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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

不完〜.5

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streetpoint

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不完全燃焼、恋愛模様















 日にちが過ぎるのは早いもので、あっという間に約束の日曜日の朝となった。

 頭の怪我も随分と良くなり、あの滑稽なネットも外れた。

 まだ剃られたハゲはそのままだが、帽子を被れば問題ない。

 2日ほど前に汐屋に待ち合わせの時間等をメールしてそわそわと落ち着きなく今日まで過ごした訳だが、夕べは緊張してあまり眠れなかった。

 まさか好きな女の子と出かけるというだけで、こんなに緊張するとは夢にも思わなかった。

 あまり働いてくれない脳みそを奮い立たせ、千歳は着替えて朝食を食べていた。


「お兄ちゃんどげんしたと?」

「何がね?」


 妹のミユキが物珍しそうに千歳の顔を伺いながら聞いてきた。


「だって今日部活休みっちゃろ? それなのに早くから起きて、おまけに着替えて」

「今日はちょっと出かけるけん」

「……あ! もしかしてお兄ちゃんデート!?」

「違うたい」

「嘘やん! お母さん、お兄ちゃんデートげな!」

「え? 千里、あんた今日デートやったと? なんね早く言わんね! 彼女どんな子? 可愛い? 美人? いつから付き合いよると?」

「やけんデートやなかち言いよるやろ?」


 目を輝かせる母と妹に、千歳は投げやりに答える。

 実際本当にデートでもなければ彼女でもないのだから、質問には答えられない。


「なんね、冷たかねえ。今度彼女家に連れてこんね。お母さん自慢の辛子レンコンご馳走するけん」

「高校生で辛子レンコン好きなヤツはおらんばい……って彼女じゃなかて言いよるやろ?」

「じゃあ高菜チャーハン」

「しつこかね」

「お母さん、お兄ちゃん照れとるとよ。しばらくそっとしといてやろう?」

「反抗期? やあねえ。千里には反抗期なんてないて思いよったとに」

「ーーーご馳走さま」

「あ、逃げた」


 何とでも言え。


 これ以上会話をしていても疲れるだけと、千歳は食べ終えた食器を流しに片付けてリビングから逃げた。

 逃げて部屋に戻ったものの、何となく落ち着かなかった。

 音楽をかけてみたり本を読んでみたりするが、何をしていても集中出来ない。


 いかん。全然落ち着かん。


 長い足で床を踏みしめて立ち上がり、帽子をかぶる。

 出かけるにはまだ少し時間があったが、千歳は早めに家を出る事にした。















 玄関から外に出るととても天気が良く、最高の日和だった。うんと背伸びをし、待ち合わせ場所の商店街へと向かう。

 家の最寄りのバス停でバスに乗り、下車したバス停から繁華街を目ざして歩き出した。

 休日の今日はカップルも多く、楽しげに会話を弾ませる姿がやけに目についた。

 開けた商店街の入り口前の公園で足を止めて辺りを見回してみる。

 もちろん汐屋の姿はまだない。

 次に公園の真ん中に立てられた時計を見る。


 10時10分


 待ち合わせの10時半まであと20分。

 千歳は近くの書店に入って立ち読みをしながら時間をつぶす事にした。

 広くて明るい店内は客も多く、BGMも賑やかだ。

 スポーツ雑誌のコーナーへふらりと行き、手前にあったテニス雑誌を手に取りパラパラと捲る。


 お、越前やん。


 アメリカを拠点として活躍をする、越前リョーマ。

 雑誌でも大々的に特集が組まれるなどして、その人気ぶりを伺わせる。

 中学時代の全国大会が思い出された。


「よお、千歳」


 相変わらず生意気そうな顔写真に懐かしさを覚えていると、聞き慣れた声が千歳を呼んだ。

 顔を上げると中学時代の同級生、忍足謙也が立っていた。


「謙也か。久しぶりやね」


 忍足とは中学卒業後別々の高校に行っていて、なかなか顔を合わせる事がなかった。

 お互い部活をやっているし同じテニス部なので試合で会う事はあったが、こうやって休日に外で会うのは本当に久しぶりだ。


「お前こんなところで何しとるんや? 帽子被ってそれで変装したつもりか? でかいから一発で分かったわ」

「待ち合わせまで時間があるけん、ちょっと暇つぶし……これは変装やなかよ」

「待ち合わせ? なんや変装やないならお洒落してデートかいな」

「はあ……なんでどいつもこいつも待ち合わせイコールデートになるとかね」

「なんや、違うんかい」

「残念ながら。で? 謙也は何しよっと?」

「俺は白石に呼び出されて……」

「白石?」

「おい、謙也に千歳」


 丁度そこへ白石も現れた。

 千歳は雑誌を棚に戻し、白石と忍足を交互に見比べる。


「よお、白石。お前達2人はどこ行くと?」

「謙也のとこも今日部活休みやって言うから、テニスしに行こうか思うてな。千歳は? デートか?」

「やけん、どうしてデートになるん?」

「違うんか?」


 呆れる千歳に、白石が残念そうに言うと、忍足がすかさず千歳の帽子を指差しながら笑う。


「違うんやて。お洒落までしてお忍びでデートか思うたけど、でかすぎて全然忍べてへんねん。どっちかっちゅーたら逆に目立っとる」

「アホ、謙也。これはお洒落やなくてハゲ隠しとんねん」

「ハゲ? なんや千歳。お前その年でもうハゲとんかい」


 白石と忍足の会話に千歳が呆れる。


「白石、誤解ば招くような言い方せんばい。怪我したけん縫うとに髪の毛剃られたとよ。それに俺は一言もお洒落とも変装とも言っとらん」

「っちゅーか、お前の頭頂部見下ろせるヤツなんかそうそうおらんで。別に帽子被って隠さんでもええやん」

「座ったりしゃがんだりしたら見えるやろ?」

「そんなん気にしなや。全体的にモコモコした髪しとんのやし、ちょっとくらいハゲとっても分からんで。それならもういっそのこと全部バリカンで刈ってもうたらええんちゃう?」

「俺もそれがええと思うわ。お前男前やし、きっと坊主も似合うで」

「人ごとと思ってから、適当なこと言いよる」

「しっかし千歳が怪我やなんて珍しいな。運動神経ええのに」


 そこで白石は忍足に球技大会での出来事を語って聞かせた。









 「……っちゅー訳で、こいつのパスのおかげで俺達のチームは逆転されてそのまま試合終了。負けてもうたんや」

「名誉の負傷やな。しかしどたまカチ割るほど飛ばんでもええのに」

「目測誤ったったい」

「まあええわ」

「で? デートやないなら誰と待ち合わせしとるん?」


 会話を戻した白石に、千歳は普通に答える。


「汐屋」

「え? 汐屋? なんや、やっぱりデートやないか」

「やけん違うっち言いよるやろ。この頭の怪我した時やけど……」


 話しに付いて行けない忍足は黙って白石と千歳の会話を聞いている。

 白石と汐屋は現在同じクラスで、2年生の時千歳と話す事が多かった汐屋は、千歳とよく一緒にいた白石とも顔見知りだった。千歳は説明するのが面倒だと思いながらも仕方なく話すことにした。


「そん時タオルを貸してくれた子がおったとばってん、その子のタオルが俺の血で駄目になったけん、新しいのば買って返そうて思いよるとよ」

「で?」

「やけん、どげなタオルを買ったらよかか分からんけん、汐屋に付いてきてもらうって話しになったったい」

「だから何でそこで汐屋なん?」

「あーもう、さっきから俺を置いて会話を進めんな。汐屋って誰やねん?」


 たまりかねた忍足が漸くツッコミを入れる。


「もうすぐ来るやろ、それまで待っとき。で、何で汐屋なん?」


 白石に軽くあしらわれ、忍足は少しむくれた。

 千歳は、汐屋が来るまで白石達が待つ気満々なのを理解し、溜め息をついた。

 というか、忍足と白石に会った時からこうなるだろうと大方の予想はついていた。


「はあ……説明するのが面倒くさい」

「別に面倒なら話さんでもええよ。汐屋に聞くし」

「……」

「なんやその目。俺達がおったら邪魔なん? デートやないんやったら一緒に行っても別にええやろ? なあ、謙也?」

「そうやな。デートなんやったら遠慮するけど、デートやないんなら問題ないやろ」


 2人して楽しそうな顔で千歳を見ている。


「ーーー勝手にせんね」


 千歳は忍足に見つかってしまった己の長身を恨んだ。   







                        続く…





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