チェンジ・ザ・ワールド☆
三島4日目・No.4
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私のやんごとなき王子様
鬼頭先生の待機している医務室にノックをしてから入室する。
「鬼頭先生……?」
「なんだ」
「わぁっ!」
思いのほか近くから聞こえてきた声に、思わずびっくりして声を上げてしまう。
だってドアのすぐ傍にいるんだもん。
「わぁ! とはご挨拶だな、小日向」
うっ、怖い怖い怖い。
「えっと、三島君が船酔いしたみたいなので……」
「ほう。中に入れ」
「はい、失礼します」
「……い……ます」
私の後に続いて、三島くんも小さな声を零した。本当に辛そうで心配になる。
ヨロヨロとした足取りの三島君をベッドに寝かせると、鬼頭先生が診察を始めた。
なんかこうやって見ると本当に保健の先生なんだなあ。いつも憎まれ口叩いてる姿しか見ないから忘れてた。
「なんだ?」
「え?」
「さっきからジロジロと、俺の顔を盗み見て楽しいか? あんまり見てると金取るぞ」
「ええっ?」
具合の悪そうな三島君が、そんな鬼頭先生の言葉を聞いて増々眉間の皺を増やした。
ほら、呆れてるよ三島君が。てか私、そんなに見てた? ーーよね、だって真面目な鬼頭先生見たの初めてなんだもん。
でも何かやっぱりムカつく。
チラリと一瞬私を横目で見ると、先生はニヤリと笑った。
「三島、お前も大変だな、こんなのが実行委員でお前も苦労するだろう?」
「むっ……。先生! 私の事はどうでもいいから三島君をちゃんと見て下さい!」
「ほら、うるさいし、ドジだろ?」
また余計な事を。と言おうとしたら、三島君が反論してくれた。
「そんな事、ありません……彼女は、よくやってくれてます……」
三島君の言葉がすごく嬉しい。そんな風に言ってくれるなんて、実行委員を選んで良かった。って感動した――のに、
「まったく、お前は生徒会長にまで気を遣わせるとはな。三島、もしいらなくなったらすぐに捨てていいぞ。きっと真壁が骨を拾ってやるだろうからな」
もうっ! どうして私をいじめないと気が済まないのかな、この人は!
「私だって少しは役に立ってます!」
「ふっ、どうだかな」
思いっきり睨んでみたけど全然効果はなくて、鬼頭先生は涼しい顔でカルテにペンを走らせた。
「ただの船酔いだな、酔い止めをだそう」
「はい……」
そういうと鬼頭先生は酔い止めを取りに救急ボックスの方へと向かう。
「小日向君……」
横になった事で少し落ち着いてきたのか、三島君が私に声をかける。
「体調管理に気をつけるようになどと言っていた俺が……こんな失態を……すまない」
余りに辛そうなその表情が心の奥に刺さるような気がした。
「そんな事無いよ、全然」
つとめて明るく言ったつもりだけど、完璧主義な三島君は自分を責める事をやめないのかもしれない。
「……小日向君、俺はもう大丈夫だ。皆の所へ戻ってやってくれないか?」
「でも……」
「小日向君が皆を見てくれていると思うと……安心できる」
確かに私がこのままここに居ても、三島君の容態が回復するのが早くなるわけでも無い。だったら――三島君が望むとおりに、私は実行委員としての責務を果たした方が彼の心が軽くなるんじゃないだろうか。
「そうだぞ、小日向。お前がここにいてもハッキリ言って何の役にも立たんからな」
至近距離の背後から聞こえた意地悪な声。
「三島、酔い止めだ。飲みなさい」
「はい」
鬼頭先生から水の入った紙コップと酔い止めを受け取り、三島君はごくりとそれを飲み込んだ。
「あとは俺に任せておけばいい。行け」
「はい……。じゃあ三島君、何にも心配いらないからね! 私に任せて!」
「余計に心配になるな、そのセリフ」
「鬼頭先生には言ってません!」
私と鬼頭先生のやりとりを聞いて、三島君がクスリと笑った。
「頼んだよ、小日向君。本当にすまない」
「ううん、早く良くなるのを祈ってるね!」
そう言うと私は医務室を出た。
外に出ると進行方向のその先に、到着地である島がぼんやりと見えて来た。
あ~あ、お昼食べ損ねちゃった……でもそんな事言ってられない。これからもっともっと忙しくなるぞ! だから三島君、早く元気になって!
そして私は思いっきり背伸びをして息を吸い込んだ。
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