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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

不完〜.4

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streetpoint

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不完全燃焼、恋愛模様











 千歳の荷物を持ってきてくれた汐屋とは名残惜しかったが駐車場で別れ、千歳は担任と近くの病院へ向かった。

 傷は3針縫っただけで済み、抜糸の必要の無い糸で縫ってもらったため通院も数回で問題ないと言われた。

 一番残念なのは、縫うために傷の周りの髪の毛を剃られ、ハゲができた事。

 処置が終わって学校に戻ろうとした千歳だったが、担任に強制的に家に連れて帰られた。時間的にも球技大会が終わる頃だったし、怪我人なのだから大人しくしていろという事らしい。

仕方ないので家に帰ると、迎えた母親が驚いた。

 担任は怪我をした経緯を説明し、引き止めようとする千歳の母親を振り切って学校へ帰って行った。

 夕方学校から帰ってきた妹に十円はげだの鈍臭いだのと笑われ、母親には心配半分呆れ半分で溜め息を吐かれた。

 それ以上何か言われるのが面倒だった千歳は自室へこもり、長い手足を投げ出してベッドに転がった。





 ドサリ


 とベッドのスプリングの反動を体に感じながら、頭を掻く。もちろん怪我をした所を避けて。

 頭には病院ではめられたネット。

 くせ毛もすっかり形を潜め、ふざけた様子でネットの隙間からはみ出している。

 明日は球技大会の振替休日で学校は休みだが、数日間はこの微妙な姿をさらし、髪がはえ揃うまではハゲ頭もさらさなければならない。

 気合いを入れて壁にジャンプしたことを少しだけ後悔しながら、ふと偶然保健室の前で汐屋と会った事を思い出す。


 なんか知らんけど、俺、あいつのこと相当好いとるみたいやん……




 何で?




 ーーー分からない。


 同じ九州から大阪に引っ越してきたから?


 時折見せる寂しげな表情が気になるから?


 優しいから?




 やはり考えても分からなかった。


「あ」


 そこでもう一つ思い出す。

 今日、駐車場で千歳の荷物を持ってきてくれた汐屋と別れ際、体育館で女子に借りた血染めのハンドタオルを汐屋が引き取ってくれた。

 右手でハンドタオル、左手で怪我した頭を抑えていた千歳に、荷物を渡す時に汐屋が一旦預かったのだ。

 そしてそのまま車が発進してしまい、結局タオルの存在を忘れていた。


 電話してみるかね。


 携帯を手に取る。

 同じクラスだった時、互いのアドレスは交換していた。

 それでも特別用事がなければメールも電話もお互いにすることは無かったが、3年になってから汐屋に電話を掛けるのは初めてだった。

 妙な緊張を覚えながら、千歳は汐屋のアドレスを呼び出す。

 1回、2回と呼吸を整え、通話ボタンを一気に押した。



 トクン……



「……あ、もしもし。俺、千歳ーーー」


 数度目のコールで、汐屋の声が聞こえた。


『あ、千歳君。怪我、大丈夫やった? 心配やったけん電話かメールしようかて丁度思いよる所やった』

「そうなん? ありがと。心配かけたばいね。怪我は大した事ないとよ。縫った方が治りが早いけんち保健の先生が言うけん」

『そうやったと? それなら良かった……』

「…………」


 千歳は汐屋の言葉に感動していた。

 特別な意味がある訳ではないのに、汐屋の一言一言が千歳の胸に響く。


『どげんしたと? 傷が痛むとやなか?』

「ーーーあ、いや、全然」


 黙ってしまった千歳を、汐屋はまた心配してくれる。


『縫うのってやっぱり痛かった?』

「縫う時は麻酔が効いとるけん、痛くなか。ばってん傷口に麻酔打つ時が痛かった」

『ーーーうわ。想像したら頭痛くなってきた』

「あはは、汐屋は想像力が豊やね」


 他愛無い会話。

 内容はロマンチックの欠片もない内容だが、その何でもない会話が楽しい。

 そこで千歳は電話した用件を思い出す。


「あ、そうやった。汐屋、さっきのハンドタオルやけど」

『ああ、あれね。洗ったけど綺麗に落ちんかった。あれ、誰かが貸してくれたとやろ? 千歳君のにしてはえらい可愛いタオルやったけん、女の子のやろ?』

「そう。体育館で女の子が貸してくれたとよ。わざわざ洗ってくれたんね、ありがとう」

『そんなん別によかけど、血が落ちとらんとを返す訳にはいかんよね、さすがに……』

「そうやね。新しいのば買ってから返そうかち思いよる」

『うん、そうやね。それがよかろうね』



 ドクン



 その瞬間、千歳はチャンスを感じた。

 ゴクリとつばを呑み込むと、頭をよぎった思いを伝えようと意を決する。


「あんさ、汐屋」

『何?』

「その……タオルば買って返そうか思いよるけど、女の子が喜びそうなのってどげんかとか分からんけん……もし良かったら、選ぶの手伝ってもらえんやろか?」


 言った。

 言えた。


 千歳は自分がいつの間にかしっかりと目をつぶっている事に気付いた。

 力が入って心臓はバクバクだ。


『うん、私でよければ』

「ま、まじで?」

『え? うん……って、何でそこで驚くと?』

「あ、いや。ごめん……」


 迷う事なく即答された事に驚いた千歳は、つい驚きを口にしてしまった。

 しまったと思っていると、電話の向こうからクスクスと笑い声が聞こえてきた。


「何で笑いよると?」

『だって、千歳君面白いっちゃもん』


 何か面白い事を言った記憶はないのだが、汐屋が楽しそうなのは嬉しい。


『ふふっ、ごめん。で、いつ買いに行くと?』

「ああ、えっと……汐屋はいつが暇?」

『別に部活しよらんし、千歳君に合わせるばってん』

「それなら明日は?」

『明日? 怪我が痛むっちゃなか? せめて今度の日曜日とかにせん?』


 汐屋と出かけられると思えば頭の怪我くらいどうってことはないのだが、余計な心配をかけるのもよくないと思い、汐屋の提案を承諾した。

 それにこの頭じゃ、良く考えたら一緒に歩くのは少し恥ずかしい。


「ーーーそうやね。じゃあ今度の日曜日でよか?」

『うん』

「時間とかはまた連絡するけん」

『分かった。電話ありがとう、お大事にね』

「いや、こっちもいろいろとありがとう」

『どういたしまして。それじゃあまたね』

「ああ、また」


 電話の向こうでツーツーと虚しい機械音が鳴るのをしばらく聞きながら、千歳は再びベッドに転がった。


 ヤバい。俺、今相当幸せかもしれんーーー


 買い物に付き合ってくれるだけなのに、千歳の気分はすっかりデートモードだ。


「お兄ちゃ~ん! ご飯ばいー!」

「お~う」


 階下から妹の声が聞こえてきてそれに返事をする。

 その間もずっと千歳は上の空だった。   






                          続く…





ここまでお読みくださりありがとうございました。
なんか千歳が乙女でキモイですね(笑)



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