アットウィキロゴ
チェンジ・ザ・ワールド☆
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

チェンジ・ザ・ワールド☆

契約

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
管理者のみ編集可
契約













 「本っ当に呆れるわね……」

「お前、退院してきた人間にそりゃねーだろ。ほんっとに可愛気がねえなあ」

 ルーズは、目の前でぐるぐると両腕を回してストレッチをするカッツの姿に、心底呆れたように言った。

 地球で大けがを負ったカッツは、ルーズの予想を遥かに上回るペースで回復し、予定より3日も早くベニーランドに戻る事が出来た。

 それからすぐにトレインのいるドルクバへ行き、大きな病院へ入院させること4日。

 医者からもう帰ってくれと言われるほど元気になったカッツは、今朝めでたく退院して来た。

 帰ってきたかと思えば、直ぐさま旺盛な食欲でルーズが作った食事を平らげ、何やらやらかす腹づもりらしい。

「いい年した女に可愛げを求められても困るんだけど」

「うるせー。そういやセイラがもうじき来るんだろ?」

 カッツが食べ散らかした食器を片付けながらツッコミを入れるルーズの背中に向かって、カッツが尋ねる。

 ドルクバ警察に保護されたセイラは、多少衰弱していたものの怪我などもなく無事だった。

 しかし記憶が曖昧で、連れ回した連中の事などの詳しい情報を警察に話せなかったと言う。

 カッツを病院に放り込んだシンやルーズがセイラに会いに行った時、シンの顔を見た瞬間に泣き出してそれはもう大変だった。

 変な薬を注射され、意識が朦朧とする中であちこち連れ回されていたらしい。

 しかしシンは腑に落ちなかった。

 数日セイラを連れ回してドルクバに捨てるくらいなら、最初から拉致しなければ良かったはずだ。それを殺しもせず、ただ地球から連れ去ったというのは何かおかしい。

 そう考え、地球で会った連中とセイラが動いたであろうルートを調べるため、シンは今一人で行動をしている。

 そして今日はカッツの退院という事もあり、セイラが政府関係者と共にここベニーランドのMB基地へやってくると言うのだ。

「今日は政府の関係者も一緒に来て地球での事を聞きたいらしいから、よろしくね」

 そう言い残し、ルーズはキッチンから出てきて階段に足を掛ける。

「って、おい! お前どこ行く気だっ!?」

「え? えーと……シンの手伝い?」

「嘘吐くな! セイラが来るから逃げようってんだろ!」

 半分当たっていた。

 カッツが一命を取り留めた事を知ったセイラは、面会謝絶というにも関わらず病院に行って大騒ぎをした。

 それを止めていたのがシンとルーズなのだが、ルーズと初対面したセイラはいきなりルーズの顔を平手打ちした。

 目の前でカッツが撃たれたのを見たセイラは、不甲斐ない自分と、自分が知らない間にカッツの側にいたルーズへの嫉妬心から訳が分からなくなり、ルーズを叩くという暴挙に出たらしい。

 最初からルーズが地球へ同行していたらこんなことにはならなかったかも知れないと、カッツが怪我をした事をルーズの所為だとものすごい剣幕で怒鳴った。

 暴れるセイラをシンが抑え、病院だった事もありそのまま鎮静剤を投与されて眠るセイラの姿を見た時、ルーズは激しい罪悪感に襲われた。

 シンはそんなのは結果論だと言ってセイラの言葉を鵜呑みにしないようルーズを気遣ってくれた。しかしルーズが一緒に地球へ行っていれば、事態は変わっていたかも知れない。そう考えると、セイラの怒りは間違いでないと思えた。

 そんな事があったため、ルーズはセイラと顔を合わせるのを控えようと決めていたのだ。

「私がいると色々面倒になるから、任せるわ」

「あ、おいっ!」

 一瞬悲しそうな顔をしたルーズに、カッツはそれ以上何も言う事が出来なかった。

 ソファに腰を降ろし、頭をガシガシと掻いて壁を睨んだ。








 ****








 外に出たルーズは、歩き慣れた瓦礫の道を身軽に進みながら、携帯型端末が受信したデータを開く。

「またドルクバか……」

 そう呟いて、ドルクバ行きの飛行船のチケットを手配した。

 シンが一人でセイラと組織の足取りを追っているが、今の所のまだはっきりとした情報は入手出来ずにいるようだ。

 取りあえず合流して、何らかの手がかりをつかみたい。



 ルーズ達が住処にしている廃ビルはベニーランドの外れにあり、そこから少し歩けば薄汚れた下町が広がっている。

 狭い路地には無機質なコンクリート造りのアパートが建ち並び、たくさんの人が歩いていた。

「おい、ルーズ!」

「ブルース?」

 丁度ブルースの店の前を通りかかると、中からブルースがフライパン片手にルーズを呼び止めた。

 いつもより少し神妙な顔をしてカウンターから出てくると、小声で

「いい酒入ったぜ」

 と言った。

 ルーズは辺りを見回し、カウンターの一番端へと腰を降ろす。

「どうしたの?」

「カッツは退院したんだって?」

「ええ、おかげさまで。もう少し怪我してくれたら静かだったのに」

「あいつは座ってるだけでうるさいからなあ」

 そう言って力なく笑うと、そっとルーズの前に小さいカードを差し出した。

 ルーズはそれを見てピクリと眉を動かす。

「お前、一体何やらかしたんだ? これを持ってきた男だが、あらあ本物の人殺しの目だったぜ……」

「どういうこと?」

「名指しでお前を指名してこいつを渡すように頼まれたんだ。絶対にルーズ以外のヤツに渡すなってな」

「そう……この間あちこちのパチンコ屋でボロ勝ちしちゃったから、目つけられたのかしら?」

 はあ。と深いため息を吐くルーズに、ブルースが苦笑する。

「ほどほどにしとけよ。カジノで大勝ちしてヒットマンに殺られるならまだしも、パチンコじゃ箔がつかねえからな……なんて冗談言ってる場合か。本当に大丈夫なんだろうな?」

 よほどこのカードを持ってきた男が強烈だったのか、ブルースは心配そうに言う。

 ルーズはいつものように飄々とした顔でカードをポケットに仕舞うと、椅子から立ち上がった。

「大丈夫よ、別にイカサマやって勝った訳じゃないんだもん。心配してくれてありがと」

「ならいいけどよ。あ、今度退院祝いにカッツのヤツに飯おごってやるって伝えといてくれ!」

 店の外へと歩いて行くルーズの後ろ姿にそう声を掛けると、ルーズはチラリと目だけでブルースを振り返って手を挙げて答えて去って行った。

「ルーズのやつ、無理してなきゃいいんだがなあ」

 ぼそりと呟き、ブルースは気分を変えて新しく来店した客を迎え入れた。















 ルーズが出て行ってしばらく、騒々しい足音と同時にドアが勢いよく開き、セイラが飛び込んで来た。

「カッツーーーー!!!」

「どわっ!? てめえ、飛びつくんじゃねえっ!」

「大丈夫なの? 後遺症とか残らないの?」

 ペタペタとカッツの顔を触り、心配そうに尋ねる。

「大丈夫だっつーの! いいから離れろっ、後ろが引いてるだろうがっ!?」

「あ」

 そこでセイラは我に返り身だしなみを整えると、セイラの後から階段を降りてきた男二人を紹介する。

「カッツ、エンド政府環境保護局のクライリー副局長。そしてこちらがエンド国家公安委員会のホズミ委員長補佐官。クライリー副局長、ホズミ委員長補佐官、彼が私の幼なじみで、MBのカッツです」

 これはまたなかなかの大物のお出ましに、カッツは心の中でため息を吐く。

「今回の地球での件はご迷惑をおかけしました。我々エンド政府としてもplainの動向は気になっていたのですが、はっきりと把握できていなかったんです。バーミリアン君もあなた方も危険な目に合わせてしまって……」

 クライリーという男はやけに骨張った体の、緑を基調とした政府の制服があまり似合わない科学者タイプの男だった。話し方も役職の割に偉そうでなく、話す時も相手と目を合わせるのが苦手な感じでどことなく落ち着きがない。

「俺達は怪我で済んだから良かったけど、あんたんとこの調査団員は死んだんだろ? 何か手は打ってるのか?」

 カッツが尋ねると、今度はクライリーとは正反対の、あごと腹部にやや贅肉が乗った偉そうなホズミという男が答えた。

「その件に関してだが……出来るだけ詳しく君達が地球で襲われた時の情報を聞かせてくれ。連中は何の目的で地球に来ていたのか、分かるかね?」

「あー。まあ、取りあえず座ってくれ。おいセイラ、お前ちょっと茶入れて来い」

 二人をソファに座るよう促し、セイラにそう言うと自分も腰を下ろした。

 セイラは笑顔で直ぐさまキッチンへと入って行き、手早く茶の準備を始める。

「俺は怪我をしていたから、その間仲間が調べてくれた」

 そして懐からCDを取り出し、二人の前へ差し出す。

「今回に関してだが、どうやら組織の連中、地球の鉱物を持って帰ったみたいだぜ」

「鉱物?」

 クライリーがカッツを見る。それに頷くと、カッツはテーブルの端に置いてあったノート型端末にCDを入れる。

 これは、カッツが意識を失っている間にシンとルーズが出来る範囲で調査した結果が書き込まれているCDだ。

「宇宙では当たり前のように使われている鉱物はたくさんあるが、地球にしか存在しない鉱物もたくさんある。そしてそれには希少価値があり、さらには付加価値までついている」

「……資金源、という事か」

 ホズミが肥えたあごを撫でると、画面に映し出された映像を次々呼び出しながらカッツは続けた。

「ダイヤ、サファイヤ、アレキサンドライトなんかの宝石は、宇宙でかなり高額取引されてるからな。それこそここの上に住んでるような連中は、いくら払ってでも、人を殺してでも欲しがる奴らばっかりだ」

 天井を指差すカッツに、ホズミが首を傾げる。

「それで? 具体的には何を探していたか分かっているのか?」

「まだ調査中だ。地球にいた連中はかなりの訓練を受けた戦闘兵だった。組織がそんな武装した連中を地球に送り込んだのは、鉱物採掘以外にも何か目的があったんじゃないか。と、俺は睨んでる」

「お待たせしました」

 そこで丁度セイラが茶を入れて戻ってきた。

 ちゃっかり自分の隣りに座るセイラの頭を鷲掴みにし、カッツは目の前に座る二人の男を見てにいっと笑った。

「こいつも危険な目に遭わせちまったからな。頼む、もう一度地球に行かせてくれ。今度は本格的に調べたい。出来れば調査費用とか全部そっちもちで。んで、何か分かったらすぐに報告するから、あんたらはあんたらで何か分かったら教えて欲しい」

「それで我々に何かメリットがあるのか?」

「ーーーあんたら政府はplainを消したがっている。違うか?」

 カッツのその言葉は図星だったらしく、クライリーとホズミは黙した。

「だが、あんたらと組織は蜜月関係でもある……そこで、俺達みたいな民間人が勝手に動いて、組織を徹底的にやり込める証拠を集めて表沙汰になれば、政府としても名目上組織を罰しない訳にはいかない。だからあんたらはそれを俺達にやらせる為にわざわざこんな所まで来た。違うか?」

 二人は視線を交わし小さく頷くと、マイクロチップをテーブルの上に置いた。

「君達MBに対し、地球の調査依頼を正式に政府側から申請しよう。必要な物があればそこのバーミリアン君に言って何でも揃えるといい……」

「よろしくお願いします。あの、地球で鉱物を見つけたら環境保護局へ届けて頂けますか?」

「ああ、任せとけって」

 マイクロチップを受け取り、立ち上がった二人と同時にカッツも立ち上がった。




 組織を相手に本格的に動くのは今回が初めてだ。

 カッツは組織のやり口は好かなかったが、自分が動いた所でどうこうなる相手ではないと思っていたし、出来るなら深く関わりたくないと思っていた。

 それだけに、今回地球へ行って組織に関する情報集めをする事を決心した自分自身に、多少戸惑いはある。

 しかし、シンやルーズはもう動き出している。

 それぞれがどういった意図で行動しているのかは分からなかったが、行動するべき時なのかもしれないと思った。


 再び、地球へ行くのだ。








                               続く…





次へ → 捕獲成功

一つ戻る → 敗北


お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
Minimum Boutトップに戻る
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー