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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

不完〜.12

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不完全燃焼、恋愛模様















 部活も終わり、部員達もちらほら帰りはじめた頃、千歳は白石に先ほどの言葉の意味を聞いてみる事にした。

 1年はまだコートの後片付けをしていて、部室に残っているのは白石と千歳と同じ3年のレギュラーの3人だけだった。


「白石」

「ん?」

「さっき言いよった事ばってん」

「さっき?」

「ほら、惚れたら負けなんて嘘や、って」

「ああ」

「あれ、どういう意味ね?」


 それを聞いていた仲間が口を挟む。


「なんやなんや~、モテモテなお2人さんは会話の次元が違うなあ」

「次元が違うて、俺が言うたんやなくて、白石が言ったとよ」

「せやから、惚れたら勝ちやなんて、普通言わへんで?」

「勝ちとは言うてへん」


 白石が苦笑する。


「だって負けやないなら勝ちやろ? 俺はあかん。好きになったらもう駄目や。寝ても覚めてもその子の事ばっかし考えよる。もし俺の彼女になってくれんのやったら、二股かけられてもええてまで思てまうもん」

「アホやなあ。そこまで考えんやろ、普通」

「せ~や~か~ら! お前ら2人はモテない男の気持ちが分からんねん! お前らに好きや言われたら、大概の女子が即OKするやろ! あ~、嫌やわ~。男前っちゅーんはこれやから。2人ともいっぺんフラレてまえっ!」


 そう捨て台詞を残し、ペンペンとお尻を叩くというベタなボケをかまして友達は部室から去って行ってしまった。


「なんやあいつ、えらい荒れとんな。お尻ペンペンはないやろ」

「ーーー白石、話の途中ばい」

「ああ……っちゅーか、お前用があるん違うんか?」

「あ! そうやった。門の所で待っとってって……今何時?」


 慌てて立ち上がる千歳に、白石は腕時計に目をやる。


「19時40分」

「いかん、急がんと! 白石、明日話すばい。それじゃあお疲れ!」

「おお、気ぃつけて帰り」


 バタバタと出て行く千歳を見送ると、白石はクスリと笑った。


「あいつもアホやなあ。汐屋の事が好きなんやったら、律儀に女の子待たんと断ればええのに」













 千歳が急いで行くと、校門の脇に少女が立っていた。


「ごめん、遅くなって」

「ううん、全然大丈夫や! ご、ごめんな。無理言って」

「いや」

「あっ! タオル、ありがとう。めっちゃ可愛くて、すっごい気に入ったわ! ほんまにもろてええの?」

「そらあ、あんたにやったとやけん、もらってくれんと困るたい……えっと、それで、話しって何?」


 微妙な空気が流れる中、千歳の言葉に少女はピクリと肩を震わせた。


「あ、うん。あの、えっと……公園で話さへん?」

「ああ、よかよ……」


 そして歩き出した千歳の少し後ろを、少女は黙ったまま付いて歩いてきた。

 千歳はさきほど部室で仲間が言っていたように確かにモテる。こういう雰囲気は慣れていたし、これから何を言われるかも十分理解していた。

 答えはもちろん決まっていたのだが、少しだけ揺れていた。

 汐屋が白石に渡したラブレター。

 白石が珍しく一緒に帰ろうと言ってきたのは、もしかしたら汐屋と付き合う事になったと告白するためだったのではないか。

 公園へ着くまでの数分で、千歳は色んな事を考えた。

 部活中はテニスの事しか考えずに済んだのだが、こうやって冷静になれば全体像がぼんやりと見えて来る。


 足が止まる。


 顔を上げると、いつの間にか学校の近くの大きな公園に到着していた。

 辺りはすっかり夜で、昼間とは違って風が少しだけ冷たい。


「あの……ち、千歳君」


 緊張がこちらにまで伝わってきそうな少女の声に、千歳は優しい目を向ける。


「何?」

「あの……えっと……そのーーー」


 告白などしたことのない千歳は、一体どれほどの勇気が必要なのか分からない。

 だが、毎回自分と対峙する少女達の震えと紅潮した顔を見ていると、それが膨大なエネルギーを要する事なのだろうと、なんとなく理解できた。

 こんなにまでして思いを告げてくれるのだから、断る度に申し訳ないと思う。

 だからといって告白してくれる子全員と付き合っていたらとんでもない事になってしまうし、やはり自分も好きな子とでなければ付き合う事は出来ない。

 それなのにーーー


 白石と汐屋の顔がチラチラと千歳の脳裏を掠める。


「う、うち。千歳君の事、す、好きっ……やねん……」

「ーーーうん」

「そ、それでなっ! そっ、その……もし、良かったら、うちと……付き合うてくれへんやろか?」

「ーーー」

「ーーー」


 付き合うとは何だろう。


 どうすればいいのだろう。


 千歳は混乱していた。

 自分が汐屋の事を好きでも、汐屋は白石の事が好き。

 白石から自分へと汐屋の気持ちを向けさせられる自信は無い。

 もし、自分がこの少女と付き合ったら、いつかこの子の事を好きになれるだろうか。




 ーーーー汐屋より?




 静かな公園の中、千歳は悩んだ。

 今まで告白された中で、一番真剣に考えた。

 目の前でぐっと地面と睨めっこをしながら自分の返事を待つ少女を見つめる。

 汐屋より少し背の低い少女。

 色白で可愛らしい顔をしている。


 汐屋はどっちかって言ったら、綺麗な感じやね……


「あ……」


 そこで千歳は気がついた。

 先ほどから汐屋とこの少女を比較している事に。

 そんな状態で告白を受け入れて、上手く行くはずなどない。

 やっぱり汐屋が好きなのだ。


 諦められるなら、こげん悩む訳なかもんなあ。


「そらそうたい……」

「千歳君?」


 ボソリと呟いた千歳に、少女が顔を上げて不思議そうにじっと見る。


「ごめん。好きって言うてくれるとは嬉しかばってん、俺、めちゃくちゃ好きな子のおるけん、あんたとは付き合えん……マジでごめん」

「っ……そ、その好きな子って、千歳君の彼女?」

「いや、俺の片思い

「あの、う、うちのこと知らんから駄目なんやろ? せやったら、ちょっとだけでもええから付き合ってみてくれん? うちの事、今すぐ好きになってなんて言わへんから、うちの事知ってほしいねん。それでやっぱりその子の事が忘れられんかったら、うちも諦める!」

「ーーー」


 泣きそうな顔で必死に言う少女に、千歳は一瞬怯んだ。

 確かに、この少女の事を千歳は知らない。

 いや、同じ学校なのだから顔くらいは知っていたが、話した事など先日の球技大会まで一度も無かった。

 少女の言う事も一理あるかもしれない。

 もし、少女の事を好きになれたなら、汐屋と白石の関係も何事もなかったように気にしなくなるかもしれない。


 でも……


「俺がもし、あんたん事好きになれんかったら、余計に傷つくやろ?」


 千歳の言葉に、少女は激しく首を左右に振った。


「平気! うち頑張るから! 絶対千歳君に好きになってもらえるようにするから! それでも駄目やったら諦めるけど……それでも千歳君がちょっとの間でも彼氏になってくれんのやったらかまへん!」


 こんなにも自分を好きだと言ってくれている。

 今まではどんなに必死になられても断っていたが、やはり今回千歳の心はダメージを負っているらしい。

 少女の言葉に惑わされそうになる。


「ーーーやっぱりいきなり付き合うのは無理やし、あんたの事傷付けるのも嫌やけん……」

「それやったら友達は?」

「え?」

「友達になってくれん?」

「友、達……」

「そう、友達。もっと千歳君と仲良うなりたいねん。彼女面とか絶対せーへんし、友達やったらなってくれる?」

「ーーーうん……まあ、それなら別によかよ」

「ほ、ほんまにっ!?」


 大喜びで千歳の手を握って飛び跳ねる少女。

 その姿を見て、千歳は少しだけほっとした。

 もしかしたら好きになるかもしれない。

 そう、思ったのだ。








                      続く…






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