チェンジ・ザ・ワールド☆
不完〜.7
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不完全燃焼、恋愛模様
雑貨店に入ってもこの4名は目立っていた。
いや、3名の男達は目立っていた。
店内のあちこちから視線が突き刺さる。
汐屋はそんな異様な状況に、少し疲れを感じはじめていた。
まだ買い物をスタートさせてから一時間も経っていないというのに、こんなに人から注目を浴びるのが疲れるとは、初めて知った。そして普通の人間で良かったと改めて思う。
イケメンテニス部3人は慣れたもので、見られている事にまるで気付いていないかのように、普通にその辺の雑貨を手に取ってはあーだこーだと品評している。
「汐屋、こんなんどうやろ?」
そう言って白石が見せたのは、ピンク地に白の水玉で無駄にでかい微妙なクマのアップリケが縫い付けてある、なんとも形容し難い趣味のタオルだった。
「……もう少し違うのがいいかな?」
「そう? 女の子ってこんなん好きちゃうん?」
「そ、そうかな?」
「なんや、汐屋はあんまり可愛らしいのは好きやないん?」
「物によるかな」
白石の微妙なセンスを知って、汐屋は白石ファンの友人達の顔を思い出した。
顔が良いのだから何でもセンスがいいに違いないと豪語していた友人の姿がかすんで見える。
「こんなんはどうやろか?」
「あ、すごく可愛い」
千歳が手にしたのはふわふわの生地に黄色やオレンジの小さな星がいくつも刺繍された、可愛らしいタオルだった。
「なんかえらいふわふわして、やたら気持ちいいっちゃけど」
「本当~。千歳君センス良いっちゃね!」
「そう? よー分からんけど、汐屋が良いって言うタオルなら大丈夫やろ」
つられて方言が出た汐屋を可愛いなどと思いながらニッコリ笑う。
「あ、結構安い! 私も種類違うヤツ買おうかな~?」
「ほんなこつ。こげん安かなら、一枚だけ買うとももったいなかね」
「妹さんにあげたら?」
「ミユキに? そうやね、なら母ちゃんにも買うてやるかな」
2人のやり取りを見ていた白石と忍足は、顔を見合わせる。
どこからどう見ても仲良しカップルにしか見えない。
「白石、どう思う?」
「せやなあ……お似合いやなあ」
白石達の会話は、千歳達には聞こえていなかった。
その後、汐屋が母親に頼まれたというキッチン雑貨なども一緒に見て回った。
そして全ての買い物を終え店を出ると、昼に近い時間になっていた。
4人は商店街の中にある安くてボリュームがあって美味いと評判の定食屋に入った。
「汐屋のおかげでいいのが選べたばい。本当にありがとう」
「全然。千歳君が自分で選んだんやけん、お礼言われることとか何もしとらんよ。それに私のお母さんの買い物にも付き合ってもらって、なんかかえって申し訳なかったな……」
「俺一人やったらあんな店入りきらんかったし、やっぱり迷って買いきらんかったと思うけん。やっぱり汐屋のおかげたい。気にする事なかよ」
「そう言ってもらうと嬉しかけど」
「お取り込み中悪いねんけど」
千歳と汐屋が会話を弾ませていると、忍足が割り込んできた。
「何ね、謙也」
「どうしたの? 忍足君」
「それや」
「どれ?」
指をさす忍足に、汐屋が首を傾げる。
「なんで自分、俺達としゃべる時は標準語で、千歳としゃべる時は九州弁なん?」
「え? ああ。だって大阪の人だから九州の言葉よく分かんないでしょ?」
「せやけどこいつはもうずっと大阪で九州弁しゃべってんで?」
「別に俺は気にせんけんね。汐屋が気になるとやったら使い分けたら良かたい」
「あ、うん……」
言葉を濁す汐屋に、白石は頬杖を付いたまま尋ねた。
「もしかして、何かあったん?」
それに反応したのは千歳だった。
すぐに汐屋の顔を見る。
白石の言葉が図星だったのか、汐屋は力なく笑うと首を横に振った。
「別に、何もないよ」
「ーーーそれなら別にええねんけどな」
白石はそれ以上何も聞かなかった。
だが、千歳はずっと汐屋の事が気になっていた。前から感じていた他人と汐屋との間にある壁。その理由が知りたかった。
どうして普段は標準語を使うのか。
どうして自分には方言で話してくれるのか。
少しは自分に気を許してくれているからなのだろうか?
テニスの試合ならば簡単に読める相手のことも、汐屋のことになるとからきし駄目だった。
続く…
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