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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

雨の日に〜5−5

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streetpoint

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5-5
















 近藤あかりを出勤前に呼び出し、勤め先というクラブの近くにあるカフェで4人は無言でコーヒーを飲んでいた。

 流石に大都市のカフェはお洒落で人も多い。加藤は行きつけのガブリエルとの差に、川岸夫妻の行く末を案じてしまった。

 焦げ茶色で統一された店内はテーブルがゆったりと並べられ、観葉植物も豊富に飾られている。奥の方は一段高くなっていて、壁際には長いソファーがずらりと作り付けてある。窓も床から天井まで大きなガラスで、外を通り過ぎる人の様子がよく見える。

 何となく窓際の席は落ち着かなさそうだと思いながら、店側に警察手帳を見せて人が近くに座らない様配慮してもらった、一番奥の席から外を眺めた。


「あの、話しって一体何ですか?」


 沈黙に堪え兼ねたのか、近藤が口を開いた。

 近藤が苛立っている事に気付き、ここでも成川が質問を始めた。


「近藤さん、先日お会いした時、坂井春香さんとはそんなに親しくはなかったとおっしゃってましたね?」

「ーーー特別仲が良かったって訳じゃないですよ」

「サトル……という男、ご存知ないですか?」


 成川の口から出た名前に、近藤はピクリと眉を動かした。


「……さあ? 知りません」

「では単刀直入にお聞きしますね。近藤さん、あなたは高校生の時、坂井春香さんと学校以外でのお付き合いがあったんじゃありませんか?」


 カチャリと近藤は手に持っていたアイスティーをテーブルに置くと、成川の目を見つめた。


「仁美が……しゃべったんですか?」


 無言で近藤の視線を受け止める成川に、近藤は観念したのか、はあと大きなため息を吐くと椅子にだらしなく体を落とした。


「どこまで知ってるんですか?」


 バッグから煙草を取り出して火を付けた近藤が煙を成川の方へ向けて吐き出すと、成川は何も言わずただ微笑んだ。


「ーーーそう、全部分ってるって事なんですね。サトルの事が聞きたいんですか?」

「ご存知なら……」


 ふうと近藤は大きく煙を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。覚悟を決めた様だ。


「サトルは最初、坂井さんの彼氏だと思ったんですけど、本村さんの彼氏だって坂井さんに聞きました」

「どうして坂井さんの彼氏だと?」

「いや、サトルが坂井さんの事を好きみたいだったし……でも本村さんの彼氏って聞いたから、気のせいかって」

「サトルって人と話した事は?」

「殆ど無いですよ。名前は教えてくれたけど、それ以外は話しかけるとすぐ怒るから、ムカついて話しかけない事にしてたし」


 古井仁美も近藤あかりもサトルに話しかけたら怒られたと言う。癇癪持ちだったのだろうか。


「この写真の男に、見覚えはありませんか?」


 成川が差し出した写真を手に取り、近藤は桂元秋杜をじっと見た。


「あれ?……この人」

「知ってますか!?」


 成川が少し興奮した様に目を見開くと、近藤はこくりと頷いた。


「髭は無かったけど、昔坂井さんと一緒にいる所を見た事あります」

「な、なんですって!?」


 加藤と成川は身を乗り出した。岡部は逆に椅子の背もたれにガツンと背中をぶつけるように仰け反った。


「この男に間違いないですか?」


 成川は目を見開いたまま近藤に尋ねた。


「たぶん、この人だと思います」

「いつ、どこで見ましたか?」

「確か……サトルが売春で稼いだお金を組から持ち逃げして行方知れずになった後だから、6年前の秋頃に比佐市内のラウンジで……」

「サトルという人は、組から売春の売上金を持ち逃げしたんですか?」


 成川は見開いていた目をしぼませると、首を傾げた。


「いや、持ち逃げしたんじゃないかって、坂井さんが言ってましたけど。急に連絡が無くなったし、全く姿も現さなくなったから」


 持ち逃げしたのではなく、山の裏手で死んでいたのだからいなくなったのだ。

 と、言う事は坂井がそう近藤に言ったのは何故だろうか? 坂井はサトルからいくらかの手数料をもらっていたというのか。


「そうですか……ラウンジというのは?」

「私がちょっとだけバイトしてた、比佐市内の繁華街から外れた所にある小さいラウンジです。まさか知ってる人が来るなんて思ってなかったから、慌てて隠れて2人の様子を見てたけど、何か坂井さんがいつもと違ってちょっと怖かったかな」


 高校生だというのにラウンジでバイトとは、近藤はお嬢様学校には珍しいタイプだったようだ。


「どんな事を話していましたか?」

「さあ、そこまでは……男の人が何か必死でお願いしてる感じでしたけど」

「お願い?」

「2・3回お店に2人で来て話してたけど、いつも男の人は坂井さんにすがるみたいにしてました。でも見てる事がばれたら私も困るし、坂井さんが帰るまで隠れてました」

「その後は来なかったんですか?」

「さあ? その後バイト辞めちゃったから」

「近藤さんは坂井さんを見た時、一緒にいる男の事をどう思いましたか?」


 成川の質問に、近藤は首を傾げた。


「どうって……最初見た時は知り合いのおじさんの酒飲みに付き合わされてるのか、ぐらいにしか。でも流石に2回目以降はちょっと怪しいなって思いましたけど、坂井さんに限ってって……」

「そのラウンジに写真を見せに行くか?」


 加藤が途中で口を挟んだ。


「あ、その頃働いてた人、オーナーを筆頭に総入れ替えしてるから、行っても誰も知らないですよ?」


 近藤の言葉に、加藤は残念そうに肩を竦めた。何か見えない壁が加藤の前にある様だ。知り得たい情報をちらつくだけちらつかせて、犯人があざ笑っている様な気がしてならない。


「そうか……誰か連絡取れる人は?」

「う〜ん。分からないですね」


 2人の会話が終わると、成川が再び質問をした。


「坂井さんにこの写真を見せた時、彼女は知らないと言ったんですが……」

「え、そうなの? 髭があったから分らなかったのかな?」


 しかし数回見た事のある近藤がすぐに思い出したのに、直接会って話している坂井が思い出せないというのはおかしな気がする。成川はチラリと岡部の様子を窺った。どこか虚ろな目で瞬きもせず近藤を見ている。


「最近坂井春香さんに会った事は?」

「いえ、高校卒業してからは一度も会ってませんよ。彼女大学に進学したし、私はそのラウンジのお客さんで今勤めてるクラブのオーナーに気に入られて、その人が福岡の繁華街にお店出すから一緒に働かないかって誘われて、すぐこの世界に入ったし」

「そうですか……では金額の事ですけど、1回で4万円もらっていたというのは本当ですか?」


 成川の不躾な質問にも、近藤は嫌な顔一つせずにあっけらかんと答える。


「ええ、基本4万円で、たまに多くくれる人もいたけど、手数料が別でいったみたいですよ」

「いくらぐらいですか?」

「さあ、そこまでは……でも私達に払うよりは少なかったみたいですけど」

「では近藤さんは写真の男性と坂井さんの関係も知らないし、サトルという人物についても何も知らないんですね……坂井さんから何か聞いてませんか?」

「いいえ。私があんまりいい小遣い稼ぎになるもんだから、何度も客を紹介してくれって頼んだら、渋々連れてってはくれましたけど。でも彼女はあんまり深入りしない方がいいって、本村さんともあまり係わると、自分みたいに大変な目に遭うから気をつけろって心配してくれてました……」


 坂井の話しによれば彼女もあまり詳しい事は知らない様だったから、近藤にも話しようが無かったのかも知れない。しかし、桂元秋杜の事はもう一度正さねばならない。と、加藤は鉛筆を握りしめて思った。


「分りました、本当にありがとうございました。また何か窺うかも知れませんが、その時は宜しくお願いしますーーあと、最後に少し調べたい事があるので、宜しければあなたの髪の毛を一本頂きたいのですけど」


 成川はペコリと頭を下げた。


「ーーーええ、どうぞ。じゃあ、もう私行きますから」


 近藤は長い髪の毛を一本自分で引き抜くと、それを加藤が広げるハンカチの上へ置いて立ち上がり、軽く会釈をして颯爽と去って行った。

 まるで高級な血統書付きの猫の様だと、その後ろ姿を見て加藤は思った。













                                  続く…















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