チェンジ・ザ・ワールド☆
きみは〜.2
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きみはペテン師
ある日の休日、仁王は朝からダブルスのコンビである柳生に引っ張られ、学校へと向かっていた。
昨日は夜遅くまで女友達と電話をしていて寝不足のおかげで、非常に眠たい。
「ふああ……」
「仁王君、盛大なあくびをしているところ申し訳ないのですが、いい加減自分の足で歩いてください」
半分柳生にもたれかかった状態で歩いていたため、重たくなってきたのだろう柳生に怒られ、ふらりと体を起こす。
「まったく、柳生は真面目じゃのぅ」
「仁王君が不真面目なだけです。あなたが私をテニス部に引き抜いたのですから、しっかりしてください。負けるのはごめんですよ」
「俺達が負けるはずがなかろぉ。ふあ……」
面倒臭そうに頭を掻いて、もう一度あくびをした。
漸く学校の門が見えて来ると、柳生が突然手を振った。
「何やっとるんじゃ?」
不思議に思った仁王が、柳生が見ているらしい方向に目をやると、門の向こう側を汐屋が荷物を抱えて歩いていた。
あの読書感想文の手伝いをしてもらって以来、こうやって汐屋と向かい合うのは久しぶりだった。
結局借りた本はまだ全部読んでいなくて、自室の机の上に置かれている。
「汐屋さん、おはようございます」
目の前まで来て、柳生は丁寧に挨拶をした。
「おはよう、柳生君、仁王君」
「手伝いましょう」
「いいよ、部活でしょ?」
「部室に行くついでですから。さ、仁王君も手伝ってください」
面倒臭いと思ったが、ここで断るのもさすがに気が引けるので、仕方なく汐屋の荷物を抱える。
「ごめんね」
「構いません」
汐屋は囲碁部に所属していて、部長を務めている。部室棟はテニス部と同じ方向なので、柳生が言ったついでとはそういう意味だ。
相変わらず紳士的な態度で汐屋と共に歩き出した柳生の後ろを付いて歩きながら、仁王は二人の様子を伺う。
この間、真田とも仲良さそうに話していたが、柳生とも親しそうだ。
真面目な者同士、気が合うんかの。
どうやら荷物は洗った碁石らしく、一人で全部持つにはかなりの重さだった。
「仁王君ごめんね」
急に振り返った汐屋に、仁王はいつもの作り笑いで答える。
「別にええよ」
「後でテニス部にお礼に何か差し入れ持って行くから」
「気にしないでください。囲碁部は来週から大会でしたよね」
「うん、中学生活最後の大会の予選だからね。3年生は気合い入ってるよ」
丁度部室の前に到着した所で、部室から飛び出してきた2人の下級生に危うくぶつかりそうになった。それを仁王は素早くかわし、荷物と自分を守った。
「あっ! す、すいませんっ!」
「部長、すみませんでした!」
「あ、いいの。気にしないで。テニス部の人たちが手伝ってくれたし」
「どうもありがとうございました!」
深々とこちらに向かって頭を下げる男子生徒に、柳生は首を横に振る。
「いいえ、これくらいのこと、何でもありませんよ。それでは頑張ってください」
「本当にありがとう。柳生君、仁王君。2人とも部活頑張ってね」
男子生徒に荷物を託し、仁王と柳生は汐屋に別れを告げた。
「柳生、おまん汐屋と仲がええんじゃの」
「去年同じクラスでしたから。仁王君は今、彼女と同じクラスでしたよね」
「まあ、そうじゃが、あんまり話した事はないの」
「あなたのような方とはあまりに違いますからね。彼女は立派な女性です」
失礼な事をさらりと言う柳生を一瞥しながら、それでも確かにその通りだと納得する。
ふとこの間の汐屋との会話を思い出し、囲碁部をちらりと振り返る。汐屋という少女はなんとなくつかみ所の無い人物のような気がした。
「む、仁王。今日はちゃんと来たな。柳生、すまなかった」
テニス部の部室にやってくると、着替えて出てきた真田と鉢合わせた。
仁王の顔を見て少しほっとした顔をすると、すぐに帽子を被り直して背を向ける。
「すぐに着替えてコートに集合だ」
「はい」
「はいはい」
部長の幸村が先日入院し不在の今、真田はいつも以上に厳しくなっている。常勝と名乗るからには、地区予選ごときでつまずいてなどいられない。
テニス部と同じく囲碁部も強豪で、全国大会ではいつも上位に入賞している。汐屋は1年の時から団体戦の大将を任されていて、全校集会で表彰されているのを何度も見たことがあった。
皆それぞれ本気でぶつかれるものをもっているのだろう。そう考えると、仁王は周りの連中と比べればぬるいのかもしれない。
着替えを済ませラケットを握りしめると、仁王は自然と笑みをこぼす。
今度の大会で、自分を熱くさせてくれる相手が現れてくれればいいのだがーーー
続く…
次へ → きみは〜.3
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