チェンジ・ザ・ワールド☆
雨の日に〜2−3
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2-3
翌日の朝、岡部は目覚ましよりも早く目が覚めた。昨夜は結局本村を見つけられなかったのだ。おかげで気になって殆ど眠る事が出来なかった。
ふうとため息を吐き起き上がる。カーテンを開けると外は腹立たしい程の晴天だった。
テレビのスイッチを入れニュースを出し、台所のやかんを火にかけ、トースターに食パンを二枚入れると洗面所へと向かった。
顔を洗い漸く覚醒する。
歯を磨きながらテレビに目をやると、岡部達の町で起きている連続殺人事件の特集をやっていた。テレビには犯罪心理学者やら元警視庁捜査一課の人やらが出て、犯人のプロファイリングを行っている。
テレビのキャスターは警察の腑甲斐無さを声を大にして訴えている。全くメディアというのはいい加減なものだ。
大地震が来るだの、殺人鬼がうろうろしてるだの、誘拐犯がすぐそこに迫っているだの、面白おかしく一般市民の不安を煽る。
岡部はニュースに不快感を示すと、関係無い番組に切り替えた。
口をゆすぎ、沸いたやかんのお湯でインスタントコーヒーを入れる。焼き上がった食パンにバターを塗り齧り付いた。
本村にメールをしておこう。
ふと思い、岡部は食パンを齧りながら携帯を手にした。
と、途端に携帯がブルブルと震え出した。見ると坂井からの着信だった。
坂井から携帯に連絡がある事は珍しい。塾での連絡などもメールだし、プライベートではメールのやり取りなどまずしないのだ。
「もしもし?」
岡部は不思議に思いながらも電話に出た。
『ーーーもしもし、おはようございます。岡部先生朝早くからすみません……』
坂井の声は微かに震えていて、その声音からただ事ならぬ雰囲気を感じた岡部は、居ずまいを正した。
「いいえ、どうかしたんですか?」
しばらく沈黙が続いた。坂井は声を殺して泣いている様だった。
「坂井……」
『理絵が……』
岡部が坂井の名前を呼ぶのと同時に、坂井が本村の名前を出した。
「本村さんが、どうかしたんですか?」
岡部の脳裏に、また不気味な映像が浮かんだ。
走り去る黒いスーツの女性の後ろ姿。暗い道の曲がり角を曲がると、はっと何かに気付き振り返る。
しかし振り返った女性の顔は、その女性のすぐ後ろから声を掛けた何者かに遮られて見えない。
女性に声を掛けた人物の手にはぎらぎらと光るナイフが握られていて、どこからともなく白い煙が立ち、甘い香りが充満していた。
『あの……先生……』
電話の向こうの坂井の声で我に返った岡部は、不気味な映像に冷や汗をかいた。
『理絵が夕べから家に帰ってないそうなんです……』
「えっ? そんな、まさかーーー」
冗談では無い事くらい解っているが、どうしてもまさかと言わずにはおれなかった。
『先生、昨日理絵と一緒だったんですよね?』
「ええ、商店街で別れて、心配になって後を追ったんですけど追いつけなくて……」
『ーーーー』
「ーーーー」
岡部と坂井はお互い電話口で無言になってしまった。
「そ、捜索願は?」
微妙に裏返った声で岡部は尋ねた。
『ええ、今朝理絵のご両親が警察に行って……私心配で、これから探しに行こうかと思ってるんです』
直ぐさま岡部は加藤の顔が脳裏に浮かんだ。
そうだ、加藤に電話をしよう。何か分るかも知れない。
「僕も一緒に探します。十分後に駅前で落ち合いましょう」
『はい、ありがとうございます』
岡部は電話を切るとすぐに出かける準備をし、髪を梳かす事も忘れて家を飛び出した。
早足で歩きながら岡部は加藤に連絡を取った。出ないかも知れないと思われた携帯のコールは、たった二回目で本人の声に変わった。
『おい、岡部! お前今どこにいる!?』
こちらが何かを言う前にいきなり大声で怒鳴られ、岡部は面食らった。
「え? 今駅に向かってる所だけど……」
『本村建設の社長の娘が夕べから行方不明だ。お前昨日の晩に、二人で飯食いに行っただろう?』
「ああ、その事でお前に電話したんだ、さっき坂井先生から電話があって……本村さん見つからないのか?」
岡部の言葉に加藤はしばし無言になると、電話越しでもはっきりと分るくらい大きなため息を吐いた。
どくん……
妙な緊張感に心臓が脈打つ。
『落ち着いて聞けよ、岡部。本村理絵がさっき死体となって発見された、そしてお前を重要参考人として任意同行させる為に、俺はお前の家の近くまで来てるんだ……』
岡部は我が耳を疑った。
本村理絵が死体で発見されたーーー
どくん……
自分が殺人の容疑者ーーー
どくん……
「加藤、お前何を言って……」
信号待ちをしている岡部の視界には、駅前でそわそわと落ち着き無くしている坂井の姿が映っていた。
続く…
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