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鬼頭・後日談2

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私のやんごとなき王子様












〜後日談〜






「わっ!?」


 二人掛けの座席はそんなに広くなくて、発車した電車の振動と引っ張られた反動で私は鬼頭さんに抱きつくような格好になってしまった。


「今日、俺達はどこへ行っているんだ?」

「―――う、海……です」


 私が海に行きたいと言って誘ったのだ。しかも車じゃなくて電車で行きたいと。

 だっていつも車ばかりだから、運転している鬼頭さんはずっと前を見ているし、たまにはこうやってのんびり電車に揺られてどこかに行きたいと思っていたのだ。

 海は別に泳ぎに行くという訳じゃなくて海のすぐ側にある水族館が目的なのだけど、ついでに海を見ながら食事をするのもいいかな。なんて思ってお願いした。

 鬼頭さんは私の答えを聞いてふうと小さくため息を吐く。


「お前は、自分が嫌いな奴の頼みを二つ返事で引き受けるか?」

「え? いいえ、引き受けません――」


 私が質問していたはずなのに、気付けばいつもの鬼頭さんのペースになっている。


「それじゃあお前はどうして俺と一緒に電車に乗っている?」

「……あ」


 そうか、そういう事か。

 鬼頭さんは私の事を好きだから、私のお願いを聞いて電車で海に行ってやってるって言いたいんだ。

 嬉しい……けど、違うの。


「気持ちは分かりましたけど、私は言葉が欲しいんです」

「なるほど、やっぱりお前はまだ子どもだな」


 そう吐き捨てるように言うと、鬼頭さんはゆっくり私を抱きしめた。

 わわっ! 近い近い!

 私が驚いているとニヤリと笑い、私の耳に口を寄せてその低い声で囁く。

 吐息がかかるほどの至近距離に私は動揺した。


「お前は俺の事をどう思ってる?」


 心臓が止まりそうなくらい私は緊張している。案外男らしい鬼頭さんのその体に包まれて、頭が痺れそうなほどの囁き声にぎゅっと目をつぶった。


「す……好きです―――」

「―――俺も同じだ……これで満足か?」


 ふと体を離して私を見下ろすと、鬼頭さんは私のおでこにそっと唇を重ねた。

 ひっ!? 

 どうしてこう、毎回毎回人を驚かせるのよ!!

 ―――なんて言えるはずも無く、衝撃でぼんやりしている私を他所に、何事も無かったようにポケットから本を取り出して読み始める鬼頭さん。

 絶対に私の顔は真っ赤だろう。

 思っていた言葉は本人の口から聞けなかったけど、いいのかな? 静さんって呼んでも。

 柔らかな唇の感触の残るおでこをそっと撫で、私はため息と同時に車窓から外へ視線を移した。

 まだまだ私は子どもで、手のひらの上で踊らされてるけど、いつかきっと言わせてみせる。


「お前が好きだ」


 って。 

 少しひねくれてるけど、本当は寂しがりやで恥ずかしがりやなあなたを愛してます。これからも。


 そしてあなたも私を愛してくださいね。ずっと……











 私のやんごとなき王子様 ――鬼頭編――   了





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