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チェンジ・ザ・ワールド☆
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Go leisurely~.4

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 関東大会を前日に控え、宍戸は目の前で殺人的なサーブを放つ長太郎を睨み返していた。

 あれから数日、宍戸の頭の中はテニスのことで一杯のはずなのに、どうしても長太郎と2人だけになると思い出してしまう。

 温室の前で、長太郎と汐屋がしていた事。

 嫌がらせで練習メニューに書き足したランニングはさすがに跡部に叱られて塗り消したが、どうも気になって仕方がないのだ。

 2人の問題なのだから宍戸が気にする必要はないのだが、胸の当たりの靄がずっと晴れない。

 長太郎のスカッドサーブを打ち返した所で宍戸はラケットを持つ手を下げた。

 それを見て長太郎も手にしていたボールをポケットに仕舞う。


「宍戸さん、今日はここまでにしますか?」

「ああそうだな。明日に備えてランニングして終わるか」

「はいっ」


 元気よく答える長太郎に、宍戸は汐屋との事を尋ねるべきか迷った。

 ベンチにラケットを立てかけタオルで顔を拭くと、隣りでドリンクを美味しそうに飲む長太郎を見上げた。

 身長は高いがやはりまだ中学2年生だ。幼い顔は可愛らしいという表現が似つかわしく、穏やかな性格をそのまま映し出している。


「よし、軽く流すか」

「はい」


 走り出した宍戸の後を着いて来る長太郎をもう一度チラリと見上げ、意を決した。


「なあ、長太郎」

「何ですか、宍戸さん?」

「お前、さ……」


 言葉を区切ると、長太郎は首を傾げた。

 ふうと小さくため息を吐いて、宍戸は言葉を続ける。


「ーーーその、よ……付き合ってる女、いるか?」

「えっ!?」

「あ~いや、悪ぃ、変なこと聞いたよな。言いにくいなら言わなくていい」

「どうしたんですか、宍戸さん。急にそんなこと聞くなんて……」


 心配そうな長太郎に、そんなに自分が色恋の話しをするのが変なのかと、この間の跡部との会話を思い出す。


「俺が聞くと変か?」


 少し恥ずかしそうに小さく尋ねると、長太郎は隣りに並んで首を振る。


「いえ、そう言う訳じゃないんですけど、宍戸さんあんまりそんな話ししないから、びっくりして」

「そうか? で? どうなんだよ、彼女いんのか?」


 自分で聞いておきながら、その返事を聞くのが少し怖かった。

 そんな宍戸の気持ちなどもちろん知らない長太郎は照れたように答える。


「彼女はいません……でも、好きな子はいます」


 彼女はいない。

 間違いなく長太郎はそう言った。宍戸はほっとした。


 ーーーあ? なんで俺、今ほっとしたんだ?


 疑問に思いながらも長太郎の顔を見上げると、まだ照れている。


「ふうん、そっか……その好きなヤツって、同級生?」

「あ、はい。同じクラスの子です」

「へえ。俺も見たことあるか?」

「見たことあると思います。宍戸さんが俺のクラスに来た時にたまに俺を呼んでくれる子ですから」

「ーーーもしかして、入り口のすぐ横の席のヤツ?」

「そうです。汐屋雪緒さんって言うんですけど、大人しくて目立つタイプじゃないけど、すごく優しくて……」


 宍戸は長太郎の口から語られる汐屋の事に、安心と同時に不安を覚えた。

 付き合っていないとしても、長太郎の好きな子は汐屋なのだ。

 しかし一つ疑問が残る。付き合ってもいないのに、どうしてキスをするのだろう。

 最近の中学生は興味本位でそんなことをするのが当たり前なのだろうか。

 世も末だ。

 自分も中学生のくせにそんな事を考えて憂える。


「俺よ、この間偶然お前を見かけたんだけどよ……昼休みに温室の前で女の子と、キスーーーしてなかったか?」

「ええっ!?」


 素っ頓狂な長太郎の声に、宍戸は思わず走るスピードを落とす。

 振り返ると、今にも落ちそうな位目を見開いた長太郎が宍戸を見ていた。


「キっ、キスなんてしてませんっ!!」


 今度は真っ赤な顔で首を振る。


「でもよ、丁度渡り廊下を通った時に、お前とその汐屋が温室の前でくっついてるのを見たんだぜ?」

「違いますっ! 美術の授業中に絵が仕上がらなくて、昼休みに残りを仕上げるために温室に行ったら偶然汐屋さんも来て、それで温室に入ろうとしたら汐屋さんが俺の顔にゴミがついてるって言って俺が自分でとれなかったから、それで! 汐屋さんが取ってくれたんですっ!!」


 ものすごい勢いでそう捲し立てると、長太郎は一気に力が抜けたらしくだらりと体を前に倒した。

 それでもちゃんと足は動いているのだから偉い。

 そして宍戸はそんな長太郎の説明に納得していた。

 確かにあの時は宍戸から見たら長太郎が背を向けていたから、角度的にキスをしているように見えただけだったようだ。


「なんだよ、紛らわしいな」


 苦笑しながらそう言うと、もっと早く聞いておけば良かったと心の中で呟く。


「あっ!」

「なんだよ?」


 急に顔を上げた長太郎は、急いで宍戸と並走する。


「もしかしてこの間の練習メニューノートに俺だけ別メニューでランニング30キロって落書きしたの、俺がガキのくせに一丁前に女の子とキスしてたと思ったからですか?」

「ははっ! テニスに打ち込まずになにやってんだ。ってことだよ」

「酷いです、宍戸さん」

「なんだよ、冗談が通じねえやつだな」


 困ったような顔をする長太郎に、宍戸は笑った。

 長太郎と汐屋は付き合っていなかった。

 そしてキスもしていなかった。

 それがはっきりとしただけで、何だか心が軽くなった気がした。







                          続く…



ベタですんません…



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