チェンジ・ザ・ワールド☆
雨の日に〜2−5
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2-5
「国から犯罪心理学の先生が派遣されて来たと言う事は、やはり岡部が犯人ではないって事ですかね」
コーヒーを飲みながら、津田がやる気なさ気に言った。
「さあなあ、あまりにも俺達管轄が腑甲斐無いから業を煮やしたんだろう。あんな若い女にまかせるなんて、国のお偉いさん達もヤキが回ったな」
がつがつとピラフの大盛りを食べながら答える加藤は、チラリと目の前で落ち着き無くしている喫茶店の経営者夫婦を見た。
「でも、成川さんって美人でしたね……あんまり化粧っけは無かったけど、肌も白くてきめ細やかで、目鼻立ちも人形みたいで……あ痛っ!」
でれっと鼻の下を伸ばす津田の後頭部をごつんと叩くと、加藤はコーヒーを飲んだ。
「清ちゃん、進ちゃんの無実を早く証明してよっ。進ちゃんが可哀相だわ……」
今にも泣き出しそうな佐知子は、じっと棚にある岡部専用のコーヒーカップを見つめた。その横で夫の圭太もぼんやりと皿を拭いている。
「分ってますよ、今俺は直接岡部に会う事は出来ないけど、頑張って裏を取って岡部のやつを早く出してやる。だから大船に乗ったつもりでいてください……」
川岸夫妻をなぐさめながら、加藤はふと店の外に人影を捕らえた。
不審に思いそっと入り口まで行きドアを開ける。
「あ、あんたはーーー」
ガチャリと開けたそこには坂井春香が立っていた。
「あ、あの、加藤さん……私にも岡部先生の無実を証明するお手伝いをさせて下さい、お願いします! 何だか凄く不安でーーー」
大きく頭を下げ懇願する坂井は、いつから待っていたのか寒そうに微かに震えていた。
秋になり始めとはいえ夕方になると気温も下がって来る。坂井は薄手のカーディガンを羽織っていたが、寒かったのだろう。
「ーーーいいから入りな」
そっと肩に手を回すと、すっかり冷えきった坂井の体から力が抜けて行った。
加藤はよろめく坂井をカウンターに座らせ、コーヒーを頼んだ。
「清ちゃん、こちらは?」
佐知子の質問に加藤は答える。
「岡部の同僚で、坂井春香さんだ……」
「殺害された本村理絵さんの友人でもあります……痛っ!」
「この馬鹿っ!」
横から無駄な情報を流す津田にもう一度拳骨を食らわせると、加藤は坂井の顔色を窺った。
「いいんです……私、大丈夫ですから……真犯人を見つける事がなにより大事だと思うんです。だから、だからっーーー」
ぽろぽろと友人の無惨な姿を思い出したのか泣き出した坂井に、加藤はかける言葉が見つからなかった。
そっと差し出されたコーヒーを、震える手で持つ坂井の姿が痛々しい。
「お、俺の所為っすかね……?」
「アホ……」
申し訳無さそうに自分を見上げる津田を、加藤は睨んだ。
カラン カランーーー
珍しく客が良く入る日だ、と思いながら横目で入り口を見ると、先ほど署長室で会った成川が入って来た。成川は加藤と津田を確認し、津田の隣りへとやって来た。
「ここ、いいですか?」
「どうぞどうぞ!」
津田はご機嫌で椅子の上に置いていた自分の荷物を床へ投げた。
「ホットコーヒーを一つ……あの、お二人を捜していたら、ここだろうと課長さんに教えて頂いたので……」
「何かあったのか?」
加藤は津田の頭があまりに成川の顔とかぶり邪魔になり、カウンターに津田の頭を押し付けて尋ねた。
「いえ、先程岡部さんと面会して来たんですが、非常に興味深い事を言っていたのでお二人にお話を伺おうかと」
加藤は成川の顔を見つめた。岡部が興味深い事を言っていたとは一体どんな事なのか。ぐいと津田の頭を元に戻し詰め寄る。
「お前そんな事一言も言ってなかったじゃないか」
「痛たたた!……いえ、俺も知りませんよ。そんな興味深い様な事は何も言ってませんでしたしーーー」
掴まれた頭を擦りながら、津田は馬鹿力の加藤を睨んだ。
「いえ、本人にもそれが何を意味しているのか良く分っていない様でしたし、かなり危険な事でもあったので……」
困った様な顔で出されたコーヒーを一口飲むと、成川はショルダーバッグからファイルを取り出した。
「今回の事件を私なりに整理してみたんですけど、どうも犯人像が掴めなくて……」
「おい、ちょっと待ってくれ!」
加藤が突然大きな声を出したので、その場にいた全員がびくりと肩を竦めた。
「ど、どうしたんですか、先輩」
「こんな一般人がうようよいる場所で、プロファイルの結果を出して検証するつもりか?」
「あ……」
津田と成川は慌てた。
「ちょっと清ちゃん、私達は関係者よ! 話しを聞く権利はあるはずだわ」
佐知子の言葉を一蹴し、加藤達は立ち上がった。
「今はまだ駄目です。ご馳走さん」
また珍しく加藤は札を2枚置き、津田と成川と共にガブリエルを後にした。
「坂井さん、また連絡しますから……元気だしなよ」
ドアから出る瞬間、寂しそうにする坂井にそう言った。
続く…
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