チェンジ・ザ・ワールド☆
雨の日に〜5−4
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5-4
帰りの車の中、成川は加藤の運転する車の助手席で今までの事を整理していた。
殺された女性達に身体的、生活上での共通点は無い。強いて言えば同じ市内で生活しているという事くらいだ。
桂元秋杜という、可哀相な運命の元に生まれた男性。
当時、18歳という年で自身の性的嗜好に気付いた時、どれ程悩んだだろう。現実から逃げ続けて約30年後に、自らの性癖を露見する事となるきっかけになった、初恋の少女にそっくりな本村理恵を見つけた時、彼の中で何かが弾けたのかもしれない。
それから6年という歳月の中で、彼はどうやって生活し、愛していた女性を手にかけるという経緯に至ったのか。
殺された他の女性と本村理恵との相違点。それは扱い方だ。本村理恵に対して特別な感情があったからこそ、彼女に酷い事をしなかった……いや、出来なかったのだ。
秋杜というキーワードを探っていて、聖パトリキウス女学院の売春まで行き着いたというのに、まるでその先が見えない。水蒸気をたぐり寄せるが如く、掴めそうで掴めないのだ。
坂井春香、本村理恵、古井仁美、近藤あかり、そして本村の恋人のサトル……それぞれが濃い繋がりを持っていそうなのに、一番肝心な本村理恵とサトルという証人はもうこの世にはいない。
「死人に口無し、かーーー」
「何だって?」
ぼそりと隣りで呟いた成川の言葉に、加藤が顔をしかめた。
「あ、いえ……どうも一番肝心な人物である本村理恵さんとその恋人だったというサトルという男、この2人が死んでしまっているのが気になって」
「大体サトルって男の事を知ってるのは、現時点で坂井さん1人ですからね。ホテルの方も潰れちゃって、6年前に働いていた人なんかも結局分らなかったし……近藤って人が何か知っててくれると助かるんですけど」
津田が後部座席から顔を出して言った。
「取り敢えず一度署に戻って古井仁美の毛髪を提出して、福岡市内に向かうぞ」
警察署に戻ると、今までの被害者の事をもう一度調べ直すからと津田は課長に捕まってしまい、近藤あかりの所へは加藤と成川、おまけで岡部の三人で出向く事になった。
一日の移動距離が二県に股がり、加藤は車の運転もそろそろ疲れて来た頃だった。
急に成川が岡部に質問をしてきた。
「岡部さん質問なんですけど、被害者の女性を見た記憶があると以前おっしゃってましたよね?」
「え? ええ……何となく見たような気がするとは思いましたけど」
岡部は助手席から振り返って答えた。
「最初の被害者が出たのが今から半年程前ですけど、その頃何か変わった事はありませんでしたか?」
成川の質問の意味がよく分からず、岡部は瞬きを何度かすると、首を傾げた。
「あの、それはどういう……」
「最初私は、被害者同士の共通点が現段階では何も無いという状況で、岡部さんが不思議な映像を見たというのは何か岡部さんと関係があるんじゃないかと思っていたんです。そこに桂元秋杜という不審な人物が浮かび上がり、37年前にまで遡って調べ、6年前の女子校の売春まで絡んで来た。でも、私はもっと単純な何かがこの事件の真相なのではないかと思っているんです」
「それは桂元秋杜は事件の犯人じゃないって事なのか?」
成川が言い終えると、加藤がルームミラー越しに成川を見て聞いた。
「いえ、彼はこの事件に何かしら関係があるとは思います……でも、彼が何かの目的を持って女性を襲ったとは、どうしても思えないんですよ」
「だけど秋杜は変な性癖を持ってるじゃないか。昔好きだった女の子にそっくりな本村理恵を偶然見つけて、しかもその女性が売春してると知った。で、自分がその客になったものの仲介をしてた男は心臓マヒで死んでしまい、会えなくなった。それから本村はアメリカに行ってしまい、悲嘆にくれて他の女を探して、自分好みの若い女が夜中に一人で歩いてるのを見てちょっと声を掛けたら抵抗されたから、どっかに連れ込んで何かの拍子で殺してしまった。そしたらそれが快感になってしまって連続殺人犯になった……そんな時に偶然また本村理恵が自分の目の前に現れて、とうとう我慢出来なくなって殺してしまったっーーてのが俺の考えなんだけどな」
加藤の立てた推論は、かなり筋が通っている。岡部もなるほどと相づちを打った。
「そう……ですね」
成川も頷いたが、その顔は納得してはいない様子だった。
「今ここで考えても始まらないし、取り敢えず近藤あかりって女に会って話しを聞くしか無いな」
加藤の一言で、成川は暗くなり始めた外の景色を眺めた。
続く…
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