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利根8日目・No.1

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様












8日目






 昨日、劇出演者の一人が倒れて、急遽代役が立てられる事となった。

 おかげでその子の衣装を担当していた利根君は代役の子に合うよう衣装をリサイズしないといけないらしく、昨日も遅くまでのこって作業をしているみたいだった。

 私は小物を自室に持ち帰って、さなぎと楽しく作業の進行具合の話しをしながら作ってたんだけど、利根君ちゃんと休めたのかな? 心配。


「ねえねえ、美羽」

「なあに?」


 部屋を出る準備をしていると、さなぎが遠慮がちに声を掛けて来た。


「利根君、なんか疲れてるっぽくない? 大丈夫?」


 さなぎも今朝の朝食の時に見かけた利根君の姿に、私と同じ事を考えていたみたい。だって本当に笑顔に力がなかったもんね。


「う~ん。ハプニングがあったから、遅くまで作業してたのかも。後でさり気なく利根君と話してみるよ」

「お願いね。利根君ファンとしてはやっぱり心配だもん」

「分かった」

「じゃあ、またね。美羽も無理しないでよ!」


 そう言って部屋を出て行くさなぎに、私は苦笑する。


「私は大丈夫よ。お互い仕事頑張ろうね!」


 私の言葉に拳を振り上げて返事をすると、さなぎは軽快に出て行った。

 さあ、私も頑張るぞ!















 部屋を出て衣装作成部屋へ行くと、まだ来ている人は少なかった。

 あ、利根君。

 そんな中、利根君はもうすでにミシンを動かしている。


「おはよう、利根君」


 私が声をかけると、利根君が顔を上げて微笑んだ。


「小日向さん、おはよう。早いね」

「利根君の方が早いじゃない」


 手を止めて小さく息を吐くと、利根君は自分の前の椅子を私に勧めてくれた。私が椅子に座るのを確認して話しを続ける。


「俺はちょっと急ぎで作らないといけないものがあったからね。あ、そう言えば玲が、昨日の夕食のハンバーグがすごく美味しかったって褒めてくれたよ」

「本当? やっぱり美味しいって言ってもらえると嬉しいよね」


 会話をしながらもやっぱり少し疲れているのが分かる。

 そうだねと相づちを打つ利根君に、私は持っていた野菜ジュースを渡した。

 本当は作業中に飲もうと思って部屋から持って来てたんだけど、疲れてる時はビタミンかな。なんてふと思ったから。


「あのね、これ。良かったら飲んで」


 急にジュースを渡されたものだから、利根君は驚いた。


「え? でも、これ小日向さんのじゃ……」

「いいのいいの、私のは部屋にまだあるから! これ結構美味しいんだよ。それじゃあ、またね」


 半ば強引に利根君の手にジュースをねじ込んで、私は自分の席へと急いだ。

 自分の席に座って作業の準備を始めた所で一度利根君の方を見ると、利根君も私を見ていて、にっこりと笑ってジュースを小さく振ってくれた。

 ありがとうって事だよね。

 たまには私の食い意地(?)も役に立つな。


 少しだけ嬉しい気持ちで、その日の作業をすることが出来た。












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