チェンジ・ザ・ワールド☆
不完〜.3
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不完全燃焼、恋愛模様
残り46秒で交代げな、やっぱ俺は情けなかね。
そんなマイナス思考を巡らしながら階段を下りる。
派手にぶつけた頭はまだ少しクラクラしていた。
恐ろしく長い時間歩いたような気がするが、体育館から保健室までは目と鼻の先。
どんなにクラクラする頭を抱えた千歳の足でも、3分もかかっていないはずだ。
漸くたどり着いた保健室のドアを開けると、いるわいるわ。怪我人の山だった。
「あら、また怪我人? ちょっとそこで待っとってな」
保健医は足から血を流す男子生徒の手当をしながら、あごで空いているパイプ椅子を千歳に勧めた。
仕方ないので言われるままその椅子に腰掛け、ぼうっと窓の向こうを見つめる。
時間的にソフトボールの試合はとっくに終わっている頃だろう。
が、もしかしたら彼女が近くを横切るかもしれないと、淡い期待を持って見てみる。
そげん都合よく通る訳ないか……
女々しい自分に溜め息をつくと、保健医がこちらに顔を向けた。
「はい、こっちにどうぞ。あら、頭から血が出てるやないの、どうしたん!?」
「体育館の壁に頭から激突して」
「もう、ほんまに男の子は元気がええなあ。ちっとは休ませてえな。先生朝から仕事しっぱなしや……あ! こらあかん。病院行きや」
「え? 病院?」
保健医の言葉にドキリとする。
「傷自体は深ないけど、結構切れとるわ。病院行って縫ってもろたほうが治りも早い。えっとあんたは6組の千歳君やな。担任の先生呼んで来るから、それまで頭押さえておとなしゅう待っとき!」
そう言って簡単に手当をされ、その上を新しく渡されたタオルで抑えさせられた。
「他の怪我人は保健委員で面倒見とってや」
「「はあい」」
野戦病院のような保健室に取り残された千歳は辺りを見回す。
痛いだのしみるだのわめくのはほとんどが男子生徒で、色気も何もない。
保健委員の女子が2名いたが、息つく暇もないほど忙しそうにしている。
ガララッ!
「先生、怪我してもーた!」
「今先生おらんからちょっと待ってて」
「え? マジで? ……あかん、俺出血多量で死んでまう」
「しっかりしろ! 傷は浅いで!」
「あ~もう、入り口で2人して邪魔やなあ! さっさと入って待っとってや!」
その間にも新しい怪我人がやって来る。
ただ座って待っていてはその場の変な空気で余計に具合が悪くなりそうに思えて、千歳は立ち上がった。
「あ、どこ行くん?」
それに気付いた保健委員が慌てて声をかける。
「ちょっと外に出とる。ここにおったら余計に頭クラクラするけん」
そう言ってグラウンドと保健室とを繋ぐドアを開けた。
「近くにおってな。先生帰ってきても探しに行く暇ないから」
「分かっとる。その辺に座っとるけん、声掛けて」
「うん」
後ろ手にドアを閉めると千歳は深呼吸をした。
目眩も随分治まったようだ。
タオルを頭から離して確認する。
保健医が傷口にガーゼをあててくれているのでタオルに血はついてはいない。
それにしても、まさか病院で頭を縫うはめになるとは情けない。
正直昔怪我をした目の所為と言えば言い訳がましいが、見えづらくて思った以上に強く飛びすぎたらしい。
やっぱり俺は情けなか。あいつが見よらんでよかったばい。
「ふう」
近くの植え込みの横に座り、空を見上げる。
視線を戻して先ほど女子が貸してくれたハンドタオルを見ると、千歳の血で赤いシミが出来ていた。
案外血が出ていてげんなりする。
「千歳君?」
「ーーーあ?」
そこに現れたのは、さきほど見事なバッティングを見せていた千歳が思いを寄せる少女、汐屋雪緒だ。
驚く千歳のすぐ目の前までやって来ると、汐屋は眉間にしわを寄せる。
「どげんしたと? その頭」
「ああ、ちょっと」
「ちょっとじゃないやん。血の出とるやん。バスケの試合、そげん激しかったと?」
「あ〜。まあまあ、かな?」
ボールを追いかけ回していた先ほどの様子を思い出しながら苦笑する。
「えらい痛そうばってん、大丈夫と?」
「平気たい、こんくらい」
「千歳、大丈夫か!?」
そこへ千歳の担任が保健室のドアから飛んで現れた。
突然のことに驚く千歳と汐屋。
「すぐ病院行くで、俺の車まで来い。あ、汐屋、お前こいつの荷物教室から持ってきてくれへんか? 俺はこいつ車に詰め込んどるから」
「あ、はい」
「先生、荷物くらい自分で取りに行けるけん別に汐屋に頼まんでも大丈夫ばい。それに汐屋俺の席知らんやろ?」
「あ、誰かに聞くし」
「ばってん……」
「ええい、やかまし、怪我人は黙っとれ! 汐屋、頼んだで。千歳、お前はこっちや」
半ば強制的に担任に引っ張られ、一瞬汐屋を振り返る。
汐屋はすでに行動に移っていて、あっという間に渡り廊下から校舎内に入って行った。
自分のために急いでくれてるんだと思うと、怪我をして良かったなと心の中で呟いた。
続く…
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