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見返り恋心.4

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 見返り恋心











翌日、海堂は色々と気になって、授業中からずっと汐屋の後頭部を睨んでいた。

ぶしつけな視線に気付いたのか、汐屋がふいに海堂を振り返った。


「海堂君、どうかした?」


休み時間、目の前で首を傾げる汐屋に海堂は一瞬ひるみ、すぐに体制を立て直すとまず昨日の事を尋ねてみる事にした。


「昨日、テニスしてなかったか?」

「うん、してたよ。え? もしかして見たの?」


至って普通に答える汐屋。


「ああ、買い出しの途中で偶然」

「そうなんだ。あそこのテニスコート、私の伯父さんが経営してるんだ。隣りにスポーツジムがあるでしょ? あそこも」


親戚は金持ち。という情報を入手した。


「そうなのか……試合、してたな」

「ああ、練習試合ね」

「勝ってたじゃねえか」

「あはは。相手はプロの人だし、練習の為に力抜いてやってくれたんだよ」

「いつからテニスやってんだ?」

「う~ん、記憶にないぐらい小さい頃から……かな?」


へらっと笑う汐屋に、海堂は越前を重ねた。


「何で部活やらないんだ?」

「ああ、私スクールに通ってるから、部活入ると周りに迷惑かけちゃうし」

「そうなのか……」


取りあえず聞きたかった事が聞けて、海堂は少しほっとした。

まだ後ひとつ、留学の事が聞けないのだが、それは追々聞く事にしようと思った。

今は聞くべき時ではない気がしたのだ。


「猫は、元気か?」


別に話す事はもう無いはずなのに、海堂は無意識のうちに尋ねていた。

そんな自分に驚く。


「うん、元気だよ」


答える汐屋にあの晩のことを思い出す。

こうやって話すのが普通になってきていることに驚きつつ、それが楽しいだなんて思っている自分がなんだかむず痒かった。


「海堂君、今度の試合出るの?」


今度の試合、とは、恐らく地区大会のことだろう。


「ああ」

「そっか。青学強いもんね。今年は1年生の子もレギュラーに入ったんでしょ? 一度試合してみたいなあ」


そう言って笑う汐屋は、本当にテニスが好きだというのが伝わって来る。


「俺と、今度打たないか?」


またしても無意識のうちに口をついた言葉。

戸惑いは隠せない。が、基本的にムスッとした顔をしている海堂の焦りは汐屋には気付かれなかった。


「え? 本当!? 私で海堂君の相手が務まるかな? でも、お願いします」


汐屋が少し身を乗り出して来たので、海堂は後ろに少し後ずさった。


「あ、ああ……」


汐屋の嬉しそうな顔を見て、何故か胸が騒ぐのを覚えた。

何故だか分からないが、汐屋の笑顔は海堂をほんの少し楽しくさせてくれるような気がした。









「海堂の奴、妙に気合いが入ってるな」


部活中そう言った乾の一言に、一年生トリオが驚く。


「え? 乾先輩分かるんですか?」

「いつもと変わらない気がしますけど……」

「おまけに楽しそうでもある」

「ますます分からないっすよ!」


堀尾がコート上の海堂を見て突っ込む。

放課後部室に現れた海堂を見てから、乾はずっと気になっていた。

何かいい事があったに違いない。

それを確かめようとしているのだが、相手はあの海堂。上手く話が引き出せるとは思えない。

どうやって口を割らせてやろうかと考えていると、ちょうど桃城が通りかかった。


「海堂の奴、なんか気持ち悪いな……」


ボソリと呟いた桃城のその言葉に、乾は素早く反応した。


「桃」

「なんすか?」

「お前、海堂と同じクラスの汐屋雪緒って女の子、知らないか?」


汐屋という名前に、桃城はすぐに頷く。


「知ってるっすよ。俺、小学校の時から一緒すから」

「そうなのか? それじゃあその汐屋雪緒がテニスがむちゃくちゃ強いというのも知っているのか?」

「あ、はい。小学校の時にジュニアの大会で優勝してましたから。最近は高校生以上の大会に出てるみたいっす」

「「「えっ!?」」」


それを聞いていた一年生トリオが驚く。


「そんなすごい先輩がうちの学校にいるんですかっ!?」

「女テニっすか!?」

「いや、スクールに通ってて部活には入っていない。この前のテニス雑誌に写真が載っていた」


乾がどこからか持ち出した雑誌の後ろの方の白黒ページに、汐屋の写真が小さく載っていた。その脇には、

『女子テニス界期待の星、青春学園中等部2年生汐屋雪緒さん! 去年の大会で見事優勝、今回も二連覇を狙う』

と書かれていた。


「本人のコメントはないが、結構前から注目されていたみたいだ」


カチローが雑誌を持ってその記事に書かれている汐屋の戦績を読み上げる。

「小学4年生、全国ジュニア大会優勝。翌年高校生以上の大会で優勝。翌年欠場。中学1年で再び出場し優勝。そして今年再び優勝を狙う。現在アメリカのクラブチームから留学の話があるらしいが、本人は肯定も否定もしていない……すごいじゃないですか!」


見上げる3人に桃城が笑う。


「な~。すげーよなあ」

「で、結局アメリカには行くのか?」


乾の質問に、桃城は首を傾げる。


「さあ、どうですかね?」

「仲良いんじゃないんですか?」


カツオに聞かれ、桃城はへらっと笑う。


「おー。普通に良いぜ。去年までは俺も休みの日に一緒に練習したりしてたしな。でも2年に上がってからはクラスも別れたしあいつも忙しそうだし、俺もレギュラー入りしたりであんまり話してないからなあ。アメリカに行く話は確かにあったみたいだが、本人がどうするつもりなのかは聞いてねえ」

「そうか……」


そして乾はまた海堂を見た。その視線に気付いたのか、桃城がああと声を上げる。


「そういえば汐屋の奴、海堂の前の席だったな。可哀想に」

「前の席?」

「はい。この間海堂のところに伝言伝えに行ったら、汐屋の奴と何かしゃべってましたから」


桃城のその言葉で、乾はピンときた。


「なるほど……」


これは面白いデータが取れそうだ。






                               続く…










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