チェンジ・ザ・ワールド☆
雨の日に〜6−3
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6-3
小学校の時だった。みんなが口を揃えて言っていた。
「本村理恵ちゃんは可愛い」
と。そんな事は言われなくても分っていた。ただ、少し我が儘なお嬢様気質な所為で、周囲に敬遠されがちだった本村は、何故か自分とは誰よりも仲良くしてくれていた。
それが堪らなく嬉しくて、自分は特別なのだと思えた。
その気持ちは中学、高校と大人になるにつれ強まり、それと同時に本村の美貌にも磨きがかかって行った。
一緒に町を歩けば男の人は皆本村を振り返る。そんな本村と一緒に歩ける自分が、やはり誇らしかった。
ある日気が付いた。
本村が誰かに取られてしまうのではないか、と。
誰かに取られてしまうくらいならば、本村が周りに嫌われてしまえばいいと。
周りに嫌われて、本村が自分だけを頼りにしてくれればいいと思った。それが単なる我が儘である事など、どうでも良かった。
それが自分にとって、最良の選択だったから。
上手く行った。
何もかも。
本村が売春しているという噂を流し、本村にバレない様に立ち回った。その結果本村は学校中から敬遠される存在となり、自分とだけの学校生活を楽しんでくれた。
唯一辛かったのは、本村本人が周りに嫌われた本当の理由を知らずに、ずっと苦しんでいた事。
でもそんなのは、自分がいれば何の問題も無い事だった。だっていつも明るく自分に話しかけてくれていたから。
なのに、高校を卒業すると自分一人を残してアメリカの大学へと行ってしまった。手紙はしょっちゅう届いたけど、会えない事にどれだけ苦しんだか……しかし、それは再び本村が自分の元へ戻って来る為のステップアップだと思い、自分も大学へ進学して学習塾へと就職した。
そこで、岡部と運命の出会いをしてしまったのだ。
もう本村などどうでも良くなっていた。
岡部進一が、自分の全てになっていた。
岡部の姿を見る、声を聞くだけで幸せな気持ちになれたし、話しが出来た時など有頂天という言葉が存在する意味を、身を持って知ったのだった。
想えば想う程、岡部の全てを手に入れたくなり、いつでも岡部の後を付いて回る様になっていた。
それは互いの愛の為に必要不可欠な儀式だった。岡部は自分を愛してくれているのだし、自分も愛しているのだから、岡部の全てを知っているのは当たり前だと。
それなのに、自分の心の中にどうしようもないどす黒い何かがずっと居座り続けていた。
邪魔な存在を一人殺す度、自分の中の何かがパリパリと壊れて行く……そんな感じがしていた。
消えてしまいたい。
もう、自分でもどうしていいのか分らなくなっていた。
「岡部、セン、セ、イーーー」
「坂井先生! 坂井先生、しっかりして下さい! すぐに医者が来ますから!」
ああ、手が届きそうなくらい近く、目の前に愛する人がいて、何かを言っている。
遠くで慌ただしくなる雑音を聞きながら、坂井春香の心臓に突き刺さったナイフから、己の手がぽとりと外れて落ちた。そしてその手を伝い、生暖かい液体が滴る感触を最後に、意識を失った。
犯罪を犯してまで愛し続けた男の腕の中にいる事に、気付く事も無く。
ああ、どうしてこんなに、温かいのだろう。
続く…
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