アットウィキロゴ


ルア帝国

 至強と称されるその軍事力と皇帝を頂点に掲げる絶対独裁体制により、西方に広大な版図を築き栄華をきわめる帝国。長きに渡りルアの最大の敵であったプロミシアが滅びた現在、西方最古の歴史を誇る。
 ルアの皇帝は、代々、強力な魔法使いが君臨する。この帝国では、一般人の魔法の使用は禁じられており、バルバド魔法など他国で一般的な流派の魔法は皇帝家の者でもその使用を禁じられている。ルアには古くより、他国で見られない独特の魔法体系が確立されているが、外部の者にはほとんどその全容がわかっていない。
 基本的に他国人の来訪をこころよく思わない国とされる。帝国の五つの塔から成る国境警備網は万全であり、隣国の動きを監視し、不法な侵入者をいち早く発見する。帝都バスランラードの城は、竜巻の塔とも呼ばれ、皇帝とその直属の軍隊が居住している。



ルア帝国の体制






ルア帝国の社会


心性魔術
 ルア帝国を他の国と決定的に分かつ最大の特徴は、「心性魔術」の存在である。
 この特異な魔術体系は、世界でもルアにしか見られない。帝国の力の源泉であるとともに、その文化・社会を独特のものにしている主因とされる。ルア皇帝は帝国の最高権力者であるだけでなく、心性魔術体系の奥義を排他的に継承する最上位能力者でもあり、帝国社会は、皇帝を頂点とした階層構造に厳密に従って魔法能力を配した魔法使いたちの社会でもある。
 心性魔術は、人の心に関わる作用に特化した魔法体系である。ケンザロスの民がルアを“心を読む者たちの国”と呼び慣わしている通り、心性魔術の使い手は、魔法的抵抗力を持たぬ者たちの心を見通したり操ったりすることができる。その効果は自分自身に及ぼすことも可能であり、感情の働きを整序したり、高度な自己統御をおこなったりする術がある。そして、より上位の心性魔術は、単に人の心へ直接的に関わる水準にはとどまらない。世界は人の精神の反映であり、また人の精神は世界の反映である、という観念のもとに、客観的実体としての世界をも操作する階梯がある。このような段階まで達すると、他の魔術体系にも似た効果が発せられるようになってくるが、しかしそこまでの高位術者は稀ではある。
 ルア帝国は、こうした心性魔術能力を前提としてその体制が構築されている。心を読み操る力を持った者たちから統治階層が構成されているならば、たとえば命令や裁判、規律や服従といったものの有効性は大きく影響されるだろうし、ひいては、権力というものの意味も他の社会とは根本的に異なるものとなるはずだ。そして、そもそも人と人との間の対話・意志疎通のあり方さえも、心性魔術を使えぬ者たちからは想像もできないような様態を取るに至るだろう。ルアこそはまさにそうした試みの実践された姿に他ならない。もっとも、ケンザロス王立学院のルア研究者たちの中には、心性魔術の能力者たちは意に反して心を読まれることへの抵抗力も備えているだろうという見解があり、能力者同士が自由に心を閉じたり開いたりすることができるのであればそれは単に言葉による会話と同じようなものへ収斂していくはずであって、その社会がそれほど異質なものになるわけではないとも主張されている。また別の研究者たちは、言葉を介在せず直接に心を読み合うことができるのが心性魔術の利点であるのだから、彼らはお互いの間に秘密や隠し事といったものを一切持たないような社会形態へと適応しているはずで、それは想像も及ばぬ異質なものになるだろう、という意見を唱えている。とはいえ、心性魔術を使えぬ者にはルアの社会が実態としていかなるものなのかを体験することはできないだろう。

ルアの社会思想
 ルアの人々は、心性魔術を基盤に据えたこの帝国を地上における最も効率的な社会の体現とみなしている。彼らの究極の目標は、非効率的な他国の文化・社会を一掃し、ルアの社会構造を人間世界にあまねく拡げることである。ルアのあくなき拡張志向はすべてこの点に起因しており、変更できない内在的な性質として刻まれている。かつてのプロミシアや現在のケンザロスに対してのように、ルアが隣国との間に通商関係を求めずただ衝突し続けることは、ルアにとっては不可避の定めのようなものである。
 このように他国との架橋不能な文化的・社会的断絶を持つルアは、他の国々との交流を好まないだけではなく、圏域内への異国人の来訪を厳然と拒んでいる。そのため、帝国内部の実情は他国からは窺い知れない。
 ルアの社会制度は、徹底した効率至上主義として描写され得る。彼らの価値基準では、合理的でないものや無駄なものは忌避され、私心や個の欲求といったものは退廃を意味する。彼らの社会には怠惰はなく無用な内部抗争といったものもないが、その代わりに、自由もない。……もっともこれらは、内情を知らぬ部外者が自身の価値基準に従って評した解釈にすぎない。彼らには彼らなりの自由や娯楽があるだろう。単にそれらが他国の常識とは似ても似つかぬ奇怪なものになっているだけのことだ。
 いずれにしても外部からルアの実情に触れることのできた者の数は少ない。東方のカルザーバや滅亡前のテロンなど、ルアと対等な外交関係を持ちある程度の交流をおこなう例も皆無ではないのだが、しかしそれらも非常に限定的なものである。

ルアの属領
 ルーベンサウマーは、ルアの対外関係における特殊な例外として銘記に値する。ルアの南方に接するこの国は、かつてルアに侵略され、王家の断絶を免れる代わりに属国として存続することを余儀なくされた。ルアによる公式な位置付けではルーベンサウマーは属領とは称されておらず、単にその効率化のための手助けをしているにすぎないというのが言い分ではあるのだが、ルーベンサウマーの主権は事実上剥奪されており、軍隊を持つことも認められず、帝国遠征軍の拠点駐留を許している。王都ハイアテッドには、ルア本国より派遣される顧問官が常駐する。顧問官はあくまでも助言者という立場であって、その司政はルーベンサウマー王の名の下に執り行われている。この為政過程に心性魔術が介在しているのかは定かではない。
 実際のところ、王家が残されているだけでなく、ルアの基準では“退廃的”とされ本国では根絶されているはずの諸々の文化・社会形態もここでは侵略以前のそのままに許されていて、この国が完全にルアの制度に置き換えられているというわけではない。ルアへ上納するような租税もなく、課せられた負担としては、駐留軍を維持する必要最小限の経費といった程度である。植民地と考えるにはその干渉の度合は少なくもあり、現状では保護領土と捉えることが妥当と言えなくもない。
 ただしルアの目的は資源や生産物の搾取ではなく、帝国外において帝国の合理的制度を構築するためのいわば実験にこそあって、その変革は激変を避けながらきわめて漸進的におこなわれていると言われている。これは、神聖体制時代におけるルアが西方全土への急速な侵攻をおこなった結果、長きに渡る巨大な混乱を招いてしまったことからの教訓に拠るのかもしれない。











最終更新:2009年11月20日 00:38