アットウィキロゴ

創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

ENGAZE! 第児話 【え、戦闘シーンがないとか舐めてるの?】

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
「お茶を入れました」
「お前のお茶を入れるって行動は俺の頭にぶっかける事を言うのか。うおお、あっちいっ」
「ぶっかけだなんて白昼堂々ゲスいですわマスター。それに熱いのは当然」
「お前の思考回路の方がゲスいわ。あ、逆にこの熱さが快感かも」
 懐からハンカチを取り出しつつ、九堂は頭上から降ってきた紅茶を髪の毛から滴らせた状態で唸った。
 目の前には悪びれる様子のない少女型アンドロイド、イドゥンがいる。例によって生気のない冷めた目でこちらを見ている彼女は、少し考えた後に言葉を発した。
「紅茶も滴るいい男」
「褒めてるのか、それは褒めてるのか?」
「褒めてます」
「なら許す」
「嘘です」
「てめえ」
 オートモードのイドゥンは正直ドジッ娘も真っ青レベルのミスをしでかす厄介な相棒である。
 こうなることは一応予期出来ることなので、九堂もさほど気にしてはいない。というか毎日零されているので慣れた。
 何度やっても同じミスをするイドゥン、実はわざとやっているんじゃないかと思えてくるが、九堂は細かいことは気にしないので追求はしない。
「さて、今日は何か依頼が入ったか?」
「いえ。二週間連続依頼なしの大台を達成目前ですね」
「マジか。……仕事がないのか」
「ええ、ないですね……」
 二人の間に沈黙が流れる。



「実に素晴らしいな!」
「ええ、ですよね!」


ENGAZE! 第児話 【え、戦闘シーンがないとか舐めてるの?】



「馬鹿言ってんじゃねえええええ!」
 叫ぶ少女の声と、すぱこーんと小気味いい音が聞こえ、九堂の頭とイドゥンの頭が大きく揺れた。その頭を素早く叩かれたのだ。
 九堂探偵事務所名物のハリセンアタック。依頼人でも所長でも、老若にゃんこ誰彼構わず馬鹿を言った者の頭に制裁を喰らわせてきた伝説のハリセンアタックである。
 猫が喋れるかとかそう言う突っ込みはいらない(本人談)
 ソウルがあれば誰でも喋れる。
「いっつー……。正直エンゲージするより痛いぞ」
「心外ですね」
「どこをどう心外に思うんだ」
「痛みがあるからこそ愛の炎は燃え上がるっておばあちゃんが言ってました」
「無視すんな!」
 二度目のハリセンアタックが飛んだ。紅茶飛来+顔面ハリセンの二重苦を味わった九堂が、その顔を少しだけ歪めてハリセン少女に向き直る。
 そこには小柄な少女が、凛とした態度で仁王立ちしていた。
 目鼻立ちの整った少女。肩を越え腰程まで伸びる金髪が目につく。
 体の凹凸の無さは同情を禁じ得ないレベルだ。アンドロイドとはいえイドゥンも慎ましやかであるが、この少女は慎ましやかを越えて卑屈と言っても良いレベルにまで至る。
 と言っても、女は胸じゃないんだよ!(本人談)
 九堂の考えていたことを察してか少し怒っているような顔を見せるが、それが逆に彼女の可愛さを引き立てていた。
「何だよ絵美梨」
「何ですか絵美梨さん」
 九堂とイドゥンが二人同時に、ジト目で少女を睨む。
 少女の名は九堂絵美梨。九堂の幼女……もとい養女である。ちなみに現役女子高生。幼女じゃなかった。
「何だよじゃねえ! 仕事がなかったら探せよ!」
「絵美梨……、そんな決定権がお前にあるのか!」
「全く近頃の若者は。老人を労ることを知らない。ワシは嘆かわしいですじゃ」
 人を茶化すような九堂と、何かをわかったように呟くイドゥンに絵美梨のハリセンが飛ぶ。
「いーかげんにしろ! あたしだって体は一つなんだよこの馬鹿親父が!」
「そうだな……。真っ平らな大平原がな」
 じーっ、と九堂の視線が絵美梨のまな板に注がれる。今日も絶好調に平面だ。
「どこ見てんだ!」
 二連続で小気味良い音が響く。絵美梨にとって、胸の話題はタブーである。
 だというに、九堂はいつも事あるごとに彼女のまな板加減をネタにするのだ。
 この男にイドゥンを学習しないと責める権利はない。
「ダメ親父。今月の生活費、やばいんだけど」
「何だと……」
 絵美梨は生意気な口調に相反して非常に家庭的な少女であった。
 とある事件で身寄りを無くした自分を引き取ってくれた九堂の役に立つべく様々な家庭的スキルを会得し、ダメ人間にほど近い九堂の生活を立て直すために毎日粉骨砕身バイトに勤しんでいる。
 彼女の稼いだ金は九堂家三人の生活費や光熱費、ローン、絵美梨の学費その他諸々に当てられているため、彼女がいなくなったらおそらく九堂はのたれ死ぬ。
 まあ、九堂のために働いている、とは決して口には出さないが。
「というわけでダメ親父、働いてくれ」
「わかった……。だが! その前に一つ良いか絵美梨」
「……ん、何だよ」
「俺はまだ三十路前だし親父よりも『お兄ちゃん(はぁと』が良いな」
「サバ読みすぎですよ。絵美梨さんがBカップに奇跡の進化を遂げてしまうほどあり得ない」
「出てけ。金が入るまで帰ってくんな」
 絵美梨が親指で首をかっ切る動作を見せた後、冷たい瞳で九堂とイドゥンを見据えた。
「絵美梨、お父さんになんてことを言うんだ……」
「反抗期ですよマスター」
「そうか反抗期か……。誰しも通る道だよな」
「はい。第二次性徴と近い時期に現われるものです。仕方ありません」
「そうか……。でも反抗期が来てる割りに第二次性徴の方は何とも……」
「ええ、哀しいかな絵美梨さんのおっぱいはゼロに等しいです。実は男とか言うオチが」
「え!? 俺の『父と娘のイン☆モラル~ダメ、私たち親子だよ……~』計画が頓挫しかねないぞそれは」
「うるせぇぇぇ! 早く出てけ! 今すぐ出てけ! いいから出てけえええええ!」



「仕事……か。何かねーかな……。時給二万くらいなの」
「ねーよ」
 絵美梨に追い出された二人は、泣く泣く繁華街を歩いていた。
 日曜日の昼下がりとなれば、人通りも多い。このどこかに困っている人がいたりしてなんか仕事見つかればいいなと実に暢気に考えている二人だったのだが――。
「なあイドゥン……、なんか、臭わねぇか」
 繁華街は、一つ裏の路地に入ればすぐに薄暗い、怪しげな世界が広がる魔窟と化す。
 そんな場所の一歩手前で足を止め、九堂は低く唸った。ちりちりと肌を焦がすこの感覚は、違法サイボーグに相対した時によく似ている。
「ええ……ちょうど、私もそう感じていたところです。……事によるとあれですかね、最近隣町を騒がしているザーデットなる……」
「違法サイボーグで手一杯だってのに、お次はザーデットか……? ったく、世の中腐ってやがるぜ」
「マスターの脳内の方が腐ってると思いますけど」
「るせえ」
 そう吐き捨て、九堂は路地裏への一歩を踏み出した。
 何事も現場へ向かわなければ話にならない。それが九堂の持論なのだ。
 だが――、
「マスター!」
「っ、ちいっ!? って、ぶべっ!?」
 イドゥンに背後から猛烈なタックルを喰らった九堂は軽く吹き飛び、ポリバケツに激突、中の生ゴミ全てをぶちまけ挙げ句その中に頭からダイブした。
 傍から見れば完全にイドゥンの暴走である。だが、それが意味のない行動でないことは九堂も重々承知していた。
 吹き飛ばされ、一気に回転した視界の中に、暗闇の中鋭く迫る二条の剣閃が飛び込んできたのだ。
 九堂の命を狙い、何者かが攻撃を仕掛けてきた――、というところだろう。
「おいおい、誰だ? 悪いが俺は殺し屋とデートするような趣味ねぇぞ? 美人ちゃんなら大歓迎だがな」
『……なら、私と踊って下さいます?』
「マスター、下がって。……データ照合、おそらくはザーデットです」
 するりと影が抜け出すように、暗闇から一人の少女が姿を現した。
 黒色を基調としたゴスロリドレスに身を包むその少女は、その小柄な体から放つ異常なまでの殺気とは裏腹に、実にあどけない表情を浮かべている。
 だがそれも、貌の右半分を見ればこそ。長い前髪に隠された左半分、特にその左眼は、紅く、妖しく、九堂を見据えていた。
「お前は……?」
『生前の名はミナ。……けれど、誰もワタシを覚えてはいないでしょう、ね』
 ふ、と悲しげな笑みをミナが漏らした。
「何を言っているんだ……?」
『ワタシは、誰にも忘レラレタクナイノ……! 特に、特ニ……あぁ、ユキトにハ……ッ!』
「イドゥン、翻訳」
「無理です」
「じゃあ潰すか」

「「エンゲージ!」」


【以下戦闘をダイジェストでお楽しみ下さい】

「なんだかしらねえけどよ……、命狙われて、はいそうですかって返すわけにもいかねえよな!」
「何故マスターを狙ったのか、キリキリ吐いて貰いますよ」

『アなたタチは……。いったい……!』
「「私立探偵、九堂! そしてその相棒イドゥンが身も心も繋がった姿! 質問は受け付けません!」」
『ウゥ、質問したい……』

『……、出番が、出番が欲シイ……! 別人でもイイ……セメテ、ミナという少女がイキテイタ、その証ヲ』
「グタグタ喚くな! 出番なら俺だって欲しい!」
「小ネタでしか出演できない私たちよりもよっぽどマシでしょう!」

『……なんか、ゴメンナサイ』
「わかればよろしい。だが遠慮はしねーぜ! イドゥン、二人のラブラブアタックだ!」
「イエス、マスター!」

「「奥義! シュゥゥゥティィィィィング・スタァァァァァァ・キィィィィィィッック!!!」」
『アァ……、これで悔いナク……成仏、できる……。雪人、貴方は、元気で――』

【以上】


「悲しい、戦いだったな」
 九堂が、空を見上げ呟いた。彼女の気持ちは痛いほど、よくわかる。
 出番の亡き者の苦しみ。この辛く苦しい世界に生を受け、ザーデットに身をやつして尚、生きながらえてしまう絶望。
 自分も、そういう者の一人だった。いつ、彼女の側に落ちたって、不思議ではなかった。
 しかし、九堂には……、イドゥンがいた。
「……マスター、帰りましょう」
「ああ、そうだな……」
 最愛のアンドロイド、イドゥン。
 精神同調システム【エンゲージ】を組み込まれた、最初で、最後の相棒……。
 彼女のような、大切なヒトが側にいれば、この少女も、過ちを犯すことはなかったのかも知れない。

「……帰ろう。俺の新たなる娘と共に」
「ええ。そうですね」
「……」
 九堂の腕の中、一人の少女が安らかな寝息を立てていた。
 彼女のかつての名は、ミナ。深い絶望のあまり、進む道を誤ってしまった悲しい少女。
 だが、彼女は今日から新たな生を受け、生きていく。

 九堂深奈――。それがキミの新しい名前で、こっちが、キミの新しい家族だ。

 これに決めた。
 見知らぬ家で、見知らぬ人々に囲まれて、驚いた顔の娘にかける、最初の一言。



「て、めぇ……誰が新しい娘ッ子拾ってこいっつったああああ!」
「ま、まて話せばわかる! 深奈、頼む何か言ってやってくれ!」
「……お姉様、その……」
「ぐ……」
「絵美梨さんは瞳を潤ませるいたいけな少女を追い出すほど血も涙もない大平原なのですか?」
「やーいやーいド貧乳ー」
「……だけどなあ」
「すみません……、昔生きていた場所には、お姉様が、その……、少し、被って」
「……はぁ。ああもう、しゃーないなあ……。あたしも妹欲しかったから……いい、かな?」
「やったー!」
「やりましたねマスター」
「オラ待てやそこのアホ二人。一人家族が増えた=食料枯渇っつーことだ、わかってんのか?」
「イエ、ゼンゼン」
「ナニソレオイシイノ」
「イイから深奈に食わせるため働いてこいやああああ!」
「いやあああああああ!」
「ふふ……、家族、か」

「――ユキト、私、元気で生きますね。でも、貴方のことは忘れない」


次回予告

「あん? リヒト・エンフィールドだァ?」
「何それ美味しいんですか?」
「お前物くわねえだろ」

「うーん、やっぱ格好いいよな、リヒト・エンフィールド」
「私……、ヴァイスさんに憧れちゃいます」
「や、やべえ……、俺の可愛い娘たちがどこぞの馬の骨に骨抜きにされて……」
「こりゃもう復讐しかないっスよマスター」

「いいかリヒト・エンフィールド! テメエが何者だろうと、俺はテメエをぶっ潰す!」


「何故なら!」



「俺の最愛の娘たちがテメエら二人にゾッコンだからだ! そんなオトコお父さん許しませんよ!!」

次回、ENGAZE! 第惨話【赤と白、そして父さん奮戦す】


 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます)
+ ...

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー