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散るは花.1

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散るは花












良く晴れた日の午後、土方十四郎は公園のベンチでぼんやりとした休日を過ごしていた。

たまには休みの日に何も考えずにいるのもいいかもな。と思い出て来たのだが、何も考えずにぼーっとするのは案外つまらないことに気付いた。


映画でも見に行くか。


そう思った所で声をかけられた。


「すみません」

「あ?」


ジロリと声を掛けて来た人物を睨んで、土方はすぐに言葉を詰まらせ目を見開いた。

目の前に立っている女の美しさに驚いたのだ。

落ち着いた藍色の着物に長い髪をまとめ上げ、土方を見下ろすその姿があまりにも美しくて土方はしばらく息も忘れていた。


「あの、どなたかと待ち合わせですか?」

「……は?」


突然尋ねられた質問に目の次は口が開く。


もしかして、これって逆ナンってやつ、かーーー?


顔だけは男前な土方は女にモテる。こうやって声をかけられたことだって幾度もある。

だが、こんな美人に声をかけられたのは初めてだった。

慌てて居住まいを正し、それでも恥ずかしさで目を逸らして答える。


「待ち合わせなんかじゃねえよ。暇だからぼけっとしてただけだ」


その答えに女はにっこり微笑んだ。

土方は目の端に捕らえた女の笑顔にドキッとする。


「そうですか。だったら隣り、座ってもいいですか?」

「ーーー好きにしな」


本当は嬉しいのだが、態度に出すと格好悪いので努めて平静を装ってぶっきらぼうに言う。


「ありがとうございます。今日は人が多くてどこのベンチも人がいっぱいで」


へ?


隣りに静かに座った女を見て、次に土方は辺りを見回した。

公園はカップルや家族連れでにぎわっていて、女が言うとおりベンチはどこも空いていなかった。


なんだよ、ナンパじゃねえのか……って、そらそうか。こんな美人が男ナンパするはずねえか。


そう考え、手提げから文庫本を取り出して読み始めた女の横顔をそっと伺う。


長い睫毛。

色白の肌。

どこかしら儚げな印象と知的な雰囲気の表情に、土方は想い人を重ねる。


ミツバ……


ドドドドドド・・・・・・・・・っっっっ!!!


「おい、こら操ーーーーーー! お前はそんな男の隣りで何やってんですかああーーーーーっ!?」


ものすごい足音と不快極まりない叫び声に土方が顔を上げると、一人の男が必死の形相でこちらへ向かって走って来た。


「あ、銀時」


女は笑って立ち上がった。

ゼーゼー言いながら女の肩を抱いて自分の後ろに隠すようにしてこちらを睨んで来た男は土方の因縁の男、万事屋の坂田銀時だ。

土方も負けじと銀時を睨み返した。


「操、何をさも当たり前のようにこんな奴の隣りに座っちゃってんのっ!? バイ菌が移るでしょーが!」

「ちょっと銀時、たまたまベンチが空いてたのがこの人の隣りだったのよ、失礼な事言わないで」

「本当か? 本当にそうなのか? あ~ん? てめえ、俺様の大事な大事な操に邪な事考えたんじゃねーのか? うわっ、すっげー美人! お友達になりたい~とか思ったんじゃねーのかっ!?」

「うっせーな、この野郎! ぎゃーぎゃーわめいてんじゃねえ!」

「大体お前ムッツリだろうが? すました顔してるけど、本当はいかがわしい事ばっかり考えてるんじゃないですかー?」

「俺のどこがムッツリだってんだ!」

「全部ですー。もう頭の先から足の先まで全部もう泥沼にどっぷり浸かってて救出不可能ですーってくらい、全部ですー!」

「んだと、このやろうっ!」

「ちょ、ちょっと銀時!」


お互いの胸ぐらを掴んで今にも殴り掛かりそうになった土方と銀時を、女が止めた。


「お前もちょっとは警戒しろ! こいつがもし連続婦女暴行魔だったらどーすんの! お父さんお前をそんな子に育てた覚えはありませーん!」

「こんなに大勢の人がいる昼間の公園で襲われないわよ……ごめんなさい、銀時が失礼な事を」


頭を下げる女に、土方は怒りの矛先を逸らされツンと横を向いた。


「別にあんたが謝ることないだろ。そこの天然くるくるパーマが全部悪いんだ」

「だ~れが天然くるくパーマだ、この隠れ肥満!」

「誰が隠れ肥満だこの糖尿!」

「あ~もう、はい、ストップ! 私、吉田操と言います。銀時とお知り合いなんですか?」


また言い争いが始まりそうになった二人を止め、土方に尋ねる。

それを面白くなさそうに鼻をほじりながら銀時が答えた。


「こいつ幕府の犬だよ」

「うっせー。俺は土方……真選組の土方十四郎だ」

「真選組……そうですか。銀時がお世話になっています。どうぞよろしくお願いします」

「ああ」

「さあ、銀時行こうか?」

「ああそうだな。こんな奴と一緒にいたら操の内臓脂肪が標準値を超えちまうからな」

「もうっ。それでは土方さん、失礼します」


ペコリと頭を下げた吉田操と名乗った女と、その操の隣りにしっかりとくっついてこちらに向かって腹の立つ顔を向ける銀時を見送って、土方は二人とは反対方向へ歩き出した。


吉田、操ーーー


万事屋と一体どういう関係なのだろうか。

随分と親しそうだった。

ふとさわやかな風が吹く公園を見つめ、土方は再びぼんやりと煙草を吹かした。










                               続く…








どうもー。ここまでお読みくださりありがとうございます!
これはちょっと前に書いてた話しなんですけど、
最近一方的にお友達にメールで送りつけてたのを反省し、HPにアップすることにしやした。
ごめんなさい。ストーカーみたいなメール毎日送って…
あまり本編には触れないですが、土方が可哀想だったんでね。つい(笑)

それでは、しばらくお付き合いくださいませ〜



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