込んだ直後の戦闘で受けた損傷も完全放置なので使いようが無ェ。無ェので、他の連中と同じように俺が管理戦争で使う機体も幻想空操人形だ。 幻想空操人形の性能は搭乗者の想像力や、妄想に空想といった〝想〟の力。幻想力に大きく影響される。 地球統合軍に拉致同然に徴兵されてから……確か十二年くらい。スケイプゴートという仕事道具を第二の身体のように操ってきた俺にとって
巨大人型兵器を原典とした幻想空操人形の構築なんてのは簡単だ。
管理戦争素人の俺にとって、それこそが大きなアドバンテージになる。 そして、俺が構築するのは愛機トーリックでは無く、何処ぞのとある阿呆な研究者の遊び心によって生み出された実験機。 そいつは格闘戦能力を徹底的に追求した機体で「格闘戦をやるなら一気に距離を詰められるようにブースターを増設しなきゃダメだよね」ってことで
両肩の装甲、腰部両サイドのテールバインダー、向こう脛、足裏、背中のバックパックに三基、合計十一基の大型ブースターが装備されている。
ブースターノズルが剥き出しになった大量のブースターが生み出す爆発的な機動力は最新の耐G装置を以ってしても搭乗者の内臓を爆散し、
クイックブーストなんぞしようものなら臓器どころか全身がミンチになる程の加速力を持つ。
いっそ、無人機にするとかブースターを減らせば良いのにも関わらず「早過ぎるなら装甲や火器を増やして重しにすれば良いじゃない」と
元の高速格闘戦闘というコンセプトを完全に置き去りにする馬鹿な一言で開発建造されたのが、随所にありとあらゆる火器を詰め込んだ七基の追加装甲、
アームズドレス。通称、ロマンアーマー。
アームズドレス。通称、ロマンアーマー。
圧倒的過ぎる加速力を抑えるためだけの、その場凌ぎで生み出された装備だが一般的な高機動タイプのスケープゴートの機動力を凌駕しているってのは
評価すべきか……すべきなのか? 多分、評価するところじゃねェな。作ったこと事態が阿呆の極みなのだから。
だが、現場の兵隊から揶揄されている〝ロマン〟って一点に限れば正しくその通りだ。何せ、早い、堅い、強い、バ火力ときている。 そして、コイツを再現するのは俺の幻想力だ。都合の良い部分は残して、都合の悪い部分を棄てれば、お手軽簡単に最強の幻想空操人形の出来上がりってわけだ。 馬鹿な研究者によって生み出されたは良いが、金喰い虫と白い目で見られ、実用性が無いと鼻で哂われ、
何の目的も果たすこと無く、使われることさえ無く、日の目を浴びること無く封印されたた可哀相なスケイプゴート、その名を!
「幻想空操人形……ディアボロス!!」
「幻想空操人形……ディアボロス!!」
右腕からは灰色の、左腕からは紫色の、二色の閃光を放ち、宙で絡み合わせ俺自身の身体を包み込む。 流線型の装甲がマットグレイの煌きを放ち、薄紫色の七枚の巨大な鉄板、アームズドレスが胸部の中心と肩部のブースターを残し、
上半身を腕ごと覆い隠す様に装着。光の渦を弾き飛ばして大地に降り立つ。
「なんか凄いゴテゴテだけど大丈夫かぁ? 幻想空操人形って作り直し出来ないって話だけどよぉ?」
芹菜が若干引き気味に漏らすが、魔法少女ロボよりかずっとマシだ。
「心配すんな。考えなしでコイツを幻想したわけじゃねェ」
勿論。弾代を気にせず多彩な武器をぶっ放せるという魅力に惹かれてディアボロスを幻想したのも事実だがな。
「それよか、上を見てみろよ。新しい玩具を手に入れたせいで阿呆な自殺願望者共が雁首揃えてやがるぜ」
「なんか凄いゴテゴテだけど大丈夫かぁ? 幻想空操人形って作り直し出来ないって話だけどよぉ?」
芹菜が若干引き気味に漏らすが、魔法少女ロボよりかずっとマシだ。
「心配すんな。考えなしでコイツを幻想したわけじゃねェ」
勿論。弾代を気にせず多彩な武器をぶっ放せるという魅力に惹かれてディアボロスを幻想したのも事実だがな。
「それよか、上を見てみろよ。新しい玩具を手に入れたせいで阿呆な自殺願望者共が雁首揃えてやがるぜ」
俺がロボットを持ち込んだことを切欠に追加された管理戦争の新たな戦争種目、幻想空操人形は余程、ヴァルハラの連中の琴線に触れたらしい。 俺達も迅速な行動では無かったにせよ開戦の合図から、それほど時間が経っていないにも関わらず、
空は何処からとも無く現れた幻想空操人形の大群に埋め尽くされ、完全に行く手を阻まれる形になっていた。
「大口叩くのは構わんが、貴様、やれるんだろうな?」
「どうだろうなぁ。人形の具現化は無事成功。火力はぶっ放してご覧じろってなァ!!」
アームズドレスから露出した肩のブースターノズルと腰のテールバインダーから真っ白な焔を吹き上げ大空に飛翔。目指すは敵陣中央。
戦争という名のお祭だ。精々、愉快に楽しく踊ってやるさ。
「大口叩くのは構わんが、貴様、やれるんだろうな?」
「どうだろうなぁ。人形の具現化は無事成功。火力はぶっ放してご覧じろってなァ!!」
アームズドレスから露出した肩のブースターノズルと腰のテールバインダーから真っ白な焔を吹き上げ大空に飛翔。目指すは敵陣中央。
戦争という名のお祭だ。精々、愉快に楽しく踊ってやるさ。
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