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散る〜.6

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散るは花












「だから、今日も帰れないのーーー仕方ないでしょ? 昨日怪我人がたくさん出たんだから……今度すき焼き作るから。ね? ーーーだからお願い、神楽ちゃんに着替え持って来るように頼んで? ・・・・・・駄目! 絶対に駄目だからね! 神楽ちゃんにお願いしてるんだからねっ!」


ピ!


と携帯を切ると、操は急いで医務室へと向かった。





医務室近くの廊下で声をかけられる。


「万事屋ですかぃ?」

「総悟くん」


横から現れた沖田に、操は笑顔を向けた。


「昨日の怪我人が結構いたから、しばらく交代の先生と一緒にここで治療に専念しようと思って、着替えを頼んだの」

「それなら寝る時は俺の部屋で一緒に寝たらいいんでさぁ」

「遠慮しとく」

「あ」

「ん?」


沖田が外に目を向けると、ものすごい音と煙が立った。


ドゴーーーーーーン!!!!!


辺りからは敵襲という叫び声が聞こえている。

操はまさかと思い、慌てて飛び出した。

沖田も一緒に走る。

屯所の入り口には隊員が10数名集まっていて、門の前の道路を取り囲んでいた。

人をかき分けてその先に出ると、


「ぎっ、銀時っ! 神楽ちゃんっ!」


見事にひっくり返ったバイクと、その横に倒れる銀時。その銀時の頭に噛み付く貞治と銀時のお尻を蹴る神楽の姿があった。


「あっ! 操っ! 銀ちゃんの変態が操のブラジャー無理矢理取ろうとするアルね!」

「ばっ! ちがっ! 違うぞ! 断じて違うぞっ! 俺はただ神楽が無事に届けられるか心配して着いてきただけだからなっ! 何もあわよくば操を連れ戻そうかな~とか思ったり、何かしらハプニングが起きて空に向かってジャンプしたら見えないブロックがあってコインが出て来るんじゃねえかな~? とか思ったりしてた訳じゃねえからなっ!!」

「マリオじゃあるまいし、コインなんて空から振って来る訳ないじゃねーですかぃ。そこの怪力娘、犬がでっけーうんこしてるからさっさと処理しやがれ。それから旦那、俺の操の下着を盗もうなんざ、いい度胸してんじゃねえですかぃ」


カチャリと沖田が刀を構える。


「だーれが俺の操だっ!? このくそガキっ!」

「貞治っ! ここでうんこしたらダメアル! するならあそこの馬鹿の頭の上でするアルよ!」

「怪力娘、俺様とやろうってのかぃ?」

「それはこっちのセリフアル。お前なんか死ねばいいアルっ!!」


ビュン!


「神楽ちゃんっ!?」


神楽がそう言って投げたのは操の着替えの入ったバッグだった。

飛んできたバッグを沖田は刀で切り落とす。

見事真っ二つになったバッグから何故かパンツとブラジャーだけが飛び散る。

驚いた操は倒れている銀時を助け起こした。


「ぎ、銀時。私もう恥ずかしくて死にそうなんだけど」


宙を舞う下着に銀時が血相を変える。


「わーわーわーー!!! お前たちなにやってくれちゃってるんですかっ!? 操の下着が散乱してるじゃねーかっ!」

「心配いりませんっ! 操先生の下着は俺達が全部回収しますからっ!」

「えっ? いや、ちょっと待って!」


操の静止も虚しく、真選組屯所前は収集が付かない状態になってしまった。

本気で戦う神楽と沖田。

飛び散る操の下着を追いかける真選組隊士。

その真選組を取り押さえようと木刀を振り回す銀時。

呆れてもうどうでもよくなっている操。


「お前ら何やってんだあっっっっっ!!!!!」


ビクウッ!


全員がその一声でピタリと動きを止めた。

振り向くと局長の近藤が仁王立ちしている。


「屯所の前で騒ぐ奴があるかっ! 全員持ち場に戻れっ!!」

「「「はいっっっ!!!!」」」


隊員は蜘蛛の子を散らすようにいなくなり、残ったのは銀時と神楽と沖田と貞治と操だけだった。


「一体何の騒……ん?」


近藤はそこで地面に大量に散らばる下着に気付いた。


「ななななな、なんて素敵なものが転がってるんだあっ!?」

「近藤さん。これは万事屋の旦那からのプレゼントでさぁ」

「ちょっと待てっ!」

「なんと、まさか……」


銀時の突っ込みも虚しく、近藤は一番近くのパンツを一枚拾うと、変態よろしく鼻の下を伸ばした。


「そうかあーーー!! お妙さんの! ……万事屋。お前も気が利くじゃないか」

「いやだから違うっつってんだろ」

「ああ、お妙さんっ! 俺は例え離れていても、このパンツ一枚あればあなたをこんなにも近くに感じる事が出来まぶおごおっっっっ!!!!」


パンツに頬擦りしようとしたところで、どこからやって来たのか、お妙が強烈なドロップキックをかまして近藤を見事に倒した。


「なにやってくれてんだ、この変態ゴリラがあっっっ!!!!」

「あ、姉上っ! それは操さんの下着ですっ!」

「うるさいわよ新ちゃんっ! 私のだろうが操さんのだろうが、このゴリラが私の事を考えたってだけでもう有罪なのよっ! 死刑なのよっ!! 死ねっ! 死ねっ!」


怒りをあらわに目を血走らせるお妙により、一応収束した。

操はほっと胸を撫で下ろし、全員で下着の回収に乗り出した。

近藤はまだお妙に蹴られている。


「どうしてこんなにたくさん下着ばっかり持ってきてくれたの?」


もう恥も何にもすっかり抜け落ちてしまった操が隣りの神楽に尋ねると、神楽はしょんぼりとパンツを拾いながら答えた。 


「だって操、しばらく帰って来れないって銀ちゃんが落ち込んでたアル。だから少しでも元気づけてやろうと思って操の部屋からパンツとブラジャーを持ち出して見せたら、銀ちゃん鼻血出してやらしーこと考えたアルよ。だからわたし家に操のパンツが一枚たりともあったら銀ちゃんが本当にもう戻って来れないくらい遠くに行っちゃうんじゃないか心配になって……操の所にあれば銀ちゃんが警察の臭い飯食べずに済むと思ったから持って来たアル」

「そ、そうだったの……」

「ばか! お前何ふざけた事言っちゃってんの! 操、断じて違うからなっ! この馬鹿がバックにパンツとブラジャーばっかり詰めてるのを見たから、着物も入れとけよって言ったんだぞ。それをこの馬鹿が急に『銀ちゃんはもう取り返しのつかない領域に入ってしまったアル~!』とか訳の分かんない事言って飛び出したから、慌てて追いかけて来たんだぞ!」


操からの冷たい視線に銀時は慌てて釈明する。


「でも、持って来てくれたのは感謝しないとね。ありがとう、神楽ちゃん」

「別にいいアル。操のためならこれくらい朝飯前アルよ」

「でも今度からは下着以外のものも持って来てくれると助かるな」

「任せるアル! もうこんな恥は二度とかきたくないね。それもこれも全部銀ちゃんのせいアル」

「だから! 何で俺のせいになるんだよ!」


漸く下着の回収が済み、名残惜しそうにする銀時をお妙と新八に託して帰し、操は医務室に戻った。














「何かやけに騒がしかったな」

「ええ、ちょっと……具合はどうですか?」

「ああ、まだちょいと痛いが、気分は悪くねえ……煙草が吸いてえ」


ベッドの上で退屈そうに言う土方に操は苦笑する。


「我慢してください。これを機にやめるというのはどうですか?」

「ちっ。嫌なこった」

「そうですか。残念です」


操は包帯を外し、傷の様子を見た。

昨日の今日ですぐに傷が塞がる訳ではないが、違和感が残らないように縫合したつもりだ。

消毒をしてガーゼを取り替える。


「……あんたが」

「え?」


小声で何か言った土方に、操は立ち上がろうとした動作を中止する。

土方をじっと見ていると、土方がふと辛そうに笑った。


「あんたが、もし、ミツバの主治医なら……あいつは元気になるかな」


ミツバとは、沖田の姉の事だろう。

前に沖田から暴露された土方の愛する女性。

目の前の土方はそのミツバの事を思い出しているようだ。

一瞬考え、操は尋ねた。


「ミツバさんはご病気なんですか?」


操の問いに、土方は我に返ったように気まずそうに答える。


「ーーーあ? ああ。肺の病気だとよ」

「そうですか……どちらにお住まいなんですか?」

「武州だ」


あの静かで何も無い片田舎と、そこでいつも優しく微笑んでいたミツバを思い出し呟く。


「武州。そんなに遠くないですね」

「田舎だがな。それがどうした?」

「いいえ。土方さんは本当にミツバさんの事を愛しているんですね」

「っ……くだらねえこと言うんじゃねえ」


土方は言葉を詰まらせた。

操はそれ以上何も言わず、静かにカーテンの向こうへ消えて行った。

それを見送り、土方は小さくため息を吐いた。


ミツバの顔が見たい。


そう、思った。









                               続く…





ここからシリアス風になります(笑)




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