「――よし、これで準備完了だ。」
リョウの手によって立ち上げられたディスプレイ群。
青を背景にどの画面にも等しく“Xi‐column”という文字が並ぶ。
青を背景にどの画面にも等しく“Xi‐column”という文字が並ぶ。
「あとは……ディー君、これを。」
そう言い手渡されたのはいかにもと言った感じの物々しいヘッドギア……らしき何か。
黒い革張りに無数の電極が打ち込まれており、それから伸びるケーブルのどれもがXiカラム本体へと繋がっていた。
黒い革張りに無数の電極が打ち込まれており、それから伸びるケーブルのどれもがXiカラム本体へと繋がっていた。
「それを付けて瞳を閉じ、知りたい事を頭にはっきり思い浮かべるといい。後はXiカラムが何とかしてくれる。」
「これを被って、なぁ……」
「これを被って、なぁ……」
手に取りまじまじと見つめてみる。
作り自体は嫌にしっかりとしているのが却って怪しさを倍増してくれている。もうちょっと何とかならなかったんだか……
作り自体は嫌にしっかりとしているのが却って怪しさを倍増してくれている。もうちょっと何とかならなかったんだか……
「見た目は被れば気にならないよ。」
「そりゃ見えないもんな……」
「そりゃ見えないもんな……」
そういう問題じゃねぇ――という文句を飲み込みながら渋々脇に置かれていたオフィスチェアーに腰掛ける。
今はこれしか手がかりが無い。文句を言っている場合じゃないのも分かるが……
今はこれしか手がかりが無い。文句を言っている場合じゃないのも分かるが……
「ディー。」
などと考えつつ被ろうかとしていると正面からアリスの声。
ヘッドギアの下から覗き込み、何か言いたげな表情をしている。
ヘッドギアの下から覗き込み、何か言いたげな表情をしている。
「?」
「私も共に行こう。ソートシンク。」
「!?」
「私も共に行こう。ソートシンク。」
「!?」
瞬く間に白い光となり目の前より消失するアリス。
あの銀色のに変身するのかと身構えるものの、予想を裏切りまるで変化が無い。
あの銀色のに変身するのかと身構えるものの、予想を裏切りまるで変化が無い。
<ソートシンク。ソートアーマー以下の事象励起をもってリンクしたある種の基底状態だ。これならば予備動作無しにソートアーマー形態に移行する事も可能な上、身体能力のある程度の向上も見込める。>
いきなり身体の裏側から響くアリスの声に一瞬戸惑うものの、こんな経験もいい加減慣れてきた。もうどうにでもなれ。
<精神面でのリンクもソートアーマーと同等。2度装置を使う手間も省けるというわけだ。>
「ふーむ……2人で相乗りか。こんなケースは多分初めてだが、まぁいいだろう。」
<頑張ッテネェ~ン!>
「ふーむ……2人で相乗りか。こんなケースは多分初めてだが、まぁいいだろう。」
<頑張ッテネェ~ン!>
頭をすっぽりと包むヘッドギア――と言っていいのかどうか良く分からない物体X。
中は真っ暗。外の音もくぐもって聞こえる。
中は真っ暗。外の音もくぐもって聞こえる。
「では、ゆるりと楽しんできたまえ。」
「!!!」
「!!!」
リョウの声と共に、ガチリというレバーの動く音が聞こえた。
その直後脳天より突き刺さる強烈な衝撃。それが何なのか分からない内に、俺の意識は途絶えて消える事となった……
その直後脳天より突き刺さる強烈な衝撃。それが何なのか分からない内に、俺の意識は途絶えて消える事となった……
真っ直ぐ伸びながらも捩れた螺旋。
3面しかない4面体。
輪は円を結び繋ぐ紐より、唐突に漏れ出で落ちて逝った。
黒い泡はごぽりと沸いて、大いなる深淵は愉しげに鳴り渡る。
(――――)
――全ては正しくなかった。だが全ては正しかった。
誰かがそこに居た。紅い影。けたたましく廻り、嗤う。
――何もそこには無かった。故に総てがそこにあった。
誰かがそこに居た。黒い影。雄々しく、強大にして、重厚。
――総てがあった。目に見えるモノ以外の総てが。
誰かがそこに居た。灰の影。鋼鉄の歯車が噛み合い、超越の重低音を掻き鳴らす。
――だがありはしない。こんなモノ、在りはしない。
誰かがそこに居た。白い影。揺らめくそれは、冷たく、静かに。
――そう、本来在りはしない存在達。だが、“ここ”には確かに在る。
誰かがそこに居た。影無き影。光無き眼。破壊の象徴。狂える豪腕。白銀にして暗黒。それは――
(――――ッッ!!!)
……理解するよりも遥かに先に過ぎって行ったイメージ達。
俺が何を見たのか。それを理解出来るモノはこの宇宙に誰1人としていやしない。
俺が何を見たのか。それを理解出来るモノはこの宇宙に誰1人としていやしない。
セカイ外の存在。
僅かに流入したアリスの知識が教えてくれる。
それは世界の怨敵。憎悪の向かい手。
遥か過去より、未来より、あるいはそれ以外より、「既知たる“O”」の使者としてセカイを狂わす悪しき者達。
それは世界の怨敵。憎悪の向かい手。
遥か過去より、未来より、あるいはそれ以外より、「既知たる“O”」の使者としてセカイを狂わす悪しき者達。
「それが君達が相手取ろうとしている敵だ。」
それが――
「その力はあまりにも強大。ありとあらゆる理に縛られないそれらを止める事など出来はしない……破壊のロストフェノメオン“eXar-Xen”を除いてはね。」
イグザゼン……
「――良く来たね、ディー・リングダム、そしてアリス。イグザゼンに魅入られし“御する者”にして定めの子らよ。」
――Alice. part
気が付いた時には――ただ、1人だった。
“私”がいたのはあの部屋。記憶にあった子供部屋。窓際に座った私の半身を木々の合間から窓より差し込んだ、穏やかな日差しが明るく照らす。
(――――)
普段着る事のないような洋服――スチームヒルでの服屋で見かけたようなそれ――を身に纏い、木の椅子に腰掛ける“私”。
目の前には白いキャンパス。手元には使い古したクレパスがあった。
目の前には白いキャンパス。手元には使い古したクレパスがあった。
(――――)
これは現実なのだろうか?
分からない。Xiカラムが私に見せているのだとすれば、これは“いつ”で、“何処”の、像なのか。
分からない。Xiカラムが私に見せているのだとすれば、これは“いつ”で、“何処”の、像なのか。
(――――?)
人の気配。
扉の向こうから“誰か”がこの部屋に入ってきた。
靄のかかったような――酷く曖昧なそれは、人の形をした雲のようにも見える。
扉の向こうから“誰か”がこの部屋に入ってきた。
靄のかかったような――酷く曖昧なそれは、人の形をした雲のようにも見える。
―――――――――。
それは、私に対して何かを言った。
言葉だ。人の言葉だ。だが――
言葉だ。人の言葉だ。だが――
“聞こえない。”
遠いのだ。あまりにも遠いのだ。
その声は、遠い過去か、遥か未来か……物理的にも、時間的にも、あまりにも遠い所より放たれた声。いくら耳を澄ましたところで、今の私には決して届く事は無い。
その声は、遠い過去か、遥か未来か……物理的にも、時間的にも、あまりにも遠い所より放たれた声。いくら耳を澄ましたところで、今の私には決して届く事は無い。
Xiカラムは過去をも映すと言っていた。
ならばこれは過去の話か?だがセカイ外の事象を映すとも言った。交わらない時間軸の更に向こう側で起こった事――それがこの事象の正体だろうか。
――――――?―――――――。
ならばこれは過去の話か?だがセカイ外の事象を映すとも言った。交わらない時間軸の更に向こう側で起こった事――それがこの事象の正体だろうか。
――――――?―――――――。
……ともかく、全てを越えた先より聞こえた声は、だがしかし“私”の耳には届いたらしい。
“私”は小首を傾げ、しばし思慮を巡らしていたようだが、やがてその「何か」に向け
“私”は小首を傾げ、しばし思慮を巡らしていたようだが、やがてその「何か」に向け
―――――――!
今の私には眩しすぎる、花の咲いたような明るい笑顔をもって言葉を返した。
――D.part
誰かが、目の前にいた。
その姿は酷く朧げで、今にも消えてしまいそう。
その姿は酷く朧げで、今にも消えてしまいそう。
「お前は……?」
「僕は“観測者”。セカイの、セカイ外の悉くを俯瞰し、理解する者。君が来るのを知っていた。遥か未来より、遠き過去より……あるいは、それ以外より。」
「僕は“観測者”。セカイの、セカイ外の悉くを俯瞰し、理解する者。君が来るのを知っていた。遥か未来より、遠き過去より……あるいは、それ以外より。」
わけの分からない事を言う“観測者”と名乗る何か。
その言葉の意味を考える前に、俺は自身の違和感について口を開いていた。
その言葉の意味を考える前に、俺は自身の違和感について口を開いていた。
「?……アリスは!アリスは何処だ!!」
俺と共にXiカラムを用いたはずのアリスの気配が無い。
半身を失ったような喪失感と違和感。
半身を失ったような喪失感と違和感。
「ああ。彼女は彼女で然るべき所に居るよ。心配する必要は無い。君は君で自身が知るべき事を知るといい……君が望む家族の居場所をね。」
その声を合図に、色無き光景に“色”が映る。
巨大なビルが空を突き刺す摩天楼。その内でも一際高い建物。
そのとある1つの窓に視点は集中した。
巨大なビルが空を突き刺す摩天楼。その内でも一際高い建物。
そのとある1つの窓に視点は集中した。
「ベル……!」
外の景色を力無く眺め、腰掛ける人影。
見間違える筈が無い。ベルの姿がそこにあった。
思わず手を伸ばす――が、届く事は無い。
見間違える筈が無い。ベルの姿がそこにあった。
思わず手を伸ばす――が、届く事は無い。
「“ここ”で出来る事は観測する事のみ。干渉する事は不可能だ。」
歯痒い。
こうまで近くでその姿があるというのに。何も出来ないなんて……
こうまで近くでその姿があるというのに。何も出来ないなんて……
「さて、時間も無いので次へ行こう。」
“色”が消え、異なる“色”が映る。
次に映されたのは酷く暗い場所。恐らく地下。そしてただ1人椅子に座る人影。
次に映されたのは酷く暗い場所。恐らく地下。そしてただ1人椅子に座る人影。
「バール……!」
「さっきの彼女と同じ場所。ただ、警備は酷く厳重。」
「くそっ……!」
「さっきの彼女と同じ場所。ただ、警備は酷く厳重。」
「くそっ……!」
何故あんな目に遭わなければいけない?あまりに酷い仕打ちに怒りが込み上げる。
「さて、次が最後――ウェルの現在地だ。」
映し出されたのは
「……水の中?」
滑らかで、人工的な壁に囲まれた水中。天より差す光によって明るく煌く。これってもしかして……
「――――!」
そんな中を悠々と横切っていった黒い影。魚の類ではない。もっと大きな、別の何か。
それは大きさに反して細長く、水中にてゆらりと揺れる。
それは大きさに反して細長く、水中にてゆらりと揺れる。
「…………」
そして停滞。太陽の光を背に無数に本体より伸びた足のような物を広げ、黒く浮かび上がる異様なシルエット。槍のように尖った頭部らしき部分に一対の赤く鋭い眼光が走る。
「――――ッッ!!」
“目が合った。”
そんな筈は無いのに、どうしようもない悪寒が全身を震わす。
手は震え、視線は定まらない。ただ一睨みされただけだというのに。
そんな筈は無いのに、どうしようもない悪寒が全身を震わす。
手は震え、視線は定まらない。ただ一睨みされただけだというのに。
「――「深底」のオーバードフェノメオン「アビスワン」。君が直面している“脅威”の名だ。」
同時に爆音。周囲の“色”がブレる。
「――ッ!!」
「急いだ方がいい。手遅れにならない内に。」
「急いだ方がいい。手遅れにならない内に。」
目の前の影もゆっくりと更に薄れていく。
「待てよ!お前は一体……!」
「いずれまた会えるさ――僕は“観測者”にして“探求者”。「未知なる“Ⅰ”」を探す者。君が君であれば、きっと……ね。」
「いずれまた会えるさ――僕は“観測者”にして“探求者”。「未知なる“Ⅰ”」を探す者。君が君であれば、きっと……ね。」
色のみならず思考もぼやける。
息が詰まる。声が出ない。去っていくその影に対し続ける言葉が出ない。
光が失せ、闇が失せ、全てが失せ、そして――――
息が詰まる。声が出ない。去っていくその影に対し続ける言葉が出ない。
光が失せ、闇が失せ、全てが失せ、そして――――
「――――ッ!!!」
次に気が付いた時には、俺の心は元の――Xiカラムのある部屋へと戻っていた。
さっき感じた鈍く響く振動。それは変わらず部屋を揺らす。
さっき感じた鈍く響く振動。それは変わらず部屋を揺らす。
「やぁ、やっとお目覚めかい。さっきからこっちはこうやって揺らされてて大変なんだよ。」
<ミ、水……我慢デキネェ!全部ダァ!!>
<ミ、水……我慢デキネェ!全部ダァ!!>
そういうのは、何処からどう見ても大変そうには見えないリョウと、その下で回るミッチー。
「アリス……!」
<話は後だ。どうやらオーバードフェノメオンの類がここを襲撃しているらしい。>
<話は後だ。どうやらオーバードフェノメオンの類がここを襲撃しているらしい。>
俺の内より響くアリスの声。
よかった。いなくなったわけじゃなかった……なんて思うと共に、頭上より響く衝撃に意識を回す。
よかった。いなくなったわけじゃなかった……なんて思うと共に、頭上より響く衝撃に意識を回す。
「……「深底」のオーバードフェノメオン「アビスワン」だっけ?」
<ああ……何処からかは分からんが、どうやら同じモノを見ていたようだな。>
“観測者”がウェルの居場所と言い指し示した機械仕掛けの怪物の名。
どういう事かはよく分からないが……ともかく
<ああ……何処からかは分からんが、どうやら同じモノを見ていたようだな。>
“観測者”がウェルの居場所と言い指し示した機械仕掛けの怪物の名。
どういう事かはよく分からないが……ともかく
「リョウ、ミッチー、お前らは早く逃げろ!ここは長く保たねぇぞ!!」
衝撃のたびに天井よりの浸水が激しくなっていく。
どうやらこの壁一枚隔てた場所は湖の底らしい。
どうやらこの壁一枚隔てた場所は湖の底らしい。
「ああ、健闘を祈ってるよ。ミッチー!」
<ガッテンダー!!>
<ガッテンダー!!>
入り口にあった分厚い隔壁がゆっくりと閉じていき、その合間をミッチーに跨ったリョウが素早くすり抜けていく。その姿を見送った後
「じゃ、行くぜ。イグザゼン、ソートアーマー!!」
白い閃光。そして瞬間的に巻き起こる旋風。それは俺の姿を白銀の甲冑へと変える。
直後、それでトドメを刺してしまったのか崩落する天井。莫大な量の水が瞬く間に“落下”し、周囲を真っ青に染める。更に
直後、それでトドメを刺してしまったのか崩落する天井。莫大な量の水が瞬く間に“落下”し、周囲を真っ青に染める。更に
「ちょ!うぉあー!?」
追い討ちとばかりにこちらに向かって襲い来る白く腕ほどの太さはある何かの群れ。
慌てて回避するもその内の1本が足に絡まり捕われてしまう。
慌てて回避するもその内の1本が足に絡まり捕われてしまう。
「~~~~~!!!」
それに巻き上げられ猛烈な勢いで水中へと放り出される俺/イグザゼン。
<落ち着け。動作の基本は陸上と同じだ。>
「っ!!」
「っ!!」
半ば反射的にイグザダガーを顕現化。
逆手に持ち、それを輪切りに切り捨てる。力が緩まり、湖底に沈んでいく先端のそれ。
残りの部分も後方へと退いていくが
逆手に持ち、それを輪切りに切り捨てる。力が緩まり、湖底に沈んでいく先端のそれ。
残りの部分も後方へと退いていくが
「……?」
おかしい。
足があるなら本体もあるはずなのに、その姿がまるで見えない。
足があるなら本体もあるはずなのに、その姿がまるで見えない。
<励起反応も皆無……奴め、強力な迷彩機能を持っているようだな。>
浮遊しつつ辺りを見回す。視界はそこまで良くは無い。上を見上げても水面が見えず、下を見れば底無しにすら思えてくる。何故か魚は一切おらず、何処か異様な雰囲気も感じる。
「一体何処に……?」
<こちらの様子を伺っているのか。それとも――――ッ!>
<こちらの様子を伺っているのか。それとも――――ッ!>
上方より襲来する殺意。
直後、猛烈な勢いで俺を掠める黒い何か。巻き起こる強烈な水流はイグザゼンを軽々吹き飛ばす。
直後、猛烈な勢いで俺を掠める黒い何か。巻き起こる強烈な水流はイグザゼンを軽々吹き飛ばす。
「くそっ!」
<下だ!>
<下だ!>
Uターンして更に襲い来るそれを翻りつつ辛うじて躱す。黒い影はそのまま直進し、こちらが反撃の態勢を整える前に青い闇の向こう側へと消えていった。
「ッ!」
奴が消えた方角より迫る何か。
それを見て、考えるより尚早く両手を胸の前に伸ばす。瞬時に形成されるベクトル干渉の力場。それに触れた数発の細長い砲弾のような何かは全弾あらぬ方向へと消えていった。
「!」
それを見て、考えるより尚早く両手を胸の前に伸ばす。瞬時に形成されるベクトル干渉の力場。それに触れた数発の細長い砲弾のような何かは全弾あらぬ方向へと消えていった。
「!」
それを見届けてかまたもや迫る黒い影。身を捩じらせ躱わし、お返しにと数本のダガーを投擲してみるが、まるで当たらない。
「くそっ、早ぇ……!」
こっちは慣れない水中だと言うのに、向こうのイカのバケモノはそんな事知った事かと半ば一方的に攻め立ててくる。これじゃ駄目だ。突撃も砲撃も今は一応避けられているが、これも長くは続きそうに無い。どうすればいい。どうすれば……
「……そうだ!ソートギガンティック!あれを!!」
同じオーバードフェノメオンであるビルドグランデを実質一撃で葬ったあの力ならこいつだって恐るに足りないだろう。そう思いアリスに向け言葉を投げかけるが
<ソートギガンティックはイグザゼンの能力をほぼ全て攻撃へと転じた“解”。今こうして浮遊している為の空間制御能力さえ余す事無く失う事となる。
ベクトル干渉なら多少は扱えるが……それだけであの超重量を支えるは出来ん。それに顕現中は無防備な上、行った所で湖底へと沈んでいくのが関の山だ。今行うのは妥当ではない。>
「……要約すると、使えないと?」
<そういう事だ。が、まだ手が無いわけではない。>
ベクトル干渉なら多少は扱えるが……それだけであの超重量を支えるは出来ん。それに顕現中は無防備な上、行った所で湖底へと沈んでいくのが関の山だ。今行うのは妥当ではない。>
「……要約すると、使えないと?」
<そういう事だ。が、まだ手が無いわけではない。>
その直後、背後より過ぎる影。
その正体は言わずもがな愚直にも手も変えずまた突っ込んできたイカ野郎。不意打ちでも4度もやられれば多少は慣れる。
その正体は言わずもがな愚直にも手も変えずまた突っ込んできたイカ野郎。不意打ちでも4度もやられれば多少は慣れる。
<今だ!組み付け!>
「つぁああ!!」
「つぁああ!!」
紙一重の所を通過する奴の横っ腹にダガーを突き立て、しがみ付く。
暴れるアビスワン。だが離してなんてやるものか。
暴れるアビスワン。だが離してなんてやるものか。
<ステルスパターン解読――確認。視覚に出すぞ。>
今まで黒い影や朧げにしか見えなかった奴の姿が克明に映し出されていく。
その姿は酷く醜悪にして凶悪な姿をしたイカといったところ。鋭角的なボディーに刺々しい先端を持つ足。全長はソートアーマーの10倍程はあるだろうか。
その姿は酷く醜悪にして凶悪な姿をしたイカといったところ。鋭角的なボディーに刺々しい先端を持つ足。全長はソートアーマーの10倍程はあるだろうか。
「……そこか!」
更に浮かび上がる“楔”の位置。
体表面近くにあったらしく、容易に発見出来た。
体表面近くにあったらしく、容易に発見出来た。
「イグザブレイド、顕現化(マテリアライズ)!」
右の腕に生じる銀の長剣。
左の腕の短剣で体を支えつつ、“楔”のある場所に馬乗りになりつつ力を込めて剣を構える。
左の腕の短剣で体を支えつつ、“楔”のある場所に馬乗りになりつつ力を込めて剣を構える。
――――eXar-Xen might access
同時に超常の力が剣に宿る。
内包する「破壊」の力は如何なる怪異の存在も許しはしない絶対的な力。
受けたモノは悉くが塵芥と消える事になる。
内包する「破壊」の力は如何なる怪異の存在も許しはしない絶対的な力。
受けたモノは悉くが塵芥と消える事になる。
「これでとど……め?」
だが、“楔”の内部を直視して、俺はその刃先を止めざるを得なくなってしまった。
「……な、何で……?」
<これは……>
<これは……>
今まで必死になっていてすっかり忘れていた。
――――あの“観測者”はウェルの居場所にこの怪異を指していた事を。
「――――」
俺の視線の先。
薄いオレンジの色をした膜――アビスワンのセカイの楔――その中に、膝を抱え穏やかに眠るウェルの姿があった。
薄いオレンジの色をした膜――アビスワンのセカイの楔――その中に、膝を抱え穏やかに眠るウェルの姿があった。
01010101010101011110010101011――!!!
俺が何も出来ないのを見て嘲笑するように、アビスワンは高らかに吼えた。
直後、爆発的に放たれた事象震。放心状態で捕まる事も忘れていた俺は、紙切れのように吹き飛ばされた。
直後、爆発的に放たれた事象震。放心状態で捕まる事も忘れていた俺は、紙切れのように吹き飛ばされた。
――Abyss- One_ Materialize
ビルドグランデの際も聞こえたノイズに混ざった電子音。
同時にアビスワンの内部が“裏返り”、超越的に、猛烈な速度で変形、構築、顕現していく。
その行程があらかた終わった時、その姿は既にイカのそれでは無く、触腕を束ねた歪な四肢を持つ奇怪なヒトガタへと変貌していた。
同時にアビスワンの内部が“裏返り”、超越的に、猛烈な速度で変形、構築、顕現していく。
その行程があらかた終わった時、その姿は既にイカのそれでは無く、触腕を束ねた歪な四肢を持つ奇怪なヒトガタへと変貌していた。
「何てこった……」
心の底より吐き捨てるように言う。
俺/イグザゼンを見下げるアビスワン。その内には間違いなくウェルがいる。
俺は、俺はどうすれば……
俺/イグザゼンを見下げるアビスワン。その内には間違いなくウェルがいる。
俺は、俺はどうすれば……
原始の闇近い湖底にて対峙する銀の異形と、その掛け替えの無い者を孕んだおぞましき異形。
彼は断てるか。彼は討てるか。彼は、救えるか……?
彼は断てるか。彼は討てるか。彼は、救えるか……?
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