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土屋10日目・No.3

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様














「土屋先輩」


 ふいに聞こえたその声に、私は思わず顔を弾かれた。振り向くとそこには水原さんが立っていた。


「土屋先輩、あの」

「やぁ、水原さんだっけ? ……用件は何?」


 土屋君は水原さんを見ても今までと何も変わらない様子で、またすぐに夜空へと視線を馳せた。


「あの……私……やっぱり……その……」


 口ごもる水原さんを見て、私はこの場にいてはいけないと感じた。


「あ、私、えっと席を外すね~」


 比較的明るく言った。でもそれに対する土屋君の声は冷たかった。


「いいよ、君はここにいればいい。すぐに終わる」

「え?」


 去ろうとする私の腕を掴むと、土屋君は夜空に投げていた視線を水原さんへと向けた。


「断ったはずだよね?」

「……はい。でも私……やっぱり諦められないんです! 土屋先輩の事が好きなんです!」

「僕はあなたに興味は無い」


 花火の大音響にも負けない凛とした声が響き渡る。


 どうしよう……こんな……。


 土屋君に掴まれた腕が無意識に震えていた。


「先輩……」

「はっきり言おうか? あなたに思われても迷惑なんだ」


 その土屋君の言葉に水原さんの顔がサッと青ざめた。


「私……私……っ! ごめんなさいっ!」


 水原さんが涙で瞳を潤わせながら、その場から駆け去っていく。


「水原さん!」


 追いかけようとした私の腕を、土屋君が強く引く。


「きゃっ!」


 走り出そうとしたその反動で、私は土屋君の腕の中に引き込まれた。


「つ、土屋君……」

「君は僕と花火を見ていればいいんだよ」


 耳元で優しく囁かれて、脳がとろけそうな心地がした。


「でもっ……あんなの……ひどいよっ!」


 吸い込まれそうなその温もりを振り払って、思わず叫んだ。


「好きでも無い人間にお情けで付き合う方がよほど酷いと思うけど?」


 土屋君は自分の腕から逃れた私を射るような瞳で見つめてくる。

 違う、違うの。

 私は土屋君の事が本当に好き。だけど水原さんがあんな風に嘆いているのに、その腕の中で甘えるのは違うと思った――けど。

 そんな言葉は喉を通らない。


「行きなよ、君の好きな所へ」

「土屋君」

「行けって言ってるだろ?」


 私はその場から逃げるように宿舎へと向かった。

 涙が溢れて止まらない。

 自分でも何がしたいのかよく分からない。


 だけど……

 だけど…………


 ドーーーン! とひと際大きな花火が上がって、震える空気の振動が心臓にまで突き刺さるような気がした。


 ドーーーン!

 ドーーーン!


 花火の音だけが私の世界を支配していた。













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