叔父が亡くなってから早一年が経った。
当時はショックのあまりに時が止まったように感じたけど、時間が経つと只単に、過ぎ去った過去として頭の中で処理されてしまう様だ。思い出とはそんなもん。
当時はショックのあまりに時が止まったように感じたけど、時間が経つと只単に、過ぎ去った過去として頭の中で処理されてしまう様だ。思い出とはそんなもん。
叔父はリビングでお気に入りのウイスキーを嗜んでいた時に突然心筋梗塞になってしまい、それからまもなく、天に召されてしまったらしい。
色んな事が積み重なりまくって、山と言うよりピラミッド並のあの仕事量の中でその訃報を聞いて、僕はどこかで頭のネジが吹っ飛んでしまった。
叔父の存在は子供の頃の僕にとっては、掛け替えの無い人だった。ある意味、両親以上に僕は叔父の事を好いていたと思う。
色んな事が積み重なりまくって、山と言うよりピラミッド並のあの仕事量の中でその訃報を聞いて、僕はどこかで頭のネジが吹っ飛んでしまった。
叔父の存在は子供の頃の僕にとっては、掛け替えの無い人だった。ある意味、両親以上に僕は叔父の事を好いていたと思う。
子供の頃の話だ。中学に入る前の、社会に付いて何も知らないし知る必要も無かった最高な小学生だった頃。
僕と両親は、一年の内に何度か叔父の家に遊びに行っていた。両親からすればたまに顔を合わせなきゃいけないみたいな、めんどくさい事柄だったんだろうけど僕からすれば違う。
叔父はアンドロイドと呼ばれる、人の形をしたロボットの機械部分の上から様々な細工を施し、人間らしい外見にする仕事……カバーフェイスと呼ばれる仕事に就いていた。
叔父は滅多に言葉を話さない偉く寡黙な人だったが、僕には何時も優しくしてくれた。
僕と両親は、一年の内に何度か叔父の家に遊びに行っていた。両親からすればたまに顔を合わせなきゃいけないみたいな、めんどくさい事柄だったんだろうけど僕からすれば違う。
叔父はアンドロイドと呼ばれる、人の形をしたロボットの機械部分の上から様々な細工を施し、人間らしい外見にする仕事……カバーフェイスと呼ばれる仕事に就いていた。
叔父は滅多に言葉を話さない偉く寡黙な人だったが、僕には何時も優しくしてくれた。
両親から分からない様にお菓子をくれたりお駄賃をくれたり、また、仕事場で間近に仕事内容を見せてくれ、僕はそんな叔父の横顔を見て何時か僕もカバーフェイスになりたい。
そう、思っていた。結果? 社会の荒波は僕に夢というサーフィンをさせてはくれない。どっかで大きく転倒した挙句、僕はしがないプログラマーに就いている。今は無職だけど。
そう、思っていた。結果? 社会の荒波は僕に夢というサーフィンをさせてはくれない。どっかで大きく転倒した挙句、僕はしがないプログラマーに就いている。今は無職だけど。
あまり僕はそういう業界には詳しくないんだが、叔父がカバーを手掛けたアンドロイドはその筋の人からこう評されていた。
まるで人間そのモノの様に美しい、と。生憎僕にはその言葉がどれだけ高尚なのかは分からない。
ローンを組んでおり今にもエンストして煙を出しそうなボロ車……というか愛車を走らせながら、僕は今その叔父が住んでいた家へと向かっている。
叔父は一族の中ではかなり変わり者というか、歴代で一人だけカバーフェイスという仕事に就いており、尚且つ非常に寡黙な上に妻も子供もいない、ガチで独身貴族だった。
加えて叔父はカバーフェイスの仕事に専念する為にわざわざ山奥を探して、そこで凄まじく過疎地な場所で仕事場であるガレージがくっ付いた一軒家で暮らしていた。
車で行くと3時間掛かる上、当り前だがバスも電車も無い、とてもじゃないが徒歩じゃほぼ半日かかるそんな場所に、叔父は暮らしていた。
加えて叔父はカバーフェイスの仕事に専念する為にわざわざ山奥を探して、そこで凄まじく過疎地な場所で仕事場であるガレージがくっ付いた一軒家で暮らしていた。
車で行くと3時間掛かる上、当り前だがバスも電車も無い、とてもじゃないが徒歩じゃほぼ半日かかるそんな場所に、叔父は暮らしていた。
それにしてもどこを見ても木、木、木ばっかだ。代わり映えしない木しかない、ザ・森って感じの場所。
何故だか分からないけど、子供の時にはこの景色に偉くワクワクしていた。動物とかがいるかもってワクワクしていたのかもしれない。
こんな場所に熊だの狼だの居たって話は全く聞かなかったから、恐らく居ないんだろう。ホント、子供の頃って何にでも感動でき……。
何故だか分からないけど、子供の時にはこの景色に偉くワクワクしていた。動物とかがいるかもってワクワクしていたのかもしれない。
こんな場所に熊だの狼だの居たって話は全く聞かなかったから、恐らく居ないんだろう。ホント、子供の頃って何にでも感動でき……。
……ん? 何だろう、あの子。
ふと、木々の間から佇んでこちらを見ている、一人の女の子……いや、スラッとしてるから少女と言った方が良いか。その少女の姿が目に映った。
少女は鮮烈な赤にワンポイントの白い刺繍が入ったワンピースを着ており、僕の事を無表情のまま、顔を動かして観察しているかのように眺めている。
こんな所に民家なんて……というか叔父以外に人がいるって話は聞いた事がない。……気持ち悪いなぁ。
僕は頭を振ってその少女の事をくしゃくしゃと紙を丸めてゴミ箱に放り投げる様に、記憶から忘れようとする。だけど妙だ。
少女は鮮烈な赤にワンポイントの白い刺繍が入ったワンピースを着ており、僕の事を無表情のまま、顔を動かして観察しているかのように眺めている。
こんな所に民家なんて……というか叔父以外に人がいるって話は聞いた事がない。……気持ち悪いなぁ。
僕は頭を振ってその少女の事をくしゃくしゃと紙を丸めてゴミ箱に放り投げる様に、記憶から忘れようとする。だけど妙だ。
バックミラー越しに見える女の子の顔を見ていると、何故だかずっと昔に、会った様な気がしてならない。
気のせいだろう。木だけに。
ガタガタと不安な音を立てる愛車を停車させて、少し力を加えたら吹っ飛びそうな位ガタついてるドアを開く。
……はぁ、懐かしい。一面を森に囲まれた中でポツンとあるせいか感じる異様感。およそ十数年振りだ。懐かしさとあれ、こんな家だったっけ? という微かな疑問が同時に浮かぶ。
……はぁ、懐かしい。一面を森に囲まれた中でポツンとあるせいか感じる異様感。およそ十数年振りだ。懐かしさとあれ、こんな家だったっけ? という微かな疑問が同時に浮かぶ。
僕の目の前には叔父が居なくなって以来、1年ほど放置されている叔父の一軒家が僕との再会を喜んでいるのかいないのか、ドンと構えている。
叔父の好みなのかは定かではないが、その家は2階建ての木造建築になっていて、当時の記憶だと木の温かみと合間から入って来る風がとても居心地のいい家だった。
二階は確か寝室になっていて、僕と両親が遊びに来た時にだけ使用されていた。叔父は1階での自室で寝ていたから。
叔父の好みなのかは定かではないが、その家は2階建ての木造建築になっていて、当時の記憶だと木の温かみと合間から入って来る風がとても居心地のいい家だった。
二階は確か寝室になっていて、僕と両親が遊びに来た時にだけ使用されていた。叔父は1階での自室で寝ていたから。
ポケットから専用の鍵を取り出して差し込み、ドアノブを回す。まだ全然昼間だというのに、陽が射しこまない家の中は薄暗く、寒く感じる。
一軒家とは思えないリビングの広さにキッチン、一人暮らしではかなり贅沢な気がするバスルームに……あぁ、昔と全く変わってない。
叔父は僕が成人になる間でも、この家で黙々と、カバーフェイスとして働いて暮らしてきたんだな。そう思うと、僕の胸は不思議と熱くなってくる。
ギシギシと音を立てる階段を昇っていくと2階が見えた。本当に何一つ変わっていない……。涙出てきそう。
一軒家とは思えないリビングの広さにキッチン、一人暮らしではかなり贅沢な気がするバスルームに……あぁ、昔と全く変わってない。
叔父は僕が成人になる間でも、この家で黙々と、カバーフェイスとして働いて暮らしてきたんだな。そう思うと、僕の胸は不思議と熱くなってくる。
ギシギシと音を立てる階段を昇っていくと2階が見えた。本当に何一つ変わっていない……。涙出てきそう。
1階に降りて家を出て、そのすぐ隣にあるガレージ……というと味気ないから、工房に入ってみる。
質素な、だけどかなり大きなプレハブ小屋であるその建物を見て、一気に僕の中で懐かしさが込み上げてくる。ここでいつも叔父はカバーフェイスとしての仕事を全うしていたんだ。
子供心にその時の仕事をしている叔父の横顔は、とてもカッコいいと思っていた。作業中の過程は直ぐに頭の中に浮かんでくる。
質素な、だけどかなり大きなプレハブ小屋であるその建物を見て、一気に僕の中で懐かしさが込み上げてくる。ここでいつも叔父はカバーフェイスとしての仕事を全うしていたんだ。
子供心にその時の仕事をしている叔父の横顔は、とてもカッコいいと思っていた。作業中の過程は直ぐに頭の中に浮かんでくる。
機械部分を傷つけない様に、特製のシリコン素材を被せながら余計な部分を切っていき、滑らかに削っていく。段々無機質な機械が、人間の様な顔と体になっていく。
一切のブレが無い、完成された過程はまるで芸術作品を見ている様だった。叔父の手腕は職人のそれというより、芸術家のそれと言った方が近いと思う。
しかし叔父が芸術家ではなく職人である理由は、依頼さえ受ければ、どんなアンドロイドだって作り上げる事だ。鍵を刺して、早速中へと入ってみる。
一切のブレが無い、完成された過程はまるで芸術作品を見ている様だった。叔父の手腕は職人のそれというより、芸術家のそれと言った方が近いと思う。
しかし叔父が芸術家ではなく職人である理由は、依頼さえ受ければ、どんなアンドロイドだって作り上げる事だ。鍵を刺して、早速中へと入ってみる。
叔父は依頼者から要望があれば、少女から少年、女性に男性、果ては老人から幼い子供まで自在に作りだす、業界ではかなりの実力者だったと聞く。
壁面を見ると、依頼者から受けた依頼を行う際に、その依頼の元となる顔のモデルが幾つも立て掛けられているのに気づく。十代から九十代、子供から老人まで。
子供の頃はこの原型が怖くて仕方なかった。こう、のっぺらぼうみたいな感じがして。正直今でもかなり怖い。
壁面を見ると、依頼者から受けた依頼を行う際に、その依頼の元となる顔のモデルが幾つも立て掛けられているのに気づく。十代から九十代、子供から老人まで。
子供の頃はこの原型が怖くて仕方なかった。こう、のっぺらぼうみたいな感じがして。正直今でもかなり怖い。
それにしても……叔父という持ち主を失い、貰い手も決まらずにそのまま放置されている工具や道具が収納された所狭しと並ぶ棚を見ると悲しくなってくる。
一応まだこの家も工房も、そしてこの道具も僕の一族のモノだ。正確には叔父と血縁関係にあった、僕のお父さんのだけど。
誰か叔父と同じカバーフェイスに就いてる人がいれば良かったんだけど……と、誰かの気配を感じて振り返るとドンピシャ。
一応まだこの家も工房も、そしてこの道具も僕の一族のモノだ。正確には叔父と血縁関係にあった、僕のお父さんのだけど。
誰か叔父と同じカバーフェイスに就いてる人がいれば良かったんだけど……と、誰かの気配を感じて振り返るとドンピシャ。
「その様子だと本当に懐かしそうだね、祐一君」
そこにはオレンジ色のサングラスと、蓄えた白い髭と髪が印象的な、紳士という言葉を具現化した様な叔父様が立っていた。
僕は歩きだしてその叔父様に軽く頭を下げて、挨拶を交わす。
僕は歩きだしてその叔父様に軽く頭を下げて、挨拶を交わす。
「お久しぶりです、秋山さん。先月は色々と、お世話になりました」
「いやいや、俺はただあいつの死期を見届けたかっただけだよ。法事云々はそのついで」
「いやいや、俺はただあいつの死期を見届けたかっただけだよ。法事云々はそのついで」
そう言って秋山さんは口元の端々を二ヤリとさせる、シニカルな笑みを浮かべた。
この人の名は秋山了次さん。人付き合いに疎い叔父が認める友人であり、また叔父に代わって、依頼者からの依頼を受け継ぎ、経由する仕事をしていた人だ。
秋山さんは僕の両親とも顔馴染みで、僕は小さい頃から色々とお世話になっていた。今でも時折、何かあると飲みに行くついでに相談したりする。
この人の名は秋山了次さん。人付き合いに疎い叔父が認める友人であり、また叔父に代わって、依頼者からの依頼を受け継ぎ、経由する仕事をしていた人だ。
秋山さんは僕の両親とも顔馴染みで、僕は小さい頃から色々とお世話になっていた。今でも時折、何かあると飲みに行くついでに相談したりする。
「あいつの工房、結構広いだろ? ここであいつは休む事無く、アンドロイドを作ってたんだよなぁ」
と言いながら煙草を一本口に咥えて話す秋山さんの横顔は、物悲しい。思えば叔父が秋山さんと話している時は、普段見せない様な笑顔を見せていた気がする。
思えば僕にとって叔父は、子供の頃の思い出として、非常に無口ながらも、優しく接してくれた人という記憶は在るものの、それ以外の面については何も知らなかった。
思えば僕にとって叔父は、子供の頃の思い出として、非常に無口ながらも、優しく接してくれた人という記憶は在るものの、それ以外の面については何も知らなかった。
両親の都合で都内に引っ越した僕は、エレベーター式の進学校に進学する事になった。中学に上がる頃になると、僕たち家族は自然と叔父の家に行かなくなった。
たまに両親が電話越しに連絡する程度で、わざわざ会いに行くのが億劫だったのかもしれない。僕自身も学校の勉強に追われて、叔父の事が記憶からだんだん薄れていく。
その過程で忘れられない様々な出来事……言い方を変えれば級友達との修学旅行とかそういう思い出が出来る事に、叔父の影はひっそりと消えていった。
たまに両親が電話越しに連絡する程度で、わざわざ会いに行くのが億劫だったのかもしれない。僕自身も学校の勉強に追われて、叔父の事が記憶からだんだん薄れていく。
その過程で忘れられない様々な出来事……言い方を変えれば級友達との修学旅行とかそういう思い出が出来る事に、叔父の影はひっそりと消えていった。
やがて僕は偉く苦労しながらも就職し、一層日々を生きる事に必死になっていた。仕事をしていく中で、僕は色々な事を置き去りにしていき、人としての感情を忘れていった。
そんな時に叔父の訃報が入った。最初は非常に失礼ながらピンとこなかったというか、正直誰だったっけ……と思ってしまった。
だけど母さんの話を聞く内に段々記憶が蘇ってきて、何故だか分からないけど、僕の目から涙が溢れ出てきた。どうしてなのかは分からない。きっと感情の抑制が利かなかったと思う。
それにもしかしたら心のどこかで、存在を忘れていた叔父に対する謝罪の気持ちがあったのかもしれない。今でも罪悪感が心の中で呻いている。
だけど母さんの話を聞く内に段々記憶が蘇ってきて、何故だか分からないけど、僕の目から涙が溢れ出てきた。どうしてなのかは分からない。きっと感情の抑制が利かなかったと思う。
それにもしかしたら心のどこかで、存在を忘れていた叔父に対する謝罪の気持ちがあったのかもしれない。今でも罪悪感が心の中で呻いている。
叔父の葬式に参列し、棺の小窓から叔父の顔を見る。遺影と比べても眠っている様に見えるほど変わっていなかった。今すぐにでも起きるんじゃないかって位。
目を瞑った永遠の眠りに就いているその顔は、とても安らいでいて、僕はありがとう、ありがとうと泣きながら心の中で何度も唱えた。
目を瞑った永遠の眠りに就いているその顔は、とても安らいでいて、僕はありがとう、ありがとうと泣きながら心の中で何度も唱えた。
今回叔父の一軒家に訪れたのは、そんな叔父との思い出を振り返る為だ。もう何十年も前に来たのに一軒家の中は全く変わっていなくて一種の感動を覚える。
しかし僕がここに来たのは思い出を振り返るだけじゃない。僕が来た目的はもう一つ……あるのだ。秋山さんは一服すると、僕に顔を向けて、行った。
しかし僕がここに来たのは思い出を振り返るだけじゃない。僕が来た目的はもう一つ……あるのだ。秋山さんは一服すると、僕に顔を向けて、行った。
「それで祐一君、この前話してくれた事だけど」
「君、本当にここに住むつもりなのかい?」
そうなのだ。僕が一軒家を訪れた理由は、この家が移住可能かどうかを確かめる為だ。僕は叔父からこの家を引き継ぎたい。真剣に。
少し過去の話をすると、僕が就職した職場はまぁ最悪だった。消化できてもいないのに積み上がる仕事、高圧的な上司、やる気の無い部下、残業手当皆無な黒に黒な会社。
その会社は結構大手でかつ、外面だけは中々イメージの良い会社だったが実際は真っ黒にも程があった。ここら辺は就職出来れば良いやと軽く考えた僕の甘さに過ぎない。
その会社は結構大手でかつ、外面だけは中々イメージの良い会社だったが実際は真っ黒にも程があった。ここら辺は就職出来れば良いやと軽く考えた僕の甘さに過ぎない。
約5年ほど勤めていたが、今から1週間前位に僕は仕事中にイスごとぶっ倒れた。原因は、重度の過労。
流石に会社は空気を呼んだのか、僕が1週間程、心身を安らげる為の有給を申し出ると受諾してくれた。いや……受諾じゃないな。
上司は仏頂面のまま、有休届けを出した僕に一枚の書類を渡した。その紙の内容は思いだしたくないが率直に言えば、僕は解雇された。理由は人員削減。爆笑。
流石に会社は空気を呼んだのか、僕が1週間程、心身を安らげる為の有給を申し出ると受諾してくれた。いや……受諾じゃないな。
上司は仏頂面のまま、有休届けを出した僕に一枚の書類を渡した。その紙の内容は思いだしたくないが率直に言えば、僕は解雇された。理由は人員削減。爆笑。
だけど仕事を辞めた事で、僕は凄く清々しい気分になった。あの人工的な地獄にはもう耐えられなかったから。それにあれ以上勤めていればホントに過労死しかねない。
それと、仕事詰めで毎日パソコンと向きあってていて只でさえ病むのに、僕にはあの都会特有の、冷たく重い雰囲気が嫌で嫌でしょうがなかった。
大人げないというか馬鹿な我儘だと笑ってくれても構わない、けど、嫌なモノは嫌なのだ。だから僕は交通とか生活の利便性が高い都会より、どこか何も無い田舎に……住みたい。
そんな事を思いながら新しい自宅を探そうとしていた時、ふと思った。
それと、仕事詰めで毎日パソコンと向きあってていて只でさえ病むのに、僕にはあの都会特有の、冷たく重い雰囲気が嫌で嫌でしょうがなかった。
大人げないというか馬鹿な我儘だと笑ってくれても構わない、けど、嫌なモノは嫌なのだ。だから僕は交通とか生活の利便性が高い都会より、どこか何も無い田舎に……住みたい。
そんな事を思いながら新しい自宅を探そうとしていた時、ふと思った。
その条件に当てはまる家に、叔父は住んでいたなと。故に、今日である。
「はい。準備が整ったら、転居しようかなと」
「けれどここって本当に何にもないぞ? それに交通の便が……」
「それなら心配無いですよ。仕事辞めましたし……騒がしいのは嫌いだから」
「けれどここって本当に何にもないぞ? それに交通の便が……」
「それなら心配無いですよ。仕事辞めましたし……騒がしいのは嫌いだから」
秋山さんが心配するのも無理はない。両親に相談した時も同じ様な心配をされた。もっとキツイ感じで。
立地条件が悪すぎるとか交通の便が自家用車しかないとか、そして何より早く仕事を見つけろとか。
流石に26歳にもなってそこまで口出しされるとかなりイラッときた僕は、それ以降両親には相談せず勝手に移住への段階を進めた。まぁ最初からそうしてりゃ良かったんだが。
僕自身の事を決めるのは僕自身だ。誰にもそれを咎める権利は無いだろうし、否定する理由も無い、
立地条件が悪すぎるとか交通の便が自家用車しかないとか、そして何より早く仕事を見つけろとか。
流石に26歳にもなってそこまで口出しされるとかなりイラッときた僕は、それ以降両親には相談せず勝手に移住への段階を進めた。まぁ最初からそうしてりゃ良かったんだが。
僕自身の事を決めるのは僕自身だ。誰にもそれを咎める権利は無いだろうし、否定する理由も無い、
するとこの前の一回忌の法事の時、両親は僕に思い止まって欲しかったのか、秋山さんに僕の引っ越しについての相談をしたようだ。
まぁ秋山さんは僕の引っ越しには割と好意的だったので、そこら辺は良かったけど。
まぁ秋山さんは僕の引っ越しには割と好意的だったので、そこら辺は良かったけど。
秋山さんは僕が叔父の家に住みたいという相談には普通に乗ってくれた。乗ってくれたはいいが、一応心配してくれてるのか本当にいいのか? と心配してくれた。
色んな意味で条件が悪すぎるし、何より交通の便が悪すぎるし、本当に木以外何も無いよ、と。
それでも、と僕は強引なくらい住みたい旨を伝えた。すると秋山さんは僕にこう言ったのだ。
色んな意味で条件が悪すぎるし、何より交通の便が悪すぎるし、本当に木以外何も無いよ、と。
それでも、と僕は強引なくらい住みたい旨を伝えた。すると秋山さんは僕にこう言ったのだ。
「なら一回くらい、足を運んでみたらどうかな。それから決めても、遅くはないだろう」
今日が、その日である。
実際に来てみると、蘇って来る郷愁と、周囲の森という森に胸を打たれた。尚更僕の意思は固くなる。
こんなに静かで車は愚か人の気配さえ無い場所なら、僕はゆっくりと何にも邪魔されずに眠れそうだ。パソコンはもとよりテレビすらないがそれがまた良い。
やっぱりココが良い。僕は秋山さんに伝える。
実際に来てみると、蘇って来る郷愁と、周囲の森という森に胸を打たれた。尚更僕の意思は固くなる。
こんなに静かで車は愚か人の気配さえ無い場所なら、僕はゆっくりと何にも邪魔されずに眠れそうだ。パソコンはもとよりテレビすらないがそれがまた良い。
やっぱりココが良い。僕は秋山さんに伝える。
「やっぱココに住みますよ、僕は。凄く落ち着くんですよ、ここ」
煙草の煙が灰色の天井へと伸びてはうっすらと消えていく。秋山さんは口から煙草を話し、取り出した携帯灰皿に灰を落とすと、僕に苦笑いしながら言った。
「……君が決めたのなら、俺から言う事はないな。ただ、祐一君、一つ良いかな」
一つ……? 一つってなんだろう。僕は深く頷いて、それを聞く。
「あいつのガレージだが、何時も綺麗にしておいてくれないか。それがあいつの……左京に対する共養になるからさ」
「……勿論ですよ。曲がりなりにも叔父さんの家だったんだし……。今日帰るまでにやっておきます」
「頼んだよ」
「頼んだよ」
そう言って、秋山さんは笑った。その笑顔には、哀愁が滲んでいた。
秋山さんが帰るのを見送り、僕は再び工房へと戻る。
そういや叔父の遺品は僕と両親、それに親戚達で引き取ったが、工房に置かれている工具はそのまま放置されている。
僕達の一族には、叔父の様な仕事をする人が全然いない為、誰も扱えない。しかも遺品だから売る訳にはいかないだろうという事で扱いに困っている。
そういや叔父の遺品は僕と両親、それに親戚達で引き取ったが、工房に置かれている工具はそのまま放置されている。
僕達の一族には、叔父の様な仕事をする人が全然いない為、誰も扱えない。しかも遺品だから売る訳にはいかないだろうという事で扱いに困っている。
前もって話を付けている為、一度止められていたガスや電気、水道は使える様になっている。
後はくまなく掃除をして、自宅の家具とかを引っ越し業者に頼んで運んできて貰うだけだ。
後はくまなく掃除をして、自宅の家具とかを引っ越し業者に頼んで運んできて貰うだけだ。
ふー……背を伸ばしながら工房を出て、周囲の緑一色な風景に目をやる。この一軒家をグルリと囲んでいる森の中は、暗く先が見えない。
まだ昼間の時間帯なのに、暗く茂る森の中は見ようによっては何が居るのかが分からず実に不気味だ。だけど空気はとても澄んでいて、気持ちが良い。。
気のせいだとは思うけど、都会に染まって黒くなってしまった体が、白く浄化されていく様な感覚を覚える。
まだ昼間の時間帯なのに、暗く茂る森の中は見ようによっては何が居るのかが分からず実に不気味だ。だけど空気はとても澄んでいて、気持ちが良い。。
気のせいだとは思うけど、都会に染まって黒くなってしまった体が、白く浄化されていく様な感覚を覚える。
そうだ……どうせだから森の中を歩いてみようかな。日光浴だ。
僕は近くの森の中へと足を踏み入れた。空から入り込んだ日光のコントラストが、木々を照らしていて幻想的で美しい。揺らいでは返る光の海みたいだ。
動物……はいないと思う。けれど小動物程度なら見かけるかも知れない。足元を見ると行列を組んだ蟻がせっせと食料を運んでいる。上手く言えないけど、良いな、こういうの。
叔父は何かアイディアとかに詰まった時は、こういう所を歩いていたのだろうか。そう思うと、妙に感慨深い。
動物……はいないと思う。けれど小動物程度なら見かけるかも知れない。足元を見ると行列を組んだ蟻がせっせと食料を運んでいる。上手く言えないけど、良いな、こういうの。
叔父は何かアイディアとかに詰まった時は、こういう所を歩いていたのだろうか。そう思うと、妙に感慨深い。
……ん? ここに来る時に見かけた……あの、少女だ。木に背中から寄りかかって、空を眺めている。僕に気づいている様子は無い。
……幽霊とかじゃないよな。声を掛けてみようか……僕は軽い好奇心から、少女へと近づく。と、少女が僕に気付いたのか、空に向けていた視線を僕に向けてきた。
少女の外見は背丈から察する小学……中学生くらい? 着ているワンピースは結構新しめで、黒いおかっぱ頭でかつ、黒く大きな目、顔立ちはとても幼い。
僕が近づいても少女は動こうとせず、僕の事を見ているだけ。何も言わない。……怖がらないのかな。変なおっさんが近づいてきても。
僕が近づいても少女は動こうとせず、僕の事を見ているだけ。何も言わない。……怖がらないのかな。変なおっさんが近づいてきても。
僕は少女の目の前に立ってしゃがみ、少女の目線に合わせて、聞いた。
「君、お父さんとお母さんは?」
考えた末にこう聞いた。お家は? と聞くと危ない気がするから。僕の質問に、女の子は首を大きく横に振った。むむ……どういう事だ?
と思ったが、見ず知らずの男に素直に素性を話せないかもしれない。質問を変えよう。……とは思ったものの。
何と質問すれば良いんだろうな。少しばかり僕は悩んで、女の子に聞いた。
と思ったが、見ず知らずの男に素直に素性を話せないかもしれない。質問を変えよう。……とは思ったものの。
何と質問すれば良いんだろうな。少しばかり僕は悩んで、女の子に聞いた。
「それじゃあ、名前は?」
女の子は僕の目を見つめ返したまま、その外見と同じ舌ったらずで甘い声で返答した。
「私、ユーコ」
「ユーコちゃんか……。君……はどこから来たのかな」
「ユーコちゃんか……。君……はどこから来たのかな」
ユーコちゃんは僕の質問に少しばかり俯かせると、ゆっくりと顔を上げると共に、何処かに指を指した。
僕はその方向へと目を向ける。あれ? ユーコちゃん……ちょっと良いかな。君が指を指しているその場所は、僕が今から住む、叔父の家なんだけど。
不思議に思って振り向くと、ユーコちゃんは居なくなっていた。おかしいなぁ……。歩くなりなんなりすると音が聞こえる筈なんだけど。
僕はその方向へと目を向ける。あれ? ユーコちゃん……ちょっと良いかな。君が指を指しているその場所は、僕が今から住む、叔父の家なんだけど。
不思議に思って振り向くと、ユーコちゃんは居なくなっていた。おかしいなぁ……。歩くなりなんなりすると音が聞こえる筈なんだけど。
……くっ、頭が痛い。僕はズボンのポケットから薬を出して腰のホルダーに差し込んだペットボトルの水を薬ごと、喉に流し込んだ、
過労が祟ってぶっ倒れた時に、僕はよりによって軽度の偏頭痛を患ってしまった。
それほど重くは無いけど、何か予期せぬ事が起こって頭痛が起こった場合、処方された頭痛薬を飲む様に言われている。
それほど重くは無いけど、何か予期せぬ事が起こって頭痛が起こった場合、処方された頭痛薬を飲む様に言われている。
もう少し僕に行動力と怒りがあればあの会社に対して労働組合とかに入って仕返ししたかもしれないが、僕にはそんな度胸も元気も無い。
代わりに都会という雁字搦めの窒息しそうな檻の中から、この開放されている、本来人間が住む様な場所へと自然そのモノな場所に移り住む事に決めたのだ。
仕事なら大学時代の友人という伝手がいるから、中途採用って事で仕事を紹介して貰えば良い。
代わりに都会という雁字搦めの窒息しそうな檻の中から、この開放されている、本来人間が住む様な場所へと自然そのモノな場所に移り住む事に決めたのだ。
仕事なら大学時代の友人という伝手がいるから、中途採用って事で仕事を紹介して貰えば良い。
金なら妻はおろか子供さえいないから、ちびちび暮らしてけば仕事が見つかるまでには貯蓄した金で余裕で暮らしていける。引っ越し代はちょっとばかし痛かったが、必要な出費だ。
このまま工房を掃除して家に帰るしか無いが、なんとなくこの場所を離れたくない。とはいえ家具や寝具も無い家で一夜を過ごす程、僕は物好きじゃない。
よし、叔父の仕事場を綺麗にしよう。これから住ませて貰う上での、叔父に対する挨拶として。
このまま工房を掃除して家に帰るしか無いが、なんとなくこの場所を離れたくない。とはいえ家具や寝具も無い家で一夜を過ごす程、僕は物好きじゃない。
よし、叔父の仕事場を綺麗にしよう。これから住ませて貰う上での、叔父に対する挨拶として。
トランクの中に詰め込んだ箒やらの掃除道具を持って、工房の中へと入る。
秋山さんが言う様に、叔父が一人で仕事をするにはかなり大きいというか広い気がする。真ん中には叔父の仕事場である、アンドロイドを寝かせる作業台。
その奥、入って右側には工具が所狭しと置かれて埃を被っている4段重ねの棚に、用途が分からないけど仕事に使うであろう、大きな器具。
左側には素材となるシリコンが(今は無いけど)掛けられていたスペースに、目や指などのスペアが入っている棚、そして並べられているマスク。
秋山さんが言う様に、叔父が一人で仕事をするにはかなり大きいというか広い気がする。真ん中には叔父の仕事場である、アンドロイドを寝かせる作業台。
その奥、入って右側には工具が所狭しと置かれて埃を被っている4段重ねの棚に、用途が分からないけど仕事に使うであろう、大きな器具。
左側には素材となるシリコンが(今は無いけど)掛けられていたスペースに、目や指などのスペアが入っている棚、そして並べられているマスク。
早速片づけに入ろう。まずはと、僕はその作業台の上の埃を掃きながら、バケツに水を汲んで拭く事にした、
一人だで掃除していると嫌にというか、当り前ではあるがとても時間が掛かる。作業台を掃除するだけでも、もう半日が過ぎてしまった。
気づけば空は陽が落ちていて、森の中どころか森さえ暗くなっていて、幽霊やお化けでも出てきそうなおどろおどろしい雰囲気へと様変わりしている。
というか暗くなると運転しにくくなる。今日はこれくらい良いだろう。僕は床をサーッと掃いて、掃除道具を入り口近くに置く。
気づけば空は陽が落ちていて、森の中どころか森さえ暗くなっていて、幽霊やお化けでも出てきそうなおどろおどろしい雰囲気へと様変わりしている。
というか暗くなると運転しにくくなる。今日はこれくらい良いだろう。僕は床をサーッと掃いて、掃除道具を入り口近くに置く。
引っ越しが区切りつくまでずっと掃除だ。ドアを開けた瞬間、何かが上からバサバサと音を立てて落ちてきて、ビビって振り返る。
……ノート? 地面には上のどこから落ちてきたのか分からないが、茶色く表紙が変色したノートが1冊落ちていた。
恐る恐る拾って中を開くと、表紙と同じくボロボロでかつ茶色くくすんでいて、良く目を凝らさないと読めないほどの文字が1ページにびっしりと書き込まれている。
怖いというか凄く気持ち悪いというか……というか掃除してた時はこんなノート無かったよな……。……早く帰ろう。寒くなってきた。ノートを作業台の上に置く。
恐る恐る拾って中を開くと、表紙と同じくボロボロでかつ茶色くくすんでいて、良く目を凝らさないと読めないほどの文字が1ページにびっしりと書き込まれている。
怖いというか凄く気持ち悪いというか……というか掃除してた時はこんなノート無かったよな……。……早く帰ろう。寒くなってきた。ノートを作業台の上に置く。
愛車を走らせていると、来た時と同じくユーコちゃんが僕の方を向いて木の前で佇んだまま、僕を見ていた。
もしかしたら、いや、もしかしたらではなく、あの子は幽霊かもしれない。けれど幽霊にしても不思議に怖い感じはしない。むしろ……いや、無いな。
只単に叔父の家が懐かしく感じただけだ。出来たら明日は見たくないなぁと思いつつ、僕は山道を走り抜けた。
もしかしたら、いや、もしかしたらではなく、あの子は幽霊かもしれない。けれど幽霊にしても不思議に怖い感じはしない。むしろ……いや、無いな。
只単に叔父の家が懐かしく感じただけだ。出来たら明日は見たくないなぁと思いつつ、僕は山道を走り抜けた。
次の日も僕は車を飛ばして、叔父の家へと向かう。用件は言わずもがな、工房の掃除と、ついでに一軒家を掃除しようと思う。
一軒家の中は思ったよりもずっと綺麗だった。綺麗だったと言っても、見えない汚れや埃が転がっていると思う。そういうのは完全に綺麗にしておかないと、僕としては気が済まない。
家からありったけの掃除道具をトランクに詰め込んで、引っ越しの手配が完全に整う前に全ての掃除を仕上げるつもりだ。大事の前の小事だ。
俄然やる気になりながら、僕は愛車を停車させた。ドアを開けて外に出て……と。
一軒家の中は思ったよりもずっと綺麗だった。綺麗だったと言っても、見えない汚れや埃が転がっていると思う。そういうのは完全に綺麗にしておかないと、僕としては気が済まない。
家からありったけの掃除道具をトランクに詰め込んで、引っ越しの手配が完全に整う前に全ての掃除を仕上げるつもりだ。大事の前の小事だ。
俄然やる気になりながら、僕は愛車を停車させた。ドアを開けて外に出て……と。
「また来たの?」
「はい? って、うわぁっ!」
ビビって思わず振り返りながら尻餅を付いてしまった。音も無く背後に居るなんて……本気で幽霊みたいじゃないか、君は。
良くみればこのユーコという子は人間っぽくない。肌が雪みたいに真っ白だし、こう……雰囲気が浮世離れしている気がする。それに昨日と同じワンピースだし。
……何を怯えてるんだ、僕は。幾らそういう存在だからって、僕は普通の成人男性だ。こんなのに怯えていては大人としての威厳が廃る。
良くみればこのユーコという子は人間っぽくない。肌が雪みたいに真っ白だし、こう……雰囲気が浮世離れしている気がする。それに昨日と同じワンピースだし。
……何を怯えてるんだ、僕は。幾らそういう存在だからって、僕は普通の成人男性だ。こんなのに怯えていては大人としての威厳が廃る。
僕はしゃがんでユーコちゃ……別にちゃん付けしなくていいや。ユーコに怖がったのをなるべく悟らせないように自分自身が出来る中でも最も冷静な声で言った。
「……良く分からないけどお父さんとお母さんが心配するから、早くお家に帰りなさい。ここは森に囲まれてて何が出てくるか分からないから」
「そこが家だよ」
と言ってユーコは叔父の家を指差す。全くこの子は何を言っているんだ……。叔父には僕と同じく、妻はおろか子供もいなかった筈だ。
それに僕の親戚の子供にはこんな子はいない。全く知らない子。そんな子が、叔父の家を自分の家と自称している。
これは厄介な問題だな……。一体どうすれば、この子は自分の家が叔父の家でない事に気付いてくれるんだろう。
それに僕の親戚の子供にはこんな子はいない。全く知らない子。そんな子が、叔父の家を自分の家と自称している。
これは厄介な問題だな……。一体どうすれば、この子は自分の家が叔父の家でない事に気付いてくれるんだろう。
……ちょっと賭けてみるか。僕はユーコに念を押す様に低い声で言った。これで付いてこなければいいんだけど。
「分かった。けど、僕は今から掃除をするからその邪魔はしないでくれよ。いいかい?」
僕の言葉にユーコは大きく頷いた。……え、付いてきちゃうの? いかん、冷静にだ、冷静に。
掃除道具を抱えて、僕は叔父の家へと歩き出す。その横でトコトコとユーコは付いてくる。あぁ……ホントに何なんだ、君は。
とは言え邪魔されたら敵わん。一軒家に入る前に僕は立ち止まり、ユーコにもう一回言う。
掃除道具を抱えて、僕は叔父の家へと歩き出す。その横でトコトコとユーコは付いてくる。あぁ……ホントに何なんだ、君は。
とは言え邪魔されたら敵わん。一軒家に入る前に僕は立ち止まり、ユーコにもう一回言う。
「それじゃあ今から掃除するから、そこら辺に居ててくれ。念を押すけど、邪魔はしないでくれ。分かったね」
信じなさいよと言った感じで、ユーコは何も言わずに僕を見上げる。はぁ……変な事になっちゃったなぁ。
ドアを開けると、ユーコは靴を脱いで近くの壁に背を付けてぺたんと座った。そして何をするでもなく、視線を宙に漂わせている。
なんだ、少々薄気味悪いけど、普通に素直な子じゃないか。良かったよかった。僕は時折その視線が気になるものの、気にせず掃除をする。
にしても幽霊にしてははっきりしすぎてないか、君は。幽霊ならこう、ぼんやりとしていてくれ。二本足で歩く事くらいは許すけど。
ってどうでもいい。掃除に専念しよう。ユーコの事を気にせず、僕は掃除機にスイッチを入れる。にしても埃というか汚れがひどいな。相当時間掛かるぞ。
なんだ、少々薄気味悪いけど、普通に素直な子じゃないか。良かったよかった。僕は時折その視線が気になるものの、気にせず掃除をする。
にしても幽霊にしてははっきりしすぎてないか、君は。幽霊ならこう、ぼんやりとしていてくれ。二本足で歩く事くらいは許すけど。
ってどうでもいい。掃除に専念しよう。ユーコの事を気にせず、僕は掃除機にスイッチを入れる。にしても埃というか汚れがひどいな。相当時間掛かるぞ。
掃除し始めて半日が過ぎた。凄いとまでは行かないけど、掃除機と雑巾掛けをしたお陰で、床はかなり綺麗になった。少なくとも埃の存在は確認できない。
掃除とはいえここまで体を動かしたのは久しぶりだ。固くなってカチカチになってる筋肉をほぐしながら上にマット引かなきゃと思いながら、愛社から飼ってきた弁当を持ってくる。
と、そうだ……。ユーコが本当に幽霊かどうかを確かめる方法があった。未だに微動だにせず、座り続けているユーコに僕は聞いた。
掃除とはいえここまで体を動かしたのは久しぶりだ。固くなってカチカチになってる筋肉をほぐしながら上にマット引かなきゃと思いながら、愛社から飼ってきた弁当を持ってくる。
と、そうだ……。ユーコが本当に幽霊かどうかを確かめる方法があった。未だに微動だにせず、座り続けているユーコに僕は聞いた。
「お腹空かないのか、ユーコ?」
僕の言葉にユーコは表情を変えないまま、答えた。
「だって私、アンドロイドだもん」
予想だにしないユーコの返答に、僕の口はポカンと開いていた。あぁ、だからか……だからさっきから妙な違和感を感じていたのか。
考えてみりゃあ人間って感じがしないもんな。だけど幽霊みたいなゾワッとする様な感覚も無いし。いやー納得な……いや、待て。
考えてみりゃあ人間って感じがしないもんな。だけど幽霊みたいなゾワッとする様な感覚も無いし。いやー納得な……いや、待て。
そんなアンドロイドが、叔父の家に何の用なんだ。
叔父はもうお墓の中に居て、アンドロイドは作れない筈だ。それに秋山さんからアンドロイドがいるだなんて話は聞いてない。
叔父はもうお墓の中に居て、アンドロイドは作れない筈だ。それに秋山さんからアンドロイドがいるだなんて話は聞いてない。
「ユーコ……」
前を見ると、何時の間にかユーコの姿は無かった。煙みたいにドロンと消えてしまったみたいだ。
窓の所まで近寄って探してみるが、ユーコの姿はどこにも見えない。悪いキツネなんかにでも化かされ馬鹿にされた気分だ。
ちぃ、また頭が痛い……。薬を取り出して一錠飲む。昨日から思ってるんだが、一向に思い出せない事がある。
ちぃ、また頭が痛い……。薬を取り出して一錠飲む。昨日から思ってるんだが、一向に思い出せない事がある。
僕はユーコと、どこかで会っている。しかし何時会っているかが全く思い出せない。記憶から抜け落ちている。
朧げで不確かで不明瞭なその記憶を思い出す度に、頭がズキズキと痛くなる。
工房を掃除して帰ろう……。1階は大体終わったから、2階は明日だ。
朧げで不確かで不明瞭なその記憶を思い出す度に、頭がズキズキと痛くなる。
工房を掃除して帰ろう……。1階は大体終わったから、2階は明日だ。
工房の掃除をしていると、叔父が如何にこの仕事に真摯に打ちこんでいたかがぼんやりと分かって来る。
長年使いこまれていて、色々な傷と言う名の月日が刻まれている作業台に、汚れてしまってはいるが、丁寧に手入れされている道具。ホントに叔父はこの仕事が好きだったんだな。
そんな事を思いながら掃除していると、頭の片隅にあのノートの事が過ぎった。あのノートには何が書かれていたんだろう。
作業台に乗ったままのそのノートを手にとって、パラパラと捲ってみる。ふむ……何々?
そんな事を思いながら掃除していると、頭の片隅にあのノートの事が過ぎった。あのノートには何が書かれていたんだろう。
作業台に乗ったままのそのノートを手にとって、パラパラと捲ってみる。ふむ……何々?
この字、叔父の字じゃない? 叔父はスラスラと字を書くけど、仕事柄からか性格からかは分からないが綺麗で読みやすい、几帳面な字だ。
このノートに書かれている字は丸っこくて癖があり、ぶっちゃけ読みにくい……子供の字だ。真面目に目を凝らさないと、とてもじゃないけど読めない。
たす……たすけ……たすけて? 助けてって書いてあるのか。次の文字はにげ……にげたい、逃げたいか。間に文字があるけど、ぐちゃぐちゃにに滲んでいて解読不能。
ますますどういう事か分からない。他のページを捲ると同じ様な字がびっしりと。
このノートに書かれている字は丸っこくて癖があり、ぶっちゃけ読みにくい……子供の字だ。真面目に目を凝らさないと、とてもじゃないけど読めない。
たす……たすけ……たすけて? 助けてって書いてあるのか。次の文字はにげ……にげたい、逃げたいか。間に文字があるけど、ぐちゃぐちゃにに滲んでいて解読不能。
ますますどういう事か分からない。他のページを捲ると同じ様な字がびっしりと。
ユーコにしろこれにしろ、何だかとんでもない事になってる気がしないでもない。というか悪いとは思うけど、叔父の事が薄気味悪く感じる。
何でこんなノートを持っているのか、そしてあのユーコってのが何なのか、恐怖を感じる半面、僕の中の知的好奇心が激しく興味を抱いている。
思えば叔父について僕は両親から教えられてる面以外についてあまり知らないのだ。アンドロイドの制作者って事くらいで。
秋山さんから聞くと寡黙だけど意外と享楽的で穏やかな人物だったと聞くが、あくまで秋山さんから聞いた範囲であって、叔父が本当にそんな人物だったのかは分からない。
何でこんなノートを持っているのか、そしてあのユーコってのが何なのか、恐怖を感じる半面、僕の中の知的好奇心が激しく興味を抱いている。
思えば叔父について僕は両親から教えられてる面以外についてあまり知らないのだ。アンドロイドの制作者って事くらいで。
秋山さんから聞くと寡黙だけど意外と享楽的で穏やかな人物だったと聞くが、あくまで秋山さんから聞いた範囲であって、叔父が本当にそんな人物だったのかは分からない。
ノートを閉じて我に返ると、僕は叔父の秘密に深く触れてしまったそうで自己嫌悪になる。
しかし罪悪感は感じるけれど、僕は正直ユーコと、このノートに強い興味を抱いてしまった。止まりたくはない。
掃除間際、彼女に会ったら色々と聞いてみようと思う。驚かされた分、僕は真実を知りたい。どうせ仕事を止めて掃除くらいしかする事が無いんだ。
帰ってこのノートを読もう。僕はノートを腕に抱えて、一度愛車に戻ろうとした、と。
しかし罪悪感は感じるけれど、僕は正直ユーコと、このノートに強い興味を抱いてしまった。止まりたくはない。
掃除間際、彼女に会ったら色々と聞いてみようと思う。驚かされた分、僕は真実を知りたい。どうせ仕事を止めて掃除くらいしかする事が無いんだ。
帰ってこのノートを読もう。僕はノートを腕に抱えて、一度愛車に戻ろうとした、と。
噂をすれば、か。気づけばユーコが入口に立っていた。後ろに手を回して、僕がノートを読んでるのを見ていたかの様に。
僕はユーコに話しかけた。昨日からずっと無表情だけど、何故だかユーコの顔は憂いてる様に感じる。
僕はユーコに話しかけた。昨日からずっと無表情だけど、何故だかユーコの顔は憂いてる様に感じる。
「なぁ、ユーコ。君が生まれたのって、ここなのかい?」
ユーコは僕の質問に答えない。答えないが、小さな口でボソッと、何か言った。
聞き取れず、僕は声を上げて聞いた。聞きたい。何でも良いから君の話を。
聞き取れず、僕は声を上げて聞いた。聞きたい。何でも良いから君の話を。
「ユーコ? 何か言ったかい?」
僕がそう聞いた途端、ユーコは踵を返して走り出してしまい、そのまま森の中へと消えてしまった。
追いかけようとしたけど子供でアンドロイド? なせいかその足は速く、すぐに見えなくなってしまった。むむむ。
まぁ良いや。今日はこの辺で掃除を終わらして、帰ってノートを読む事にしよう。
追いかけようとしたけど子供でアンドロイド? なせいかその足は速く、すぐに見えなくなってしまった。むむむ。
まぁ良いや。今日はこの辺で掃除を終わらして、帰ってノートを読む事にしよう。
今日の分の掃除を終えて愛車に乗り込み鍵を回したが、一向に掛からない。おいおい、トラブルか? 何度か回してみるが、エンジンはうんともすんともいかない。
頼む、掛かれ……掛かれぇ……! 願う、が、やっおぱ駄目か。これ以上回したら本気で愛車が壊れてしまいそうだ。参ったなぁ……本当に参った。
頼む、掛かれ……掛かれぇ……! 願う、が、やっおぱ駄目か。これ以上回したら本気で愛車が壊れてしまいそうだ。参ったなぁ……本当に参った。
幸いな事に携帯は通じるので一先ず業者に連絡を付けよう。それで明日、コイツを引っ張って貰う。今日は車の中で野宿だな……。
どうせだからノートを読んでみよう。ライトを付けて助手席に乗せたノートに目を通す。
一先ず通して読んでみよう。意識をノートに集中して、のめり込む様に読んでいく。ふむ……。
どうせだからノートを読んでみよう。ライトを付けて助手席に乗せたノートに目を通す。
一先ず通して読んでみよう。意識をノートに集中して、のめり込む様に読んでいく。ふむ……。
『覚えてない?』
『私、遊んでみたかった。子供の、頃から』
『ずっと、待ってた』
『ゆーいち』
「筒井さーん。筒井祐一さーん」
……目が、覚める。誰かがガラスを叩く音。ガラスを見れば、作業服を着た男の人が軽く窓ガラスを叩いていた。……業者さんか。
見上げると太陽が入ってきて眩しい。そうか……朝が明けたのか。どうやらノートを読んでいる内に眠ってしまっていた様だ。
手元を見ると閉じてあるノート。気付かない内に読み終えてしまっていたのか、ただ単に眠くなって閉じただけなのか。まぁどっちでも良い。
ノートを助手席に置いてドアを出て、済まなそうに軽く頭を下げながら趣旨を説明する。業者さんは僕の話を承諾する。
見上げると太陽が入ってきて眩しい。そうか……朝が明けたのか。どうやらノートを読んでいる内に眠ってしまっていた様だ。
手元を見ると閉じてあるノート。気付かない内に読み終えてしまっていたのか、ただ単に眠くなって閉じただけなのか。まぁどっちでも良い。
ノートを助手席に置いてドアを出て、済まなそうに軽く頭を下げながら趣旨を説明する。業者さんは僕の話を承諾する。
「ではご自宅の方へとお運びします。後に代わりのお車が来ますので、そちらにお乗りください」
「分かりました。すみません」
「分かりました。すみません」
業者が愛車を引っ張っていくのを見送りながら、大あくびをする。手元にはちゃんとノート。
まだ掃除をする時間は……つーか時間なら腐るほどあるや。何か眠いや……叔父さんすみません、ちょっと仮眠してから掃除します。
まだ掃除をする時間は……つーか時間なら腐るほどあるや。何か眠いや……叔父さんすみません、ちょっと仮眠してから掃除します。
一軒家の中に入り、窓からユーコが見える様に奥の壁に背を付ける。
作りはしっかりしてるから、雨漏りだとか強風だとかそういう心配をする必要はまずない。流石叔父の家だと思う。
作りはしっかりしてるから、雨漏りだとか強風だとかそういう心配をする必要はまずない。流石叔父の家だと思う。
床に指を付けて滑らすと、まだまだ埃が付いている。もっと念入りに掃除しないと駄目だなぁ……。
窓から入り込んでくる日だまりが射しこんできて僕と床を照らす。自然の光って朗らかで優しくて大好きだ。僕はその光を浴びる様に顔を上げた。
前に見える森に心が休まる。
窓から入り込んでくる日だまりが射しこんできて僕と床を照らす。自然の光って朗らかで優しくて大好きだ。僕はその光を浴びる様に顔を上げた。
前に見える森に心が休まる。
……居た。僕は立ち上がって窓際まで歩き、その少女へと声を掛けた。
少女は僕に対して表情を変えないまま、目を向けている。その目に映ってるのは僕か、それとも別の何かか。
「ユーコ、そんな所に居ないで中に入ったらどうだい?」
ユーコは何も言わない。僕も、何も言わない。ただ、見るだけ。
僕から近づけば良いんだけど、僕は彼女から近づいてきてほしいと思って家から出ない。僕とユーコは互いに見つめあっていた。
すると根負けしたのか、ユーコからこっちに歩いてきた。無表情だけど、若干ムッとしてるみたいに見えて少し可愛い。
ユーコが入ってきたので僕はその場に座って、入ってきた彼女に話しかけた。
僕から近づけば良いんだけど、僕は彼女から近づいてきてほしいと思って家から出ない。僕とユーコは互いに見つめあっていた。
すると根負けしたのか、ユーコからこっちに歩いてきた。無表情だけど、若干ムッとしてるみたいに見えて少し可愛い。
ユーコが入ってきたので僕はその場に座って、入ってきた彼女に話しかけた。
「あのさ、ユーコ。君は自分をアンドロイドと言ったけど、ならアンドロイドっていう証明をしてくれないかな」
僕の問い掛けにユーコは何の迷いも無く、自分の首を取った。そして生首の断面を僕に遠慮なく見せてきた。中には隙間無く機械がぎっしりと詰まっている。
ユーコの行動にギョッとするが、確かにアンドロイドの様だ。ユーコは首を何度も調整しながら首を締めると、そっと壁に寄り掛かった。
そうだ……驚いてる場合じゃない。僕には聞きたい事があったんだ。
ユーコの行動にギョッとするが、確かにアンドロイドの様だ。ユーコは首を何度も調整しながら首を締めると、そっと壁に寄り掛かった。
そうだ……驚いてる場合じゃない。僕には聞きたい事があったんだ。
「君がアンドロイドである事は信じるよ、疑って悪かった。けど……昨日から聞きたかったんだけど、何で君はここを自分の家だというんだい?」
一瞬、ユーコの顔が曇った様に見えた。僕は構わず、言葉を続ける。
「こう言うと君を傷つけてしまうかもしれないが……僕の記憶の中では、君と、ここに住んでいた人との接点がまるで無いんだ。不思議だな、と思ってね」
キ―ンと、頭に鈍い痛みが広がっていく……。薬を取り出し一錠。くそっ、何でこんな時に頭が痛くなるんだ……!
ユーコは足で小さく円を描きながらちょっぴり、僕に首を向けて、小さな声で言った。
ユーコは足で小さく円を描きながらちょっぴり、僕に首を向けて、小さな声で言った。
「私は……私には、ここしかないから」
「……どういう事だい?」
「……どういう事だい?」
僕の質問に、ユーコは答えない。答えない代わりに、その目は僕が持っているノートに注がれている、様に感じる。
ノート……? 僕は手元にあるノートの上部を持って黄門様みたいな感じでユーコに見せながら、聞いた。
ノート……? 僕は手元にあるノートの上部を持って黄門様みたいな感じでユーコに見せながら、聞いた。
「これが何か?」
「……持ってたんだ、あの人。捨てて欲しかったのに」
え? ユーコの言葉の意味が分からず、僕は素で聞き返していた。ユーコは僕から顔を背けた。これが何か……掴めるきっかけになるのか?
僕はユーコの変化を見逃さず、意地悪だとは思いながらも更に聞いてみる。本当に気になって気になって仕方がない。
「教えてくれ、ユーコ。これが君にとっての何なんだい?」
僕の質問にユーコは一転、機械の様な……いや、機械なんだけど、冷たく無表情な表情に戻った。……これがそれほど、君にとって触れられたくない物なのか?。
だけど僕は何も言わないでノートを差し出す。この際何でも良い。君の口から、真実が聞きたい。
だけど僕は何も言わないでノートを差し出す。この際何でも良い。君の口から、真実が聞きたい。
「……いじわるな人は嫌い」
ユーコ? ユーコは僕に背を向けると、一軒家から出ていった。僕は慌てて立ちあがり、声を掛けた。
「待ってくれ、ユーコ!」
「……待ってたのに。ずっと」
「……待ってたのに。ずっと」
……え?
そのままユーコは走り出して、森の中へと消えてしまった。僕はその場に立ち尽くしていた。
彼女が何者で、叔父が何を隠しているのか、そして何より、待ってたって意味が何なのか、今の僕には何一つ、訳が分からない。
只、一つだけどうしてもはっきりさせたかった事がある。それは、ユーコと叔父の関係性だけだ。
彼女が何者で、叔父が何を隠しているのか、そして何より、待ってたって意味が何なのか、今の僕には何一つ、訳が分からない。
只、一つだけどうしてもはっきりさせたかった事がある。それは、ユーコと叔父の関係性だけだ。
もし叔父が僕が考える中で最も最悪な可能性に当て嵌まっているなら、僕は如何すれば良いかが分からない。
とは言え叔父は僕の叔父だ。只そんな真実があった。って事だけは認めるだけで何を如何こうするつもりは無い。只、僕は純粋に知りたいだけなんだ。
ノートと、ユーコと、そして叔父が、何を隠していたのかという事を。
とは言え叔父は僕の叔父だ。只そんな真実があった。って事だけは認めるだけで何を如何こうするつもりは無い。只、僕は純粋に知りたいだけなんだ。
ノートと、ユーコと、そして叔父が、何を隠していたのかという事を。
くっ……何だ……スゲー頭痛い……。壁に背を付けて、僕は目を瞑った。さっきから鐘の音みたいな重低音が、頭の中で響いている。
薬を二錠飲む。これで収まってくれればいいんだけど、二日続けて野宿なんてなぁ……。まぁ、屋根があるだけマシか。
薬を二錠飲む。これで収まってくれればいいんだけど、二日続けて野宿なんてなぁ……。まぁ、屋根があるだけマシか。
子供の頃の記憶ってつくづく当てにならないんだなと思う。ユーコについて何か思い出せそうで全く思い出せない。
それにしても僕は……僕は彼女と昔に会っている? それも叔父の元に遊びに来ている時に。どういう事なんだ?
彼女の事を両親がユーコの事を口に出す事は無かったし、叔父さんがユーコの事を口に出した覚えは無い。ますます頭痛が痛くなる。
それにしても僕は……僕は彼女と昔に会っている? それも叔父の元に遊びに来ている時に。どういう事なんだ?
彼女の事を両親がユーコの事を口に出す事は無かったし、叔父さんがユーコの事を口に出した覚えは無い。ますます頭痛が痛くなる。
今日はここで夜を明かそう。1日位飯を喰わなくったって死にゃしない。雨とか振る様な天気でも無い。
可能な限り、自分自身の記憶の紐を紐とこう。もしかしたら、何か見つかるかもしれない。
じっと目を閉じると、何となく何かが浮かんでくる。僕はそのまま、眠りに落ちた。
可能な限り、自分自身の記憶の紐を紐とこう。もしかしたら、何か見つかるかもしれない。
じっと目を閉じると、何となく何かが浮かんでくる。僕はそのまま、眠りに落ちた。
君は誰なの?
「私は 君は?」
僕は……僕は祐一。左京叔父さんとは昔からアレなんだ。
「へぇー……良いなぁ。私もあの人のホントの娘だったら良かった」
ホントの娘ってどういう意味なの?
「……誰にも言わないって約束してくれる?」
「私ね……」
目を、開ける。
……何かが、分かったかもしれない。
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