タオルケットをもう一度「1」
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- 323 :タオルケットをもう一度 第一章:2013/01/13(日) 16:49:55.16 ID:4qV4Ju4jP
- 第一章【曲がり角の呪い。】
ダンボール箱が積まれたトラックの荷台の中。
たくさんのダンボール箱の内の一つに、ふかふかのタオルケットが入っていました。
主人公もーちゃすは引越し先に到着するまでこのタオルケットに包まって眠ります。
・・・ガコン、と走るトラックが大きく跳ねました。でこぼこの石か何かを踏んでしまったらしいです。
そして、その拍子にもーちゃすの入ったダンボールは海に投げ出されてしまいました。
もーちゃすが目を覚ますとそこは浜辺。どうやら無人島に流れ着いたようです。
彼の周囲には同じように漂流したらしい三人の少女(?)が居ました。
銀髪で大人しそうな少女、ラザニア。
赤毛で二人よりも大人の女性、ぱりぱりうめ。
青髪ツインテールで気の強そうな少女、コンチェル。
(ちなみにこの三人、主人公の引越し先に住んでいます。)
彼女たちはこの場所のことを「曲がり角の呪い島」と呼んでいるそうです。
理由は簡単。もーちゃす含めた四人が歩く際に弧を描いて曲がろうとすると、
何処に居てもこの島の中心地にある赤いバッテンが書かれた場所に(物理的に)飛んでいってしまうのです。
「だから自分たちはロボットのように四方向で歩くしかないのよ」とコンチェルは言いました。
まるでテレビゲームのキャラクターのようです。
もーちゃすは三人から「島から脱出するためのいかだ作りを手伝って欲しい」と頼まれました。
とりあえず島を探索していると、コンチェルから「島を案内してあげようか?」と提案されます。
(その際「勘違いしないで」「興味ないんだから」「でも仲良くしてあげても」的なツンデレセリフを貰えます。)
島の奥まで歩いていくと不思議な洞窟を見つけました。
コンチェルによると「今までここは(怖くて)あまり探索したことが無い」とのことです。
二人で奥まで進むと、一体のロボット(チビロボ)と出会いました。
チビロボは二人を見つけると「データも取れたしもういいか。脳みそもらうぞ!ぐへへ!」と襲い掛かってきます。
・・・訳もわからず何とかチビロボを撃退し、さらにいかだの動力になりそうなエンジンを手に入れた二人。
早速浜辺に帰ってラザニアとぱりぱりうめへ報告し、明日の朝には島を出発することになりました。
その日の夜、もーちゃすはコンチェルに連れ出されます。
彼女は上着を脱ぎ「胸を見て欲しい」と言いました。・・・正確には胸の真ん中。おっぱいじゃないです。
・・・どうやら何か硬いものが彼女の体内に埋まっているようです。
「この島に来る前には無かったのよ。」
コンチェル言われて確認すると、もーちゃすの体にも硬い何かが埋まっています。
悩もうにも答えなんて出るはずがありません。
一抹の不安を残し、四人は島を脱出しました。
しかし無事に町へ帰った後も、四人は呪いを怖がってロボットのように歩くことを止めませんでした。
- 324 :タオルケットをもう一度 第二章(1/2):2013/01/13(日) 16:52:12.55 ID:4qV4Ju4jP
- 第二章【タオルケットでかっちんこ】
漂流から暫く経って。
もーちゃすの家へラザニアがやって来ます。
「学校への登校、辛くても頑張りましょうね。皆いつかロボット歩きを理解してくれますよ。」
どうももーちゃす、この歩き方のせいで「ロボ人間」と呼ばれ、学校では虐められているようです。
放課後、逃げるように学校の屋上へ向かうとコンチェルに勇気付けられます。所々ツンデレですが。
「じゃあ私は先に帰るけど・・・急いで来たら待ってるかもね。」
そう言い去るコンチェル。
――校門前でラザニアがコンチェルに問いかけます。「もーちゃすさんは?」
「もーちゃすね、忙しいから先に帰って、だってさ。」
もーちゃすが校門前に行くとコンチェルだけが待っていました。
「薄情な女の子ね、ラザニアって。先に帰ったわよ。」
・・・コンチェルは木の陰からラザニアが覗き見ていることに気付きません。
「仕方が無いから私が一緒に帰ってあげる。」
「コンチェルさん!やっぱり騙してたんですね!」
・・・その日の夜、もーちゃすの家に一本の電話が掛かってきました。
何やらロボットの声がヒソヒソと聞こえてきます。
しばらく黙っていると、受話器からラザニア(?)の声が聞こえてきました。
「ラザニアです♪私今学校の教室にいるんだけど、お洋服着てません♪助けに来て欲しいな♪」
(どう聞いても罠です。本当にありがとうございました。)
とにかく学校に向かい、ラザニアの後姿に話しかけようとすると・・・。
「ぐへへ、久しぶりだな四番目!」
ラザニアはチビロボに早変わり。どうやら変装していたみたいです。
「お前で最後だ!島まで強制連行してやる!」
そう言ってチビロボはもーちゃすを追いかけてきます。
「脳みそ~!脳みそ取ってやるぞぉ!!」
物騒な台詞に慌てたもーちゃすは角を曲がる際、ロボット歩きではなくカーブして走ってしまいました。
- 325 :タオルケットをもう一度 第二章(2/2):2013/01/13(日) 16:55:29.10 ID:4qV4Ju4jP
- 気が付くと地面には赤いバッテン。
しかし周囲には見覚えがありません。地形から察するに、怪しい研究施設の一室のようでした。
ラザニア、コンチェル、ぱりぱりうめの三人もいます。
どうやら皆、同じように電話で誰かしらに呼び出されて・・・騙されたようです。
「脳みその時間だ!」
一体のチビロボが部屋にやってきました。
「まずは四番、お前だ。青髪の三番も来い!」
・・・部屋の外に連れ出された瞬間、コンチェルがチビロボに攻撃します。
「ほら!逃げなさい!私が何とかしてあげる。」
戸惑うもーちゃすにコンチェルは「はやくしろっ!」と声を張り上げました。
多くのチビロボに追われるも、何とか脱出したもーちゃす。
ちなみにこの時、研究施設内で書類を調べることができます。
(No.1がぱりぱりうめ、No.2がラザニア、No.3がコンチェル、No.4がもーちゃすであることが判明します。)
研究施設を出ると、そこは曲がり角の呪い島。
もーちゃすは最初に流れ着いた浜辺まで走りました。
逃げ場はありません。
浜辺に流れ着いたとっても寒い冷蔵庫の中へ、タオルケットで寒さを凌ぎつつ、もーちゃすは隠れます。
「死んじゃう!!」
手術台に固定されたコンチェルが叫びます。
――しかしその叫びも空しく、彼女はチビロボに生きたまま頭を開けられて脳みそを採取されてしまいます。
(ゲーム画面はドット絵ですけど結構グロいです。)
「さあ、残りの奴も脳みそ採取だ!」
血で染まった真っ赤な体で、チビロボは楽しそうにそう言いました。
場面変わって冷蔵庫の中。三人のうち、誰も浜辺に来る気配がありません。
「やっぱり皆を助けに行こう。」
そう決心したもーちゃすですが、冷蔵庫ですので内側から扉が開きません。
・・・そしてそのまま、もーちゃすは寒さのせいで凍ってしまいました。
(電源?凍死?つっこんではいけない。)
また、この辺りからふふふさんというオバケが登場します。
RPGによくいる、イベント前のセーブポイントの横でアイテムを売っている商人・・・のような存在です。
彼女と話しかけると、彼女は決まって最後にこう言います。
「また来世♪」
- 326 :タオルケットをもう一度 第三章(1/3):2013/01/13(日) 16:58:26.55 ID:4qV4Ju4jP
- 第三章【解凍日/開封日】
打って変わって明るい施設。
少女のロボットがかちんこちんに固まったもーちゃすを見て呟きました。
「うーん、やっぱりこれ生きてますね。もめん様に知らせないと・・・。」
少女は冷蔵庫のことを"かなり昔のボックス機械"と言い、もーちゃすを解凍しました。
もーちゃすは訳が分からず少女に話しかけます。
「私は形式番号R-45190H-Bです。覚えるのが面倒なら"アームストロングたん"で良いですよ。」
「では氷の生物さん。未来の世界にようこそです。」
アームストロングたんことアームたんに話しかけると、いろいろ質問することができました。
Q.「今は西暦何年か?」
A.「西暦とは2012年に終わった年数を数えるものでしょうかね。・・・ということは200万年前の生物?」
Q.「ここは何処か?」
A.「ここはもめん様のスクラップ工場。いらない部品や古い部品を処分するところなの。」
スクラップ工場を歩いて行くと、一匹だけ機械ではないポン族が立っていました。
(ポン=タオルケットシリーズに毎回登場するパンダのような外見の生物)
彼こそがもめん様。スクラップ工場の主任です。
「外を知るには外に出るのが一番早いかもね。」
アームたんに変装用のきぐるみ(?)ロボットを用意してもらい、それを着てもーちゃすは外に出ます。
宇宙のように流れる星空。機械で再現された木々。浮いた道路。
そして何処を見渡してもロボットしか居ない世界。
もーちゃすは外を知るため、今を理解するため、一人で歩き続けます。
「スクラップ工場のポン型ロボット、噂じゃ本当は生物らしいって。」
ロボットたちの噂話。どうやら生物は既に滅んだ存在のようです。
「完璧な自我プログラムを作るには後一人の人間が必要らしいぞ。」
ロボットたちは200万年経ってもNo.4、つまりもーちゃすを探しています。
・・・そうして町を探索し終えたもーちゃす。
スクラップ工場に戻ると、巨大なカプセルの中にもめんの生首が浮いていました。
「何も驚くことは無い。このロボットの世界で生物と言えば僕だけだ。」
もめんはガラガラの声で言いました。
「夜はこうしてお年寄りにならないよう、首だけになって水に浸かってるのさ。」
- 327 :タオルケットをもう一度 第三章(2/3):2013/01/13(日) 17:00:08.11 ID:4qV4Ju4jP
- 「君は"No.1~No.4の事件"を見てきた生き証人なんだ!」
もめんはもーちゃすが人間と知ると、過去にあった事件を教えてくれました。
――昔々、ある博士に作られたロボットがいました。
ロボットは四人の選び出された子供たちのデータを集め、完璧な思考プログラムを開発しようとしました。
ロボットたちは四人のデータを正確に収集する為、四人を「島」に飛ばしました。
その後改造を施し、ロボットのように行動させて実験データを収集しました。
――ここからの記録はありません。何が起こったのかは不明と記されていました。
ただ、完璧な思考プログラム完成せずにロボットが暴れた、とだけ。
もめんとアームたんは「この悪夢を終わらせる為に、実験体を回収している」と言いました。
「君は最後の実験体No.4!見つからないとされていた実験体!君が居れば・・・きっと!」
「ヤツらから地球を取り戻すんだ。」
もめんは言いました。
「実験体を奪おう。」
・・・その晩、もーちゃすは夢を見ました。
宇宙のような空間。
もーちゃすの目の前に、小さな、小さな小鳥が一羽。
「ちゅん」と小鳥は鳴きました。
朝。もめんとアームたん、三人で「実験体の奪取作戦」を決行することになりました。
向かう場所は隣町にある実験体が保管されたビル。
電車に乗るとNo.3という青いロボットをたくさん見かけました。
「あそこにいるロボットは君と同じ人間だった青髪の女の子。それの擬人化プログラムロボットだ。」
もめん様が小さな声でぼそりと教えてくれます。
「これから僕たちはあのロボットたちの基礎、つまりNo.3を盗みに行くのさ。」
――場面が変わって今からざっと200万年前。
島の浜辺。チビロボたちに囲まれたラザニア。
下半身が千切れてしまい、見当たりません。彼女は既に死んでいます。
「おいおい、いいのか。No.2を殺してしまったぞ。」
「構わないね。脳みそさえ無事なら後の部分はどうなろうと勝手さ。」
チビロボたちは「ぐへへ」と笑います。
「さて。残りの実験体、No.1も脳みその時間だ。」
- 328 :タオルケットをもう一度 第三章(3/3):2013/01/13(日) 17:00:56.14 ID:4qV4Ju4jP
- 視点はもーちゃすたちへと戻ります。
夜になり、もーちゃすたちはNo.3を奪取する為に行動を開始します。
警備ロボットのセンサーを掻い潜り、ビルの奥へと進むと一匹のウサギロボットに出会いました。
可愛い外見とは裏腹に生物を見下し、攻撃を仕掛けてきた彼の名前は非常残酷うさぎ。
三人は何とか彼を退け、No.3保管庫の鍵を手に入れます。
・・・そうして最深部で待っていたのはカプセルの中で眠り続けるコンチェルでした。
怪我一つ無く、彼女は眠り続けています。
「ずっとこの中で、何百万年も保管されてたんですね。」
アームたんはその機械のボディを使い、そっとカプセルごとコンチェルを体へ収納しました。
その後、三人(とコンチェル)はもめんの用意した宇宙船に乗り込み、地球を脱出します。
非常残酷うさぎがNo.3たちに向かって怒鳴りました。
「くそ、あのポンとかいう生物!No.3たち、奴を捕獲しろ!No.3本体を何としてでも奪い返せ!」
No.3が乗った多くの小型宇宙船が追いかけてきます。
ですがその宇宙船も、アームたんが放った強力なビーム(アームストロング砲)によって全て打ち落とされてしまいました。
もめんは宇宙船内にあるスタジオを使い、地上の電波を乗っ取り、TVを媒体に自身の映像を流します。
・・・彼の悲願であった全ロボットへの宣戦布告です。
- 329 :タオルケットをもう一度 第四章(1/4):2013/01/13(日) 17:04:12.36 ID:4qV4Ju4jP
- 第四章【No.3-No.3! けるばぁすでぅーさ!けるばぁすでぅーさ!】
時間は少し巻き戻って。
一体のNo.3ロボでの視点から話が進みます。
彼女も非常残酷ウサギに呼び出され、No.3本体やNo.4を捕らえる為に宇宙へと向かいました。
――そしてアームストロング砲によって撃墜されてしまいます。
地球ではないどこか別の星。
道化師やピエロを彷彿とさせる不思議な生物が一人、空を見上げて呟きます。
「ああ、また小さな光だ。また命が消える・・・。」
No.3は気が付くと知らない星に居ました。
どうやら墜落してしまったようですが、幸いにも彼女の体は故障していないようです。
しかし周囲には同じく墜落して壊れてしまったNo.3たち。
さらには通じない通信機と動かない宇宙船。
「こわい・・・いやっ!」
ロボットである筈の彼女は怖がります。
・・・彼女が乗っていた宇宙船の傍に、小さなネジが落ちていました。
このネジは墜落の衝撃でNo.3から外れたネジ。
今までNo.3の感情を押さえつけていた部品。
No.3は本来の心を取り戻します。彼女が昔から持っていた大切な、大切な彼女の心を。
だからこそ、No.3は現状を怖いと思ったのです。
――この瞬間、彼女はNo.3ではなくコンチェルになりました。
宇宙船の傍にあったテレビが緊急放送を受信します。
それは、もめんがつい先ほど放送した宣戦布告の内容です。
もめんは「No.4の本体を手に入れた」と宣言し、彼の横にはもーちゃすが立っています。
「あ、・・・もーちゃす。」
コンチェルは呟きます。
「私、もーちゃすに会いたい・・・もーちゃすに会いたいっ!」
彼女は星を探索することにしました。
星を歩くと、不思議な形の石のような何かをたくさん見かけました。
壊れたコンチェルもたくさんいました。
彼女たちの傍には墜落の衝撃で取れたネジの山。
既に壊れているにも関わらず、彼女たちが皆悲しそうな顔をしているのは、
きっと最後の最後に感情を取り戻したからでしょう。
- 330 :タオルケットをもう一度 第四章(2/4):2013/01/13(日) 17:05:04.55 ID:4qV4Ju4jP
- 壊れかけのNo.3が不思議な生物に向かって叫んでいるのが見えました。
「死ぬのは嫌!会いたい、あの人に会いたい・・・助けて・・・お願い助けてっ!」
不思議な生物はとても悲しそうに答えます。
「ごめんね、ごめんね・・・僕には君が助けられない・・・っ!」
そのまま壊れかけのNo.3は壊れてしまいました。
不思議な生物は悲しみます。
「また・・・また繰り返す。また繰り返す・・・あぁ・・・。」
コンチェルを見つけると、不思議な生物は彼女をとある場所へと連れて行きます。
「僕が助けてあげられなかった命・・・985665体目・・・。」
連れて来られたのは、星を歩くときに何度も見かけた不思議な形の石の前。
――この石は、彼にとってのNo.3たちのお墓でした。
「・・・あなたは誰なの?ここにずっといるの?名前はあるの?」
「僕がいる理由はない。名前なんてない。・・・僕は誰でもない。」
「私、帰りたい。」
「僕にはどうすることもできない。・・・僕には何もできない。」
不思議な生物は語ります。
「ここには君のようなものがたくさん落ちてくるんだ。」
「みな、助けを求めてくる。愛する人の名前を呼んで。
でも僕にはどうすることもできない。
いつも・・・死んでいくものを見るだけ・・・僕には何もできない。」
「僕は君が愛した人の代わりになれる?」
「なれる訳ないでしょ!」
コンチェルは悲しそうに言いました。
「私だって・・・本当のコンチェルじゃない・・・。」
「・・・そうか。愛するものっていうのは代わることはないんだね。」
- 331 :タオルケットをもう一度 第四章(3/3):2013/01/13(日) 17:07:42.37 ID:4qV4Ju4jP
- 視点は再びもーちゃすたちへ。
身を隠すために宇宙船の自爆スイッチを押したのは良いものの、
もめんとアームたんは、もーちゃすと逸れてしまいました。
もめんの体のこともあり、二人はひとまず秘密基地であるの衛星まで逃げ込みます。
アームたんはもめんが水に浸っている間、もーちゃすを見つける為に再び宇宙を彷徨います。
・・・そうして辿り着いたのは宇宙人、ちゅちゃーん族の住む惑星でした。
ちゅちゃーん族は不思議な種族で、彼らの言う言葉はアームたんにはあまり理解できません。
「宇宙の始まりからいる我々は、この星には始まりから住んでいる。」
「繰り返しを恐れるな。永遠の孤独を恐れるな。」
「全てはちゅん様の為にあれ。」
ちゅちゃーん族の村の奥、長の家にもーちゃすはいました。
もめんが秘密基地でアームたんたちの帰りを待っていると、誰かが秘密基地へと入ってきます。
「ああ、アームたんだ。」
しかしもめんの目の前に現れたのは、非常残酷うさぎでした。
今のもめんは水に浸った生首の状態で、彼には何も抵抗することができません。
「でかいこと言ってた割にいい結末だな。」
そんなもめんのことを非常残酷うさぎは嘲笑います。
「――およそ200万年。」
「?」
「お前たちロボットがここまで来るのにかかった年数だ。」
もめんは言いました。
「ロボットは生物を越えられない。お前たちには心が無い。越えられないよ。」
その言葉を聞いた非常残酷うさぎは、もめんの入ったカプセルを・・・割りました。
「・・・なんてことは無い。たった今、越えたよ。」
「待っていたよ、No.4。」
秘密基地へと帰ってきたアームたんたちを出迎えたのは、非常残酷うさぎでした。
「も、もめん様を・・・どうしたの!」
「さあね、死んでるんじゃない?」
アームたんは凄まじい剣幕で非常残酷うさぎへと飛び掛ります。
「ちぃ!何だこのロボットは!?」
「人間様!どこかに隠れてて!アームの巻き添えをくらいますよっ!」
二体の取っ組み合いが始まります。
もーちゃすは慌てて秘密基地の奥へと逃げ込みました。
ですが隠れることができそうな場所は、"なぜかあるハイテク冷蔵庫"ぐらいしかありません。
彼はタオルケットを持って、意を決してそこへ入りました。
「もめん様・・・今お傍へ。」
・・・そして、アームたんは自爆装置を作動させます。
「人間様・・・どうか・・・どうかご無事で。」
冷蔵庫の中。勿論誰も来る気配がありません。
「アームストロングさんを助けに行こう・・・!」
今度こそ、と決心したもーちゃすですが冷蔵庫の扉が開きません。
・・・次第に彼の体は寒さで固まり始め、再び凍ってしまいました。
- 332 :ゲーム好き名無しさん:2013/01/13(日) 17:10:57.46 ID:4qV4Ju4jP
- とりあえず書けた四章までを投下しました
途中名前欄の番号を書き間違えしちゃってます、ごめんなさい
後日続きを書き込みます
- 56 :タオルケットをもう一度:2013/02/27(水) 01:23:37.49 ID:kk6wIToDP
- 続き投下します
- 57 :タオルケットをもう一度 第五章(1/6):2013/02/27(水) 01:24:31.62 ID:kk6wIToDP
- 第五章【「ちゅん」の物語】
――昔々。具体的にはもーちゃすたちがまだ島に漂流する前のこと。
あるところに「ちゅん」という小鳥がいました。
三人兄弟の末っ子で、明日はお姉ちゃんと一緒に巣立ちの日を迎えます。
ちゅんは明日がとても不安でした。
そんなちゅんを見て、お母さんは優しく語ってくれます。
「いい?外の世界ってね、いろんなことがあるの。
怖いこともあれば楽しいこともあって、素敵な人に出会えるかもしれない。
だからね、どんなに辛いことがあってもめげちゃ駄目。
みんながみんな、幸せを見つけることができるから。」
その晩、寂しさを紛らわす為にちゅんは月の見える丘へ行くことにしました。
ちゅんは寂しいときに月を見ることが好きでした。
・・・その日の月は満月でした。
「わあ、これは綺麗だな。明日もこのお月様みたいに、綺麗な一日だといいな。」
そう呟くちゅん。
すると、ぽつぽつと雨が降り出します。
慌ててちゅんが家に帰ると、彼を待っていたのは猫の集団でした。
お母さんも、お姉ちゃんも、猫に襲われてしまってずたずたです。
「明日は・・・明日・・・ちゅんと一緒に・・・ごめんね。」
お姉ちゃんは苦しそうにちゅんへ謝って・・・もう動かなくなりました。
お母さんも既に息絶えてしまっています。
――ちゅんは逃げました。
ただ、ただ。血だらけになった家族を見て、恐ろしくなってしまったのです。
朝になって、雨は止んでいました。
それはいつもと変わらない朝のように思えます。
ですが、ちゅんは一人ぼっちです。
・・・ちゅんは「巣立ちの日」を迎えました。
- 58 :タオルケットをもう一度 第五章(2/6):2013/02/27(水) 01:25:14.63 ID:kk6wIToDP
- ちゅんが当てもなく歩いていると、年老いた鳥を見かけました。
別の鳥が言います。
「あそこの年寄り、子供に捨てられたんだって。かわいそうなこった。」
老いた鳥は息も絶え絶えに言いました。
「水を・・・水を飲みたい・・・。」
――この哀れな鳥を見て、ちゅんは心を痛めました。
この鳥もなんて悲惨な、辛い人生なんだろう。と。
ちゅんがそう思っているうちに、老いた鳥は動かなくなりました。
ちゅんのこの鳥に対する思いは薄れ。
自分の家族が殺されたという現実に引き戻されます。
ちゅんはある小鳥に出会いました。
その小鳥の色は真っ黒で、他のみんなとは違う色をしています。
「僕は生まれたときから真っ黒でした。
誰にも構ってもらえず、誰からも愛してもらえなかった。」
黒い小鳥は言いました。
「どうぞ、僕なんか放っておいて行ってください。
あなたに話しかけられると僕は・・・僕は希望を持ってしまう。
僕はそれに必死にすがって・・・また嫌われてしまう。
どうぞ・・・僕に構わないでください。
僕は・・・もう・・・疲れた。」
それから黒い鳥はちゅんが立ち去るまで一言も言葉を発しませんでした。
ちゅんが川を泳いでいると、二羽の小鳥がいます。
一羽はちゅんのお兄ちゃんで、一羽はメスの小鳥。
どうやら二羽は互いに愛し合った仲のようでした。
「おお、ちゅんじゃないか。
ちゅんも素敵な鳥に出会えるといいな。」
――ちゅんは家族のことを言えず、ただの一言「おめでとう」も言えず。
彼は無言で立ち去りました。
ちゅんは思いました。
どうして・・・どうしてこんなに辛いんだろう。
ある鳥は年を取り・・・誰にも看取らずに死んだ。
ある鳥は容姿が他と違うからと、全てを諦め拒絶し。
ある鳥は殺され・・・また、ある鳥は家族を殺され・・・。
すぐ傍では幸せそうな鳥がいた。家族の悲しみ、苦痛を知らずに・・・。
ちゅんはどこかに逃げたくなり、小さな羽根を使って空へと飛びました。
ちゅんは嫌なことや辛いことから逃げる為に飛び続けます。
――そんなときのことでした。
曲がり角の呪いで空を飛んだもーちゃすが、ちゅんと衝突したのです。
- 59 :タオルケットをもう一度 第五章(3/6):2013/02/27(水) 01:25:55.45 ID:kk6wIToDP
- ちゅんともーちゃすの衝突は様々な問題を生み出しました。
まず一つ。それはちゅんが衝撃によってどこかの空間へ飛ばされたことでした。
もう一つはちゅんがこの時間からいなくなってしまったこと。
そう、ちゅんは消えてしまったのです。
ちゅんが意識を取り戻したとき、ちゅんは"どこか"にいました。
――ここははじまりの場所。ちゅちゃーん族が住まう場所。
多くのちゅちゃーん族が無を考えたり、悟ったり、意味について考えたり。
そんな中、ちゅんが見たのは横たわった者とそれにすがる者。
すがる者は横たわる者へ、同じ言葉を繰り返し叫んでいました。
ちゅんはその光景を猫に殺されたお姉ちゃんと重ねます。
ちゅんは言いました。
「僕も同じだった。お姉さんが殺されたとき、悲しくて怖かった。
・・・だから僕は逃げてきたんだ。」
すがり、泣き叫ぶ者は答えました。
「あなたは逃げた。でも私は自分の大切な者を失った悲しみを受け止めている。
私は逃げない。私は愛した者、それだけの為に今を祈る。
・・・だからあなたとは違う。」
ちゅんはその場を離れようと思いました。
自分の思いは伝わらず、何とも言えぬ悲しい思いがちゅんの中に残ります。
ちゅんは悩みました。とても長い間悩みました。
決して解けることの無い問いを自分自身の中で考え続けました。
「自分はなぜ不幸なのだろう?どうしてだろう?
小さな世界しか見ていないから?もっと広い世界にはいろんなことがある?」
考えることをやめれば、気が晴れる?
心をなくせば、嫌なことから逃れられる?
――疲れてしまったちゅんは、自由な羽を動かすことなく崖から飛び降りました。
気が付くとそこは延々と続く道。
そして道にはたくさんの自分そっくりの小鳥が死んでいます。
ちゅんが続いている道の先を見ると、まだ無数の死体があります。
どれもこれもみんな苦しそうな顔で・・・自分はまだ生きています。
「気が狂いそうだ!ここはどこなんだ!僕は何なんだ!
・・・どうして!どうしてみんな死んでいるの?」
辛さや別れ、狂った世界への不満。ちゅんは叫びました。
そして長い長い沈黙の後、ちゅんは気付けばまた別の次元にいました。
ちゅんは異空間に投げ出され、このときから彼に時間の概念は消失しました。
辺りを見回すと、四角い冷たそうな物がそこらじゅうに置いてあります。
(もめんとアームたんの秘密基地です。)
ちゅんは永遠に近い時間の中、考えます。
「僕がこの場所にいるのは、何かしら目的があるに違いない。」
ちゅんは意味を探すことにしました。
自分の存在の意味。この場所に来た理由を。
――それから数百年後。
自分の存在意義について、ちゅんは結局分からずじまいでした。
- 60 :タオルケットをもう一度 第五章(4/6):2013/02/27(水) 01:26:51.91 ID:kk6wIToDP
- ちゅんは自分の存在意義を見つける為にも何かしようと思いました。
だから動かない少女(アームたん)に話しかけ続けました。
ちゅんは自分の思いを話しました。
家族のこと、お姉ちゃんが死んでしまったこと。
おうちに帰りたい、ママに、みんなに会いたい・・・と。
ちゅんは知りません。
ちゅんが人間だと思い、話しかけているのはアームというロボットで。
いくら話しかけても決して目を開かないことを。
――気の遠くなる年月が経ちました。
何百・・・何千・・・何億年。
ちゅんは喋らなくなりました。
もう、ちゅんは自分の全てをロボットに話してしまったのです。
だから彼は意味を探すことを止めました。
――その代わりにちゅんは祈ります。
死んでいったお姉ちゃんのことを。
もう二度と会えないだろうママのことを。
・・・ちゅんは何かがわかった気がしました。
嫌なこと、辛いこと、どうすることの出来ない現実。
それを感じているのは自分だけではない、と。
「僕がお姉ちゃんの死を悲しんだように、お姉ちゃんも僕との別れを悲しんだ。」
「ママにもう会えない悲しみを、ママだって同じように僕と会えない悲しみを。」
「お兄ちゃんだって幸せだったけど、僕と同じで家族を殺された。」
「僕だけが・・・"悲劇の小鳥"ではないんだ。」
ちゅんは祈ります。みんなの為に。自分自身の為に。
気が付くとちゅんは宇宙にいました。
彼の意識は、ちゅんという小鳥の中に入れるには大きすぎるものになったのです。
――ちゅんはもう小鳥ではなく、宇宙の一つとなりました。
悲しいのは自分だけではない。幸せなのは自分だけではない。
みんな自分と等しく辛く、幸せなのです。
「僕はみんなと同じで、みんなは僕と同じで。」
宇宙にとけたちゅんの意識は無限に広がり続け、彼は様々なものを見ました。
どの星に住む人々もみんな同じ。嫌なことがあれば楽しいことがあります。
やがて宇宙の端まで来たちゅん。端の先は真っ暗で、固くて。
思い切ってそこから飛び出すと、ちゅんは卵から生まれました。
そこは見たことのある木の上。
――あるところに四羽の家族がいました。
お母さん、お姉ちゃん、お兄ちゃん。そして、末っ子の小鳥。
末っ子の名前は「ちゅん」といいます。
そして彼はやがて巣立ちの日を向かえ――また繰り返しました。
家族が殺されて、男の子とぶつかって、不思議な空間にいて・・・。
- 61 :タオルケットをもう一度 第五章(5/6):2013/02/27(水) 01:31:21.33 ID:kk6wIToDP
- ――そしてまた、宇宙の始まりの場所へと辿り着きました。
ちゅんはまた、横たわった者とそれにすがる者を見かけました。
すがる者へちゅんは語ります。
彼が今まで見てきたものを、思ったことを、全てを。意識は宇宙と一つとなり、やがて始まりに戻るのだ、と。
――その言葉はちゅちゃーん族の心へ響きました。
すがる者はちゅんへお礼を言います。
「ありがとう、救われました。」
その後、ちゅんはまた崖から飛び降りて、衛星の秘密基地で長い時間を過ごして。
宇宙の果てから出るとまた卵から生まれて・・・。
ちゅんは繰り返す度、ちゅちゃーん族へ語りました。
ちゅんの言葉は彼らに響き、彼らはちゅんを心を救う者だ、と崇めます。
そしてちゅんは自分の出会った全ての者に、祈りました。
あるところに年老いた鳥がいました。
ちゅんはその鳥の傍へ寄り。
「ごめんなさい。僕には何もすることができません。
・・・僕には傍にいることしかできません。
どうか、どうか、安らかに。僕は傍にいます。」
老いた鳥は死ぬ間際に言いました。
「ありがとう」と。
あるところに全てを拒絶した真っ黒の小鳥がいました。
ちゅんは言いました。
「僕の家族は殺されてしまった。僕も辛い。でも生きているんだ。」
黒い小鳥は答えます。
「僕はあなたとは違う。僕には何も無い。僕の辛さなんか軽いんだ。」
ちゅんはまた言いました。
「悲しみの比べ合いをしているんじゃない。
みんな辛いことや楽しいことが合って、そうして生きているんだ。」
黒い小鳥は叫びます。
「僕には楽しいことなんて無いっ!」
それでもちゅんは言い続けました。
「僕と君がこうやって話していることは辛いことなの?
・・・僕は君と話せて嬉しいんだ。」
黒い小鳥はぽつりと言葉を漏らします。
「・・・うん、僕も、僕も君と話せて嬉しいよ。
でも・・・僕はそれにすがって君に嫌われしまうことに耐えられない。」
それを聞いたちゅんは答えました。
「でも。でもね。もう一人じゃない。君は僕と会って嬉しかった。
それはずっと、これからも変わらないよ。
僕だって同じ。君と話せたことは嬉しいし、これからも変わらないんだ。」
黒い小鳥は最後に言いました。
「ありがとう」と。
お兄ちゃんとメスの小鳥にはこう言いました。
「おめでとう。幸せになってね。」
それは心の底からの祝福の言葉です。
- 62 :タオルケットをもう一度 第五章(6/6):2013/02/27(水) 01:32:10.83 ID:kk6wIToDP
- 無限に広がる「ちゅん」。無限に増え続ける「ちゅん」。
ちゅんは無限に繰り返しました。
さらに気の遠くなる年月を、無限を無限に繰り返しました。
――どのくらい経っただろうか?このちゅんは何羽目だろうか?
ちゅんの意識は限りなく無限で。
ちゅんが宇宙なのか、宇宙がちゅんなのかはもうわかりません。
・・・何度目かわからない衛星の秘密基地で、ちゅんはふと思いました。
そういえばあの機械(もーちゃすが入ったハイテク冷蔵庫)はなんなのだろう?
あの機械の横に付いていた赤いスイッチは何だろう?
「押してみたいな。」
――そして、ハイテク冷蔵庫はその役目を終えました。
- 63 :タオルケットをもう一度 第六章(1/6):2013/02/27(水) 01:34:27.00 ID:kk6wIToDP
- 第六章【・・時差】
もーちゃすが目を覚ますと、目の前には小鳥が一羽。
ちゅん、と鳴くその小鳥はもーちゃすと一緒に着いてきました。
――冷蔵庫に入っている間に何があったんだろう。
もーちゃすが秘密基地を歩き回っていると、入り口付近で動かなくなったアームたんを見つけます。
周囲に爆破の跡があるものの、アームたん本体の損傷は見受けられません。
もーちゃすは彼女の体からメモリーチップを抜き出しました。
そして秘密基地内部に飾られていた予備の本体へ、メモリーチップを移します。
「・・・あぁ、人間様。無事だったんですね。」
アームたんは無事、起動しました。
もーちゃすは爆破のことをアームたんに訊ねます。
するとアームたんは一目散にもめんが入っていたカプセルの前へ駆け出します。
――爆破から何年経ったのでしょう。
もめんの体も、カプセルのガラスも、全て消えてしまっています。
「もめん様ぁ!もめん様がいない・・・もめん様が!!
アームは・・・アームはどうすれば・・・いいの。」
もーちゃすはアームに声を掛けました。
「・・・大丈夫。
アームが悲しんでいるのは、もめん様を好きになるようにプログラムされたからです・・・。」
彼女は辛そうに言います。
「この辛い気持ち・・・情報を消せば・・・アームはいつもの明るいアームに戻ります。」
そしてもーちゃすへと訊ねました。
「人間様。アームはもめん様の記憶を消した方が・・・忘れた方がいいの?」
「――消したいの?」
「ううん。消したくない。アームはもめん様に作られたんだもん。」
アームが言いました。
「これからどうしましょう・・・人間様はどうしたい?
このままアームと暮らします?それとももめん様の作戦通りに実験体を集めますか?」
(アームと暮らす分岐(?)エンドもあります。)
「ああ、そうだ。アームの体に収納していたNo.3を今出しますね。」
彼女の体からとても大きなカプセルが出てきました。
もーちゃすはカプセルを起動させ、彼女――No.3のオリジナルを目覚めさせます。
「コンチェル様、おはようございます。気分はどうですか?」
アームの問いを無視し、コンチェルはもーちゃすへ抱きつきました。
――数億年以上の歳月。
彼女はアームたんの体内に収納されていました。
意識がある中での気の遠くなるような年月が暗闇。
コンチェルは――彼女の心は暗闇と同じで全てを閉ざしてしまっていました。
気が狂ってしまう程の孤独に、彼女は耐えられなかったのです。
・・・もーちゃすは今を知る為、コンチェルを元に戻す為、実験体を集める為。
アームたんとちゅん、コンチェルと共に宇宙へ飛び出しました。
- 64 :タオルケットをもう一度 第六章(2/6):2013/02/27(水) 01:38:37.38 ID:DXJsdLvf0
- 二人と一体と一羽は不思議な星へ降り立ちます。
そこはうねうねとした石のような何かが立ち並ぶ不思議な場所。
もーちゃすたちは星を探索します。
――星の奥には不思議な生物と、眠り続けるNo.3がいました。
「そのロボットは・・・。」
「僕の大事な人。・・・ずっと前から休んでいるの。」
アームたんの問いに、不思議な生物は答えました。
「僕に、最後に言いたいことがあるんだって。約束したの。
コンチェルは今、考えている最中なんだ。」
No.3は眠ったまま、ぴくりとも動きません。
「・・・あのね、ロボットはね・・・あのね・・・。」
「僕はこの子が考えている最中に邪魔にならないようにしているんだ。」
不思議な生物は立ち去りました。
もーちゃすたちがNo.3を調べても、彼女は動きません。
「・・・人間様。No.3、コンチェル様です。
何でこの星にいるんでしょう?記憶を再生してみますね。」
アームたんはNo.3の記憶を再生しました。
――それはNo.3がまだ動いていたある日のこと。
丘の上、No.3は空を見上げます。
「おはよう、コンチェルさん。ご飯・・・食べる?」
不思議な生物が話しかけました。
「ふん!ロボットはご飯食べないのっ!」
「そうなの?・・・ごめんね。一人だと・・・寂しかったから。」
No.3は振り返り、言いました。
「ふん・・・それじゃ、良いわよ。私の隣で食べても。」
また別のある日。
No.3と不思議な生物、二人並んで空を見上げます。
「それでね、それでね。
あの子ったら私が「早くしろ!」って言ったら驚いて走っていったのよ。」
「・・・君はその男の子が好きなんだね。本当に、好きなんだね。」
「・・・そう、そうなの。」
ポツリと言いました。
「会いたい。」
辛そうに、けれどもNo.3は続けます。
「私はロボット。
でもね、私はコンチェルなの。・・・コンチェルなのよ!」
- 65 :第六章(3/6)@規制されたらごめん:2013/02/27(水) 01:41:11.70 ID:DXJsdLvf0
- そして。
「どうしたの?コンチェル、何か変だよ?」
いつもの丘で、不思議な生物がNo.3に問いかけました。
「・・・あのね。そろそろお別れなの。」
「僕のことが嫌いなの?ここから行っちゃうの・・・?」
「ううん、違うの。私ね、そろそろ時間が来ちゃうの。」
No.3は寂しそうに言いました。
「止まっちゃうの。ロボットだから・・・もう、貴方とね。おしゃべりできない。」
「・・・。」
「最後に言いたいことがあります。
私がここに墜落してきたときから・・・最後に・・・いい・・・ま・・・す。」
「コンチェル?」
――No.3はもう二度と、目を開きません。
「どうしたの?」
――No.3はもう二度と、問いかけに応じません。
「そっか、考えている最中なんだね。コンチェル。・・・僕、待つよ。」
記憶を再生し終えたアームたんは、涙を流しました。
寂しくて。No.3が成し得なかったもーちゃすとの再開が切なくて。
アームたんはそっともーちゃすの傍へ寄りかかります。
――もーちゃすたちはコンチェルの記憶を手に入れました。
ロボットにはある筈の無い、偶然できたコンチェルの本当の記憶。
「人間様。」
アームたんが言いました。
「あの方に・・・伝えることがあります。
No.3の記憶を持っていく前にアームをあの方のところへ・・・お願いできますか?」
もーちゃすは頷きます。
「・・・では人間様、ちょっとここで待っていてください。」
そう言い残し、アームたんはNo.3を不思議な生物が過ごした丘へと向かいました。
「私はアームって言います。」
一人、丘から空を眺める不思議な生物にアームたんは自己紹介をしました。
「No.3さんの記憶。コンチェルさんがね・・・最後に伝えたかったこと。聞いてください。」
「?」
アームたんはNo.3の記憶を再生し始めます。
「・・・あのね。そろそろお別れなの。」
――それはあの時聞いた、No.3のセリフでした。
「君は・・・一体誰?君も壊れちゃったの・・・?」
「ううん、違うの。私ね、そろそろ時間が来ちゃうの。」
アームたんは彼女の記憶をそのまま再生し、彼女が伝えたかったことを伝えようとします。
「止まっちゃうの。ロボットだから・・・もう、貴方とね。おしゃべりできない。」
「・・・。」
「最後に言いたいことがあります。
私がここに墜落してきたときから・・・最後に言います。」
それは不思議な生物がずっと待ち続けていた彼女の言葉でした。
- 66 :タオルケットをもう一度 第六章(4/6):2013/02/27(水) 01:42:44.82 ID:DXJsdLvf0
- 「私が泣いたとき。それを受け止めてくれてありがと。」
「私が悲しいとき。話しかけてくれてありがと。」
「私の最後に。一緒にいてくれてありがと。」
――彼にとって今、目の前にいるのはアームたんではなく、No.3でもなく。
コンチェルという名の少女でした。
「・・・コンチェル・・・コンチェルっ!」
「うん、私はコンチェル。・・・ロボットのコンチェル。
最後にありがとうを言えてよかったわ。」
「ま、待って!待って!・・・行っちゃやだっ!
僕はまだ、まだお話したいことがいっぱいあるから!行っちゃやだ!」
不思議な生物はコンチェルに歩み寄ります。
「ごめんね。
・・・それに、私は本当のコンチェルじゃないの。
偽者・・・嘘のコンチェルなの。」
「・・・。」
「私はロボット・・・だからね、死んでも・・・やっぱりロボットなの。
こうやってね、話すのも、悲しい気分になるのも、怒るのも・・・全部、嘘なの・・・。」
「でもね」とコンチェルは言いました。
「貴方と最後にお話できて私は凄く嬉しかった。私には心がないけど・・・そう感じた。」
「最後・・・お終いなの?終わりなの?」
「うん。」
コンチェルの言葉を聞いて、不思議な生物は語ります。
「・・・僕は僕。コンチェルさんのことが好きです。
君の記憶が嘘であろうと、僕は・・・コンチェルさんといた時間は本当だと、思うから。
――もうお話できないのは辛いです。ずっとずっと、一緒にいたかった。」
「僕が泣いたとき。それを受け止めてくれてありがとう。」
「僕が悲しいとき。話しかけてくれてありがとう。」
「僕は最後まで生きる。・・・最後のありがとうは、そこで言おうと思います。」
――さようなら。
そして彼は、丘から空を見上げました。
- 67 :タオルケットをもう一度 第六章(5/6):2013/02/27(水) 01:44:47.72 ID:DXJsdLvf0
- アームたんはもーちゃすたちと合流し、No.3の記憶を持って秘密基地まで帰りました。
「これでコンチェルさんは本当のコンチェルさんに戻れます。」
もーちゃすたちは心が壊れてしまったコンチェルに、No.3の記憶を使います。
「・・・もーちゃす?」
アームたんはそっとその場から立ち去りました。
「・・・久しぶりね。
本当に・・・本当に・・・久しぶりね。」
コンチェルはもーちゃすに近づきます。
「私ね・・・あのね・・・いっぱいね、あったの・・・。
それでね・・・ロボットになってね・・・二人でね・・・星に・・・。
もう・・・離れちゃ駄目だよぉ・・・だめなんだから・・・。」
――もーちゃすたちは残った実験体を探す為に地球へと降り立ちます。
しかし地球は荒れ果て、ロボットたちはみな壊れ、それは酷い有様でした。
アームたんは壊れたロボットの記憶を再生します。
・・・どうやら太陽の接近により、新型ロボットと実験体は地球を出て行ってしまったようです。
荒れた大地を歩いて行くと、やがてもめんのスクラップ工場が見えてきました。
中に入ると、机の上に一通の手紙とビデオが置いてあります。
――あーむ へ ぼく の ゆいごん
それはとても汚らしい字で書かれていました。
アームたんはビデオを再生します。
「・・・録画できてるかな?」
・・・そこに移っていたのはもめんでした。
「さてさて、これを見てるってことは僕が死んじゃったか。
・・・あるいは僕が寝てるときにこっそり見てるかだね。
もしこっそり見ているのなら、恥ずかしいので見ないでください。」
もめんは言いました。
「必ずや、絶対に。実験体を揃えて・・・この世界を救うんだ。」
「いいかい、アーム。宇宙はまわるんだ。
でもね、そのまわる宇宙は人の手で変えることができる。
・・・だから諦めないで、頑張って。
この繰り返される悪夢を終わらせることができるのは、アームと実験体しかいないんだ。」
――アーム。全ては卵から始まる。全ては始めから終わりまでなんだ。
- 68 :タオルケットをもう一度 第六章(6/6):2013/02/27(水) 01:47:27.45 ID:DXJsdLvf0
- ビデオレターの再生を終え、もーちゃすたちは再び外を歩き出しました。
次に辿り着いたのは隣町。コンチェルがいた場所です。
町では多くのNo.3がエネルギーを使い果たし、眠っています。
「・・・だれ?」
そんな中、唯一動いているNo.3がいました。
「無駄ね。私のエネルギーはあと少し。取り上げても数分しか動けないわよ。」
ボロボロのNo.3は目を閉じながら言いました。
どうやらエネルギー目当てのロボットだと勘違いしているようです。
「見てわかるでしょ、映像センサーを切ってエネルギーの節約をしているの。・・・わかったでしょ?」
それを見たもーちゃすは言いました。
「――もーちゃすです。僕。」
「嘘だわ。あの人はもう生きていない。何億年も経っているのよ、騙されません。」
もーちゃすはロボットスーツを脱ぎ、No.3と向き合います。
「・・・どうせ最後だから。最後に貴方が何のロボットか見てみることにするわよ。」
・・・そして、No.3は目を開きます。
「嘘。」
「・・・。」
「あ、あら・・・あらやだ・・・本当に貴方なの。
・・・無駄に長生きはするものね。
やだ、こんな埃まみれで・・・恥ずかしいわ。」
No.3はボロボロの体を動かし、もーちゃすに「見せたいものがあるの」と言いました。
そこは地下の一室でした。No.3が思い出を頼りに作った部屋。
壁一面には空が子供が描いたように描かれ、懐かしの赤いバッテンも地面に描かれて。
「これね、私が住んでたおうちの模型。」
鉄の塊を指差してNo.3は言いました。
「鉄筋はね、私とかラザニアとかぱりぱりうめの家なの。
・・・お花が家の周りにいっぱいあったっけね。」
No.3は言葉を区切ります。
「・・・いまから15億年くらい前。ロボットたちがこの星から出て行ったの。
私たち旧型ロボットは置いていかれて・・・。お願い、ラザニアとぱりぱりうめを助けてあげて。
・・・私はもうエネルギーが無くなっちゃうから。」
そう言い、No.3は眠るように動かなくなりました。
――初めてもーちゃすが解凍されたときに、彼の頭には一本のネジが埋まっていました。
このネジこそが曲がり角の呪いの原因。
これが頭に埋まっているときにカーブをすると、赤いバッテンに飛んでいってしまいます。
しかしもーちゃすの頭にはもうネジが埋まっていません。解凍されてすぐ、アームたんに取ってもらったのです。
――もーちゃすはそれを再び頭に埋めて欲しいとアームたんに頼みました。
きっと何処かに、赤いバッテンがあると信じて。
「え?曲がり角の呪いの力でワープする?
・・・それは危険ですが・・人間様がそう言うのなら・・・。」
アームたんはもーちゃすの頭に再びネジを埋め込みます。
もーちゃすは勢い良くカーブします。
その瞬間、もーちゃすの体は宙へと浮き、コンチェルとちゅんとアームたんはもーちゃすの体へと飛びつきました。
- 69 :タオルケットをもう一度:2013/02/27(水) 01:48:43.08 ID:DXJsdLvf0
- ここまで
久しぶりに規制くらった