チェンジ・ザ・ワールド☆
華めきたり.1
最終更新:
Bot(ページ名リンク)
-
view
華めきたり
帝都の一等地、それは広大な土地で、森と見紛う程の庭園を持つ白を基調とした洋館。その広いテラスに、一人の女性の姿があった。
美しい黒髪は水をたっぷり含んだ天鵞絨のように艶やかで、大きな瞳は瞬きをする度に鈴が鳴るかの如く色白の頬をかき鳴らし、その容姿を際立たせている。
その女性はここ、宮ノ杜家唯一の女兄妹である長女の「薫(かおる)」だ。年は十九で、ここ一年は縁談が山のように届くのだがどれにも興味を示さず、いまだ実家に身を置いている。そしてその薫の視線の先には一人の男。
男はいささかくすんだ緑の小袖の着物に袴を着、鳥打帽を被っている。
「はあ……」
小さくため息を吐き、その男の様子をそっと伺う。
と、薫の視線に気付いたのか、男がこちらを仰ぎ見てにこやかに手を振ってきた。薫はそれに静かに笑みを作り手を振り返す。
有田喜助。
薫の父親にしてこの宮ノ杜財閥の当主である玄一郎子飼いの男で、父の為にあちこち走り回っては情報収集をしている。
一代で財を成しのし上がって行く為には戦う相手の事を知らなければならない。その過程で人に恨まれる事は山のようにしてきただろうし、表沙汰になってはいないが、当然法に触れる事もしているだろう。
玄一郎は長男の正以下、それぞれ母親の違う息子を六人もうけた。男児が生まれたら離婚という、考えられない様な条件で結婚、離婚を繰り返したのだ。薫は玄一郎の5番目の妻、ヨシと玄一郎の間に生まれた長女である。他の母親に女児が生まれた事が無かったのが幸いしたのか、薫は宮ノ杜家の子どもとして玄一郎が引き取った。
本来ならば玄一郎にとってなんら必要の無い娘であるが、不器用な父なりに薫には息子達には見せない様な顔を見せる事もある。それを親の愛情と薫が捕らえるのはいささか難しいのだが。
「薫、どうしたんだい、こんな所で」
声を掛けられ振り返ると、三つ年上の兄、進が薫を見つけて微笑んでいる。
「ううん、何でもないの。進兄さまこそ、どうされたの?」
「そろそろ食事の時間なのに薫の姿が見えないから、正兄さんや勇兄さん達が心配しているからね。俺が探しに来たんだよ」
「あら、もうそんな時間? それじゃあ食堂に行かなきゃ。うん、そう言えばお腹がすいているみたい」
そう言って薫が微笑み、進を促す。
自分の腕を取って歩き出した美しい妹が見ていたであろう庭へ視線を寄越すと、喜助が車に乗り込む所が見えた。
まさか喜助を見ていたのだろうか?
ふと、進の頭に疑問が過った。
→華めきたり.2へ
ブラウザを閉じてお戻りくださいv
その他二次小説トップに戻る
その他二次小説トップに戻る