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初春抄.1

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streetpoint

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 ファインダー越しに見えるその姿に、不覚にも胸がざわついた。


 もしかしたら私は、


 恋をしてしまったのかもしれない。







初春抄










 「やだやだ~。テニススクールの取材なんて面白くない~!」

 そう文句を言う同僚に苦笑し、新部羽百合(しんべはゆり)はカメラにレンズを取り付けた。

 まだ寒いこの時期、本職でもないカメラマンの仕事をこなさなければいけない事への不満と、本来ならプロ野球のキャンプの取材で九州へ行っていたかもしれない予定が、やっぱり変更になった事への不満で、同僚の戸村美緒(とむらみお)はやる気がすっかり失せてしまっているようだ。

 行きの車の中からこっち、ずっとこの調子で文句を言い続けている。

「仕方ないじゃない。まだ入社一年目の私達にプロ野球の取材に行かせるなんて、もし何かやらかしたら責任取れないんだし。それにテニスの取材任されたのだって十分大役でしょ?」

 一応フォローしているつもりなのだが、美緒はやはり納得出来ないようで、

「有閑マダムやムッシュたちのテニスの練習取材しても燃えないもん。それにそんなに大事な取材じゃないから私達みたいなルーキー寄越したんでしょ? あーあ。早く新人入って来ないかなー。小間使いのように使いまくってやるのに……もちろんイケメンの新人君なら言う事ないけど」

「あのねえ……」

 羽百合がセットしたカメラを横取り、ファインダーを覗いていた美緒があっと声を上げた。

「どうしたの?」

 何事かとバッグの中から三脚を出していた羽百合がカメラのレンズの向いている方を見る。

 日曜日の昼のテニスコートには年齢層の幅広い人たちであふれていた。

 年配の方と奥樣方が多いのだが、美緒は何故か興奮していた。

「ちょっとあそこっ! めっちゃいい男いるじゃん!」

「はあ?」

「ほら羽百合っ、あんたも見てみなよ! あそこのコートで打ってる銀髪の男の人! コーチかな? いや、絶対コーチよっ!」

「銀髪?」

 羽百合は顔をしかめながら美緒に手渡されたカメラのファインダーを覗いた。

 そこには楽しそうにボールを打つご夫人達の姿が見えて、汗が光ってるな。という印象しか受けなかった。

「とてもさわやかに奥樣方がボール打ってる……」

「馬鹿ね、そのボールを出してる人に決まってるでしょ?」

「ああ」

 美緒に言われ、反対側のコートからボールを出している銀髪の男性をじっくり観察してみたが、そんなに騒ぐほどいい男かどうか、正直羽百合には分からなかった。

「どうどう、格好良くない? 私このテニススクール入ろっかなあ。あんなイケメンがコーチしてくれるんなら、ウェアから一式気合い入れて可愛いの揃えちゃう!」

 カメラから顔を離し、羽百合は苦笑した。

「スクール入っても行く暇なんてないでしょ? イケメン探しもいいけど仕事忘れないでよね。後で編集長に怒られるんだから」

「もうなによ、羽百合ってばイケメンに興味無し?」

「興味無いっていうか、別にそんな言うほどじゃないと思うけど」

「ええ~っ!? ちょっと羽百合あんたおかしいよ? あんなに格好良いのにっ! ちょっとお目にかかれないくらい男前なのにっ!」

「おかしいはないでしょ。別に好みなんて人それぞれなんだから」

「んじゃあどんな顔が好みなのよ?」

「ええ? 何でそんな話しになるのよ……」

「お待たせしました、責任者の田所です」

 そこへちょうどこのテニススクールの責任者が現れ、羽百合は助かったとばかりにカメラを美緒に渡して立ち上がった。

「こんにちは、今日はどうぞよろしくお願いします」









                              続く…





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