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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.3B

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匿名ユーザー

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――Alice. part


 この街の空は汚い。
 粉塵にスモッグと様々な有害なモノを溶け込ませ、黒いベールとなって街を覆う。対策も碌々取っている様子は見られず、およそこの事で身体を病んでいる人も多い事だろう。

「………………」

 だが私にとっては関係ない事だ。
 この街の事はこの街に住む者達が決めるべき事。蚊帳の外の人間が一々口出すものでもない。

「………………」

 ……今無意識に、自分の事を人間と言ってしまったが果たして本当にそうなのだろうか?
 銀の装甲を身に纏い、身を包み、そもそも身そのものを銀として、存在するモノが
 異形の式にて宙を舞い、工場群の上に佇むモノが
 果たして人間なのだろうか?

「――――」

 答えなど無いだろう。例えあったとしても、求める必要もない。
 そもそも誰も――それこそ出題者である私自身も答えを求めてはいない。
 私は私だ。それ以上でも以下でもないのだから。

「………………」

 視線を街へと戻す。

 無数の天へ向かい突き立てられた煙突群。
 鉛色の工場群。
 遠く見えるレンガ屋根の住宅地。
 地を走る人が駆る機械の群れ。

 先ほどは汚いと言ったが、確かにここには人が息づいている。
 平和な日常がある。それぞれにとってかけがえの無い想いが詰まっている。

「………………」

 だが今、その影には闇がある。この世ならざる者どもの闇が。
 「生」と「セカイ」を求める狂えた亡者。己が「欲望」を叶える為暗躍する哀れな者。そしてそれ以外にも。

「………………」

 何の因果か私も含め、この街へ集ったこの世ならざる者達。
 だが理由はどうであれ、その者達はこの世界の平穏を脅かす。
 過去を汚し、未来を摘み取る。だから存在を許すわけにはいかない。赦すわけにはいかない。


 故に私――イグザゼンはこのセカイへの脅威に対し、攻撃を開始した。


「イグザダガー、顕現化(マテリアライズ)。」


 ダガーが手元に1本顕現されると同時に、振り向き様に投擲され、風切り奔る。
 一見何も無い方向に向けて投げられたように見えるが、ある一定の距離を過ぎるとダガーの姿が消えてなくなった。

「……危ないわねぇ。怪我したらどうするのよ?」

 その直後に聞こえた若い女の声。
 子供っぽい口調といい少女と言ってもいいぐらいの年齢に思えるが、その内に何故か含むある種大人びた雰囲気がそれを否とする。

 そして背景が独りでに歪む。静かな水面に白波を立たせるかのように。
 同時にそこには今までいなかった何者かの姿があった。

「――先ほどもそうだが、出歯亀とはいい趣味だな。感心するよ。」
「お褒めに預かり光栄でございまーす☆」

 指先で摘んだ短刀を投げ捨てると、白々しくも華麗に礼をする少女。
 短めのツインテールで纏められた、鮮血のように紅い髪。そのまま舞踏会にでも出席出来そうなぐらい美麗な修飾が施された深紅のドレス。陶器のように白い肌に気の強そうな釣り目が妖艶に微笑む。
 その姿――勿論初対面であるが、相対する銀の異形――イグザゼンは何故か既視感を感じずにはいられなかった。

「しっかし結構手の込んだ迷彩を施してたつもりなんだけどねぇ。やるじゃない?」

 クスクスと笑いつつ、下から上へと舐める様にイグザゼンを見つめる少女。
 見た目の華美さはともかく、イグザゼンとは違い姿その物は人のものに違いない。
 だが今彼女がいるのは高度300mの上空。スチームヒルの中央部、工場群を一望できる場所にて何の支えも無く「空中で」佇んでいるのだ。この時点で異形以外の何物でもない。

「……先ほどの質問の答えを聞かせてもらおうか?」
「質問?あー、あれね。アタシが何者かって奴?えー?別に誰でもいーじゃなーい?」

 その言葉に対する返答は、高速で飛来するダガー一発。
 彼女へのさっさと答えろとの催促なものの、その一撃は眉間に寸分違わず向けられており、殺意は十分。だが今度は軽く片手で弾いてのけた。

「……まったく。冗談が通じないんだからぁ~……アタシはビュトス。あんたに会う為遠路遥々やって来たってワケ?これでおーけー?」

 銀の異形――イグザゼンはただ沈黙を守り、深紅の異形――ビュトスをまじまじと見つめる。
 目標が使用している空間制御機構は自らの用いている機構に非常に似通ったモノ。励起獣が用いる類ではない。
 そして全身から発せられる独特の「匂い」。イグザゼンと同種のそれは、彼女が何者であるかと言う事を、これ以上なく流暢に代弁していた。

「おーけーなら!」

 そんな事を考えていたイグザゼンの目前から唐突に、画像編集でもしたかのように消える深紅の異形。
 光学、赤外、音波探知、その他諸々のセンサーからも完全にロスト。本当の意味で姿が消えたかのように思える。
 だがそんな筈は無い。そんなわけがある筈無い。どんな手品を使ったかは知らないが、必ず何処かにいるはず――

「ちゃんと返事してよね?」

 そして刹那、すぐ背後から再び聞こえるビュトスの不機嫌そうな声。
 イグザゼンのありとあらゆる監視の目をかいくぐり、回り込んだとでもと言うのか?
 身構えるが、既に遅い。

「アタシも早くあんたで遊びたいんだからッ!」

 背後から襲い来るすぐ近くで砲弾が炸裂したかのような強烈な衝撃。
 ソートアーマーを構成する装甲は打撃、斬撃、熱攻撃等の様々な外的脅威に対し極めて高い防御力を持っているのだが、
 それすらも軽く突き抜ける衝撃――生身なら背骨ごと圧し折られていただろう――が全身を走る。

「――!?」

 それがただのケンカキックだとイグザゼンが気付いた時には10mほどは軽く吹き飛ばされていた。ダメージも気にせず振り向き、
 すかさずダガーを数発放つものの、全発ビュトスに命中する直前で目に見えない何かに阻まれるように急停止し、そして力尽きたかのようにぽろぽろと落ちていった。

「甘ったるいわねぇー……もうちょいいい手は無いのかしら?」

 わざとらしい溜め息をつきつつ、やれやれと大げさにジェスチャーしてイグザゼンを挑発するビュトス。
 敵はダガー程度ではまるで抜けない何らかの障壁を周囲に展開し、更にこちらがまったく補足できない機動性を持ち、
果てには自身とは同じ類の存在でありながら、戦闘形態すら見せていないというまるで底の見えない相手。
 正直言って最悪だ。逆立ちしたって勝ち目などありはしない。
 だがイグザゼン――「彼女」はこんな無謀な勝負に出た事には、まったく後悔していなかった。敵がいくら強かろうと、自分がいくら傷つけられようと、そんな事はどうでもいい。
 自身の存在理由はイグザゼンの使命のみ。
 故にそれさえ果たせれば後は二の次。故に力の差による絶望感などには、まるで苛まれてはいなかった。

 向き合う2人。
 鋭く蒼い眼光がビュトスを捉える。同時に胸の前に右手をかざす。
 対する見た目幼い異形の、深紅の瞳がイグザゼンを捉える。同時に右手を真っ直ぐ伸ばして手の平を開く。


「イグザブレイド、顕現化(マテリアライズ)。」

「ブレイジンケイン!顕現化(マテリアライズ)ゥ!」


 銀の異形の手甲に生じる銀の長剣。切っ先鋭く、この世ならざる光を湛える。
 深紅の異形の掌に握られる赤の杖。自らの身長より長いそれは酷く赤黒く、上部が三又に別れている。

 顕現。双方突撃。真正面から激突する銀の剣と赤の杖。
 獲物の上では剣の方に分があるが、それでも赤の杖はまるで引けを取らない。いや、むしろ押しているほどだった。

「付き合ってあげるわ!そっちの方が楽しそうだし!」
「――ッ」

 力の差は歴然。こうやってられるのもあまり長くは無さそうだ。
 どちらとも無く弾かれる双方。間合いを取りつつ円を描くように高速で旋廻する。そして再度激突。

「うんうん!やっぱり搦め手なんて無しで真正面からぶつかるのが気持ちいいわねぇ!これならいい勝負も出来そうだし!!」

 どうやら完全に舐められているらしい。
 が、それでも正直手詰まりという自身の力の無さに閉口する。

「――――――」

 今出来ることと言えば、いつかしたように不完全な顕現によリ生じる歪みを用いた撤退ぐらい。ただこれは何処へ飛ぶかも定かではない上、
その転移距離もそれほど遠くない上に新たな励起獣の温床を生む事にもなる。
 一通り見ただけでも欠点だらけで、利点が今いる所から逃げられると言う一点のみしかない。これでは駄目だ。


 剣が乱舞し、杖が打ち据える。
 ぶつかり合い、弾かれあい、まるで舞うように、まるで散るように

「――――――」

 イグザゼンの行動原理というのはふたつある。
 共に同じ比重であり、どちらも疎かにする事はできない。
 ひとつは「想い」を伝える事。
 ひとつは「歪み」を正す事。
 「想い」を伝える為にイグザゼンはここまで逃げ延び、「歪み」を正す為に今目前の異形と相対している。
 どちらも死しては出来ぬ事。どちらも生きねば出来ぬ事。
 故に死する事は許されず、故に逃亡する事も許されない。

 だが目前の敵はあまりにも強大。
 だが今倒さねば奴はいずれ大厄を生むだろう。
 ならばどうする?

「それそれそれぇ!」

 じりじりと押されるイグザゼン。
 猛攻を防ぎきる事はできず、幾度も叩きつけられた杖は深紅の軌道を描きつつ装甲をゆがめ、破壊し、粉砕する。更に隙を見て見舞われた強烈なハイキック。
 剣で防御するも、たまらずイグザゼンは吹き飛ばされ、ある程度離れた位置でやっと静止出来た。

「――ッ」

 損傷率40%。
 機体ダメージが増大し、構成が不安定になってきている。
 このままソートアーマーの顕現そのものが破壊されれば、奴に対抗できる手段は一切無くなる事になる。
 そうなっては駄目だ。ならばどうすればいい?

「――――――」

 「想い」を伝える為には「死ななければいい」。
 死さえしなければいくらでも再起は出来る。イグザゼンとはそういうものだ。
 故に一つの賭けに出た。これ以上なく分の悪い賭けだが、当たりを引ければ問題ない。

「――手応え無いわね。「破壊」のロストフェノメオンが、聞いて呆れちゃうわ。」

 先ほどまでとは違い、興味無さげに言うビュトス。その顔には失望の二文字がありありと見えていた。

「何、少し考え事をしていただけだ。」

 自身の超常の力を振り絞る。
 無論これだけでイグザゼンを完全に顕現化できはしない。だがそれも使い方次第。
 全身にくまなく供給して無理なら、部分的に顕現させる事は出来ないだろうか?勿論このような使い方は本来想定されておらず、こちらにかかる負担も極めて大きいが、奴が倒せるなら安い事。


「――オーバード・イグザブレイド、顕現化(マテリアライズ)。」


 宣言と共にイグザゼンの全身を覆う金に輝く何者かの輪郭。
 だがそれは曖昧なままはっきりする事は無く、横に伸ばした右の拳とそれに連なる銀の剣の周囲のみへと収束していく。
 銀の装甲に纏わり付く金の光。過負荷により音ならざる悲鳴を上げ、前の攻撃でダメージを受けていた箇所は耐え切れずに弾け飛んでいく。
 そしてイグザゼンの力を受け、燃え立つように揺らめき、この世ならざる光沢を放つ金の剣の顕現が完了したものの、構成が極めて不安定となっており、物質の態をとっていない。

「―――――――」

 それを真っ直ぐ己の敵へと向ける。
 揺らめく剣は極めて高い熱量を放ち、その持ち主の装甲をもゆっくりと溶解させていく。
 時間が無い。たとえ使えたとしても一撃のみだろう。ならばそれに賭けるのみ。後の事など考える必要はない。

「……へぇ?やっとやる気になったってわけ?いいわ、真正面から受け止めてあげる!」

 イグザゼンの命を削る、半ば捨て身の攻撃の前でもなおニッと楽しそうに笑うビュトス。
 ただ杖を構え、イグザゼンの攻撃に備える。

「さぁさぁさぁ!イグザゼンの力、アタシに見せて、魅せてみてよっ!!」

「はぁぁああああああああああああああああ!!!」

 爆発的な加速。
 残りのエネルギー全てを食い尽くすかの如く力を振り絞り、剣を構え突撃する。

(へぇ……今のあんたでそこまで出来るのね。なら、アタシもアタシで楽しませてもらったお礼でもさせてもらおうかしら?)

 対するビュトスは凄まじい速度で突っ込んでくるイグザゼンを値踏みするように見つめ、そして


「ブレイジンケイン、ソートサイズ。」


 イグザゼンの決死の一撃が炸裂する直前、ビュトスの杖が「変形」する。
 三又に分かれた上部より透けるような紅い巨大な刃が生じ、その後方には放射状に伸びる三対の飾り羽。
 瞬時に杖から大鎌へと変形したそれを両手で持ち、ビュトスはイグザゼンの剣と真正面からかち合った。
 言うまでも無く鎌という武器はその形状上鍔迫り合い出来るようには出来ていない。だが2人の力の差はそんな些細な事など軽く凌駕するものだった。

「――――――ッ!!!」
「それが全力?ならまだまだねぇ!それじゃ脅威足りえはしないわよ!あんたがイグザゼンというのなら、それ相応の力を見せて御覧なさい!!」

 足りない。
 力が足りない。決定的に足りない。これだけ搾り出してもまだ足りない。
 そして急速に解けていく金の光。それを纏いつつも朽ちていく銀の剣。打ち合う紅い刃には一切の傷もつけられてはいない。

「それが出来ないならアンタはそこまで!大人しくブレイジンサイズの錆となりなさい!」

 ただでさえ強烈な紅い異形の圧す力が急激に強まる。
 どうやらここでトドメを刺すつもりらしい。

「―――――――」

だが、黙ってやられる気は毛頭ない。
相手の本領が見えないのだ。この程度の事は想定の内。故にやれる事もある。

(顕現化(マテリアライズ)強制カット。全供給エネルギー収束解放――行け!)

 オーバード・イグザブレイドの顕現を、規定の段階を置かず強制的に解除。四散する刀身はともかく、まだこの腕には刀身に供給されるはずだったイグザゼンのエネルギーが残っている。
 それの収束を解き、非制御状態で一気に放つ。たかが一武装に供給されていた力だ。その威力は知れている――が、不意打ちには十分だろう。

「ッ!自爆する気!?」

 イグザゼンの金の刃は瞬時に失せ、代わりに異常な熱量が銀の腕の内部より生じる。
 異変を察知したビュトスは退こうとするが既に遅い。
 直後、イグザゼンを中心に一気に放たれた、金の剣を構築していたそのもののエネルギー。轟く形容し難い爆音。そして圧縮された空気が織り成す衝撃波。
 天はどよめき、大地は揺るぎ、地を行き交う人々は、自身の頭上の曇天にもう一つ太陽が生まれたかのような錯覚を覚えただろう。

「―――――――」

 その爆心地。超高温の白い闇。
 酷く緩慢に流れていく時の中で、イグザゼンは全身のパーツを四散させながら、ゆっくりと、ゆっくりと落下していった。

「――まったく、びっくりさせるわねぇ。」

 未だ熱の残滓にて陽炎揺らめく光の跡。いくら冷めたと言っても数百度は下らない。だが、そんな内に「それ」はいた。
 深紅の装甲に彩られた流線的なフォルム。背後に浮遊する一対のホイール。狐目のように細く鋭い紅い瞳を持つ異形の甲冑。
 それは紅い少女の纏う力のカタチ。超越的存在の可能性の一端。

「全力でいって無理なら自爆って潔すぎるわよ、あんた。ソートアーマーの顕現化が間に合わなかったら、ちょっと危なかったかもしれないわね……」

 呆れた様に呟く。
 その視線は遠く地上に墜落した銀の甲冑に向けられていた。

「でもまぁ、ちょっと面白かったから許してあげる。感謝なさいよ?……ソートリターン。」

 宣言と共に紅い異形は閃光に包まれ、次に現れたのは先ほどの紅いドレスを纏った少女。
 凝りをほぐすように一旦伸びをしてからクルリと一回転。

「んじゃま、あんまりイジメるとアレーティア様に怒られそうだし、そろそろお暇させてもらおうかしら。じゃーねー……っと、あら?」

 立ち去ろうとする少女だったが何かに気付いたか空を仰ぐ。
 同時に鉛色の雲の向こう側より後を引きつつ飛来する黒い「何か」。

「……励起獣。弱ったところを狙うつもりね?まっ、いくら弱ったところであんた達じゃ敵いっこないと思うけど。」

 銀の甲冑へ殺到する異形の集団を目の当たりにしても、少女は特に動ずる事無く、ただ事の成り行きを見守る。
 その紅く塗れた口元に、薄っすらと笑みを浮かべて。

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