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雨の日に〜3−4

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3-4
















 「絶対、おかしいですよね」


 古井呉服店を出てから、津田が先を歩く加藤の後頭部に向けて言った。


「そうだな……」


 先輩の気の無い返事に、津田は少し頭に来た。どうも先程から様子がおかしい。


「そうだなって、先輩! 他に何か無いんですか?」

「仕方ないだろ? 気分が悪い上に、知らないって言ってんだから」

「でもあんな顔しといて知らないは無いでしょう? 絶対何か知ってますよ!」


 しつこく背後から文句を言う後輩に、加藤は自分の頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。


「うるさいな! んな事ぁ分ってるんだよ!  俺だってあの古井牧夫と写真の男が繋がりがあるって思ってるし、あのじいさんが何か知ってるってのは分ってるんだ! だけど無理矢理しゃべらせる訳にはいかないだろうが!」


 アーケードの真ん中で睨み合う二人の刑事に挟まれて、成川は恥ずかしくなって辺りをきょろきょろと見回した。


「あれ?」


 ふと成川の視線の先に、古井牧夫の姿が映った。どうやらこちらを伺っていたらしく、成川と目が合った瞬間、くるりと踵を返した。


「加藤さん、津田さん! 古井牧夫が逃げます!」

「何だって!?」


 成川の言葉に、睨み合っていた加藤と津田はにらめっこを中断し、足早に路地を曲がる古井牧夫の姿を捉えた。


「おい、追うぞ!」

「はいっ!」


 流石にそこはコンビだ。今の今まで睨み合っていたはずなのに、あっという間に同時に走り出し、牧夫に追いついた。












 「待って下さい! どうして逃げるんですか!?」


 津田に腕を掴まれ、加藤に前方を塞がれ、とうとう古井牧夫は観念して立ち止まった。


「いえ、あの……」

「すみません、怖がらせるつもりはないんです。何か私達に御用でも?」


 漸く追いついた成川が牧夫の前まで来て言うと、俯いたまま牧夫は微かに視線を足下から成川の足下辺りへ動かした。


「どうしたんですか?」


 成川に言われ、牧夫は少し顔を上げた。


「あの、先程父が知らないと言っていた人ですが、もしかしたら知っているのではないかと思って……」


 牧夫のその言葉に、三人は顔を見合わせた。


「どうしてですか?」


 津田が尋ねた。


「ーーー私がまだ小学校に上がる前、父が年に一度着物を届けるお寺がありまして……そこの住職が家へ遊びにいらした事があったんです。その時、私は一人縁の下で遊んでいて、偶然二人の会話を聞いたんです……」


 ゴクリと生唾を飲み込み、牧夫はそこで一旦言葉を区切った。

 加藤達は黙ったまま、牧夫の次の言葉を待った。

 しかし中々次の言葉が出てこない。


「大丈夫ですよ、落ち着いてゆっくり話して下さって結構ですから」


 成川の声は、人を落ち着かせる独特の雰囲気があった。牧夫は成川にそう言われると、ギュッと両手の拳を握りしめ、ふと緩め続きを語った。


「ーーーその時、父が住職に尋ねていたんです……その、あの子……倅は元気ですか?とーーー」


 !?


 加藤は驚いた。津田と成川も驚いていて、瞬きもせず牧夫を見つめていた。


「……最初は倅の意味が分からなかったんですが、後で家の者に聞いたんです。倅とは何の事かと……そうしたら、息子の事だと教わってーーーですから、もしかしたら私には兄弟がいるのではないかーーーと、幼心に思った事がありました……しかし父はそんな素振りは一度も見せなかったし、家族の者も知らない様子でしたので。ですから、聞いてはいけない事なのかと思い、ずっと聞かずにいたんです。私も大人になるにつれ、すっかりその時の事も忘れていたんですが、先程写真を見せられたのと、父の様子で思い出したんです」


 牧夫が言い終えると、加藤は牧夫の両肩を掴んだ。


「牧夫さん……一緒に、お父さんの話しを聞きに行きましょう。いいですね?」


 加藤の力強い言葉に、牧夫は自然と首を縦に振っていた。














                                  続く…















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