――――12月24日、クリスマスイヴ。
パーティーに、プレゼントに、デートに……大多数の人にとって、ある意味クリスマスよりも大事な日だ。
そして、ここ“やおよろず荘”にも、大多数に含まれる人々がいた――――
パーティーに、プレゼントに、デートに……大多数の人にとって、ある意味クリスマスよりも大事な日だ。
そして、ここ“やおよろず荘”にも、大多数に含まれる人々がいた――――
ロボスレ学園:八百万のクリスマス。
冷たい風の侵入を許さないアーケードの商店街、ごった返す人の群れの中、並んで歩く影二つ。
「今日はクリスマスイヴだね、リヒター」
中性的な顔とすらりとした長い手足に黒スーツのリヒター・ペネトレイターに、セーラー服姿の三つ編みの少女、一条 遥が話し掛けた。
「クリスマス・イヴ、ですか?」
きょとんとした顔で首を傾げるリヒター。どうでもいいが、リヒターは本来男性のはず……なのだが、人間の姿になると何故かこうなってしまうのだ。ついてるかついてないかは確かめていない。だってついてたらリヒターを見る目が変わってしまいそうだから。
「うん、クリスマス・イヴ」
「イエス・キリストの誕生日の前夜だという事は知っていますが……マスターはキリスト教徒ではないはずです」
「うん、神社の子。だけど日本人は万華教徒って言うじゃない」
「万華教徒……?」
再び首を傾げるリヒター。
「つまりコロコロ変わるって事。結婚式は教会、お葬式はお寺、大晦日には神社に行って、元旦に初詣……という感じで。ほら、日本人ってお祭り好きだし!」
力説する遥の顔は心なしか上気している。日本人はお祭好き……なるほど、凄い説得力だ。
「なるほど、理解できました。説明ありがとうございます、マスター」
相変わらずご丁寧に、まあ。
律儀なリヒターに感心しつつ、商店街を歩いていくと、漂ってくるスパイスの香り――――そう、鳥の丸焼きの匂いだ。今回のターゲットである 一羽につき1000円というお手頃価格でありながら、味はなかなかのもので、売切れは必至なのだが、
「目標は、まだかろうじて残っているようです」
よかった。遥はほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあ……みんなけっこう食べるだろうし、三つくらい買ってこっか」
「イエス・マイマスター」
「今日はクリスマスイヴだね、リヒター」
中性的な顔とすらりとした長い手足に黒スーツのリヒター・ペネトレイターに、セーラー服姿の三つ編みの少女、一条 遥が話し掛けた。
「クリスマス・イヴ、ですか?」
きょとんとした顔で首を傾げるリヒター。どうでもいいが、リヒターは本来男性のはず……なのだが、人間の姿になると何故かこうなってしまうのだ。ついてるかついてないかは確かめていない。だってついてたらリヒターを見る目が変わってしまいそうだから。
「うん、クリスマス・イヴ」
「イエス・キリストの誕生日の前夜だという事は知っていますが……マスターはキリスト教徒ではないはずです」
「うん、神社の子。だけど日本人は万華教徒って言うじゃない」
「万華教徒……?」
再び首を傾げるリヒター。
「つまりコロコロ変わるって事。結婚式は教会、お葬式はお寺、大晦日には神社に行って、元旦に初詣……という感じで。ほら、日本人ってお祭り好きだし!」
力説する遥の顔は心なしか上気している。日本人はお祭好き……なるほど、凄い説得力だ。
「なるほど、理解できました。説明ありがとうございます、マスター」
相変わらずご丁寧に、まあ。
律儀なリヒターに感心しつつ、商店街を歩いていくと、漂ってくるスパイスの香り――――そう、鳥の丸焼きの匂いだ。今回のターゲットである 一羽につき1000円というお手頃価格でありながら、味はなかなかのもので、売切れは必至なのだが、
「目標は、まだかろうじて残っているようです」
よかった。遥はほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあ……みんなけっこう食べるだろうし、三つくらい買ってこっか」
「イエス・マイマスター」
♪ ♪ ♪
商店街から徒歩10分の場所に“やおよろず荘”はあった。傍から見たらまるで豪邸のような庭付き、木造平屋建てのそこは古風な雰囲気を帯びており、かつ周囲がコンクリートの建物ばかりなので若干存在そのものが浮いている。
「きっとみんな喜ぶだろうなぁ……ふふっ」
無垢な笑顔を浮かべながら、遥が門の前に立つ。両手にはスパイスの香りが漂う袋。
「たっだいまー!」
……へんじがない、ただのしかばねのようだ。寝ているか、あるいは出払っているかのどちらかだろう。遥の胸中を不安が過ぎった。
「……誰もいないみたいだね」
「そのようです」
とりあえず玄関で靴を脱ぎ、共有の炊事場に鳥の丸焼き×3を置くと、リヒターは池の鯉達に餌やりに、遥は自分の部屋に着替えに戻る。
「きっとみんな喜ぶだろうなぁ……ふふっ」
無垢な笑顔を浮かべながら、遥が門の前に立つ。両手にはスパイスの香りが漂う袋。
「たっだいまー!」
……へんじがない、ただのしかばねのようだ。寝ているか、あるいは出払っているかのどちらかだろう。遥の胸中を不安が過ぎった。
「……誰もいないみたいだね」
「そのようです」
とりあえず玄関で靴を脱ぎ、共有の炊事場に鳥の丸焼き×3を置くと、リヒターは池の鯉達に餌やりに、遥は自分の部屋に着替えに戻る。
♪ ♪ ♪
スウェットの上に半纏を羽織ると、布団を敷いてそこに寝転ぶ。
「……ふぅ、皆どこ行ったんだろう」
まさか皆好き勝手に出掛けて行ってしまったのでは――――うん、有り得る。
しかしこのまま帰って来なかったらどうしよう。鳥の丸焼きはリヒターと協力しても三つも食べ切れない。
なんだかちょっぴり悲しくなってきて、目尻に浮かんだ涙を拭う。何を泣いているんだ、私は。クリスマスとイヴをひとりで過ごした事なんていくらでもあったではないか……今更寂しいだなんて、そんな事あるもんか。
頬をぺちんと叩いて弱気を吹き飛ばすと、テレビとヒーターのある居間へと向かうために立ち上がる。
「おおっ、寒っ」
部屋を出た途端、冷たい北風が襲い掛かってきた。ただでさえ冷たいのに、今は余計に冷たい。
池を見るがリヒターはいない。まさかリヒターまでどこかに行ってしまったんじゃないかと一瞬考えるが、そんなわけないと一蹴する。
とにかく居間で時間を潰そう。
「……ふぅ、皆どこ行ったんだろう」
まさか皆好き勝手に出掛けて行ってしまったのでは――――うん、有り得る。
しかしこのまま帰って来なかったらどうしよう。鳥の丸焼きはリヒターと協力しても三つも食べ切れない。
なんだかちょっぴり悲しくなってきて、目尻に浮かんだ涙を拭う。何を泣いているんだ、私は。クリスマスとイヴをひとりで過ごした事なんていくらでもあったではないか……今更寂しいだなんて、そんな事あるもんか。
頬をぺちんと叩いて弱気を吹き飛ばすと、テレビとヒーターのある居間へと向かうために立ち上がる。
「おおっ、寒っ」
部屋を出た途端、冷たい北風が襲い掛かってきた。ただでさえ冷たいのに、今は余計に冷たい。
池を見るがリヒターはいない。まさかリヒターまでどこかに行ってしまったんじゃないかと一瞬考えるが、そんなわけないと一蹴する。
とにかく居間で時間を潰そう。
♪ ♪ ♪
居間に入ると、そこにはこたつに入ってみかんを頬張るリヒターがいた。安心すると同時にちょっとだけ泣きそうになったが、首をぶんぶんと振って弱気を吹き飛ばす。
「隣、いいかな?」
「イエス・マイマスター」
リヒターの隣にするりと滑り込むと、手元にあったリモコンでテレビの電源を点ける。この時間帯はどこの局もつまらないワイドショーしかやっていないが、無音よりは遥かにマシだ。
「ねえ、リヒター……」
「はい、何でしょう」
「みんな、帰ってこないね」
「……そうですね」
そんなこんなで、ただ一切が過ぎていく。現在の時刻は19時45分、帰宅してから既に3時間が経過していた。本来この時間には皆居間でくつろいでいる時間だというのに、今日は誰もいない。
「暇だね」
「マスターと一緒にいる事ができるなら、私は暇ではありません」
「私は暇なの」
不機嫌な遥が、ぷくっとむくれた。
その時、だ。
ぴーんぽーん。
玄関のチャイムが鳴ったのは。
待ってましたとばかりに遥が立ち上がる。その顔に浮かぶのは歓喜と興奮。もしも遥に尻尾が付いていたら、それは引き千切れんばかりの勢いで揺れていただろう。
「はーい!」
玄関に向かっててとてと走る。待ちに待ったクリスマスパーティーだ、落ち着いてなんかいられない。が、
「おかえ……」
「ども、山猫ヤマトです」
その歓喜と興奮は、すぐに打ち砕かれた。
「隣、いいかな?」
「イエス・マイマスター」
リヒターの隣にするりと滑り込むと、手元にあったリモコンでテレビの電源を点ける。この時間帯はどこの局もつまらないワイドショーしかやっていないが、無音よりは遥かにマシだ。
「ねえ、リヒター……」
「はい、何でしょう」
「みんな、帰ってこないね」
「……そうですね」
そんなこんなで、ただ一切が過ぎていく。現在の時刻は19時45分、帰宅してから既に3時間が経過していた。本来この時間には皆居間でくつろいでいる時間だというのに、今日は誰もいない。
「暇だね」
「マスターと一緒にいる事ができるなら、私は暇ではありません」
「私は暇なの」
不機嫌な遥が、ぷくっとむくれた。
その時、だ。
ぴーんぽーん。
玄関のチャイムが鳴ったのは。
待ってましたとばかりに遥が立ち上がる。その顔に浮かぶのは歓喜と興奮。もしも遥に尻尾が付いていたら、それは引き千切れんばかりの勢いで揺れていただろう。
「はーい!」
玄関に向かっててとてと走る。待ちに待ったクリスマスパーティーだ、落ち着いてなんかいられない。が、
「おかえ……」
「ども、山猫ヤマトです」
その歓喜と興奮は、すぐに打ち砕かれた。
♪ ♪ ♪
「……どうしましたか、マスター」
俯きながらとぼとぼと戻ってきた主を心配して、リヒターが声を掛ける。
「……宅急便だった」
俯いたまま、沈んだ口調でぼそぼそ答える。遥の心はもう限界。堤防は決壊寸前だった。
もしかして、リヒトはシロやルガー、リタと一緒に知り合いの家に遊びに行ったのかもしれない。
もしかして、まどかとたまは実家に帰ったのかもしれない。
もしかして、ライは喪盟の仲間達と焼肉にでも行っているのかもしれない。
もしかして――――自分とリヒターを置いてみんなは食事にでも行ってしまったのかもしれない。
そこまで考えて、彼女の堤防は決壊した。
「……ぐすっ、ひっ、ひぐっ」
「マスター?」
涙が溢れ、鳴咽が漏れる。自分自身でも驚くくらい、たくさんの涙が。
「……楽しみに、すっごく楽しみに、してたのに、なんで、なんで誰もいないの、いなくなっちゃうの……」
ああ、なんだかムカついてきた。
バンっ! とおもいっきりこたつをブッ叩く。突然変貌した主にリヒターがびくりと怯んだ。
「ほんとに楽しみだったのに、こんな時に……! ふ・ざ・け・ん・な――――っ!!」
一条 遥、天に吠える。
そしてすぐさま踵を返すと、少女は炊事場へと消えていった。リヒターはそれを、ただ見ている事しかできなかった。
ごくごく短い時間が過ぎて、荒々しい動作で襖を開けて、一条 遥が戻ってきた。手には丸焼きの入った袋と……缶ビール!?
「マスター、未成年の飲酒は――――」
「だまらっしゃい! もうやけっぱちだ、全部飲んでやる!」
リヒターの制止も虚しく、少女はプルタブを開けて缶の中身を一気に飲み干した。
「ぷはぁっ! もう一杯!」
「マスター、み」
「いいの! 四捨五入したら二十歳だもん! あたしにだってお酒を飲む権利くらいあるもん!」
ああ、駄目だ、一杯で……いや、匂いを嗅いだ時点で完全に酔っている。なんとかやめさせたいが、正直リヒターには遥が暴れた場合に周囲に被害を出さずに止められる自信がない。というか止められるかもわからない。
「おらー、もっろもってこーい!」
よってリヒターは、主の指示にただ従う、という選択肢を選んだ。
俯きながらとぼとぼと戻ってきた主を心配して、リヒターが声を掛ける。
「……宅急便だった」
俯いたまま、沈んだ口調でぼそぼそ答える。遥の心はもう限界。堤防は決壊寸前だった。
もしかして、リヒトはシロやルガー、リタと一緒に知り合いの家に遊びに行ったのかもしれない。
もしかして、まどかとたまは実家に帰ったのかもしれない。
もしかして、ライは喪盟の仲間達と焼肉にでも行っているのかもしれない。
もしかして――――自分とリヒターを置いてみんなは食事にでも行ってしまったのかもしれない。
そこまで考えて、彼女の堤防は決壊した。
「……ぐすっ、ひっ、ひぐっ」
「マスター?」
涙が溢れ、鳴咽が漏れる。自分自身でも驚くくらい、たくさんの涙が。
「……楽しみに、すっごく楽しみに、してたのに、なんで、なんで誰もいないの、いなくなっちゃうの……」
ああ、なんだかムカついてきた。
バンっ! とおもいっきりこたつをブッ叩く。突然変貌した主にリヒターがびくりと怯んだ。
「ほんとに楽しみだったのに、こんな時に……! ふ・ざ・け・ん・な――――っ!!」
一条 遥、天に吠える。
そしてすぐさま踵を返すと、少女は炊事場へと消えていった。リヒターはそれを、ただ見ている事しかできなかった。
ごくごく短い時間が過ぎて、荒々しい動作で襖を開けて、一条 遥が戻ってきた。手には丸焼きの入った袋と……缶ビール!?
「マスター、未成年の飲酒は――――」
「だまらっしゃい! もうやけっぱちだ、全部飲んでやる!」
リヒターの制止も虚しく、少女はプルタブを開けて缶の中身を一気に飲み干した。
「ぷはぁっ! もう一杯!」
「マスター、み」
「いいの! 四捨五入したら二十歳だもん! あたしにだってお酒を飲む権利くらいあるもん!」
ああ、駄目だ、一杯で……いや、匂いを嗅いだ時点で完全に酔っている。なんとかやめさせたいが、正直リヒターには遥が暴れた場合に周囲に被害を出さずに止められる自信がない。というか止められるかもわからない。
「おらー、もっろもってこーい!」
よってリヒターは、主の指示にただ従う、という選択肢を選んだ。
♪ ♪ ♪
時は過ぎて、時刻は夜中の22時。
「いやぁ、すっかり遅くなっちまったな」
<誰のせいだと思っているんだ、この馬鹿野郎が>
「どこぞの三馬鹿が模型のコーナーから動かなかったからね」
「いやー、誰のせいだろうね」
「誰のせいでしょうね!」
「誰のせいだろうな!」
<お・ま・え・らのせいだろうが馬鹿野郎共が!>
「たまちゃんとシロちゃんがいなかったら、もっと遅れてるところでしたね」
<まったくですね。三馬鹿の内、名前にリとヒとトがある人は死んで詫びればいいと思います>
「随分ピンポイントだなオイ」
賑やかな一団が、二機のオートマタから飛び降りた。やおよろず荘の住人達だ。クリスマスのパーティーのための買い物に行っていたのだ。
二機のオートマタの魂を、その主が人の身体へ移す。
本来はもっともっと早くに帰ってくる予定だったのだが、面子が面子のために一部のメンバーが好き勝手に動き回り、結果この時間だ。
残してきた遥とリヒターは大丈夫なのだろうか。そんな事を考えながら玄関の戸を開ける。全員「ただいま」の大合唱。だが、返事はない。まさか強盗にでも入られるなり拉致されるなりしたのだろうか。
「おーいはるかー、いないのかー」
赤髪の男――――リヒト・エンフィールドが居間の扉をがらりと開けた、その時だ。
「うおっ、なんだこの酒とスパイスの匂いがないまぜになった名状しがたい香りは!?」
顔をしかめる赤髪の男。男が視線を部屋へと戻すと、空き缶と骨が散らかった机に突っ伏す影二つ。
――――遥とリヒターだ。
「なっ……おい、何やってんだおまえら!?」
遥の小さな肩を揺するが、反応はない。隣のリヒターも同様だ。どうやら酔い潰れて寝てしまったらしい。
「ったく、しゃーねーな……おいおまえら、こいつら運ぶの手伝ってくれ!」
「いやぁ、すっかり遅くなっちまったな」
<誰のせいだと思っているんだ、この馬鹿野郎が>
「どこぞの三馬鹿が模型のコーナーから動かなかったからね」
「いやー、誰のせいだろうね」
「誰のせいでしょうね!」
「誰のせいだろうな!」
<お・ま・え・らのせいだろうが馬鹿野郎共が!>
「たまちゃんとシロちゃんがいなかったら、もっと遅れてるところでしたね」
<まったくですね。三馬鹿の内、名前にリとヒとトがある人は死んで詫びればいいと思います>
「随分ピンポイントだなオイ」
賑やかな一団が、二機のオートマタから飛び降りた。やおよろず荘の住人達だ。クリスマスのパーティーのための買い物に行っていたのだ。
二機のオートマタの魂を、その主が人の身体へ移す。
本来はもっともっと早くに帰ってくる予定だったのだが、面子が面子のために一部のメンバーが好き勝手に動き回り、結果この時間だ。
残してきた遥とリヒターは大丈夫なのだろうか。そんな事を考えながら玄関の戸を開ける。全員「ただいま」の大合唱。だが、返事はない。まさか強盗にでも入られるなり拉致されるなりしたのだろうか。
「おーいはるかー、いないのかー」
赤髪の男――――リヒト・エンフィールドが居間の扉をがらりと開けた、その時だ。
「うおっ、なんだこの酒とスパイスの匂いがないまぜになった名状しがたい香りは!?」
顔をしかめる赤髪の男。男が視線を部屋へと戻すと、空き缶と骨が散らかった机に突っ伏す影二つ。
――――遥とリヒターだ。
「なっ……おい、何やってんだおまえら!?」
遥の小さな肩を揺するが、反応はない。隣のリヒターも同様だ。どうやら酔い潰れて寝てしまったらしい。
「ったく、しゃーねーな……おいおまえら、こいつら運ぶの手伝ってくれ!」
♪ ♪ ♪
遥とリヒターをそれぞれの部屋に寝かす。幸いどちらもそこまで重くないので簡単に運ぶ事ができた。パーティーはもちろん明日に延期だ。
深夜、誰もいなくなった居間でちびちびとビールを飲んでいると、
「まったく、散々だな……ん?」
「すみません、リヒト・エンフィールド」
黒い髪をうなじのところで縛った、リヒター・ペネトレイターが静かに入ってきた。手には綺麗に包装された箱。
「おう、リヒターか。調子はどうよ?」
「頭痛がします」
「こりゃ二日酔いルートまっしぐらだな」
リヒトが快活に笑った。
「ところで、リヒト・エンフィールド。起きたら枕元に置いてありましたが、これは……何ですか?」
リヒターが手に持った箱を差し出した。
「ああ、そりゃサンタクロースからのプレゼントだ」
「サンタクロース?」
きょとんとした顔で首を傾げるリヒター。うむ、文句なしに可愛い。これで幼女体型だったら完全に落ちていた。
「本当に何も知らんのな、おまえ」
「……すみません」
「ああ、いや、謝らんでいい、謝らんで。まあ、アレだ、サンタクロースっつーのはヨシュア君の誕生日に子供達にひっそりとプレゼントを配る中年のおっさんの事だ」
リヒトの話を聞いた途端、リヒターの白い顔が青ざめる。
「不審者の侵入を許してしまうとは……!」
「いやいや、不審者じゃねーから、いい人だから、サンタさん」
「そうなんですか」
「あたぼうよ。大体悪い人が子供にプレゼントを配るわけがなかろう」
「なるほど」
リヒターが手に持ったプレゼントに視線を落とす。
「そこで、だ」
リヒトがこたつの下からリヒターのて同じように丁寧にラッピングされた箱を取り出した。
「実はサンタのじいさんから遥へのプレゼントを渡されてるんだよ、俺。彼女は歳が微妙なラインだから君が決めてくれだとさ」
「リタ・ベレッタも同い年ですが」
「アレは中身が子供だからいいんだよ。そいで、ここからが本題な?」
「はい……!」
唇をきゅっと一文字に結ぶ。本当にクソ真面目な奴だ、だがそこがいい。
「おまえに、遥のサンタクロースになってほしい」
「はい……?」
「拗ねてる彼女に幸せ届けてこい、って事だよ、ホラ」
プレゼントを半ば無理矢理投げ渡す。慌てつつもしっかりキャッチするあたり、流石といったところか。
「……わかりました、行ってきます」
「おう、頑張れ若者! おまえにメリークリスマス!」
音を立てないように爪先立ちで走りながら、リヒターが闇の中へ消えていった。
「さて、と」
明日は遥にごめんなさいからスタートだな、なんて考えながら、いかにもだるそうに立ち上がって、首を鳴らす。
今頃、まどかの部屋には金髪の女サンタクロースが向かっていることだろう。リタの部屋とライの部屋には筋肉ムキムキのマッチョサンタが向かっていることだろう。
蜥蜴のサンタクロースや、油性ペンみたいな名前のサンタクロース、冴えない眼鏡のサンタクロース――――八百万の、無数のサンタクロース達がプレゼントを配り始めたことだろう。
それぞれのサンタクロース、それぞれのクリスマス。
八百万の、クリスマス。
「――――それじゃあ、そろそろ俺も今からあいつだけのサンタクロースになるとするか」
赤い髪のサンタクロースが、部屋からゆっくり出て行った。
深夜、誰もいなくなった居間でちびちびとビールを飲んでいると、
「まったく、散々だな……ん?」
「すみません、リヒト・エンフィールド」
黒い髪をうなじのところで縛った、リヒター・ペネトレイターが静かに入ってきた。手には綺麗に包装された箱。
「おう、リヒターか。調子はどうよ?」
「頭痛がします」
「こりゃ二日酔いルートまっしぐらだな」
リヒトが快活に笑った。
「ところで、リヒト・エンフィールド。起きたら枕元に置いてありましたが、これは……何ですか?」
リヒターが手に持った箱を差し出した。
「ああ、そりゃサンタクロースからのプレゼントだ」
「サンタクロース?」
きょとんとした顔で首を傾げるリヒター。うむ、文句なしに可愛い。これで幼女体型だったら完全に落ちていた。
「本当に何も知らんのな、おまえ」
「……すみません」
「ああ、いや、謝らんでいい、謝らんで。まあ、アレだ、サンタクロースっつーのはヨシュア君の誕生日に子供達にひっそりとプレゼントを配る中年のおっさんの事だ」
リヒトの話を聞いた途端、リヒターの白い顔が青ざめる。
「不審者の侵入を許してしまうとは……!」
「いやいや、不審者じゃねーから、いい人だから、サンタさん」
「そうなんですか」
「あたぼうよ。大体悪い人が子供にプレゼントを配るわけがなかろう」
「なるほど」
リヒターが手に持ったプレゼントに視線を落とす。
「そこで、だ」
リヒトがこたつの下からリヒターのて同じように丁寧にラッピングされた箱を取り出した。
「実はサンタのじいさんから遥へのプレゼントを渡されてるんだよ、俺。彼女は歳が微妙なラインだから君が決めてくれだとさ」
「リタ・ベレッタも同い年ですが」
「アレは中身が子供だからいいんだよ。そいで、ここからが本題な?」
「はい……!」
唇をきゅっと一文字に結ぶ。本当にクソ真面目な奴だ、だがそこがいい。
「おまえに、遥のサンタクロースになってほしい」
「はい……?」
「拗ねてる彼女に幸せ届けてこい、って事だよ、ホラ」
プレゼントを半ば無理矢理投げ渡す。慌てつつもしっかりキャッチするあたり、流石といったところか。
「……わかりました、行ってきます」
「おう、頑張れ若者! おまえにメリークリスマス!」
音を立てないように爪先立ちで走りながら、リヒターが闇の中へ消えていった。
「さて、と」
明日は遥にごめんなさいからスタートだな、なんて考えながら、いかにもだるそうに立ち上がって、首を鳴らす。
今頃、まどかの部屋には金髪の女サンタクロースが向かっていることだろう。リタの部屋とライの部屋には筋肉ムキムキのマッチョサンタが向かっていることだろう。
蜥蜴のサンタクロースや、油性ペンみたいな名前のサンタクロース、冴えない眼鏡のサンタクロース――――八百万の、無数のサンタクロース達がプレゼントを配り始めたことだろう。
それぞれのサンタクロース、それぞれのクリスマス。
八百万の、クリスマス。
「――――それじゃあ、そろそろ俺も今からあいつだけのサンタクロースになるとするか」
赤い髪のサンタクロースが、部屋からゆっくり出て行った。