チェンジ・ザ・ワールド☆
鬼頭10日目・No.2
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私のやんごとなき王子様
今日は合宿の実質最終日。明日にはまたフェリーに乗って学園へと戻る事になっている。
私達生徒指導は実行委員や学園本部との連絡で相変わらず慌ただしい一日を過ごした。
夕方になり仕事も一段落した頃、医務室に残って作業をしていた私の元へ鬼頭先生がやってきた。
「まだ残っていたのか?」
「あ、お疲れ様です」
そう言って私のすぐ隣りまで来ると、机の上を覗き込む。
「明日で最後ですから、船に積み込む品目のチェックを済ませておこうと思って」
「まあ、お前がやってくれるなら俺の仕事が減って楽だしな。ついでに俺の私物も片付けておいてくれ」
「嫌ですよ!」
「即答か? 冗談の通じないヤツだな」
絶対冗談じゃなかったよ、あの目は。
じとりと先生の姿を追うと、先生は窓の傍まで歩いて鍵を開けた。
「今日は花火大会らしいな」
先生の口から出た花火大会という単語に、私は一瞬ドキリとする。昼にさなぎと話していた事を思い出したのだ。
「そうらしいですね。理事長が企画したって聞きましたけど」
「ふっ、あの人らしいな。俺はあまり大きな音や人ごみが好きじゃないんだが……」
そこで言葉を切って私を振り返ると、小さく笑った。
「ここなら静かだからな。お前もここで見るか?」
「え?」
誘われるとは思っていなかった私は、驚きつつも静かに頷いた。
「はい」
まさか鬼頭先生と一緒に花火が見られるなんて――
夕食後、私は米倉君と一緒に出かけるさなぎを送り出し、医務室へとやって来た。
先生は暗い部屋の窓に体を預けて、風に髪をなびかせながら外を見ていた。
「もうそろそろ始まる時間だぞ」
「はい」
先生の隣りに並んで窓枠に両腕をかけ空を見上げると、第一発目の花火が打ち上がった。
ドーーーン!!
大音響を響かせ、心臓の内側から体全体を振るわせるような振動が走り抜けた。
夜空に弾けた大きな色鮮やかな花火に、少し離れた海岸や宿舎の中から一斉に喝采が起こる。
「綺麗!」
次々と重力に逆らって空へと投げ出されて行く花火の雨に、私は時間を忘れて魅入っていた。
「――まあ、悪くはないな」
ぼそりと言った先生に、私は苦笑する。
素直じゃないなあ、本当に。
鬼頭先生と一緒にいる所為か、花火のあの大きな音がいつもより静かに感じた。
先生の隣りにいるというだけですごくドキドキして、花火の美しさよりも幸せな気持ちの方が強くて驚く。
しばらく黙って花火を見ていると、カラカラとドアが開く音が背後で聞こえた。
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