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守護機兵Xガードナー 第五話

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第五話
「まったくよぉ、侵攻軍の連中も暇なこった。夜になったら寝むるのが地球じゃ決まりなんだぜ?」
 パイロットスーツに着替えたライドは文句を言いながら、ガードナーX03のコクピットに入る。
「職業軍人、残業ご苦労さんって事で…まぁウチら正規じゃないから手当も無いんだろうけどさ」
 Xガードナー隊は軍とは切り離された特別な権限を持った独立部隊だ。
 基本任務は要人護衛や拠点防衛が主な作戦であり対抗勢力や敵対組織へ直接、侵攻や追撃は基本的に行わない。
「守りの部隊でも自衛の攻撃はアリなんだよなぁ…ドール少尉?」
 全包囲モニターに小さなウィンドウが現れX02のサイバ・ドールが映し出される。
『…うと呼ぶな』
「何だって?ウチは階級が無いんだ、気軽に呼ばせてもらうぜ?ド」
『サイバだ』
「あぁ…サイバね、俺の三号機は後方支援型だから前を頼むわ!」
『要らん…お前のこそ足手まといにならんようにな』
 そう言ってサイバのX02はカタパルトへ向かって行った。
「ベタな事を言われちったなぁ…にしても」
 二つ隣のハンガーには、こんな状況下にも関わらずパイロット不在の機体が佇んでいた。
「坊ちゃんのワガママも大概だな…」

「シュート!ねぇ出てきてよ」
「俺は行かない…戦いならなれた奴がやれば良いだろ」
 戦闘が始まるとシュートは一目散に自分の部屋に駆け込んだ。止めには入ったが振り切られ部屋をロックされた。
「俺は戦う為に戻って来たんじゃない…お前はいいのかよ?こんな所に何時までも居て」
「いい訳ないよ…でもちょっと怖い」
「怖い?」
「うん…実戦なんてまだ全然してないし、殆どバール副長に頼りきりだし艦長らしい事まだ何もやってない…」
「…実戦なんてもん、馴れるだろ数こなせれば」
「馴れたくないよ…戦争なんて」
「だから代わりに俺を連れ来たって言う訳か」
「そんなんじゃない!…そんなんじゃ…」
 ドア越しの会話。しばし沈黙。すすり泣く声が艦の廊下に響き渡る。
「私さ、卑怯だね?押しつけてばっかだ…シュートが出ていった時も援助したの自分のくせに、状況が悪くなると手のひら返して…コウモリだよ」
 沈黙。
 すると部屋のロックが解除された。ドアにもたれていたシュートは驚く。ルーナの手にはマスターキー。
「シュートは私が守る。もう迷わない…絶対シュートに嫌な思いはさせない、だから」
 唇に柔らかい物が触れる。
「もう、お休みなさい…」

 火星軍の部隊構成は重武装で二門キャノン砲を装備したバルガが二機、指揮官機のドライド、そしてビークのギルガだ。
『この部隊のリーダーは俺だ。復讐か何だか知らんが従って貰うからな』
「…了解した」
『かしこまんなよ兄弟?落ち目のガードナー隊なんて俺達ガングマン隊に掛かりゃイチコロよ!な隊長』
 下卑た笑いが響く。ビークはヘルメットを外し通信を切った。
「力だけのならず者集団がッ…!」
 そう吐き捨てる。作戦室で彼らを初めて見た時も同じ感想だった。人相が悪く不潔でいかにも、と言う感じだ。
「まぁいい、好きにやらせてもらう」
 ビークのギルガに握られている大剣。隊長がドライド用に特別に造った武器、そして形見。小柄なギルガには少々不格好である。発進前にも隊員達に馬鹿にされた。
「…まだ雑談しているのか?気楽な…ん?」
 警告のアラーム。レーダーに敵を表す赤いシンボルが高速で近づいてくる。
「早い!が昼の奴じゃない…来るかッ?」
 剣を盾にして構える。敵機は視認出来るほどに接近してくる、が一瞬で通り過ぎた。
「戦闘機…の様に見えたが」
 味方機の青いシンボルが消える。前方を飛行していた一機が、真っ二つに両断された。
「バルガ一機か…重量級は堅いな」
 サイバは不満を漏らした。想像では二機同時撃破を予定していた。
「新型とはいえ過度な機体は禁物か…だが悪くない」
 微笑する。
『何をしているッ!たかが戦闘機にボーッとしよって!』
 上空、月明かりに照らされて悠々と飛ぶ蒼い戦闘機を指さし隊長のガングマンは憤った。
「喋っていたら当たり前だろうに…」
『何か言ったかッ?』
「いえ…それより敵がもう一機近づいてきます」
 地上を滑りながら緑色の機体が近づいて来る。
『よし、あの鈍そうな緑は俺がやる。お前等はあの青い奴だ』
『了解だぜ隊長』
 二手に散開する。
「来るか」
 ドライドがサイバの02に向かって上昇する。
『ただ落とされるだけの飛行機がぁ!』
 ドライドの右腕からワイヤーフックが放たれる。それが02の翼部に巻き付く。
『捕った!』
 巻き上げ距離を詰める。だがワイヤーは途中で切れてしまっている。
『何故だ?確かに』
「お前は何も見えていない」
『何!な…』
 戦闘機のシルエットが変わっていた。下部から腕が生え、両手にはレーザーブレードを携えている。奇怪な形だった。それに足が生え、さらに形を変え完全な人型になっていく。
『へっ変形した…可変型かよ、だからどうしたってんだァ!』
 腕のガトリングを乱射する。が、動揺しているのか標準が定まらない。それ以前に02の動きも速い。ドップラー効果により青い02の赤い瞳の光のズレが物語っている。
『化け物か』
 そう映った。月明かりを浴びた二刀の剣を持つ赤い瞳の青鬼。それがガングマンが見た最後に見た光景だった。
 一方、陸では03が二機を相手に苦戦していた。ギルガの猛攻、後方からのバルガの援護射撃。不利な状況が続く。
「緑の奴はどうでもいい、黄色の機体を出せ!」
 ビーク機の大剣が猛威を奮う。ライドのX03もバリアで防ぐが、さすがに限界だ。
「両手に花とはキツイなぁ…死神のさ」
 冗談を言う余裕もなくなる。こちらも剣で応戦する。右腕のヒートスライサーが熱を帯びる。真横に振り被った。鉄の音が響き渡り大剣でガードされる。
「くっ…通らないか」
『まだまだだ!』
 火花散る鍔迫り合いが続く。すると、
「熱源が来る…正面だってっ?!」
 レーダーに重なる自機と敵機、二機の奥の赤いマーカーから発せられる熱源反応。
「味方ごと撃つ気か?!」
『後ろだと…?』
 二機はとっさにその場から離れる。
 後方のバルガから放たれる光の奔流が一直線に流れ込む。草木が一瞬にして塵となり消えていった。
『ぐぅ…貴様ッ!何をした…!』
 ビークのギルガは両脚部を巻き込まれてしまっていた。
『後から来た新人君はすっこんでろよ!』
「なんだ?仲間割れかよ」
 ライドは唖然とした。幸い03には支障は無かった。
『くそッ…何て常識外れな奴…ここは退く!』
 煙を上げギルガは帰投する。
「アイツ帰っていく…グッ!?」
 機体に衝撃、残りのバルガのミサイルが命中する。
『よそ見してんな三流が!』
「チッ、不意打ちしか出来ない雑魚は眼中にねぇんだ…」
背中の発射口が開き、
「よォッ!」
 ミサイルランチャーが全弾、ばら撒かれる。上方へと飛ぶミサイルは地上へ落ち、さらに中から小型のミサイルの雨を降らす。
『避けきれねぇ、だがこの程度の威力で』
 シールドで上方をからくりミサイルを防ぐバルガ。
「と、気を取られるのが運の付きィ」
 03は左腕の大型ランチャーを構える。正確に、寸分狂いもなく、冷静に、
「重点完了、レーザーランチャーッ!」
 収束されたレーザーは敵機の盾ごと半身を吹っ飛ばす。防ぐ術を失ったバルガは爆撃の雨に消ていった。

「敵艦、撤退していきます」
 通信士のサラーが淡泊に報告する。戦いはXガードナー隊の圧勝だ。
『二号機サイバ・ドール、これより帰投する』
『同じくライドと03、凱旋だぜ。早く帰って寝たい…サラーちゃん!今夜い』
 強制終了。
「お疲れさまです。今ハッチを開けますので」
 ルーナは笑顔で答える。
「さすがは最新の兵器、期待以上の働きを見せてくれますね艦長?」
「え、えぇ…そうですね。けど私達はガードナー隊です。出来るだけ争いは避けたいです」
 表情が曇る。が、すぐ笑顔に取り繕う。
「取り合えずまだ敵が居ないとも限りません。周辺警護を怠らないで下さい」
 ルーナは椅子に座り込みため息を吐く。
「…シュートの馬鹿」

 格納庫では整備員達が戻ってきた機体の修理。補給が行っていた。その中心にパイロットスーツの少年が佇んでいた。
「ちょっとアンタ!作業の邪魔だよ」
「…」
「あと危ないからメットは付けろよ」
 抱えていたヘルメットを指さし整備士は作業に戻っていく。
「…」
 人気の無い所に移動する。一番端にまた一機の佇む黄色のロボットいた。自分が乗る機体。乗るはずだった機体。

 少年はヘルメットを床に叩き付けた。

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