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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.2B

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「ベルの奴、自分のキャリアーの荷台にこいつ置きっぱなしにするなっちゅうに……」

 母屋のすぐ隣にある大きな倉庫。
いつも着ている仕事服に身を包み、やる気満々な面持ちで臨んだ俺の出鼻を挫くそれは帰ってきた状態でそのまま放置されたベルのキャリアーと俺の愛機だった。

「まったく。」

せめて片付けとけと毒づきたいが、昨日の状況が状況だった為それはやめておく。俺にも非が無いわけではないからな。

「……こんなもんが俺の顔面に降って来たんだからなぁ。」

と、何故か持ってきてしまった白いノートを取り出す。
昨日の怪しい光はどこへやら。今では落ちてきた時と同じ様子に戻っている。
 ともかく……

「さ、点検だけしてさっさと行くか。」

 荷台の上で身体を丸めて三角座りをしている頭の無い人型をした全長3mの俺の愛機――「テツワンオー」を見上げて言う。

 テツワンオー。
 マシンダムシリーズの傑作機と名高いM-087のマイナーカスタム仕様。高性能のギアズマッスルを全身に惜しみなく用い、
高い積載量に汎用性と踏破力、持久力、耐久力を併せ持つ、スカベンジャーの仕事を行うにおいて無くてはならない相棒だ。

「アームリンク好調。フットリンク好調。推進剤ばっちり、ローラーモーター極めて正常、燃料電池残量も今日の分は十分かな……」

 面倒なので荷台に載せたまま一通りチェックを済ます。
ちなみに愛機と言っても俺が買ったものではなく、元はと言えばバールが若い頃使っていたらしい奴を譲られたもの。年代物とはいえ匠の技による確かな整備に細かなチューンと、
所々に最新のパーツを用いている為、現行の最新の機種にも遅れはとらない。おまけに青春の思い出も詰まったバール自慢の一品だ。
いくら普段温厚なバールでもこいつをぶち壊したらどんな目に遭わされるか……ちょっと考えただけでもぞっとする。

「うん、チェック終了!いけるな!」

 起動キーは指紋データ。操縦は基本モーションリンク。俺が手を動かせば指先一本までこいつの手も真似して動き、俺が足を動かせば歩き方の癖まで真似てこいつの足もしっかり動く。
その上で滅多とお世話になる事はないが腰には着地時の緩衝用ロケットブースター、うって変わっていつもお世話になっている平地での高速移動用にそれぞれの脚部にローラーを搭載。
他にも長年の改造により様々なオプションを持ち、正直俺の稼ぎじゃとてもじゃないが買えたものじゃないワンオフの高級機だ。ほとほとバールにはいくら感謝してもしきれない。

「……では、テツワンオー発進!」

 強化チタン製の保護用シェルがコクピットにいる俺をすっぽりとカバーし、内部が一瞬真っ暗になるがどこからともなくすぐに全面青白く光り、外部の情報を取り込んでくれる。
 まず慣れた手つきでキャリアーの荷台からテツワンオーの機体を下ろし、倉庫より外に出てから脚部ローラーユニットを起動。
地を駆ける軽快な音を耳にしながらテツワンオーを駆る俺は今日の獲物を探しに出かけた。


「ジャンクのォ~海ィ~は俺のォ~海ィ~♪」

何処までも続くジャンクジャンクジャンク……
その中を我が物顔でのっしのっしと歩いていくテツワンオー。鉄くずには興味無い。もっと大物をプリーズである。

「……んーむ。中々無いもんだな。」

 ついで言うとライバル(他のスカベンジャー)の姿も無い。
 ここらはもう掘り尽くされた場所なのか?そんな予想も頭に浮かぶ。まぁそれなら移動するだけなんだが、何となく気になり更に探す。

「大物とは言わないが、中物小物でも……っと!」

 大きなジャンクの丘の影から横に出ようとしたところ、4機編成のマシンダムの一団が視界に入ってきた。思わず機体を陰に引っ込めつつ様子を伺う。幸いこちらには気付いていないようだ。
 機体はどれもパッと見ただけでも旧式と分かる上テツワンオーみたいにガチガチにチューンされておらず、脚部ローラーも持っていない。
まぁ俺が恵まれすぎているだけで大概のスカベンジャーがああいうマシンダムを用いているので別に特別な光景とは言えない。むしろよくある光景だ。

「あいつら、何か見つけたのかな……?」

 何かを囲んで話しているようだが少し遠く、声が聞こえない。だけど気になるな……と機体内部を一通り見回してから閃いた。
 オプションとして何故か搭載されている通信傍受装置。一体何に使うつもりなんだろうと疑問に思っていたがどうやら使う時がきたらしい。
バールに知られたら怒られそうだがなんの、そんなもんを積んでいるほうが悪い。

「えーと、システムオン。周辺の電波波長を検索……お!」

 マニュアル通りにシステムを使用。すると特に労する事も無く彼らの使用している周波数を探知した。黙って耳を傾ける俺。

「こいつはすげぇ!いつぶりだこんな大物!」
「4人で分けてもお釣りが来そうだな!よぉし、こいつを売り払ってパーッとやるぞー!」
「「「おーっ!!」」」

 歓喜に溢れる4人の男のスカベンジャーの声。
 どうやら相当の大物らしいが、横から掻っ攫うつもりは毛頭無い。
 スカベンジャーの掟その1「初めに見つけた奴がそれの持ち主」、というのもある。内心彼らの幸運を祝いつつ、俺も負けてられないなと踵を返して探索を再開しようとした矢先

「な、なんだありゃ!?」

 傍受装置を切ってなかった為拾った、先ほどとはうって変わって慌てふためくさっきの一団の1人の声。明らかにただ事ではない。まさか……!

『旨ソウダナテメェラァ……食ッテモイイカァ……?』

 更に傍受したわけでもなく聴こえた「電波の声」。ここで確信した。間違いない。

「い、いいワケないだろ!なんなんだてめぇは!!」

 男の一人が反論する。そんな事してる暇があればさっさと逃げ出せと内心毒づく。「そいつ」には人の言葉は通じないのだから。

『俺ガ何ナノカナンテドウデモイイダロォ?オ前ラハ俺ニ食ワレチマウンダカラナァ!!』

 バリード。
 機械の怪物。その表現が一番しっくり来る。
 真っ赤な一つ目の光学センサーを搭載した球状の本体に無数の鉄くずや壊れた機械を歪に身体に纏わり付かせ辛うじて人型をしたそれは、
金きり声を伴う合成音声を電波で飛ばしながらじわじわといたぶるように4体のマシンダムを追い詰めていく。
 あんなタイプは始めて見るが、詮索は後。見てしまったからには止めないといけない。
 スカベンジャーの掟その2「バリードを見かけたら放っておかないで必ず処分、もしくは周辺の自警団に連絡する」っとな。
 運悪くこの周辺にジャンクヤードは無く、すぐに自警団の助けは受けられそうに無い。なら彼らの退路を開くぐらいは手伝わせてもらおう。
 丘の影より飛び出し一気に詰め寄る。

「ロケットブースターオン!ローラーユニット最大回転!」

 ちなみに退路を開くと言ってもこのテツワンオーに武器らしい武器は無い。だがそんな機体も使い方次第では――!

「いっけぇぇぇぇぇっ!テツワンッ!キィッッッックッ!!」

 ロケットブースターにより飛び上がり、細部スラスターにより軸合わせ。更にブースター逆点火。
テツワンオーの全重量と最大出力を伴った跳び蹴り及び高速回転するローラーは今まさに彼ら(のマシンダム)を食らおうとしていたバリードの横っ腹を直撃した。

『ガァァァァァァァァァァッッ!!!』
(き、決まった……!)

 悲鳴を上げて纏っていた鉄くずを撒き上げつつそのまま軽々吹っ飛び、隣のジャンクの丘へと突っ込むバリード。
そして残りのブースターを吹かして華麗に着地するテツワンオー。敵の方を見ないのがお約束。
 んでもってその内部で久々の必殺技が見事決まった事の快感に震える俺。まぁずっとそんな事をしているわけにもいない。
 テツワンオーのいきなりの乱入に呆然としている4機のマシンダムに向けて吼える。

「あんた達!早く逃げろ!すぐに起き上がるぞこいつ!」

 突っ込む前にスチームヒルの自警団にエマージェンシーは送っておいた。後は彼らが何とかしてくれるはず。

「お、おう!何処の誰かは知らないが感謝する!お前ら、さっさと逃げるぞ!」
「「「へい!」」」

 リーダーらしき男の音頭でそそくさと逃げていく一団。
 後は俺もずらかるかと背中を見せた時だった。

『痛ェナァ……痛ェナァ……身体ガバラバラニナリソウナグライ痛ェナァ……!』

 背後から襲い来る何か。それがケーブルだったと気付いたときには遅かった。

「ぐっ!?」

 テツワンオーの右腕部に巻き付くケーブル。非常に硬く巻き付き、振り解こうにも解けない。何事かと振り向いた俺(テツワンオー)は驚愕した。

『ダケドテメェ、サッキノ奴ラヨリヨッポド旨ソウダ……ダカラ食ワセテクレタラ許シテヤルゾッ!!』

 一体いつの間にこんなになったのだろうか。というより何をどうしたらこうなるのか。
 既に人型ではなく、ジャンクの丘そのものがバリードとなっているような状態。
その内部より更に何本ものケーブルが襲い掛かり、回避の取れないテツワンオーの四肢の自由を奪う。

「くそっ……!」

 敵の力はあまりにも強大。さっきのキックで吹き飛んだのと同じ奴とは到底思えない。
 完全に力負けしたテツワンオーは抵抗虚しくずるずるとバリードの方へ引き込まれていく。

『サァ、タダキマァッッッズッ!!!』

 全面のジャンクの塊がまるで口のように上下に開く。その内には高速回転する無数の鋭利な回転鋸が待ち構えていた。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 あまりの光景に思わず叫ぶ俺。
 このままじゃテツワンオー諸共俺も……!

キィィィィィィィ――

 バリードの口内にて金切り音を上げる死そのもの。
 飲み込まれればまず間違いなくお陀仏だろう。ケーブルを解こうにも元々一つのパーツだったかのようにくっついて取れない。
ああ、走馬灯が過ぎる……バール、ベル、ウェル、リングダム家の長男がこんな最期を迎えてごめんなさ――


「――反応をつけてみれば脅威度D-。だが励起獣か。」


直面した死による恐怖と混乱の最中、不意に聴こえたあまりにも澄んだ声。そして回転鋸の物ではない風切り飛来する何かの音。

『!?』

 刹那。熱したナイフでバターを切るが如く、次々と軽々切り飛ばされていくケーブル群。
 見れば地面に青白い短い刃のような物が突き刺さっていた。

「ッ!」

 引き込まれる力を失い、食われるすんでのところで尻餅を突くテツワンオー。何が起きたか全然理解できなかった俺はさっきのあの4人を笑う事は出来ないだろう。

『……何モンダテメェ!俺ノ食事ノ邪魔ヲシヤガッテェ!!』

 状況を理解したのはバリードのほうが早かったらしい。
 赤いモノアイに怒りを乗せて、右方向に聳えるジャンク山を睨んで吼える。見ればそこには確かに何かがいる。俺は逃げる事も忘れて機体カメラの望遠を最大まで上げて見つめた。


「貴様に名乗る名は無い。」


 バリードの叫びを一刀両断しそこに立っていたのは、見た事も無い銀の装甲を纏い、見た事も無い青白い光を放つ鋭き瞳を持つ、見た事も無いヒトガタだった。

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