第二地球暦164年 8月19日 晴れ
HRK学園
HRK学園
祭り二日目。
一日目で花火があったから、二日目はさぞ静かになるのだろうと思われる方も多いが、そんなことはありえなかった。むしろ若さ爆発するのは祭りの後半なのである。
あっちこっちで出し物が開催されて、盛り上がるのはこれから。
カッコつけた言い方にすれば、お楽しみはここからだ。
学園がある島の中央部、建物が並んだ場所、その隙間にある通り。最初から計画された通りに建物がアーチ状になっていたりして、通りはほぼ一直線になっているのが分かることだろう。
晴天とはいかないまでも晴れた空の下、通りを全高5mほどの鉄の巨人たちが闊歩していた。
合間を縫うように色鮮やかな髪と個性ある耳を持った人工の彼ら彼女らが、衣装を着たり、旗を持ったりするなどして正確に歩みを進めている。
外殻機とアンドロイドの行列から少し離れて、作業着や白衣、もしくは仮装をした学生や研究者や技術者が歩む。
そして先頭を赤と黒の塗料を纏った一機と、白一色に塗装された一機が我がもの顔で歩いている。
赤黒がヌヴィエムで、白がヴァイス・シュトラール。両機ともこのイベントの主役というべき立場にあり、事実通りの客達は拍手や写真でもって迎え入れている。
本来競技用である外殻機をパレードのダシとして使う試みは数年前から始まったもので伝統も何も無かったが人出は非常に多く、炎天下だというのに通りの両側は人で溢れかえっていた。
これを実現できたのは一重に外殻機に兵器としての性格が無いということであろう。
例えば戦車をパレードに出そうと思ったら書類の山と鳴り止まない電話と戦う羽目になるが、外殻機は極端な話、レースカーと大差ない扱いな為、比較的簡単に出すことができる。
試合では実弾を使用するではないか、と思うかもしれないが、あくまで競技用なので許可が下りる。
仮に外殻機を戦車や装甲車と同じ扱いで運用しようと思っても、役に立たない。
威圧する目的で大型ロボットを導入しようという話もあったにはあったが、いかんせん整備がたいへんなのと、生産・輸送コストが馬鹿にならないので試作されただけでお箱入りになった。
現在では強化外骨格や人と同じ大きさのアンドロイドが軍で採用されているが、ここでは関係あるまい。
アルメリア達の機体は行列の半ばから少し後ろ辺りを歩いていた。
前の機体から距離をとったところをアノフェレスが人間臭く両手をふりつつ歩き、その後ろをプロトファスマがのんびりローラーで前進する。目標機は個性もなければ見てもつまらないとの理由で参加していない。
つまり委員長はまたもや暇だったわけで、どこか頬を膨らませたムスーッとした顔で列の横を歩んでいる。
二機とも一切の武装を解除している。アノフェレスはともかく、プロトファスマが非武装状態だと何か間の抜けた風に見えた。
他のチームは、例えば外殻機に服を着せてみたり、塗装を変えてみたり、傍を歩いている人の服装に合わせて装飾をくっつけたりしているが、彼女らはしなかった。
機体の中に乗っている二人は除外するとして、委員長が例の軍服で、仕事が一段落したセンジュが自前の桔梗柄の紫色浴衣、クーが死神装束、アオバにいたってはツナギのまま。
整合性も共通点も無かったが、時間が足りなかったのだから大目にみるべきであろう。
なお、シュレーとアルメリアは操縦する為に服を脱いで身軽になっている。シュレーはいつもの。アルメリアはジャージ姿。
文に起こすのなら、がしゃうぃーんがしゃうぃーんとのんびり歩くアノフェレスと、六本脚を微動だにせずローラーをきゅぃぃーんと鳴らしつつ前進するプロトファスマ。
全高5mのロボットが行列を作って道路のど真ん中を悠々と行進するさまは、乗っている本人達にはさっぱり分からなかったが、実に雄大だった。
一日目で花火があったから、二日目はさぞ静かになるのだろうと思われる方も多いが、そんなことはありえなかった。むしろ若さ爆発するのは祭りの後半なのである。
あっちこっちで出し物が開催されて、盛り上がるのはこれから。
カッコつけた言い方にすれば、お楽しみはここからだ。
学園がある島の中央部、建物が並んだ場所、その隙間にある通り。最初から計画された通りに建物がアーチ状になっていたりして、通りはほぼ一直線になっているのが分かることだろう。
晴天とはいかないまでも晴れた空の下、通りを全高5mほどの鉄の巨人たちが闊歩していた。
合間を縫うように色鮮やかな髪と個性ある耳を持った人工の彼ら彼女らが、衣装を着たり、旗を持ったりするなどして正確に歩みを進めている。
外殻機とアンドロイドの行列から少し離れて、作業着や白衣、もしくは仮装をした学生や研究者や技術者が歩む。
そして先頭を赤と黒の塗料を纏った一機と、白一色に塗装された一機が我がもの顔で歩いている。
赤黒がヌヴィエムで、白がヴァイス・シュトラール。両機ともこのイベントの主役というべき立場にあり、事実通りの客達は拍手や写真でもって迎え入れている。
本来競技用である外殻機をパレードのダシとして使う試みは数年前から始まったもので伝統も何も無かったが人出は非常に多く、炎天下だというのに通りの両側は人で溢れかえっていた。
これを実現できたのは一重に外殻機に兵器としての性格が無いということであろう。
例えば戦車をパレードに出そうと思ったら書類の山と鳴り止まない電話と戦う羽目になるが、外殻機は極端な話、レースカーと大差ない扱いな為、比較的簡単に出すことができる。
試合では実弾を使用するではないか、と思うかもしれないが、あくまで競技用なので許可が下りる。
仮に外殻機を戦車や装甲車と同じ扱いで運用しようと思っても、役に立たない。
威圧する目的で大型ロボットを導入しようという話もあったにはあったが、いかんせん整備がたいへんなのと、生産・輸送コストが馬鹿にならないので試作されただけでお箱入りになった。
現在では強化外骨格や人と同じ大きさのアンドロイドが軍で採用されているが、ここでは関係あるまい。
アルメリア達の機体は行列の半ばから少し後ろ辺りを歩いていた。
前の機体から距離をとったところをアノフェレスが人間臭く両手をふりつつ歩き、その後ろをプロトファスマがのんびりローラーで前進する。目標機は個性もなければ見てもつまらないとの理由で参加していない。
つまり委員長はまたもや暇だったわけで、どこか頬を膨らませたムスーッとした顔で列の横を歩んでいる。
二機とも一切の武装を解除している。アノフェレスはともかく、プロトファスマが非武装状態だと何か間の抜けた風に見えた。
他のチームは、例えば外殻機に服を着せてみたり、塗装を変えてみたり、傍を歩いている人の服装に合わせて装飾をくっつけたりしているが、彼女らはしなかった。
機体の中に乗っている二人は除外するとして、委員長が例の軍服で、仕事が一段落したセンジュが自前の桔梗柄の紫色浴衣、クーが死神装束、アオバにいたってはツナギのまま。
整合性も共通点も無かったが、時間が足りなかったのだから大目にみるべきであろう。
なお、シュレーとアルメリアは操縦する為に服を脱いで身軽になっている。シュレーはいつもの。アルメリアはジャージ姿。
文に起こすのなら、がしゃうぃーんがしゃうぃーんとのんびり歩くアノフェレスと、六本脚を微動だにせずローラーをきゅぃぃーんと鳴らしつつ前進するプロトファスマ。
全高5mのロボットが行列を作って道路のど真ん中を悠々と行進するさまは、乗っている本人達にはさっぱり分からなかったが、実に雄大だった。
「……はぁ」
背中を丸めて機体の横を歩む委員長は溜息を吐くと、軍服付属の帽子を眼深く被りなおし、足元から前に頭を向けた。
欲を出すのなら機体に乗って一緒に行進してみたかった。けど、三機目の機体なんてあるわけもなくて、徒歩で付き添うしかなかったのだった。
そんな彼女の溜息を機敏に聴き取ったのはクーで、鎌を肩に斜めに立てかけたまますすすと寄ってきた。腕の中には目を瞑ってすやすや眠るクロが抱かれていた。
欲を出すのなら機体に乗って一緒に行進してみたかった。けど、三機目の機体なんてあるわけもなくて、徒歩で付き添うしかなかったのだった。
そんな彼女の溜息を機敏に聴き取ったのはクーで、鎌を肩に斜めに立てかけたまますすすと寄ってきた。腕の中には目を瞑ってすやすや眠るクロが抱かれていた。
「どうしたの?」
「クーさん。私も機体に乗ってみたいな、と思っただけです」
「クーさん。私も機体に乗ってみたいな、と思っただけです」
するとクーは歩みを止めぬまま顎を下げて考えこみ、おもむろにアノフェレスの方に黒衣の裾から人差し指を突き出す様にした。
「じゃあ、乗ればいい」
一秒おいて、
「肩の上とか、いっそ手に乗せてもらうとか」
などと無茶な案を提示する三つ編み女。
なるほど、肩の上や腕ならば空いているだろう。一人入るだけで精いっぱいな操縦席と違って、外殻機には別の意味で乗る場所が多く残されている。
なるほど、肩の上や腕ならば空いているだろう。一人入るだけで精いっぱいな操縦席と違って、外殻機には別の意味で乗る場所が多く残されている。
「流石に、落ちてしまいますから」
「ん、………頭の上……」
「掴まれそうにないです。私は、そんなに運動神経もよくないので、ね」
「ん、………頭の上……」
「掴まれそうにないです。私は、そんなに運動神経もよくないので、ね」
委員長はそう言うと、アノフェレスの腕や肩を眺めて、もしも自分が乗ったらどのような事態が発生するかをざっと計算してみたところ、大丈夫なのではないかという結論に至った。
もちろんこの二人は、機体の上に乗っかって落っこちたらどうなるかを考慮していない。
アノフェレスの肩に乗った場合、おおよそ4.5m。プロトファスマだとやや低いが、4~5mから転落したら無傷では済まないことは確かである。
それくらい足から落ちれば大丈夫と思うかもしれないが、外殻機が歩いた時に予期せぬ向きから落っこちたと考えれば危険性がありありと浮かぶ。
では手はどうか。こちらは別の危険が生じるのは言うまでも無いであろう。元々人を持つようなことを想定していないのだから、うっかり握りつぶしましたなんてこともありうるのだ。
どこかずれた話をしながら並んで歩く二人をみかねたセンジュは、二機の間をさっと駆け抜けて後ろにまわってきた。
木製下駄を履いて、両掌を軽く握って駆けよる姿は、やはり子供そのものにしか見えない。それもそのはず自分で子供の体を選んだのだ。
もちろんこの二人は、機体の上に乗っかって落っこちたらどうなるかを考慮していない。
アノフェレスの肩に乗った場合、おおよそ4.5m。プロトファスマだとやや低いが、4~5mから転落したら無傷では済まないことは確かである。
それくらい足から落ちれば大丈夫と思うかもしれないが、外殻機が歩いた時に予期せぬ向きから落っこちたと考えれば危険性がありありと浮かぶ。
では手はどうか。こちらは別の危険が生じるのは言うまでも無いであろう。元々人を持つようなことを想定していないのだから、うっかり握りつぶしましたなんてこともありうるのだ。
どこかずれた話をしながら並んで歩く二人をみかねたセンジュは、二機の間をさっと駆け抜けて後ろにまわってきた。
木製下駄を履いて、両掌を軽く握って駆けよる姿は、やはり子供そのものにしか見えない。それもそのはず自分で子供の体を選んだのだ。
「おい、お前ら。本当に乗ろうとか考えるんじゃないぞ」
「………だめなの?」
「教授、やっぱりだめですか?」
「駄目だ駄目だ、神輿に乗っかるのとはわけが違うんだぞ」
「………だめなの?」
「教授、やっぱりだめですか?」
「駄目だ駄目だ、神輿に乗っかるのとはわけが違うんだぞ」
センジュが腕を組むと、顎で外殻機をしゃくった。
例に出すのが神輿では二人に通用しないことには気がついてないらしい。
例に出すのが神輿では二人に通用しないことには気がついてないらしい。
「それに―――」
何かしら言葉を続けようとして口を開いて、ふと通りの両側で溢れる人ごみに目をやったその時、眼球が凍結したが如く停止して一点を眺めた。
一言も発さず歩くだけになったセンジュを、クーと委員長が何事かと見つめて、同じ方向を見たが、ただ人がたくさんいるだけで何を見ているかまでは分からなかった。
クーはそれほど興味が無いらしく、片手に抱いたクロの毛にくっついた謎の白いゴミをちまちま摘まみだす。委員長がやや体を低めにして口を開き、尋ねる。
一言も発さず歩くだけになったセンジュを、クーと委員長が何事かと見つめて、同じ方向を見たが、ただ人がたくさんいるだけで何を見ているかまでは分からなかった。
クーはそれほど興味が無いらしく、片手に抱いたクロの毛にくっついた謎の白いゴミをちまちま摘まみだす。委員長がやや体を低めにして口を開き、尋ねる。
「教授、誰かい……」
「……っ、もうっ!!!」
「……っ、もうっ!!!」
センジュが大声を張り上げた。いつもの冷静さを失い、左右のこめかみあたりに拳を押しつけて頭を下げてがりりとやかましく喉を酷使する。
余りに大きな声だったので行列の後ろで外殻機の横を歩いていた別のチームの人らがじっと見つめる。
センジュは気でも違ったように手で顔を覆い、まるで泣いているかのように目をごしごしこするとがくりと頭を天に向けて沈黙した。この間5秒足らず。長かったのか短かったのか、そしてその意味は本人だけが知る。
余りに大きな声だったので行列の後ろで外殻機の横を歩いていた別のチームの人らがじっと見つめる。
センジュは気でも違ったように手で顔を覆い、まるで泣いているかのように目をごしごしこするとがくりと頭を天に向けて沈黙した。この間5秒足らず。長かったのか短かったのか、そしてその意味は本人だけが知る。
「アオバッ!!」
「はい、なんでしょう」
「ちょっとこの場を頼む! 私は用事が出来た!」
「わかりました」
「はい、なんでしょう」
「ちょっとこの場を頼む! 私は用事が出来た!」
「わかりました」
センジュはアオバに状況を一方的に押しつけるや転びかける勢いで列を離れて人混みに一目散に駆けていく。人の列に体をむんずと押し込み、浴衣が乱れるのも構わず。
外殻機の列に一般人が立ち寄れないように体を張って簡易防壁を築き上げていた警備員も、流石に背後から外に向かう人間がいるとは思えず、あっさりと通してしまった。
アオバは嫌な顔せず、むしろいつものことだと言わんばかりだった。
もしも彼女の顔を目撃したのなら、誰もがこう口にするだろうか。
まるで恋する乙女のようだ、と。
もちろんこの場の面々が目撃するにはセンジュの背中を透視して真正面から見るといった芸当が必要になるわけで、彼女が一体ぜんたい何を思って走り出したのか推測するしかなかった。
クーの蒼目が人混みに向けられたが、それも一瞬で、鎌を面倒そうに背負い直す。猫一匹抱っこしつつ鎌を持ち歩くのは億劫だったらしい。
外殻機の列に一般人が立ち寄れないように体を張って簡易防壁を築き上げていた警備員も、流石に背後から外に向かう人間がいるとは思えず、あっさりと通してしまった。
アオバは嫌な顔せず、むしろいつものことだと言わんばかりだった。
もしも彼女の顔を目撃したのなら、誰もがこう口にするだろうか。
まるで恋する乙女のようだ、と。
もちろんこの場の面々が目撃するにはセンジュの背中を透視して真正面から見るといった芸当が必要になるわけで、彼女が一体ぜんたい何を思って走り出したのか推測するしかなかった。
クーの蒼目が人混みに向けられたが、それも一瞬で、鎌を面倒そうに背負い直す。猫一匹抱っこしつつ鎌を持ち歩くのは億劫だったらしい。
『あれ? 教授はどこへ行ったんですか?』
機体備え付けの性能のよろしくないスピーカーに雑音が入り、外に音を出力する。
アルメリアは列を乱してはならぬと操縦に集中するあまりにセンジュがいなくなったことに気がつかなかったらしく、足元にカメラアイを向けて、きょろきょろ探し始めた。
5mもある六脚式外殻機があっちを見たりこっちを見たりする―――……それはそれでコミカルな光景である。
足元の会話を聞いてか聞かぬか、アノフェレスが足を上げつま先だけで反転し、ローラーを逆回転することで後ろ向きに進むようになった。二脚式特有の軽快なターンだった。
例えばプロトファスマのように脚が幾つもあり安定性が高い機体なら、『後ろを向け』と命令すればそのまま向いてくれる。
が、二脚でしかも機械の補正が弱い機体だと『後ろを向く時に倒れないように腕をこの位置に持ってきて~』と命令が複雑になる。それを無意識に、自分の体を動かすように実行するシュレーは、やはり才能があるといえる。
アノフェレスが首を傾げカメラアイを光らせた。プロトファスマも首を捻った。
委員長は二機に無線で話しかけようとして、肝心の無線機を置いてきたことに気がつくと、両手をメガホン代わりにして声を張り上げた。
アルメリアは列を乱してはならぬと操縦に集中するあまりにセンジュがいなくなったことに気がつかなかったらしく、足元にカメラアイを向けて、きょろきょろ探し始めた。
5mもある六脚式外殻機があっちを見たりこっちを見たりする―――……それはそれでコミカルな光景である。
足元の会話を聞いてか聞かぬか、アノフェレスが足を上げつま先だけで反転し、ローラーを逆回転することで後ろ向きに進むようになった。二脚式特有の軽快なターンだった。
例えばプロトファスマのように脚が幾つもあり安定性が高い機体なら、『後ろを向け』と命令すればそのまま向いてくれる。
が、二脚でしかも機械の補正が弱い機体だと『後ろを向く時に倒れないように腕をこの位置に持ってきて~』と命令が複雑になる。それを無意識に、自分の体を動かすように実行するシュレーは、やはり才能があるといえる。
アノフェレスが首を傾げカメラアイを光らせた。プロトファスマも首を捻った。
委員長は二機に無線で話しかけようとして、肝心の無線機を置いてきたことに気がつくと、両手をメガホン代わりにして声を張り上げた。
「センジュ教授なら、さっき向こうの方に走って行きましたよ!」
『お仕事……かな。最近ずっと忙しそうだったですからね』
『トイレじゃない? 私の予想だとね、暑いから飲み過ぎたんだよ。シャワーの最中に飲むお湯って最高だから』
「………」
『………』
『お仕事……かな。最近ずっと忙しそうだったですからね』
『トイレじゃない? 私の予想だとね、暑いから飲み過ぎたんだよ。シャワーの最中に飲むお湯って最高だから』
「………」
『………』
デリカシーが欠如したセリフの後、ほらこうやって飲むんだよと機体にシャワーノズルから出るお湯を飲ませる動きをさせるシュレー。
二人は知る由も無いが、冗談でもなんでもなくて本当に「ごくごく」飲んでたりする。
いい子も悪い子も、シャワーの水を直に飲むようなことはしてはいけない。雑菌が沢山いるかもしれない。
二人は知る由も無いが、冗談でもなんでもなくて本当に「ごくごく」飲んでたりする。
いい子も悪い子も、シャワーの水を直に飲むようなことはしてはいけない。雑菌が沢山いるかもしれない。
『飲んじゃだめだから!』
「飲んじゃいけません!」
「飲んじゃいけません!」
アルメリアと委員長はしばしの沈黙の後、双子ですらこうはいかまいな同時突っ込みをかけた。
だが、シュレーは力説し始めた。
曰く、シャワーは温度を変えられるからすごい。曰く、水流を上げて口の中を掃除できる。曰く、今住んでいる場所のはすごい美味しい、曰く、お湯で殺菌されてるよ。
パレードに参加しているというのに、会話の内容がいつもと何も変わらないのが彼女ららしい。といってもただ歩くだけなので慣れればいつもの練習と大差ないわけであるが。
パレードも半ばに差し掛かり観客達の盛り上がりも右肩上がり。
打楽器やら金管楽器を持ちだしてこれでもかと演奏する集団が現れれば、ここぞとばかりに飲み物や軽食を売り歩く人も姿を現す。しかも気温もめきめき右肩上がり。
外殻機行列は恙無く進んで行き、とうとう目的地となる競技場の中へと入って行った。
オーソドックスな円形競技場の中に外殻機がわらわらと入っていくのだから、最後の一機が入る頃には満員電車並みの混雑具合となっていた。
そこに外殻機を一目見ようと詰めかける人の群れが突撃してくれば、競技場は熱の坩堝と化す。
その巨体故に身動きができなくなってしまったアルメリアは、動かすこともあるまいと操縦桿とペダルから足を離して周囲の映像を眺めることにした。
一方のシュレーは身軽な機体を自在に操りポーズを決めてみるなど、サービス精神を全開にしていた。傍らでは委員長が拗ねた顔をしていたが、乗る機体が無い以上どうしようもなかった。
ある程度時間が過ぎるとシュレー達のようなチームではなく、有名で有力なチームへと人出が流れ始めて、小一時間も経った頃には、周囲に人が居ない状況が出来上がっていた。
不思議と眠気が出てきてしまい、ふぁー、と気の抜けた欠伸をして、何気なく画面を覗きこむと、バンダナを被った男性がプロトファスマの正面に立っているのが見えた。
アルメリアは目をかっと見開き驚愕した。
だが、シュレーは力説し始めた。
曰く、シャワーは温度を変えられるからすごい。曰く、水流を上げて口の中を掃除できる。曰く、今住んでいる場所のはすごい美味しい、曰く、お湯で殺菌されてるよ。
パレードに参加しているというのに、会話の内容がいつもと何も変わらないのが彼女ららしい。といってもただ歩くだけなので慣れればいつもの練習と大差ないわけであるが。
パレードも半ばに差し掛かり観客達の盛り上がりも右肩上がり。
打楽器やら金管楽器を持ちだしてこれでもかと演奏する集団が現れれば、ここぞとばかりに飲み物や軽食を売り歩く人も姿を現す。しかも気温もめきめき右肩上がり。
外殻機行列は恙無く進んで行き、とうとう目的地となる競技場の中へと入って行った。
オーソドックスな円形競技場の中に外殻機がわらわらと入っていくのだから、最後の一機が入る頃には満員電車並みの混雑具合となっていた。
そこに外殻機を一目見ようと詰めかける人の群れが突撃してくれば、競技場は熱の坩堝と化す。
その巨体故に身動きができなくなってしまったアルメリアは、動かすこともあるまいと操縦桿とペダルから足を離して周囲の映像を眺めることにした。
一方のシュレーは身軽な機体を自在に操りポーズを決めてみるなど、サービス精神を全開にしていた。傍らでは委員長が拗ねた顔をしていたが、乗る機体が無い以上どうしようもなかった。
ある程度時間が過ぎるとシュレー達のようなチームではなく、有名で有力なチームへと人出が流れ始めて、小一時間も経った頃には、周囲に人が居ない状況が出来上がっていた。
不思議と眠気が出てきてしまい、ふぁー、と気の抜けた欠伸をして、何気なく画面を覗きこむと、バンダナを被った男性がプロトファスマの正面に立っているのが見えた。
アルメリアは目をかっと見開き驚愕した。
「おっ、おじさま!?」
身じろぐ5mの機体を前にしてもその男は全く動じず、照れくさそうな笑みを浮かべ右手を掲げてきた。
彼女が子供の頃と比べてやや痩せた体、髭と胸毛は健在だったが目じりや口まわりのシワが目立ち、髪の毛も白髪が多くなっている。悲しいかな、彼もまた年月には抗えなかったのだ。
オヤジはプロトファスマを一通り見遣ると、再度ふらりと手を挙げた。
アルメリアは実家からオヤジの元に子供の頃からしょっちゅう遊びに行っていた。両親の仲人をした人というだけではなく、潜水機やエアバイクについて教授してくれる先生でもあった。
彼女が子供の頃と比べてやや痩せた体、髭と胸毛は健在だったが目じりや口まわりのシワが目立ち、髪の毛も白髪が多くなっている。悲しいかな、彼もまた年月には抗えなかったのだ。
オヤジはプロトファスマを一通り見遣ると、再度ふらりと手を挙げた。
アルメリアは実家からオヤジの元に子供の頃からしょっちゅう遊びに行っていた。両親の仲人をした人というだけではなく、潜水機やエアバイクについて教授してくれる先生でもあった。
「いよう、お久しぶりだなぁアルメリア」
『ななななななななんでここに居るの!?』
『ななななななななんでここに居るの!?』
慌てたアルメリアはペダルを踏み抜いてしまいそうになったが、なんとか堪え、機体の機能を一時停止すると殴りつけるようにハッチを開けて機体から降り立ち、息を切らせ駆けよった。
ポニーテールがぴょんぴょん左右に揺れる。
オヤジはゆるりゆるり、生温く柔らかい歩き方でプロトファスマの足元に歩み寄り手をかけ体重を偏らし、アルメリアを見る。
ポニーテールがぴょんぴょん左右に揺れる。
オヤジはゆるりゆるり、生温く柔らかい歩き方でプロトファスマの足元に歩み寄り手をかけ体重を偏らし、アルメリアを見る。
「なんでって、ひでぇなまったくよう。寂しくてオジさん死にそうだったのによう」
オヤジがわざとらしく溜息をついてみせた。言葉の端には侘しさが滲んでいたが、その喋り方は自分の孫に対するそれそのもののようで。
昔から今に至るまでアルメリアの成長を見守ってきたこともあるが、独身で子供が居ないということも関係しているのかもしれない。彼にとってアルメリアは娘であり孫のような存在なのだろう。
昔から今に至るまでアルメリアの成長を見守ってきたこともあるが、独身で子供が居ないということも関係しているのかもしれない。彼にとってアルメリアは娘であり孫のような存在なのだろう。
「ちゃんと手紙もだしてたじゃないですか」
アルメリアがそう言うと、
「ちっちっち……足りねぇなぁお嬢ちゃん……送るならキスマークの一つでもつけといてくれよな」
「……もうっ」
「……もうっ」
オヤジはすかさず目が閉じそうで閉じないウィンクを添付しこんな風に返してくるわけである。
と、オヤジがアルメリアの顔をじろじろと見始めた。アルメリアは居心地が悪いというより背中がもぞもぞくすぐったいような感覚を覚え、お腹の辺りで腕と腕を軽く組んだ。
オヤジはアルメリアがちゃんと元気でやってることもついでに確認してから、血色のいい唇が自前のもので口紅一つつけていないことをしかと見た。
母親の飾り気なさをそのまま受け継いでしまったらしいとなんだか面白くなる。
こりゃあもしも結婚して娘が産まれても飾らない子になるんだろう。そして髪型はきっとポニーテールなのだ。オヤジは未来が見えた気がしてにやつきそうになった。
と、オヤジがアルメリアの顔をじろじろと見始めた。アルメリアは居心地が悪いというより背中がもぞもぞくすぐったいような感覚を覚え、お腹の辺りで腕と腕を軽く組んだ。
オヤジはアルメリアがちゃんと元気でやってることもついでに確認してから、血色のいい唇が自前のもので口紅一つつけていないことをしかと見た。
母親の飾り気なさをそのまま受け継いでしまったらしいとなんだか面白くなる。
こりゃあもしも結婚して娘が産まれても飾らない子になるんだろう。そして髪型はきっとポニーテールなのだ。オヤジは未来が見えた気がしてにやつきそうになった。
「………んー? んん? 口紅の一つもしてないのか?」
「化粧嫌いです」
「ずばっと言うねぇ」
「やりかた分からないんです」
「化粧嫌いです」
「ずばっと言うねぇ」
「やりかた分からないんです」
アルメリアは唇に指を当てて、本当に分からないといった様子を見せる。
オヤジはなるほどと頷くと、何気なく他の外殻機に視線を移した。
オヤジはなるほどと頷くと、何気なく他の外殻機に視線を移した。
「そっちか。誰かに教えて貰えば―――」
「はじめまして、アルメリアの親戚の方ですか?」
「ん?」
「ん?」
見知らない人が友人と話しているのを少し離れた場所でクーと共に居た委員長が、汗を拭いつつ間に割って入ってきた。
なにやら親しげに話していたので途中で入るに入れず待っていたらしかった。
委員長の第一印象は、ちょっと疲れた感じの中年男性というものだったのは秘密にしておこう。
委員長の後ろからクーが続いて、二人揃って化粧っ気が無いのが一目で分かれば、化粧をしない理由もなんとなく分かってくる。
なにやら親しげに話していたので途中で入るに入れず待っていたらしかった。
委員長の第一印象は、ちょっと疲れた感じの中年男性というものだったのは秘密にしておこう。
委員長の後ろからクーが続いて、二人揃って化粧っ気が無いのが一目で分かれば、化粧をしない理由もなんとなく分かってくる。
「そんなとこか、血の繋がりはないがね」
二人は歩み寄ると軽く握手を交わし、簡単な自己紹介をした。
外殻機と人がごったがえし撮影会やら説明やら談話やらの喧騒むしろ言葉の大津波の最中で会話をする為に、知らずのうちに声が大きくなっている。
競技場に集うは生粋のロボット好き達であり、やれここの構造はなんだ、やれなんとか制御はどこのフィードバックだ、そんな専門用語がひしめく。
外殻機と人がごったがえし撮影会やら説明やら談話やらの喧騒むしろ言葉の大津波の最中で会話をする為に、知らずのうちに声が大きくなっている。
競技場に集うは生粋のロボット好き達であり、やれここの構造はなんだ、やれなんとか制御はどこのフィードバックだ、そんな専門用語がひしめく。
「はじめまして。みんなからは委員長と呼ばれています」
「こっちこそ始めましてだ。みんなはオヤジだのなんだの呼ぶ。お嬢ちゃんも気軽にそう呼んでくれればいい」
「こっちこそ始めましてだ。みんなはオヤジだのなんだの呼ぶ。お嬢ちゃんも気軽にそう呼んでくれればいい」
二人は手を振るような軽い握手と会釈、そして何故か本名を出さない自己紹介をし、離れた。
名前を出さない出てこない理由については御察し下さい。
以前にアルメリアの手紙の中で『頭はいいけどちょっと天然な子』とあったのはこの子のことかとオヤジが考える傍ら、クーが暇そうにそこらをぶらぶら歩き始める。
オヤジとクーは初対面ではなかったりするが、小さい時以降会っていない。
ちなみにシュレーのことは、『可愛くて元気な子』と書かれていたとか。
名前を出さない出てこない理由については御察し下さい。
以前にアルメリアの手紙の中で『頭はいいけどちょっと天然な子』とあったのはこの子のことかとオヤジが考える傍ら、クーが暇そうにそこらをぶらぶら歩き始める。
オヤジとクーは初対面ではなかったりするが、小さい時以降会っていない。
ちなみにシュレーのことは、『可愛くて元気な子』と書かれていたとか。
「ちょっとそこらへん行ってくるけど戻ってくるから心配いらない」
「分かりましたクーさん。もうそんなに用事も無いですからね、ゆっくりどうぞ」
「分かりましたクーさん。もうそんなに用事も無いですからね、ゆっくりどうぞ」
委員長に言葉で、他の人らに目で了解をとったクーは人混みの間に身を滑り込ませて消えていった。
オヤジはクーの小さい頃は見ても成長した姿を見ていなかった為、誰なのか分からなかったらしくじっと注視し、眉に皺をよせ尋ねてみた。
オヤジはクーの小さい頃は見ても成長した姿を見ていなかった為、誰なのか分からなかったらしくじっと注視し、眉に皺をよせ尋ねてみた。
「アルメリア、あの子があのクーちゃんなのか?」
「なんですかおじ様、その信じられないって顔は」
「女って成長するもんだぁってな……いい女になりやがった。それに比べて我が愛すべきお嬢さんときたら」
「私、とってもとっても、怒りますよ」
「なんですかおじ様、その信じられないって顔は」
「女って成長するもんだぁってな……いい女になりやがった。それに比べて我が愛すべきお嬢さんときたら」
「私、とってもとっても、怒りますよ」
アルメリアは頬を膨らませ、半眼になった。オヤジは楽しそうに喉を鳴らす。
「そんなことよりアルメリア、お前さんメタルナイツの試合の方はどうなんだ」
「もうじき大会です」
「自信は?」
「ありありですおじさま。この子なら優勝間違いなしですから」
「もうじき大会です」
「自信は?」
「ありありですおじさま。この子なら優勝間違いなしですから」
にっと笑い、ピースサインなんてしてみせたアルメリアが仰ぎ見るはプロトファスマ。誰も乗ってない彼は頭を垂れて黙っているだけだった。
彼女らしからぬ行動に委員長は目を丸くした。
オヤジが手をぱむと合わせると伸びをして、ポケットから携帯電話をとりだして時間を確認。もういい時間だったらしく、ポケットに仕舞うとその場を離れる素振りをみせた。
彼女らしからぬ行動に委員長は目を丸くした。
オヤジが手をぱむと合わせると伸びをして、ポケットから携帯電話をとりだして時間を確認。もういい時間だったらしく、ポケットに仕舞うとその場を離れる素振りをみせた。
「んじゃま、おじさんはこの辺でさよならだ。ユトとメリッサの二人に報告しておくぞ、元気にやってますってな」
「あんまり昼間からいちゃつかないでねって伝えて下さい。あ、おじさま、ちゃんと食べて下さいね。痩せてるのはカッコワルイですから」
「この歳になると痩せた方が健康にいいんだよ。まぁ頑張れや」
「あんまり昼間からいちゃつかないでねって伝えて下さい。あ、おじさま、ちゃんと食べて下さいね。痩せてるのはカッコワルイですから」
「この歳になると痩せた方が健康にいいんだよ。まぁ頑張れや」
そしてオヤジは両手をポケットに突っ込むと、今のところ衰えを感じさせない歩調を刻んで人混みに消えていった。
競技場に風がなだれ込み、暑い空気を撹拌する。
アルメリアは額から後頭部にかけて髪の毛を掻きあげると、ポニーテールを一度解き、ゴム紐を口に咥えて結い直した。ちょっと外に居ただけで汗が滲んできて、暑さを実感する。
いいかげん帽子をかぶり続けるのも嫌になってきた委員長は軍帽を指に引っ掛けてくるくる弄びながら、大きく溜息を吐きまた息を吸い込む。
都市迷彩の帽子が滞ることなく廻る。まるで独楽のように廻る。廻る帽子は止まらず廻る。
委員長が帽子から目を離した一瞬、ぐらりと揺らいだがもう片方の手によりちゃんと捕まえて頭に軽く引っ掛ける。
競技場に風がなだれ込み、暑い空気を撹拌する。
アルメリアは額から後頭部にかけて髪の毛を掻きあげると、ポニーテールを一度解き、ゴム紐を口に咥えて結い直した。ちょっと外に居ただけで汗が滲んできて、暑さを実感する。
いいかげん帽子をかぶり続けるのも嫌になってきた委員長は軍帽を指に引っ掛けてくるくる弄びながら、大きく溜息を吐きまた息を吸い込む。
都市迷彩の帽子が滞ることなく廻る。まるで独楽のように廻る。廻る帽子は止まらず廻る。
委員長が帽子から目を離した一瞬、ぐらりと揺らいだがもう片方の手によりちゃんと捕まえて頭に軽く引っ掛ける。
「渋いお方でした。名前は存じませんが、温かい人で……」
「温かいというよりズボラなんですよおじさまって。弟子が居なくなってからは洗濯物はそのままだし、食事は外食だし。寝るときパンツ一丁なんて信じられます?」
「温かいというよりズボラなんですよおじさまって。弟子が居なくなってからは洗濯物はそのままだし、食事は外食だし。寝るときパンツ一丁なんて信じられます?」
アルメリアが頭を振り、指を折ることでオヤジがいかにズボラ人間なのか、例を次々と羅列しては指を折っていく。五本の指では足りなくて、六本、七本、すなわち両手を使うことになっても話は止まらなかった。
『おーいみんなー。あのね、もう暑いから私帰りたい』
そこに、どこから手に入れたのかマントっぽい布を纏ったシュレー乗機アノフェレスが、足元の人間を踏みつけないよう細心の注意を払いながらやってきた。しかも、操作を誤りよろついた他の外殻機の肩を掴み押し戻してあげてから。
蒸気鍋でじっくり調理されるに等しい環境下で水分を奪われ続けて汗まみれ。極端な設計が招いた悲劇と言えよう。
蒸気鍋でじっくり調理されるに等しい環境下で水分を奪われ続けて汗まみれ。極端な設計が招いた悲劇と言えよう。
「委員長は?」
「各自解散だそうなので、いいと思いますね」
「アオバさんは………あれ? 居ない」
「各自解散だそうなので、いいと思いますね」
「アオバさんは………あれ? 居ない」
アルメリアはアオバの姿を探してきょろきょろしたが見つからず、首を捻る。
「ここにいます」
スッ。空気とも形容すべき自然さでアオバが風景から湧き出した。
正直な話びっくりした。お前はニンジャか何かか。お前は諜報員かなにかを兼業しているのかと。
アオバの後ろにはクロを腕に抱きながらもペットボトルをラッパ飲みするクーが立っている。
正直な話びっくりした。お前はニンジャか何かか。お前は諜報員かなにかを兼業しているのかと。
アオバの後ろにはクロを腕に抱きながらもペットボトルをラッパ飲みするクーが立っている。
「私達帰ってもいいですか?」
「分かりました。機体を倉庫に戻して、用意しておいたので水分摂ってください」
「分かりました。機体を倉庫に戻して、用意しておいたので水分摂ってください」
一同はぞろぞろと続いて競技場を出ると、解散した。
◆ ◆ ◆ ◆
パレード、競技場で撮影会と続いて、昼から夕方そして夜へと時は流れる。
自重を知らない若者達がエアバイクを持ち出し島中をブンブン蜜蜂のように飛び交いだし、灯火の眩さが建物の上や合間を縫い描く。
あちこちで大音量の音楽が響き微細なる大気の粒に浸透して。
アルメリア、シュレー、委員長は思い思いの時間を過ごした後、仕事をしていた。
何かといったら無料の修理サービスだった。
自重を知らない若者達がエアバイクを持ち出し島中をブンブン蜜蜂のように飛び交いだし、灯火の眩さが建物の上や合間を縫い描く。
あちこちで大音量の音楽が響き微細なる大気の粒に浸透して。
アルメリア、シュレー、委員長は思い思いの時間を過ごした後、仕事をしていた。
何かといったら無料の修理サービスだった。
「はい、どうですか?」
「いい感じだよ………学生さんなのにすごいねぇ……」
「いえいえ、これも勉強ですから」
「いい感じだよ………学生さんなのにすごいねぇ……」
「いえいえ、これも勉強ですから」
地面に立て膝となり工具を持ち、年齢60~70くらいの物腰が柔らかい老婆の義足の調子を調べる。
高級なものだが歩く機能に特化しただけの義足だったので、一度取り外して軽く分解して確かめてみた。痛覚等の感覚を伝えるようなのは接続時に苦痛を感じる ことがあるから、その機能が無かったのは幸いだった。
とある教室の机の上で、老婆の両脚を分解して調査&整備というなんとも不可解というか不思議な光景。
だが、技術の進歩で本物と何一つ変わりない義足や義腕が作れるようになったこの世界時代では別に不思議でもなんでもない。
母親が義腕で、整備するのを見ていて自分もさせてもらった経験を持つアルメリアには、お茶の子さいさいもいいとこだった。
回路の異常を確認して、とりあえず可動する個所に油を差してから老婆の脚に嵌めこみちゃんと動くかを確かめる。もし異常があって転倒なんてことにならない ように、しっかり端子から情報を得て端末で数値も見る。
どうやら大丈夫のようだ。何度も目と画面を駆使して確認に確認を重ね、義足を接続すると、老婆に手をさしのばして椅子から立ち上がる補助をしてあげる。
老婆の手は皺だらけだったが、優しい感触だった。
腕に力を入れて、立ち上がるのに合わせて自分も姿勢を起こして、眼鏡をずり上げる。
高級なものだが歩く機能に特化しただけの義足だったので、一度取り外して軽く分解して確かめてみた。痛覚等の感覚を伝えるようなのは接続時に苦痛を感じる ことがあるから、その機能が無かったのは幸いだった。
とある教室の机の上で、老婆の両脚を分解して調査&整備というなんとも不可解というか不思議な光景。
だが、技術の進歩で本物と何一つ変わりない義足や義腕が作れるようになったこの世界時代では別に不思議でもなんでもない。
母親が義腕で、整備するのを見ていて自分もさせてもらった経験を持つアルメリアには、お茶の子さいさいもいいとこだった。
回路の異常を確認して、とりあえず可動する個所に油を差してから老婆の脚に嵌めこみちゃんと動くかを確かめる。もし異常があって転倒なんてことにならない ように、しっかり端子から情報を得て端末で数値も見る。
どうやら大丈夫のようだ。何度も目と画面を駆使して確認に確認を重ね、義足を接続すると、老婆に手をさしのばして椅子から立ち上がる補助をしてあげる。
老婆の手は皺だらけだったが、優しい感触だった。
腕に力を入れて、立ち上がるのに合わせて自分も姿勢を起こして、眼鏡をずり上げる。
「ありがとうね、本当にありがとう……」
「どういたしまして。お大事に。ここじゃなくてもいいですけど、定期的に整備や診断を受けて下さい。じゃないと大変なことになることもありますから」
「ふっふっ……まるでお医者さんみたいだねぇ」
「……言われてみれば、そうかもしれません」
「じゃあ、またご縁が導いてくれれば会いましょうね」
「はーい。次の方どうぞー」
「どういたしまして。お大事に。ここじゃなくてもいいですけど、定期的に整備や診断を受けて下さい。じゃないと大変なことになることもありますから」
「ふっふっ……まるでお医者さんみたいだねぇ」
「……言われてみれば、そうかもしれません」
「じゃあ、またご縁が導いてくれれば会いましょうね」
「はーい。次の方どうぞー」
アルメリアは老婆をにこやかに見送ると、椅子に座って次の人が入ってくるのを待った。
工具をなんとなく手に挟んでぎゅっと力を入れる。髪の毛を弄る。窓の外を見る。機械を弄るのは楽しかった。
次の人と声が響けば、列の最前列(と言ってももう数人しかいないが)の人が大股で歩いてくると、机の前で止まり椅子をひいて座った。
工具をなんとなく手に挟んでぎゅっと力を入れる。髪の毛を弄る。窓の外を見る。機械を弄るのは楽しかった。
次の人と声が響けば、列の最前列(と言ってももう数人しかいないが)の人が大股で歩いてくると、机の前で止まり椅子をひいて座った。
「あーいスイマセン次の人です」
「はい、修理って………ってお兄ちゃん!?」
「はい、修理って………ってお兄ちゃん!?」
次の人は青年で、アルメリアによく似た風貌だった。というかジャックだった。
目つきが悪い、髪質が悪い、キレると怖い、ただし根は優しい。それがジャックという人間で、アルメリアが最後に見かけたときに比べて髪があっちこっちに伸びておりお世辞にもカッコイイとはいえない。また、服装も一言で表現するとロックな様に変化していた。
ついと顔を上げて、応対しようと口を動かし、途中で気がつき素っ頓狂な声を上げてしまった。手に持ったドライバーを机にカーン。
ジャックがへらりと手をあげて、声を高らかと。
目つきが悪い、髪質が悪い、キレると怖い、ただし根は優しい。それがジャックという人間で、アルメリアが最後に見かけたときに比べて髪があっちこっちに伸びておりお世辞にもカッコイイとはいえない。また、服装も一言で表現するとロックな様に変化していた。
ついと顔を上げて、応対しようと口を動かし、途中で気がつき素っ頓狂な声を上げてしまった。手に持ったドライバーを机にカーン。
ジャックがへらりと手をあげて、声を高らかと。
「よいーっす。アルメリアの兄ジャックでーす」
同じく仕事にあたっていた人らや、シュレーと委員長が『どうした?』と顔を向けてきたことに気がついて、恥ずかしくなってジャックの襟首掴んで教室を出て廊下へ。
ジャック、痴話喧嘩で泣きそうになる情けない男のようにずるずる引っ張られて廊下に。ついでに、ざわめく教室にウィンクまで送る。血の気が熱い男は、違う方向で熱くなっていた。
ジャックが随分伸びた髪をがしがしとかく。
アルメリア、両手をばっと下に突き出し前のめりで頬を膨らます。
二人が並ぶと、決して低くは無いはずのアルメリアが低く見える。
ジャック、痴話喧嘩で泣きそうになる情けない男のようにずるずる引っ張られて廊下に。ついでに、ざわめく教室にウィンクまで送る。血の気が熱い男は、違う方向で熱くなっていた。
ジャックが随分伸びた髪をがしがしとかく。
アルメリア、両手をばっと下に突き出し前のめりで頬を膨らます。
二人が並ぶと、決して低くは無いはずのアルメリアが低く見える。
「愛しい妹の為に俺参上したのに酷くね?」
「お父さんお母さん心配してたのになんで帰ってこないの!」
「へっ? 俺帰ってたよ? 深夜だけどさ、スヤスヤ眠っちゃってまぁ、起こせる雰囲気じゃねーし。兄貴が冷蔵庫漁ってたのを手伝ったくらいかな」
「お兄ちゃん………」
「ケーキあったけどおいしく頂きました☆」
「呪うよ?」
「俺カミサマ信じてないし無効も無効、大無効」
「お父さんお母さん心配してたのになんで帰ってこないの!」
「へっ? 俺帰ってたよ? 深夜だけどさ、スヤスヤ眠っちゃってまぁ、起こせる雰囲気じゃねーし。兄貴が冷蔵庫漁ってたのを手伝ったくらいかな」
「お兄ちゃん………」
「ケーキあったけどおいしく頂きました☆」
「呪うよ?」
「俺カミサマ信じてないし無効も無効、大無効」
正々堂々と実家に入り込んで泥棒まがいのことをしてましたと告白する兄。
妹はなんと発現していいのかさっぱり分からなかったが、いくら説得しようども無駄なのだなと改めて分かったので、もうなにも言うまいと心に決めた。死んでも死ななそうだし、ニコラスがいるならなんとかなるだろう。
妹はなんと発現していいのかさっぱり分からなかったが、いくら説得しようども無駄なのだなと改めて分かったので、もうなにも言うまいと心に決めた。死んでも死ななそうだし、ニコラスがいるならなんとかなるだろう。
「うおっと、もう時間だなっ」
「時計ないじゃん」
「時計ないじゃん」
ジャックは腕時計を――そんなものないのにあるつもりで腕を一瞥して――に目を落とすと、『いけねっ』とおでこをぱチんとはたいて舌を出した。
すかさず突っ込みを入れる。
すかさず突っ込みを入れる。
「この時計、俺以外には見えないのさ。高かったんだZE!」
「わーすごい」
「相変わらずノリの悪い妹だな、成長したのは背と胸だけかよ」
「食らえッ!!」
「わーすごい」
「相変わらずノリの悪い妹だな、成長したのは背と胸だけかよ」
「食らえッ!!」
ジャックがさりげなく腰回りや胸元をちらっと見る。アルメリアは口元を引き攣らせ、脳天を手斧でかち割らんと振りおろす。
避ける、振り下ろす、避ける、振り下ろす、避けて手を掴む。
手を捕まえられてしまっては脳天を二等分することなどできはしない。悔しくなって目を細めて睨むが、迫力は半減だった。
避ける、振り下ろす、避ける、振り下ろす、避けて手を掴む。
手を捕まえられてしまっては脳天を二等分することなどできはしない。悔しくなって目を細めて睨むが、迫力は半減だった。
「当たらないーいあたらなーいお前には何より、速さが足りない! はい捕獲。超捕獲」
「はーなーしてよー!!」
「やなこった、パンナコッタ」
「はーなーしてよー!!」
「やなこった、パンナコッタ」
ジャックはケラケラと笑うとぱっと手を離して、アルメリアのビンタを嘲笑うかのようにひょいと身を屈めて回避、おもむろに廊下の窓を開けて、窓枠によっこらせっとまたがった。
「んまぁそんなわけさ。兄貴待たせてるし、父さん母さんにヨロシク。あ、そうそうクー姉さんにもまた会おうぜベイベーって伝えておいてくれよ!」
「お兄ちゃん!?」
「お兄ちゃん!?」
まさか、ここは一階でもなければ足場があるでもない。
落ちたらどうする。アルメリアは血相を変えて手を伸ばしたが、それより前に、人差し指と中指で軽く敬礼をしたジャックが窓から外に倒れるように飛びおりて視界から消えていた。
落ちたらどうする。アルメリアは血相を変えて手を伸ばしたが、それより前に、人差し指と中指で軽く敬礼をしたジャックが窓から外に倒れるように飛びおりて視界から消えていた。
「Adios! I Can Fly!!!!!」
ドップラー効果を伴ったジャックの叫び声が遠ざかる。
そう、ジャックが飛び降りたのだ。
飛び降りた、のだ。
風音、ひゅおー。
そう、ジャックが飛び降りたのだ。
飛び降りた、のだ。
風音、ひゅおー。
「……あっ」
人生でも数少ない、血の気が失せた瞬間だった。
あっ、なんて間の抜けた声が漏れた。
あっ、なんて間の抜けた声が漏れた。
「うわああああの人落っこちた!?」
「えっ、これはマズイですよね! えっ? えっ!?」
「えっ、これはマズイですよね! えっ? えっ!?」
アルメリアとジャックの様子をドアの隙間からこっそり窺っていたシュレーと委員長、その他の人らは驚愕と言うより愕然、絶叫、ダッと窓に駆けよった。
一同の頭に学園で事故死の一文がよぎった。
ところが、それは華麗に裏切られることになった。
大型エアバイクの後部座席に仁王立ちしたジャックが腕を組み、服を風にたなびかせながら登場したのだ。操縦者は言うまでも無くニコラスだった。あらかじめ打ち合わせをしていたとしか思えない。
エアバイクの機関がうぃーんと唸りを上げ、大型スピーカーから景気よく豪快なるBGMが響く。
一同の頭に学園で事故死の一文がよぎった。
ところが、それは華麗に裏切られることになった。
大型エアバイクの後部座席に仁王立ちしたジャックが腕を組み、服を風にたなびかせながら登場したのだ。操縦者は言うまでも無くニコラスだった。あらかじめ打ち合わせをしていたとしか思えない。
エアバイクの機関がうぃーんと唸りを上げ、大型スピーカーから景気よく豪快なるBGMが響く。
「おじさん!」
アルメリアは窓枠にかじりつくような体勢で寄り、目を丸くせざるを得なかった。口もちょっと半開き。
おじさんと呼ばれたニコラス=シーゼンコードその人は、サングラスを胸ポケットに一時退避すると、大きく手を振った。
髭モサモサ。髪はきちんと整えられているものの、白髪が見受けられる。
服のセンスは相変わらずと言ったところであり、皮生地をふんだんに使用したジャケットに蛍光色のズボンが目に痛い。
奇妙奇天烈な風貌としか評価できないのに、周囲を圧倒する存在感を醸し出すのはニコラスだからとしか言いようがない。もちろんエアバイク単体で見てもどこの運び屋だと言いたくなる改造がされており、警察に捕まりそうな存在感がプンプン。
おじさんと呼ばれたニコラス=シーゼンコードその人は、サングラスを胸ポケットに一時退避すると、大きく手を振った。
髭モサモサ。髪はきちんと整えられているものの、白髪が見受けられる。
服のセンスは相変わらずと言ったところであり、皮生地をふんだんに使用したジャケットに蛍光色のズボンが目に痛い。
奇妙奇天烈な風貌としか評価できないのに、周囲を圧倒する存在感を醸し出すのはニコラスだからとしか言いようがない。もちろんエアバイク単体で見てもどこの運び屋だと言いたくなる改造がされており、警察に捕まりそうな存在感がプンプン。
「Hey! 久しぶりだZE!」
「よっしゃあ兄貴! 行こうぜ!」
「そうだなこんなところでのんびりしてる暇は無かったNE! じゃあアルメリア、グッバイ!」
「よっしゃあ兄貴! 行こうぜ!」
「そうだなこんなところでのんびりしてる暇は無かったNE! じゃあアルメリア、グッバイ!」
放浪組はあっという間にエアバイクで空へと飛んでいき、見えなくなった。しかも、ジャックは仁王立ちのままで飛んでいる。なぜ体勢が崩れないのかはこの場の誰にも原理が不明だった。
水を打ったように静まり返る周囲の人々。
水を打ったように静まり返る周囲の人々。
「お兄ちゃーーん!! おじさーーん!!」
アルメリアは声を張り上げ、委員長とシュレーは口を半開きで固まっている。
「あのぅ、アルメリア、アルメリア」
いつまでも空を眺め続けるアルメリアに業を煮やすというか肝を冷やして、頭が静止していた委員長がやっと復帰し、アルメリアの肩をトントン叩く。
アルメリアが我に帰る。
何をしていたのだろうと思い返すと同時に、窓の外に消えた二人組に向かって柄にもなく絶叫していたことに気がついた。顔があっという間に赤く染まり、前髪の生え際まで赤信号。
他の人も興味深そうに見てくるものだから逃げ場がそもそも無い。
兄貴と叔父さんは全く、エラい置き土産をくれたものだ。
アルメリアが我に帰る。
何をしていたのだろうと思い返すと同時に、窓の外に消えた二人組に向かって柄にもなく絶叫していたことに気がついた。顔があっという間に赤く染まり、前髪の生え際まで赤信号。
他の人も興味深そうに見てくるものだから逃げ場がそもそも無い。
兄貴と叔父さんは全く、エラい置き土産をくれたものだ。
「今の人達は、一体……」
アルメリアは好奇の視線に晒され、ますます委縮する。
そして声を絞り出すように言葉を発した。
そして声を絞り出すように言葉を発した。
「はい………ジャック兄さんと、ニコラスおじさんです」
その後の対処が大変だったのは言うまでも無い。
◆ ◆ ◆ ◆
叔父と兄がハイテンション馬鹿だと発覚してから数時間後。
アルメリアは同級生友人らに囲まれてあれこれと尋問を受けて涙ながらに自白した。
不可解だったのは女性陣にジャックの容姿がいい意味で受けていたのと、イケメンだなんだという意見があったことなのだ。身内だから分からないのかもしれないがなんだかおかしくなった。
結局、修理サービスは夕方を過ぎても終わらず、教室を間借りしての宴会が始まってしまい、夜までどんちゃん騒ぎとなった。
生徒学生どころか先生教授に一般人までが教室と廊下に入り乱れる大騒ぎ。酒は持ちだす輩はいるわクラッカーは白煙で教室が埋まるまで鳴らされるわ、合唱が始まるわで大盛り上がりだった。
アルメリアは友人、そしてシュレー(うっかり酒を呑んで友人らに担がれて退場)と委員長(もみくちゃにされた挙句カラオケ大会でマニアックな歌を披露して退場)と別れて、やっとのことで自宅に帰還した。
驚くべきはここまでずっと古風なメイド服で通してきたことか。
寮に辿り着き、もう働きたくないと辞表を量産し続ける肢体を説得しながら自分の部屋の前に来ると、溜息を吐きながら戸を叩く。
やや間があって、扉が開きエプロン姿のクーが現れた。おたまを持っていた。黒髪と白エプロンのコントラストが素晴らしいとアルメリアは瞬時に考え、そして瞬時に自己の疲労を確信した。
クーはあの後、帰宅するや掃除洗濯料理まで済ませてうとうとしていたわけだが、アルメリアが気がつくはずも……ある。匂いだ。ビーフシチューの匂いが扉を開けると、もわっと広がったのである。
夜ごはんと言えばお菓子とジュースしか口にしてなかったアルメリアには堪える匂い。
アルメリアは同級生友人らに囲まれてあれこれと尋問を受けて涙ながらに自白した。
不可解だったのは女性陣にジャックの容姿がいい意味で受けていたのと、イケメンだなんだという意見があったことなのだ。身内だから分からないのかもしれないがなんだかおかしくなった。
結局、修理サービスは夕方を過ぎても終わらず、教室を間借りしての宴会が始まってしまい、夜までどんちゃん騒ぎとなった。
生徒学生どころか先生教授に一般人までが教室と廊下に入り乱れる大騒ぎ。酒は持ちだす輩はいるわクラッカーは白煙で教室が埋まるまで鳴らされるわ、合唱が始まるわで大盛り上がりだった。
アルメリアは友人、そしてシュレー(うっかり酒を呑んで友人らに担がれて退場)と委員長(もみくちゃにされた挙句カラオケ大会でマニアックな歌を披露して退場)と別れて、やっとのことで自宅に帰還した。
驚くべきはここまでずっと古風なメイド服で通してきたことか。
寮に辿り着き、もう働きたくないと辞表を量産し続ける肢体を説得しながら自分の部屋の前に来ると、溜息を吐きながら戸を叩く。
やや間があって、扉が開きエプロン姿のクーが現れた。おたまを持っていた。黒髪と白エプロンのコントラストが素晴らしいとアルメリアは瞬時に考え、そして瞬時に自己の疲労を確信した。
クーはあの後、帰宅するや掃除洗濯料理まで済ませてうとうとしていたわけだが、アルメリアが気がつくはずも……ある。匂いだ。ビーフシチューの匂いが扉を開けると、もわっと広がったのである。
夜ごはんと言えばお菓子とジュースしか口にしてなかったアルメリアには堪える匂い。
「おかえり。ご飯は出来てるけど、先にシャワーを浴びた方がおすすめ」
「なんか悪いですね、自分の部屋なのにやってもらうなんて」
「なんか悪いですね、自分の部屋なのにやってもらうなんて」
アルメリアはクーに連れられて扉をくぐると、食事の準備がしてあるリビングに入った。机の上にはひときわ目を惹く鍋が鎮座しており、蓋の隙間から蒸気の魅惑を放っていた。
クーがエプロンをとり椅子の背にかけ、アルメリアは机とシャワー場の両方をちらちら代わりばんこに見る。
クーがエプロンをとり椅子の背にかけ、アルメリアは机とシャワー場の両方をちらちら代わりばんこに見る。
「家賃代だからなにも遠慮することはない」
「ありがとうございます。……シャワー浴びてきます」
「わかった」
「ありがとうございます。……シャワー浴びてきます」
「わかった」
アルメリアはシャワーへと向かった。途中で、祭りの最後に打ちあげられる小さな花火大会の鼓動が聞こえてきた。
大会はもうじき。
アルメリアは、気を引き締めようと、シャワーは熱めにしように決めた。
大会はもうじき。
アルメリアは、気を引き締めようと、シャワーは熱めにしように決めた。
【終】
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