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見返り恋心.3

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見返り恋心











休日の今日、海堂は副部長の大石から頼まれた買い出しに乾と出かけていた。

午後からは部活もあるので、午前中のうちに済ませる予定だ。


「思ったより荷物が多くなったな」

「そうっすね」


両手一杯の荷物を二人で抱えて歩きながら、乾の言葉に相づちをうち昼飯はなんだろうと海堂が考えていると、乾がふと足を止めた。


「どうしたんすか?」

「いや、あそこに屋内テニスコートがあるんだが、試合でもやっているんだろうか?」


乾の視線の先にある大きなテニスコートから、賑やかな声が聞こえて来る。


「さあ?」

「海堂、ちょっと観に行ってみないか?」

「別にいいっすけど」


道路を渡ってテニス場へと近づく。

そこは壁がなく、天井だけがある全天候型のテニスコートだった。まあ、台風の時はできないだろうが、天井があるというのはいいものだなと二人は思った。

中には入れないので、フェンス越しに中をのぞく。

ボールをはじく音とギャラリーの楽しそうな声が反響している。

どうやら練習試合をしているらしかった。


「おや?」


乾が声を上げる。

何事かと海堂もじっとコートの上に目を凝らすと、大人の男性と小柄な女性が試合をしていた。

女性は海堂たちに背中を向けてプレーをしていて、おまけにギャラリーの頭が邪魔で顔までははっきり見えなかったが、相当上手いというのは分かった。


「プロっすかね?」

「どうだろう? でもかなり上手いな」


今すぐにでもデータを取り始めそうな乾を横目に、海堂はその女性のプレーをじっと見た。

軽快なフットワーク、的確なサーブ。力強いリターンと鋭いスマッシュ。

女性とは思えないパワフルな試合運びが、見ているこちらを楽しくさせた。


だからギャラリーが盛り上がってるのか…… 


「行け! 雪緒っ! あと1ポイントだ!!」


雪緒?


ギャラリーから雪緒コールがわき起こる。


まさか。


海堂は一人の少女の顔を思い浮かべた。


「「「わあーーー!!!!」」」


歓声が起こり、試合が終わった事を告げる。


「あ、あの人プロテニスプレーヤーだ」


乾が指す男は、試合が終わったコートのすぐ脇に立っていた。海堂ももちろん知っている。日本人のプロテニスプレーヤーで、試合を見た事もある。

そのプロと今試合が終わったばかりの女性が話している。


「あっ」


海堂は見えたその女性の横顔に、思わず声を上げた。


「どうした、海堂?」

「いえ……あいつ、俺のクラスメートっす」

「え? ああ、あの子はーーー」

「知ってるんすか?」


乾の反応に海堂は驚く。


「ああ、以前テニス雑誌で見た事がある」


テニス雑誌?


「確か……汐屋雪緒」

「そうっす……あいつテニスやってたんすね」

「なんだ、知らなかったのか? アメリカにテニス留学するとかなんとか雑誌に書いてあったぞ?」

「留学……?」


まだ中学2年生だというのに、もうプロになるために海外に行くというのか。

そんなに汐屋はテニスが強いのか。

何故、部活に入っていないのか。

色々な疑問が湧いて来る。


「まあ、同じクラスなら本人に直接聞けばいいだろう? そして色々と俺にも情報を流してくれ。おっと時間がないな。そろそろ行くか」


時計に目をやり、乾は歩き出した。

海堂は立ち去る前にもう一度コートの中の汐屋を見た。

タオルで汗を拭いながら、スポーツドリンクを飲んでいる。

その姿はやっぱり何度見ても自分の前の席の汐屋で、なんだか不思議な感じがした。







                                続く…











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