チェンジ・ザ・ワールド☆
きみは〜.5
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きみはペテン師
翌日の昼休み、仁王はテニス部の部室へと向かっていた。ちょっとでも昼寝をしようという腹づもりなのだが、丁度通りかかった囲碁部の窓が開いていて、中を覗くために歩く速度を緩めた。
案の定、教室で見かけなかった汐屋の姿がそこにあり、真剣な表情で碁盤に向かっていた。その向かいで相手をしているのは柳生だ。
何じゃ、2人で囲碁かいの。優雅なもんじゃ。
見知った2人に仁王は窓に手を添え声をかける。
「よお。休み時間じゃいうのに、熱心じゃのう」
「仁王君ですか。どうかしましたか?」
そう尋ねたのは柳生だった。
「別に、昼寝でもしよう思うて部室に行く途中じゃ。ほんでお前さん達を見つけたから声かけたんじゃ」
「そうですか。仁王君も一緒にどうですか? 面白いですよ、囲碁」
「将棋は得意じゃが、囲碁はどうも俺には合わん。部室で寝とるけん、帰る時に起こしてくんしゃい」
「それは残念です。汐屋さんは教え方がお上手なので、あなたもやれば面白いと思ったのですが」
「柳生君、無理に誘ったら駄目だよ。休み時間が終わる前にテニス部に起こしに行くから」
何故か囲碁をするよう勧める柳生を制し、汐屋が仁王を逃がしてくれた。
「すまんのぉ、それじゃ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
仁王を見送ると、すぐに柳生と汐屋は向かい合い、パチパチと囲碁を再開した。
テニス部へ向かって歩きながら、仁王はやっぱりあの2人はお似合いだと考える。
それから部室に入りソファに横なって目をつぶった所で、仁王はとんでもなく面白いことを思いついたのだった。
~~~
地区大会予選が始まった。 仁王達立海大附属は言うまでもなく、楽々初戦を勝利した。
荷物を片付け帰り支度をしていると、柳生が携帯で誰かと話していた。
「ーーーそうですか、それは良かった。では、次は夏休みに入ってからの全国大会ですね。ーーーええ、私達も勝ちました。はい。ありがとうございます。汐屋さんこそ、おめでとうございます。ーーーそれではまた」
どうやら汐屋と話していたようだ。内容から察するに、汐屋も無事大会を勝利したらしい。
「汐屋はなんて?」
「ああ、仁王君。汐屋さん達も優勝したそうですよ。今度は全国大会です。そうそう、仁王君にもおめでとうと伝えてくださいと言付かりました」
「ほうか、そりゃどうも」
荷物を担いで歩き出した柳生のバッグから、仁王はこっそり携帯を抜き出した。
素早くアドレスを呼び出し、汐屋の番号とアドレスを見つけると、自分の携帯へ送信する。
「ほうじゃ、帰りにファミレスでも寄って、何か食って帰らんか?」
ポン!
と柳生の肩を叩きながら、バッグに携帯を戻す。
「これから学校に帰って練習ですよ? 聞いてなかったんですか?」
「真田のやつ、そんな事言うとったか?」
「まったく、あなたという人は」
やれやれ、と眉を寄せる柳生に、仁王は心の中で謝った。
すまんのぉ、柳生。これも俺の好奇心の為じゃ。
学校も夏休みに入る直前、中間考査が行なわれている学校内は部活は休みとなっていた。嫌な試験も明日で最後。仁王もこの時ばかりは少しだけ部活が恋しかったりする。
珍しく図書室で残って試験勉強をした仁王は、部室に置きっぱなしにしていた英和辞典を取りに部室棟までやってきていた。別に辞書がどうしても必要という訳ではないのだが、この際家に持って帰っておこうと思ったのだ。
目的の辞書を手に取り、渡り廊下を歩いていると、囲碁部からパチパチと石を弾く音が聞こえてきた。
誰かおるみたいじゃのぉ。
特に気にもせずに通り過ぎようとした時、少し開いていた窓の隙間から見えたのは汐屋の横顔だった。
意味も無くドキリとする。
一瞬足を止め、辺りを伺った。誰もいない事を確認すると、静かに窓に手を掛けて汐屋に声をかける。
「よお、熱心じゃのお」
「あれ、仁王君。どうしたの? 今日部活お休みでしょ?」
「そのセリフ、そっくりそのままお返ししちゃる」
「私は、夏休みに入ったらすぐ全国大会だから、ちょっとでも打っておこうと思って。家じゃゆっくり打てないし」
「ほうか。兄妹が邪魔するんかの?」
「うん。弟と妹がいるから」
そう言えばこの間、真田が汐屋には小学校低学年の弟と妹がいると言っていたのを思い出す。
「碁石をばらまくんじゃろう?」
「そうなの。あとは碁会所があるけど、あそこってタバコくさいから……」
「なるほど……でも一人でやってても練習になるんか?」
「うん、棋譜っていって、前に対戦した記録が残ってて、それを並べたりするだけでも結構いい勉強になるの」
「ほお」
「今並べてるのは100年くらい前のやつなんだけどね」
「100年」
「あ、ごめん。変な話しで引き止めちゃって」
「いや、ええよ」
仁王は笑顔を作ると、それじゃあと手を挙げた。
「ほいじゃあ、頑張ってな」
「ありがとう」
笑顔で仁王に答えると、汐屋はすぐに碁盤に意識を集中させた。
本当に囲碁が好きなんだと伝わって来る。
そこでふと、足を止めて窓の所へ戻ると、
「すまん、汐屋。ひとつ聞いてもええかの?」
「どうしたの?」
「お前さん、囲碁の大会が終わったら暇、あるんか?」
「今度の決勝も夏休み中だからね……。今の所何も予定はないけど。どうして?」
「いや、ちっと聞いてみただけじゃ。ほいじゃあ」
「うん」
よしよし、これで計画を立てやすくなった。
仁王は一人ほくそ笑んだ。
続く…
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お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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